中国資本工場でストから暴動 中国人とインドネシア人が対立

中国資本工場でストから暴動 中国人とインドネシア人が対立、死者2名ほか多数が負傷
https://news.yahoo.co.jp/articles/042f22cd62733f1deec67097c699e27d9dc2d253

『背景には「民族」対立に加え労働者と会社経営側という「階層」の対立も──

インドネシアの中国資本の工場で起きた暴動の様子

インドネシア・スラウェシ島にある中国資本のニッケル精錬工場で1月14日に労働争議が発生し、2人が死亡し多数が負傷。うち9人が重傷を負い病院で手当てを受けているという。【大塚智彦】

【動画】中国人とインドネシア人労働者の暴動

地元警察や軍が出動して治安は回復したものの警察は71人を拘束して捜査を進めている。
工場では多くの中国人労働者が働いており、警察はインドネシア人労働者と中国人労働者の対立が争議の背景にあるとみているほか、政府も事態を重視して近く関係者を現地に派遣するなど、徹底した真相解明を進める事態となっている。

現地からの報道などによると1月14日午前に中スラウェシ州東部北モロワリ県にある中国とインドネシアの合弁ニッケル精錬工場「ガンバスター・ニッケル・インダストリー社(GNI)」の労働者側の労働環境改善、安全対策徹底などを求める交渉が決裂し、労働者数百人がストライキに入った。

同日午後、スト参加の労働者が参加せずに働いている労働者に対してスト参加を呼びかけていたところなんらかの理由で騒乱状態に発展。スト参加者らが工場内の車両や重機などに次々と放火したり社員寮を破壊したりするなどの大規模な暴力行為に発展した。

この騒動でインドネシア人と中国人の労働者各1人が死亡した。

<中国人との対立煽る動画も>

事態を鎮静化するために警察官と軍人約550人が展開して事態は収拾し、精錬工場は16日に操業を再開している。

16日に首都ジャカルタで会見したリストヨ・シギット・プラボウォ国家警察長官によるとストライキに参加を呼びかける過程でインドネシア人労働者が中国人労働者に殴られたとの流言が伝わったことから騒乱になったとの情報があるとしている。

SNS上にはインドネシア人が中国人に殴打される動画がアップされているというが、警察では「民族間の対立を扇動する目的のフェイクニュースではないか」とみている。

騒乱の直接の原因について各種の情報が入り乱れているが、警察は「スト不参加者に参加を求める過程で対立が生じた可能性がもっとも高い」として拘束者71人の中の17人を破壊行為容疑の重要参考人として慎重に捜査していることを明らかにしている。

GNI精錬工場では過去1年間に爆発事故や重機の事故など死者がでる保安上のトラブルが起きており、労働者側が会社に対して安全確保、労働条件改善などを求める交渉を続けてきたという。』

『中国企業を積極的に誘致

中スラウェシ州の北モロワリ県やモロワリ県では地元産業の活性化と労働者雇用促進を打ち出し、積極的に中国からの投資を促し、中国企業を誘致している。

今回労働争議が起きたGNIは2015年に着工され、2021年から精錬を開始。年間180万トンの精製能力を有している。

建設には中国から約27億ドルが投資されたといわれ、約1100人のインドネシア人労働者のほか、約1300人の外国人労働者が働いており、うち約1000人が中国人労働者という。

インドネシア政府は2014年から未加工の鉱石などの輸出禁止政策を打ち出したことから銅やニッケルなどの鉱石を精錬する工場建設プロジェクトが増え、中国企業・中国人労働者が北モロワリ県などに集中し始めた。このため2018年には地元にモロワリ空港も開港、中国からの渡航が楽になった。

モロワリ県では精錬工場の工業団地建設が計画されているほか、2019年以降EV用バッテリー素材工場の建設計画も進んでおり、中国からの投資総額は43億ドルに上っている。

<警戒する民族間の憎悪助長>

インドネシアでは触れることが忌避されるタブーとして「SARA」というものがあり政治・社会・文化の隅々に浸透している。「SARA」はインドネシア語の「民族、宗教、人種、階層」という言葉の頭文字を並べたもので、この「SARA」に関わる対立、差別は治安維持上からも危険とみなされることが多い。

今回のGNIでの労働争議から発展した騒乱はインドネシア人と中国人という「民族」の対立と労働者と会社経営側という「階層」の対立という要素が絡み合って起きた可能性がある。在インドネシア中国大使館も「卑劣な事件を非難する」とコメントをだして暴力行使への反対を表明した。

