イスラエル アラブ諸国と関係改善 内政面の司法上の問題の解決策として司法改革案 大規模抗議も

イスラエル アラブ諸国と関係改善 内政面の司法上の問題の解決策として司法改革案 大規模抗議も
https://blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/aea450117a963bb0c64fe7e05cebf315

『【イスラエル対パレスチナで対立が改めて表面化する国際社会】
イスラエルで保守強硬派のネタニヤフ首相が極右政党との連立を組む形で復権したこと、及び、その危うさについては、1月5日ブログ“イスラエル 「最も右寄り」政権の閣僚で極右政党党首の聖地訪問が惹起した緊張”で取り上げました。

同記事においても触れたように、こうした「最も右寄り」とされる対パレスチナ強硬政権の成立へのアラブ諸国などの懸念を反映して、国連ではイスラエルのパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区などへの占領政策をめぐり、国連総会の本会議で、パレスチナ人らの権利侵害などについて国際司法裁判所(ICJ)に見解を示すよう求める決議が採択されました。

****イスラエル占領で意見要請 国連総会、国際司法裁に****
国連総会本会議は30日、イスラエルによる東エルサレムとヨルダン川西岸の占領に関し、国際司法裁判所(ICJ)に意見を求める決議案を87カ国の賛成で採択した。イスラエルや米国、英国など26カ国が反対し、日本を含む53カ国が棄権した。

決議は国際法を考慮した上で、国連や加盟国にとってイスラエルの占領政策によるパレスチナ人の権利侵害がどのような法的問題をはらむのか、ICJに見解を示すよう要請した。

パレスチナのマンスール国連大使は採択後「国際法と平和を信じているのであればICJの意見を支持し、イスラエル政府に立ち向かうべきだ」と訴えた。【12月31日 共同】
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これに対し、イスラエルはパレスチナ自治政府の代理で徴収している税金の一部送金を差し止める報復を行っています。

****パレスチナへの税金52億円差し止め=占領巡る国連決議受け―イスラエル****
イスラエル政府は8日、パレスチナ自治政府の代理で徴収している税金のうち、約1億3900万シェケル(約52億円)の送金を差し止め、パレスチナ人によるテロ攻撃の犠牲者家族への補償に充てることを決めた。イスラエルのメディアが報じた。

国連総会が昨年12月30日、イスラエルによるパレスチナ占領を巡り国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)に法的見解を示すよう求める決議を採択したことへの事実上の報復措置。(後略)【1月9日 時事】 
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一方、アラブ諸国などはイスラエルのこの措置の撤回を求めています。

****パレスチナに対する「懲罰的」制裁の解除を40カ国がイスラエルに要請****
国連:16日、約40カ国がイスラエルに対し、今月初めにパレスチナ自治政府に課した制裁を解除するよう要請した。制裁は、同自治政府がイスラエルによる占領をめぐって国連の最高位の裁判所に勧告的意見を出させるように事態を推し進めたことに対するものである。(中略)

16日、約40の国連加盟国は記者向け声明の中で、ICJと国際法への「揺るぎない支持」を再確認した上で、「国連総会が同裁判所に要請したことを受けて、イスラエル政府がパレスチナの人々、指導者、市民社会に対して懲罰的措置を課す決定をしたことに深い懸念」を表明した。(中略)

加盟国の声明について質問された国連事務総長報道官は、「イスラエルによるパレスチナ自治政府に対する最近の措置」に対するアントニオ・グテーレス国連事務総長の「深い懸念」を改めて表明し、ICJに関連した「報復はあってはならない」と強調した。(中略)

ユダヤ教では神殿の丘として知られているアル・アクサモスクをイスラエルの閣僚が訪れたことを受けて今月開かれた前回の会合では、イスラエルとパレスチナの外交官の間で緊迫した言葉のやり取りが交わされた。【1月17日 ARAB NEWS】
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日本は同決議には棄権しましたが、「懲罰的措置を拒否し、その即時撤回を求める」共同声明には賛成しています。

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加盟国は、「決議に対する各国の立場にかかわらず、国際司法裁判所への勧告的意見の要請に応答した、より広い観点からは国連総会決議に応答した懲罰的措置を拒否し、その即時撤回を求める」と表明している。

声明の署名国には、同決議に賛成した国(アルジェリア、アルゼンチン、ベルギー、アイルランド、パキスタン、南アフリカなど)に留まらず、日本、フランス、韓国といった棄権国、ドイツやエストニアといった反対した国も含まれている。

