「汚職大国」ウクライナが向き合うべき“もう一つ”の戦い

「汚職大国」ウクライナが向き合うべき“もう一つ”の戦い – 孤帆の遠影碧空に尽き
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『(ウクライナ南東部マリウポリからの避難民を支援するために集まった国際支援物資の山【2022年12月19日 時事】 こうした現場で横流しなどの不正が横行しやすいのは想像に難くありません。支援された武器についても同様でしょう。)

【相次ぐ汚職容疑・不祥事高官の解任】

昨日取り上げたウクライナへの戦車供与の問題は、ドイツ・アメリカがともに供与する方向で方針転換が図られていることは報道のとおり。

そのウクライナから、もうひとつ重要なニュースが。

****ウクライナ、不祥事や汚職で高官解任相次ぐ…「国民の結束」へ影響懸念****

ウクライナで不祥事の発覚などによる高官の解任や辞職が相次いでいる。ロシアによる侵略に対処するうえで、ゼレンスキー政権は、国民の結束を乱す事態を懸念している模様だ。

大統領府は24日、大統領府副長官を解任する大統領令を発表した。理由は明らかにされていないが、地元メディアは、副長官が米自動車メーカーが住民避難のために提供したスポーツ用多目的車(SUV)を目的外で使用した疑いを報じている。17日には露軍の攻撃を「ウクライナが迎撃した」と誤って説明した大統領府顧問も引責辞任した。

24日には国防省も、物資補給を担当する次官が辞任したと発表した。地元メディアが21日、前線の兵士らへの食料調達が、小売価格より高い価格で行われていたなどと汚職疑惑を指摘した。国防省は22日の声明で「意図的な印象操作だ」と報道を否定したが、火消しにも追われている。

ウクライナの国家汚職対策局(NABU)は22日、40万ドル(約5200万円)の収賄容疑でインフラ省次官を拘束したと発表した。昨年夏、露軍の攻撃に伴う発電や暖房関連の設備調達を巡り、契約額をつり上げる見返りだったといい、仲介業者に不当な利益を与える目的だったとみられる。インフラ省は21日、捜査を受け次官の免職を発表した。

また、検察当局は24日、政府が国民男性の出国を厳しく制限する中で、昨年末に国外で休暇を過ごしたと報じられた検事副総長の辞任を認めたと発表した。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は23日の国民向けのビデオ演説で、公務員が職務以外の目的で出国することを禁止すると表明した。

汚職防止に取り組む国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」(本部・ベルリン)が公表した2021年の汚職指数ランキングで、ウクライナは180か国・地域中122位、ロシアは同136位だった。

支援を続ける米欧や日本など各国のウクライナ政府への不信感が強まれば、ロシア側に付け入る隙を与える可能性もある。【1月25日 読売】

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【米議会にも根強いアフガニスタン支援の二の舞への危惧 腐敗一掃は国際支援維持のために不可欠 更には・・・】
上記記事にもあるように、以前からウクライナは汚職が蔓延する国家として知られており、各種の汚職ランキングでは(ロシアと並んで)常に下位にランキングされる国です。

そうしたことから、ロシア軍侵攻以降、ゼレンスキー大統領のあたかも民主主義の旗を振りかざすような言動に対して鼻白む向きも少なくありません。

「ご立派なこと言ってるけど、ウクライナって犯罪マフィア国家じゃないか」
「あんな国に支援したって、汚職政治家の懐を潤すだけ」
「ウクライナに供与した武器はどこに消えるの? 第三国に横流しされてるんじゃないの?」等々

今回の一連の汚職容疑高官解任は、国内の不満を和らげて戦争遂行に向けた求心力を高めるとともに、対外的にウクライナへの信頼を繋ぎとめるためのように思われます。

ロシアとの戦いにおいて、欧米からの武器支援は「生命線」であり、そこが揺らぐようなことがあっては戦いに勝利することは不可能です。

下記は、昨年9月段階で、ウクライナ支援に対するアメリカ議会にも存在する批判・疑問に関するもの。
今回の措置は、こうした批判・疑問に応えるものでもあるのでしょう。

****「汚職大国」ウクライナに供与された支援金と武器、無駄遣いで「消失」する危険****

<アフガニスタンでは、アメリカからの支援金の3割が無駄遣いや汚職で「消えた」。監視・追跡の仕組みがないウクライナでも同じ間違いを繰り返すのか>

イスラム主義組織タリバンが政権を掌握したアフガニスタンから米軍が撤退し、20年にわたる泥沼戦争にようやく終止符が打たれてから1年。アメリカはまたも、戦争中の国への軍事援助と経済援助に莫大な金額をつぎ込んでいる。今度の相手は、ロシアの侵攻と戦うウクライナだ。