このような状況で国家警察長官が会見して「犠牲者の家族に哀悼の意」をわざわざ示したのは「SARA」に配慮して社会不安への影響を最小限に留めたいとの意向が反映しているといえる。』

あすから今冬一番の非常に強い寒気 大雪や低温に早めの備えを

あすから今冬一番の非常に強い寒気 大雪や低温に早めの備えを
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230123/k10013957331000.html

 ※ 今日は、こんな所で…。

『この冬一番の非常に強い寒気が流れ込むため、24日から北日本から西日本の日本海側で大雪や猛吹雪となるほか、ふだん雪の少ない西日本の太平洋側の平地でも大雪となる見込みです。気温が平年よりかなり低くなって、各地で交通への影響や水道管の凍結のおそれもあります。予定の変更を検討するなど大雪や低温への備えを早めに進めてください。

気象庁によりますと、日本の南の海上を進む低気圧の影響で中国地方などで雪が降っていて、午前8時までの6時間に

▽兵庫県香美町兎和野高原で7センチ
▽広島県北広島町の八幡と
▽鳥取県大山でそれぞれ5センチの雪が降りました。

さらに24日から26日木曜日ごろにかけて、冬型の気圧配置が強まり、西日本から東日本の上空にはこの冬一番の非常に強い寒気が流れ込む見込みです。

このため、北日本から西日本の日本海側を中心に大雪や猛吹雪となり、同じところに雪雲がかかり続けた場合には、短時間で積雪が急激に増えるおそれがあります。

また、ふだん雪の少ない九州や四国など太平洋側の平地でも大雪となるおそれがあります。
降雪量予想 北陸で70センチから100センチ

24日朝から25日朝までの24時間に降る雪の量は、いずれも多いところで

▽北陸で70センチから100センチ
▽東北で60センチから80センチ
▽関東甲信と近畿、中国地方で50センチから70センチ
▽東海で40センチから60センチ
▽九州北部で30センチから50センチ
▽四国で20センチから40センチ
▽九州南部で10センチから20センチと予想されています。
さらにその後、26日の朝までの24時間の降雪量は
▽北陸で70センチから100センチ
▽東北で60センチから80センチ
▽関東甲信と近畿、中国地方で30センチから50センチ
▽東海で20センチから40センチと予想されています。

全国的に風も強まり

▼24日の最大風速は

▽北陸と西日本の各地、それに沖縄県で23メートル
▽関東甲信と九州北部で20メートル、▽東北で18メートルと予想され、

▼24日の最大瞬間風速は北陸と西日本の各地、それに沖縄県で35メートルの見込みです。
また、東日本や西日本、沖縄・奄美の広い範囲で大しけになると予想されています。
気温もかなり低くなり、25日の最低気温は

▽札幌市でマイナス11度
▽長野市でマイナス8度
▽仙台市でマイナス6度
▽高知市や熊本市でマイナス4度
▽東京の都心や広島市でマイナス3度
▽名古屋市でマイナス2度
▽大阪市でマイナス1度などと予想されています。

気象庁は、大雪や猛吹雪による交通への影響や暴風、高波に警戒するとともに、水道管の凍結や着雪による停電などにも十分注意するよう呼びかけています。

最新の情報を確認して、23日のうちに大雪や低温への備えを進めてください。

大雪が予想される地域では車の立往生などが発生するおそれもあり、外出の予定の変更も検討するようにしてください。

水道管が凍結したらどうする?

厚生労働省によりますと、ふだん気温がそれほど低くならない地域では、最低気温がマイナス4度以下になると水道管が凍結しやすくなります。

特に、屋外に出ていて、北向きで日陰になりやすい場所や風があたりやすい場所にある水道管は、凍結しやすいということです。

凍結を防ぐためには、外気がふれる部分を保温材やタオルで覆ったり少量の水を流したままにしたりするなどの対策が有効で、寒冷地では「水抜き栓」を使い事前に水を抜いておくことも大切です。

もし凍結した場合は、その部分を溶かすため、タオルなどを巻いてゆっくりとぬるま湯をかけるようにしてください。熱湯をかけると水道管が破裂するおそれがあります。

また、万が一、断水した場合に備えて飲料水を備蓄したり浴槽に水をためておいたりすると安心です。

水道管の凍結による断水は過去に相次いでいて、今回の予想と似たような非常に強い寒気が流れ込んで西日本の各地で記録的な大雪や低温となった2016年1月には、九州や四国、中国地方、近畿などの21の府県で50万4000戸あまりが断水しました。