パレスチナのリヤド・マンスール国連大使は声明で、「これは各国がその投票行動にかかわらず、これらの懲罰的措置を拒否する点で一致していることを示すものであり、重要である」と述べている。【同上】
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まだスタートしたばかりのネタニヤフ「最も右寄り」政権ですが、今後、パレスチナをめぐる軋轢はますます激化しそうです。

【アラブ諸国との関係改善を進めてきたイスラエル外交】
ただ、パレスチナをのぞく外交全般については、イスラエルの近年のアラブ諸国などとの関係改善は、共通の敵イランへの対抗、アメリカの影響力低下もあって、顕著なものがあります。

****中東、仁義なき新三国志 手を結ぶイスラエルと旧敵****
(中略)1948年にイスラエルが建国されて以来、アラブ諸国は4回にわたりイスラエルと戦争をした。難民となったパレスチナを支持することが「アラブの大義」だという信念が、根底にあった。

アラブ諸国は長年にわたり、イスラエルと敵対。エジプトとヨルダンを除けば、イスラエルと国交を持つ国は最近までなかった。

経済に安全保障の協力まで
ところが2022年12月に中東を訪れると、全く異なる光景が待っていた。イスラエルとアラブ側の一部が手を握り、経済はおろか、安全保障の協力まで進めているのだ。いちばんの典型がアラブ首長国連邦(UAE)である。

UAEの首都アブダビ近郊に最近、イスラエル製のミサイル防衛システム「バラク8」がひそかに配備された。ミサイルや無人機を撃ち落とせる新型兵器だ。イスラエルの軍事専門家によると、軍事協力の一環として22年秋までに引き渡された。

スパイ機関による協力も進む。イスラエルのモサドは、世界有数の情報機関として知られる。モサド首脳が23年1月にバーレーンを訪れ、情報協力で合意した。バーレーン当局者によると、モサド要員はすでに同国に駐在し、軍事情報などを共有している。

なぜ、宿敵だったはずのイスラエルとアラブ側の一部が仲間になり、協力に動くのか。直接のきっかけは、アブラハム合意と呼ばれる20年9月の劇的な調印だ。

トランプ米政権(当時)の仲介によりUAE、バーレーンがそれぞれイスラエルと国交を正常化、同年12月にはモロッコも続く。これにより、「イスラエルVS.アラブ」という二項対立の構図は大きく変わった。

「イランの拡張主義、脅威」
双方を結びつけるのは、地政学上の強い磁力だ。現地の専門家らは、2つの要因をあげる。

第1に、両者がともに反目するイランの動きだ。イランは核開発を進め、シリアやイラクの混乱に乗じ中東で影響力を広げる。

イスラエルにとっては、重大な事態だ。厳格なイスラム体制を敷くイランはイスラエルを天敵とみなし、同国と戦闘を構えるイスラム組織を軍事支援する。パレスチナの「ハマス」や、レバノンの「ヒズボラ」が一例だ。

王政を敷くアラブ諸国にも、イランは脅威だ。イランはかねて、イスラム革命の輸出をめざしているとされる。同国の影響圏が広がれば、王政の基盤が揺らぎかねない。

サウジアラビアの研究機関、湾岸研究センターのアブドゥルアジーズ・サグル創設者兼会長は、訴える。「イランの拡張主義は、本当に深刻な脅威だ。宗派対立を利用し、(レバノンなど各地の)民兵組織にてこ入れしている」

イスラエルとアラブ側が近づく第2の要因は、米国が戦略上の優先度をアジアに移していることだ。米軍はアフガニスタンから退き、イラクでの戦闘任務も21年末に終えた。

イランを抑え込むうえで、米軍の関与を以前ほど当てにできないという危機感が、イスラエルとアラブ側の双方にある。そこで「敵の敵は味方」という流れで、接近しているかたちだ。

この状況を単純にいえば、中東は仁義なき新三国志の時代に入ったということだ。自国の生き残りのためなら、旧敵と組むこともいとわない。そんな思考が広がっている。

これから最大の焦点が、シーア派のイランと対立する大国、サウジアラビア(スンニ派)の出方だ。サウジは「中東の盟主」を自認する。パレスチナ和平を置き去りにして、イスラエルと国交を結ぶわけにはいかない。

だが、サウジは他のアラブ諸国がイスラエルに近づくことは事実上、容認している。その表れとして20年9月、イスラエル―UAE間の航空便が自国上空を通過するのを解禁した。

イスラエルのオルメルト元首相に今後の見通しを聞くと、こう予測した。「イスラエルとサウジには、すでに非公式な接触が続いている。遅かれ早かれ、関係の突破口が開けるだろう。パレスチナ和平が実現すれば、イスラエルとサウジは翌日にも和平を結べる」