ジョー・バイデン大統領の就任以来、アメリカはウクライナに136億ドルの安全保障援助を約束してきた。さらに米議会は5月に約400億ドルの追加支援法案を可決しており、今後も支援は拡大しそうだ。

アフガニスタンでの経験が手掛かりになるとすれば、これらの資金の多くが流用され、悪用され、あるいはどこかに消えてしまう可能性が高いと、専門家は指摘する。

「アフガニスタンに莫大な資金を投じたときと同じことが起きている」と、米政府のアフガニスタン復興担当特別査察官事務所(SIGAR)のジョン・ソプコ特別監査官は語る。

アメリカのNGOである武器管理協会のガブリエラ・イベリズ・ローザヘルナンデス研究員も、ウクライナへの援助について特別査察官事務所が設置されれば、アメリカの資金がどこ(とりわけ安全保障の領域で)に行き着いたかを追跡する助けになるだろうと語る。

ただ、援助の規模が大きいことや、軽兵器は追跡が難しいことを考えると、実際の作業は厄介なものになるだろうとローザヘルナンデスは予想する。

アフガニスタンでも、タリバンがアメリカの兵器を一部入手したし、イラクやシリアでは、現地のパートナーに提供するはずの武器が過激派組織「イスラム国」(IS)のようなテロ組織の手に渡ったことがあった。

2020年のSIGARの報告書によると、アメリカがアフガニスタン政府に供与した資金約630億ドルのうち、約190億ドルが無駄遣い、汚職、乱用に消えた(ちなみにアメリカがアフガニスタン戦争に費やした金額は計1340億ドルだ)。

ウクライナへの支援金が同じような運命をたどらないようにするためには、もっと監視が必要だと、ソプコら専門家は警告する。

「これだけ莫大な資金が一つの国に急に投入されるときは、最初から監視の仕組みを構築しておく必要がある」とソプコは言う。「だが、それが今は見当たらない。通常の監督機関は忙しくて手が回らないのが現状だ」

懸念されるのは、支援金の行方だけではない。ロシアから占領地域を奪還するための戦いは市街地で展開されることもあり、アメリカ製の武器を手にしたウクライナ軍が、一般市民を巻き添えにする恐れがある。

武器が敵対国や組織に横流しされる危険
アメリカが供給した武器がウクライナ経由で、アメリカに敵対する国や組織に横流しされる危険もある。「中東のテロ組織が、ウクライナから流出したジャベリン(携帯型対戦車ミサイル)を手に入れれば、甚大なダメージになる」と、米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンシアン上級顧問は語る。

過去の失敗を繰り返さないためには、ホワイトハウスと議会の両方に、ウクライナ紛争の状況を正直に説明する超党派の手続きを設けるべきだと、専門家らは訴えている。

世界でも指折りの「腐敗大国」

ウクライナに対する軍事援助や経済援助の透明性を高めるために、SIGARのウクライナ版を設置するべきだとソプコは主張する。SIGARは、アフガニスタン復興事業に使われるアメリカの資金の流れを監視する政府機関として08年に設立され、四半期ごとに米議会に報告書を提出している。

こうした監視体制は、シリアなどの紛争でもモデルになるはずだとソプコは言う。
「戦争中に武器援助の流れを追跡するのは非常に難しい。小火器の場合はなおさらだ」と、ローザヘルナンデスは言う。「戦場では、軍需品の管理は貧弱になりがちだ。アメリカとウクライナ双方の政策立案者が、説明責任に重点を置く必要がある」

米議会では実際、対ウクライナ援助の流れをもっと厳しく監視するべきだという声が、民主・共和どちらの党の議員からも上がっている。ランド・ポール上院議員(共和党)は5月、上院が400億ドルのウクライナ追加支援法案を迅速に可決しようとしたとき、その手続きに反対して採決を遅らせた(ファスト・トラック手続きを利用するためには満場一致の賛成が必要になるためだ)。