厚生労働省は今月20日、全国の水道事業者や都道府県に対し、凍結の対策を指示していて「全国的に低温が予想されているため、各家庭でも備えを進めてほしい」と話しています。
寒さや大雪への備え 専門家に聞く

厳しい寒さや大雪への備えについて、日本赤十字北海道看護大学災害対策教育センター長の根本昌宏教授に聞きました。

停電や断水、物流の遅れが起きることも想定されることから、使い捨てカイロや湯たんぽなど電気を使わずに体を温められる手段を確保し、食料や日用品を3日分準備しておくことなどが必要だとしたうえで、「最も重要なことは、情報収集と連絡手段として大事なツールである携帯電話のバッテリーを切らさないことで、ポータブルバッテリーを用意しておくなどの準備を各家庭で必ずやってほしい」と呼びかけました。

一方、注意点としては、発電機を使用する場合は一酸化中毒の危険があることから、屋内ではなく必ず屋外で使用することや、使い捨てカイロや湯たんぽを長時間使用すると低温やけどのおそれがあるとして、就寝時には使用しないことをあげ、高齢者は低体温症になっていても自分で気づきにくいことから、周りの人がこまめに声をかけることが重要だと指摘しました。

根本教授は、「停電や断水などが起こった時に、使ったことのない道具を使おうとすると、事故を招く危険性があるので、キャンプで使う寝袋があれば、それを使うとか、自分が使い慣れたもので体を温めるなど、難しく考えずに、自分たちのできる範囲で安全対策を行ってほしい」と話していました。

“身近に手に入るアイテムで自宅の寒さ対策”動画が話題

全国的に厳しい寒さが予想される中、身近に手に入るアイテムで自宅の寒さ対策を紹介した動画がインターネット上で話題を呼んでいます。

これは30代の女性が去年11月に動画投稿サイトに公開したもので、今月20日時点で再生回数が80万回を超えるなど話題を集めています。

動画では、自宅の窓際にビニールのカーテンを追加で取り付けたり、冷気が入るのを防ぐプラスチックのパネルを取り付けた結果、室内の温度が上がったと説明しています。

このほか、100円ショップで手に入るこん包用のシートを窓際に取り付けるなど、簡単にできる寒さ対策の動画も公開しています。

女性によりますと、こうした対策によって、使用する電気の量が去年よりも抑えられているということで、視聴者からも「参考になった」などとコメントが寄せられているということです。
動画を投稿した女性は、「寒くなるということで、エアコンをつけたりすれば簡単に温かくできるが、それだと電気代も高くなってしまうので、まずは自分でできることから始めてみるのがいいんじゃないかと思います」と話していました。

各地の大雪に警戒が必要な期間(23日午前11時時点)

【東北】
24日朝から25日にかけてです。
【関東甲信】
24日朝から25日にかけて警報級の可能性が高くなっています。
【北陸】
24日朝から26日木曜日にかけてで、24日朝から25日は警報級の可能性が高くなっています。
【東海と近畿】
24日朝から25日にかけてです。
【中国地方】
24日朝から25日にかけて警報級の可能性が高くなっています。
【四国】
24日朝から25日にかけてです。
【九州北部と南部】
24日朝から25日にかけて警報級の可能性が高くなっています。』

米LA銃乱射 20人死傷 逃走した72歳男は自殺

米LA銃乱射 20人死傷 逃走した72歳男は自殺
https://www.nippon.com/ja/news/fnn20230123474703/

『アメリカ・ロサンゼルスのダンススタジオで男が銃を乱射し、20人が死傷し、72歳の容疑者の男は自殺した。

ロサンゼルス郊外の社交ダンススタジオで21日夜、男が銃を乱射し、10人が死亡、10人が負傷した。

警察はその後、不審な白い車を発見。

車内にいた男は、72歳の容疑者と判明し、拳銃で自殺していたという。

現場地域は、アジア系の住民が多く、事件が起きたダンススタジオでも、中国の旧正月「春節」を祝う人たちが集まっていた。

中国からの留学生「旧正月にこのようなことが起こり、私にとっては悲劇的な出来事だ」

警察は、72歳の男の動機などを調べている。

(FNNプライムオンライン1月23日掲載。元記事はこちら)https://www.fnn.jp/articles/-/474703 』

台湾メディアが豪胆に斬る「劉鶴・イエレン会談」 米ドル離れと日米中の米国債

台湾メディアが豪胆に斬る「劉鶴・イエレン会談」 米ドル離れと日米中の米国債
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230123-00333979