プラスと危険もたらす変化
むろん、目の前には火種もある。22年12月に発足したイスラエルのネタニヤフ政権は建国以来、いちばん極右寄りといわれる。パレスチナ問題で強硬な態度を続け、アラブ側との協力が足踏みすることもあり得る。

それでも長期でみれば、イスラエルとアラブの接近は後戻りしないだろう。中東にエネルギーを頼るアジア諸国に、この変化はプラスと危険の両方をもたらす。

イスラエルとアラブの対立が和らぎ、中東の緊張が弱まるのは良いことだ。一方で、イランが核やミサイルの開発を急ぎ、イスラエル・アラブ側とイランの軍事対立が強まる恐れもある。

そんな変化をにらみ、中国は22年12月、韓国も23年1月に首脳が自ら中東産油国に乗り込み、新たな協力の扉を開けた。慌てて中韓を追いかけるのが良策ではないにしても、中東、イランの両方にパイプを持つ日本も動くときだ。【1月20日 日経】
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記事にもあるように、短期的には「最も右寄り」政権のもたらす混乱で、関係改善が足踏みすることはあり得ます。

UAEとの関係についても、“アル・アクサ論争の結果UAE訪問がキャンセルされショックを受けるネタニヤフ氏”【1月6日 ARAB NEWS】といったことも。

本筋であるサウジアラビアとの関係については、アメリカに協力を依頼しているようです。

****イスラエル首相、米に協力依頼 サウジとの国交正常化に向け****
イスラエルのネタニヤフ首相は19日、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)とエルサレムで会談し、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化に向けた協力を依頼した。

イスラエル政府によると、ネタニヤフ氏は会談で「我々はこの地域と歴史を変えることができる」と強調。米国の支援を受けて、サウジとの関係改善を目指す意向を示した。ネタニヤフ氏は2020年、アラブ首長国連邦(UAE)などとの国交正常化を実現しており、アラブ諸国との連携をさらに進めたい考えだ。また両者は、イランの核開発を止める方策についても協議した。

パレスチナ自治政府のアッバス議長も同日、サリバン氏と会談。アッバス氏は、イスラエルがヨルダン川西岸でユダヤ人入植地を拡大しているとして、米国の介入を求めた。【1月20日 毎日】
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アメリカ・バイデン政権も、イスラエル・パレスチナ自治政府双方から頼られ対応に苦慮するのか・・・あるいは、この機を利用してパレスチナ問題の改善を図ることができるのか・・・後者のような余力はアメリカにはなさそうですが。

【内政面で司法問題 解決策として強硬な司法改革案提示 民主主義を揺るがすものとしての抗議も】
ネタニヤフ「最も右寄り」政権にとって、目下の悩みは内政。

****イスラエル内相就任認めず 最高裁、新政権早くも難局****
イスラエル最高裁は18日、ネタニヤフ新政権で内相兼保健相となった宗教政党「シャス」党首アリエ・デリ氏を巡り、過去の脱税罪での有罪判決を理由に閣僚に就任できないと判断、ネタニヤフ首相に罷免を求めた。

シャスには連立離脱をちらつかせてデリ氏の続投を求める議員もおり、昨年末に発足したばかりの政権は早くも難局を迎えた。

昨年11月の総選挙を経て発足した6党連立のネタニヤフ政権は国会(定数120)で64議席を確保するが、11議席のシャスが離脱すれば、政権崩壊の可能性もある。

最高裁判事11人のうち10人がデリ氏の閣僚資格剥奪を支持した。【1月19日 共同】
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ネタニヤフ氏自身が汚職で公判中の身でもあります。

そこで、こうした司法上の窮地を一挙に解決する策としてネタニヤフ政権が持ちだしたのが、最高裁判所の判決を、議会が過半数で無効化できるようにする司法改革案。

“新政権は、ネタニヤフ氏の所属する右派政党「リクード」のほか、過激な極右政党や宗教政党からなる。「リクード」以外の極右政党も、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地での建築許可など土地をめぐる訴訟について、従来の最高裁の判決に不満を抱いてきた。裁判官の任命についても政府が強い影響力を行使できるよう、検討されているという。”【日系メディア】

当然ながら民主主義の根幹・三権分立をないがしろにする司法改革案として、抗議が起きています。

****イスラエル、極右政権の「司法改革」に大規模デモ 独裁国家と批判****
イスラエルで昨年12月末に発足した右派のネタニヤフ政権が打ち出した「司法改革」を巡り、市民による大規模な抗議活動が起きている。

政権側は「国民に選ばれていない司法が力を持ちすぎている」として、最高裁による法律審査の権限を制限する案を発表した。野党や司法界は「政権が絶対的な力を持ち、独裁国家になる」と批判している。
 