チャック・グラスリー上院議員(共和党)も6月、援助の監視体制が脆弱だと声を上げた。保守派だけではない。上院軍事委員会のメンバーである民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員も、強力な監視の仕組みを確立するよう求めた。

1991年にソ連から独立したウクライナは、大掛かりな腐敗に長年苦しんできた。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)の21年の汚職腐敗度指数(CPI)で、ウクライナはエスワティニ(旧スワジランド)と並び世界122位にランクされている。

すぐ下にはガボンやメキシコ、ニジェール、パプアニューギニアといった国がランクされている。 ちなみにアフガニスタンは174位と、もっと下だ。イラクは157位、シリアは178位、アメリカは27位、ロシアは136位だ。(中略)

カリテンコによるとウクライナの評価は、信頼に足る9つの国際機関が実施した調査結果に基づいており、前年よりも評価は下がったという。これはウクライナの「政府機関に腐敗を取り締まる常任の管理職が長年存在しなかったため、腐敗追放システムに対するプレッシャーが高まっている」からだ。

「腐敗取締特別検察庁(SAPO)の長官選びは1年以上かかった」とカリテンコは言う。「資産回収管理局(ARMA)のトップ選びも、前任者の更迭から2年近くたってようやく始まった」

問題はさらに2つある。司法改革に着手するための法的枠組みが採択されたのに、改革の実施が遅れていることと、いくつかの腐敗問題の徹底的な解決に寄与するはずの『反腐敗戦略』の議会での採択が遅れたことだ。

ロシアとの戦争も重荷だ。「戦争が続いているのに、腐敗撲滅に向けた改革を目覚ましく前進させることができると期待するのは非現実的だが」とカリテンコは言う。「今すぐにでも取り組まなければならない課題がある」

装備の横流しを防ぐ手だてはない

SAPOの長官は7月に任命されたばかりだし、ARMAと国家反汚職局(NABU)の責任者は選考中だ。トップの不在はウクライナにとって弱点だ。

「各組織が独立性や、権限の基礎となる法的枠組みについて課題を抱えているならなおさらだ」とカリテンコは言う。

トップ人事の遅れは組織の効率性にも悪影響を与える。既に長官が任命されたSAPOでも「独立性を強化し、トップの権限を拡大し、不当な介入を受けるリスクを最小化しなければならない状況は残っている」。

航空防衛産業のコンサルティング会社スティーブン・マイヤーズ&アソシエイツの創業者で、米国務省の国際経済政策諮問委員会を務めた経験もあるスティーブン・マイヤーズも、ウクライナ支援の透明性の欠如を心配する1人だ。

「ウクライナには、支援の分配に関して説明責任を果たすための効果的な仕組みがない」とマイヤーズは本誌に語った。「懸念すべき状況なのは間違いない」

マイヤーズに言わせれば、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いる現政権も含む、ウクライナの過去20年間の歴代政権は腐敗の大きな問題を抱えてきた。

賄賂などの違法なカネの流れが生まれがちなだけではない。「さらに深刻なのは支援を受けた軍備品や武器に関わる問題だ」と彼は言う。「戦地の指揮官が装備の一部をロシア人や中国人、イラン人といった買い手に横流しするのを防ぐ手だてがほぼない」

CSISのキャンシアンが心配するのは、腐敗の可能性や具体的な事例が、超党派で進められてきたウクライナ支援に悪影響を与えることだ。

「腐敗の実例が明らかになれば、超党派の合意に水を差すだろう」とキャンシアンは言う。「そんなことになれば深刻な影響が出る。ウクライナはアメリカとNATOからの長期にわたる高度な支援を必要としているのだから」

アフガニスタンとウクライナでは状況があまりにも違うとしながら、キャンシアンも特別査察官事務所の設置は支援の無駄遣いや不正使用の防止に役立つと考える。

ただしアフガニスタンでは、SIGARの警告に耳を傾ける人はほとんどいなかったのも確かだ。

支援がなければ我々の政権は崩壊する
「アフガニスタンではどの司令官も腐敗の問題は遺憾だと言っていた」とキャンシアンは語る。「だが結局は、『支援を削減すればわれわれ(の政権)は崩壊する。支援は続けてもらわなければ困る』と言うばかりだった。ウクライナも同じような傾向にあるのかもしれない」

