ギリシャ首相「レオパルト2供与せず」

ギリシャ首相「レオパルト2供与せず」 トルコ抑止優先
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『来日したギリシャのミツォタキス首相は31日、欧米諸国がウクライナに主力戦車の供与を相次いで表明するなかで「ギリシャは戦車を提供しない」と述べた。同国にはドイツ製戦車「レオパルト2」が配備されているが、東地中海の権益などを巡って対立する隣国トルコへの抑止力として保持する考えを示した。

都内で日本経済新聞社の取材に応じた。ミツォタキス氏は「ウクライナには装甲兵員輸送車などを含めて多大な軍事支援をして…

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『ギリシャはトルコと歴史的に対立し、両国間の海上境界が画定していない。近年は地中海沖のガス田探査などを巡って軍事的な緊張が高まっている。

ただ対トルコの「主戦場」は海上や空中で、地上戦用の戦車に喫緊の必要があるかは不明だ。戦車の供与に否定的なのはロシアに配慮している可能性がある。

ロイター通信が報じた欧州連合(EU)の内部文書によると、ギリシャは他の加盟国と比べて凍結したロシア資産の金額が少ない。ミツォタキス氏は「(EUが決めた)全ての制裁に我々は準拠している」と強調し、対ロ制裁で後れを取っているとの見方を否定した。』

『ギリシャは同じ正教国のロシアと伝統的に近い関係にあり、欧州の中ではロシア寄りとされる。国民の親ロ感情も根強い。ロシアのラブロフ外相は今月、ギリシャが米国の要求に従って「反ロシア的な行動」を取っていると警告していた。

ギリシャは債務危機後、中国企業の投資マネーに頼っており、中国寄りとの見方が広がってきた。ミツォタキス氏は「どの国もギリシャへの投資を考えていない時期だった」と振り返り、中国マネーに頼らざるを得ない状況だったとの認識を示した。』

『中国国有海運最大手の中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)は2008年、ギリシャ最大のピレウス港の運営権の一部を獲得。16年にはギリシャ国営の運営会社株式の51%を取得し、21年10月には出資比率を67%まで引き上げた。中国の広域経済圏構想「一帯一路」の玄関口としての役割を担うことになった。

ミツォタキス氏はピレウス港への投資は「多かれ少なかれ成功した」と評価しつつ「ここ数年間は中国企業がギリシャに投資することに強い意欲を示していない」と指摘した。中東やアフリカにも近い立地を生かして「外国の直接投資を大幅に多様化するつもりだ」と明かし、中国以外からの投資受け入れに意欲をみせた。

ギリシャは09年、財政赤字を隠してきたことが発覚し、欧州全域を揺るがす債務危機に発展した。18年には約8年に及んだEUの金融支援から卒業。19年に首相に就任したミツォタキス氏は、経済成長につなげるため親ビジネス路線を掲げてきた。

(田口翔一朗、イスタンブール=木寺もも子)』