ロシア軍は命を顧みない兵士の波でウクライナ軍を圧倒、春攻勢に影響が出る可能性も

ロシア軍は命を顧みない兵士の波でウクライナ軍を圧倒、春攻勢に影響が出る可能性も
https://grandfleet.info/us-related/russian-forces-overwhelm-ukrainian-forces-with-wave-of-life-defying-soldiers-could-affect-spring-offensive/

『ニューヨーク・タイムズ紙は「部分的動員で変化したロシア軍の戦術は命を顧みない兵士の波で敵を圧倒することにあり、訓練も装備も未熟な兵士と質が高い兵士の交換は痛みを伴い、春攻勢に必要な戦力消耗に繋がる」と指摘している。

参考:Seeing a Prize, Russia Inundates a Ukraine City With Troops

もうバフムートの主要な補給ルート(T0504とM03)はロシア軍の大砲や戦車の主砲の射程圏にあるため移動が制限されているらしい

エストニアの国防次官は「プロセスの欠点がどうであれ動員は効果を発揮して戦線を安定させた。西側諸国に5週間で30万人を前線に動員するのは不可能だ」と語り、西側メディアにロシアの軍事力や動員計画を嘲笑して過小評価するなと警告したが、ニューヨーク・タイムズ紙も「部分的動員で変化したロシア軍の戦術は命を顧みない兵士の波でウクライナ軍を圧倒することにあり、バフムートを巡る終わりのない戦いで訓練も装備も未熟なロシア軍兵士と質が高いウクライナ軍兵士の交換は痛みを伴い、春の攻勢に必要な戦力の消耗に繋がる」と指摘している。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

ロシア軍が昨年7月にセベロドネツクやリシチャンシクを制圧したことでルハンシク州の制圧に成功、ドネツク州の制圧に向けてイジューム方面からスラビャンスクに迫り、8年間かけて準備されたドネツク周辺の陣地を迂回するためバフムートに突破口を求めた戦いはハルキウ州やヘルソン州での反撃で大幅に計画が狂ったものの、ドニエプル川左岸を放棄することで戦線を整理、動員した30万人の一部を僅か5週間で投入してルハンシク方面におけるウクライナ軍の前進を阻止することに成功した。

崩壊しかけた戦線を安定させたロシア軍は再びドネツク州制圧に力を入れ始め、バフムート攻略に囚人で構成された兵士(ワグナー所属の兵士)を大量投入したものの想像を絶する人的被害を出していたためウクライナ側は「兵士の消耗比率は1対10だ」と主張、そのため「ロシア軍を消耗させるのに理想的なキルゾーンだ」と考えられていたが、この話は現実とかけ離れていたことが判明する。

出典:Сухопутн? в?йська ЗС Укра?ни

部分的動員で変化したロシア軍の戦術は命を顧みない兵士の波でウクライナ軍を圧倒することにあり、バフムート周辺の拠点が次々とロシア側に制圧され始めるとドイツ連邦情報局は「バフムート方面の戦いでウクライナ軍は毎日3桁台の兵士を失っている」と安全保障関係の連邦議員に報告、米軍のミリー統合参謀本部議長も「ロシア軍の死傷者数は10万人を大幅に上回っている。この戦いは非常に血なまぐさい戦争で双方にかなりの死傷者が出ている」とウクライナ軍の人的被害も大きいことを示唆。

最終的にノルウェー軍のエイリック・クリストファーセン陸軍大将が「ロシア軍の死傷者数は18万人に近づきつつあり、ウクライナ軍の死傷者数も恐らく10万人以上だ。さらにウクライナ側には民間人に約3万人の死傷者がいる。これだけの損失を被ってもロシア軍は武器生産の加速と動員によってウクライナとの戦争を長期間維持できる」と明かしたため、両軍の人的損害に10倍近い差がついているという話はおとぎ話に過ぎないことが判明した。

出典:President of Ukraine

ウクライナは約100万人(軍70万人、国家親衛隊9万人、国境警備隊・沿岸警備隊6万人、国家警察10万人)の動員を完了した昨年7月以降「これ以上の追加動員は必要ない」と主張してきたが、ウクライナ軍の人的被害が明るみになったタイミングでゼレンスキー大統領も「軍に追加の予備戦力を確保するよう指示した」と言及しており、正確な人的損害の数は不明なものの11ヶ月間に及ぶ戦いで軍の戦力にギャップが生じているのは間違いない。
それでも両軍の人的損害は約1対2なのでウクライナ軍優勢と言えるが、NYT紙は「訓練も装備も未熟なロシア軍兵士と質が高いウクライナ軍兵士の交換は痛みを伴う」と指摘、軍事アナリストも「バフムートをロシア軍に奪われても東部戦線で決定的な敗北には繋がらないが、東部地域における交通の要衝なのでロシア軍の優位性は高まる」と言及しており、もうバフムートの主要な補給ルート(T0504とM03)はロシア軍の大砲や戦車の主砲の射程圏にあるため移動が制限されているらしい。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

米国や同盟国の諜報機関は「ロシアの方が多くの弾薬と兵士を持っているため現在の戦闘スタイルを持続するのは不可能だ」と考え、バイデン大統領が派遣したファイナー大統領副補佐官、シャーマン国務副長官、カール国防次官はキーウを訪問して「バフムートで展開される消耗戦から機動戦へ移行することを支援したい」と提案、つまり米国側は遠回しに「持続不可能な消耗を止めるためバフムートを放棄して南部での反撃を優先させろ」と助言しているのだが、抵抗のシンボルと化したバフムート放棄をゼレンスキー大統領が決断できるかは不透明だ。

ゼレンスキーの考えをよく知る人物は「ロシアのバフムート勝利を認めおらず、ここを保持できればドンバス全体を奪還する可能性が広がり、逆に失えばロシア軍にスラビャンスク方面への前進を許すことになると考えている」と述べ、NYT紙は「これまでのロシア軍なら都市の包囲を優先し、ウクライナは当該都市を守るための代償を支払うかどうかを検討して抵抗するか後退するかを判断してきたが、バフムートの戦いは相手を消耗させること狙っている」と指摘しており、このままバフムートでの消耗戦に付き合えば予備戦力が消耗して春攻勢に影響がでるかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутн? в?йська ЗС Укра?ни
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 50 』

『 名無し
2023年 2月 01日

返信 引用 

NATO諸国のゴールは、ウクライナが勝つことではなくて、自国が対岸の火事として「絶対の安全が保証された状態」で、ロシアの体力をコスパ良く削ること、ですから、
様子を見て供与武器のエスカレーションはあっても、西側供与の武器を使ったロシア本土攻撃は、軍事より上位である政治の判断として、現時点では極めて低いでしょう。
戦闘機の供与拒否も、たぶんこっち側の文脈の理由だと思う。
22

    general
    2023年 2月 01日
    返信 引用 

冷たい言い方ですがロシアの人的資源を削って弱体化が達成できれば最終的にウクライナが負けてもNATOにしてみれば別に損はないんですよね。
フィンランド(加盟成功した場合)?バルト三国?ポーランド?ルーマニアでロシアを抑止する2013年以前の体制に戻るだけですし。
この場合モルドバがかわいそうなことになりますが…
16
    HY
    2023年 2月 02日
    返信 引用 

>NATO諸国のゴールは(中略)ロシアの体力をコスパ良く削ること、ですから

 実際はロシアの体力が思いのほか続いて(弾薬製造の面で)NATO側の体力が削れている気がするけど?』