これまでのところ、高価なハイテク兵器の支援を求めるウクライナ政府の訴えは功を奏している。アメリカ政府は高機動ロケット砲システム(HIMARS)などの最先端の武器を供与してきた。

だが支援の増加に比例して、リスクも増えている。懸念される点は大きく分けて2つ。1つはアメリカから供与された武器がウクライナ軍ではなく、アメリカと敵対する第三者の手に渡る可能性だ。

「武器に関するリスクとは、横流しの可能性だ」とキャンシアンは言う。「ジャベリンや対戦車兵器、スティンガーミサイルの一部が、ウクライナにいる誰かが第三者に横流ししたせいで、渡ってはならない勢力の手に渡ってしまうかもしれない」

アフガンの過ちを繰り返さないために
第2のリスクは、アメリカが供与した兵器や武器によって民間人の犠牲が出てしまう可能性だ。侵攻開始以降、ロシアとウクライナは互いに相手の残虐行為を非難しているが、キャンシアンは「ロシア人に対してではなくウクライナ人、特にロシア語を話す人々に対して」アメリカの武器が使われるシナリオを懸念する。

ロシアが占領しているウクライナの東部や南部では、住民の多くをロシア語話者が占めている。そしてロシア政府の言う「戦争の大義」には、ウクライナ国内のロシア語話者の防衛も重点項目として掲げられている。

アメリカによる監視を強化すれば、供与された武器が必要な場所に届くのが遅れるというウクライナ側の理屈を、キャンシアンは一蹴する。「これらの(監視の)メカニズムには干渉が過ぎる印象があるかもしれないが、実際はアメリカが援助を行う際のスタンダードだ」

「アフガニスタンのときのように『この国は腐敗していて、金を出しても横取りされてしまうだけだ』という見方が出てきたら、ロシアと戦い続けるために必要な長期的な支援は消えうせるだろう」と彼は言う。

この問題について国務省の報道官は、バイデン政権はゼレンスキー政権と直接手を携え、あらゆる形の支援が必要なところに届くよう努めていると述べた。

「アメリカは自国の防衛技術を守り、その横流しや違法な拡散を防ぐ責任を非常に重く受け止めている。支援に関する説明責任がしっかり果たされるよう、われわれはウクライナ政府への積極的な関与を続けている」。

だがこうした言葉だけでは、さらなる透明性を伴う厳格な仕組みを求める人々を納得させることはできない。

SIGARのソプコも支援については、監視を含めて党派を超えた取り組みが大事だと考えている。「それこそが本当に必要だ」とソプコは言う。「そうでなければ、われわれは歴史のハムスターの回し車に乗って、同じ過ちを繰り返し続けることになる」【2022年9月29日 Newsweek】

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【生まれ変わる好機】

前述のように「腐敗・汚職」との戦いは、国際社会の信頼を得てロシアとの戦いを勝利するためには必要不可欠なものですが、それ以上に、ロシアとの戦いが終わったあとも、今後のウクライナにとって民主的国家として進むために死活的に重要な課題です。

汚職・腐敗ランキングで下位にあるようなウクライナにとっては、汚職・腐敗は社会の隅々まで行き渡った現象でもあり、これを是正していくことは、ロシアとの戦い以上に困難な、長い時間を要する戦いかもしれません。

****国際支援の陰で汚職懸念=武器流用や着服の疑いも―有識者ら「監察機関設置を」・ウクライナ****

(中略)
生まれ変わる好機
多額の国際支援が投じられたアフガニスタンでは、米政府が資金の使途に目を光らせる特別監察官を設置した。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンチアン上級顧問は「まずはウクライナにも特別監察官を置くべきだ」と声を上げる。

復興段階に入れば、さらなる国際支援の流入が予想される。ウクライナのNGO「汚職防止行動センター」のヴィタリ・シャブニン氏は「支援金が政府に直接渡れば、間違いなく汚職の温床になる」と警告。「国際社会の信頼を失い支援が途絶えれば、ウクライナは終わる」として、欧米の監査を受け入れるか、復興資金を管理する基金をつくるべきだと訴える。

一方、戦争は新たな機会ももたらした。汚職の一因だったウクライナの新興財閥(オリガルヒ)の資産を破壊し、政治的影響力を弱体化させたからだ。シャブニン氏は「戦争はウクライナが腐敗を一掃し、生まれ変わる大きなチャンスでもある」と語っている。【2022年12月19日 時事】

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