「民主主義を守れ」「(政権は)恥を知れ」。イスラエル各地で今月14日、司法改革に抗議するデモが実施された。中部テルアビブには約8万人の市民が集結。イスラエル国旗を手に持って参加した会社員のダナ・コーヘンさん(54)は「政権は『ユダヤ人優位』の国家を目指し、アラブ人ら少数派を排除しようとしている。そのため、少数派の権利を守り、民主主義の基盤となってきた司法を弱めようとしているのだ」と主張した。

ネタニヤフ政権は複数の極右政治家が入閣し、史上最も「右」とされる。レビン法相は政権発足から6日後の今月4日、司法改革の素案を発表した。

イスラエルには憲法に相当し、少数派の権利などを規定した「基本法」があり、法律が基本法に合致するかチェックする権限が裁判所に認められている。日本の違憲立法審査権と同様の仕組みだ。

素案では▽最高裁が法律を無効とする条件を厳しくする▽国会で過半数が賛成すれば、最高裁による法律無効の判決を覆すことができる▽裁判官を指名する委員会のメンバーのうち、過半数を政権が選出する▽各省庁の法律顧問を政権が指名する――などだ。「改革」が実行されれば司法の介入は事実上排除される。

政権側は、これまで司法が過剰な力を持ち、国民に選ばれた政権の政策を妨害してきたとして「権力のバランスを戻す」と主張。野党側は、民主主義の土台となっている三権分立が損なわれると訴える。

改革が導入されると、何が起きるのか。極右政治家は多くのパレスチナ人が住むヨルダン川西岸で、国際法違反とされるユダヤ人入植地を拡大し、西岸を事実上「併合」しようともくろむ。

これまで最高裁は、国内法と国際法の双方を考慮し、入植地の拡大やパレスチナ人住宅の強制撤去などを一定程度抑制する役割を担ってきた。司法の機能が弱められれば、入植地は制限なく拡大する恐れがある。また、極右は性的少数者(LGBTQなど)の権利にも否定的で、ユダヤ人の間でも差別が広がる可能性がある。

政権は、すでに司法との争いを抱えている。最高裁は18日、過去に脱税などで有罪判決を受けているデリ内相兼保健相の閣僚就任を無効とする判決を下した。また、ネタニヤフ首相自身も汚職容疑で公判中だ。政権側は「司法改革」によって、これらの問題を解決しようとしている可能性もある。

司法の弱体化はイスラエルだけではなく、右派や中道右派が政権を握る東欧のポーランドやハンガリー、中東のトルコでも起きている。

ネタニヤフ政権は「他の民主主義国にある制度を、イスラエルでも導入するだけだ」と主張する。だが、イスラエルにあるヘルツェリア学際センターのヤニブ・ロズナイ准教授(比較憲法)は「イスラエルは他国と異なり、(政権を抑制する)システムが最高裁以外にほとんどない」と指摘する。

ロズナイ氏によると、他国では政権の力を抑制するため、国会の2院制▽権力を分散する連邦制▽国民が欧州人権裁判所など国際的な裁判所にも訴えることができる――などの仕組みがある。だが、イスラエルには、いずれも存在しない。

最高裁の判決を国会が「無効化」する条項はフィンランドやカナダにあるが、フィンランドでは国会で3分の2の賛成が必要であるなど、厳しい条件が付けられている。ロズナイ氏は、司法改革は「政権に絶対的な権力を与えるものだ」と指摘し、イスラエルの民主主義にとって「非常に大きなリスクだ」と警鐘を鳴らす。
 
イスラエルはこれまで他のアラブ諸国とは違い、中東の数少ない民主主義国家として欧米から一目置かれてきた。だが、司法改革はイスラエルの国際的な評価を落とし、今後の外交関係に影響しかねないとの見方も出ている。

司法界も、改革を強く批判する。今月12日には複数の元検事総長や元最高裁判事が、今回の改革は司法を「破壊しかねない」との意見書を発表した。

大規模デモが起きた翌日の15日、ネタニヤフ氏は「司法改革を公約にした我々に(選挙で)数百万人の人々が投票した。彼らは改革を求めているのだ」と強調した。政権は3月末までに司法改革を巡る法案を可決する姿勢を示している。【1月19日 毎日】
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ネタニヤフ首相の強引とも思える強硬策が実現するのか・・・。』