『台湾のテレビは中国の劉鶴国務院副総理とイエレン米財務長官の会談に関するトークを披露しているが、その豪胆な深読みが興味深い。米中の駆け引きと今後の世界動向の一側面を浮き彫りにしている。自由闊達な議論は、台湾の投票率の高さにも影響している。

◆通り一遍な日本の報道

 イエレン米財務長官と中国の鶴国務院副総理が1月18日に、スイスのチューリヒで会談した。劉鶴はダボス会議に参加するため15日からスイスにいたが、イエレンはアフリカ会議に参加する途中でスイスに立ち寄っただけで、ダボス会議に参加する予定はない。それでもわざわざスイスに寄ったのは、イエレンの方が何としても劉鶴に会いかたっかたらだということがうかがえる。

 日本では通り一遍な報道しかしていない中、日経新聞の<イエレン米財務長官、中国副首相と会談 対話強化で一致>やJETROの<イエレン米財務長官が中国の劉副首相と会談、マクロ経済と金融を巡る課題に関して対話強化で合意>などが比較的良い報道をしてはいる。

 しかしタイトル通り、両者は「経済や金融面での対話強化や、気候変動対応を巡る途上国への金融支援で協力することで一致した」ということと、イエレンが「率直な意見交換を通じて、懸念している問題も提起した」と感想を述べたということが主たる内容だ。イエレンが会談後に「今後、相互の国への訪問を検討する」と言ったことも明らかにしてはいる。

◆台湾のトーク番組の豪胆さと鋭さ

 ところが日本の報道と違って、台湾メディアの一つである「新聞大白話」というテレビ番組の豪胆さと深堀は斬新だ。女性キャスターの豪快な斬り込みと、コメンテーターの鋭い指摘も注目に値する。

 そこで、それぞれが何を質問し、どう答えたかなどをご紹介したい。

 1月20日に報道された「新聞大白話」のタイトルは<イエレンは劉鶴を 3 時間も巻き込み、危うく飛行機に乗り遅れるところだった。大陸は30 トンの金(ゴールド)を購入したが、米国の石油ドル覇権を弱めたか?>と、やや長い。タイトルも長いが、キャスターの「勢いよく喋りまくった質問」も相当に長いので、新たに項目を立てて、何を言ったかを見てみよう。

 但し、すべてを文字化するのではなく、要点だけど抜き取って、キャスターの面白さを損なわない程度に概略だけをご紹介することにする。

◆キャスターの説明と質問 

【米国の国債に関して】

 米国のイエレン財務長官は最近、非常に前向きであるとメディアは評しています。彼女は中国大陸と交渉したがっているのです。なぜでしょう? 彼女には何か普通ではないような理由があるのでしょうか? 2 日前の 1 月 18 日に、彼女はわざわざスイスに行って劉鶴に会いました。劉鶴は中国大陸の国務院副総理で、実際にはもうすぐ引退することになっています。しかし2人は3時間にもわたって話し合いました。イエレンの飛行機が離陸しようとしていたため、危うく乗り遅れるところでした。

 ところでいま米国は非常に深刻な財政問題に直面しています。国の債務上限が、すでに天井板にまで達してしまっていて、もう、どうにもならないのです。

 しかし、世界に目を向けると、日本は現在、世界で最も深刻な国債を抱えている国です。この図を見てください。中央の赤い円は日本で、この国の債務は 257% に達しています。米国は2 番目の円で、国債は 133% です。エコノミストは、「世界は前例のない債務危機に向かっている」と警鐘を鳴らし続けています。

 筆者注:番組では<Visualizing the State of Global Debt, by Country>にあるデータを図表1のような形で紹介していた。

図表1:世界各国の国債のGDP比
出典:新聞大白話

【中国大陸はどうするつもりか?】

 このように2023 年の経済見通しは楽観的ではないようですが、いわゆる大国、中国大陸を見てみましょうか。多くの国がいま、中国経済がどうなるのか注目していますよね。コロナの影響がありましたが、今ではゼロコロナの封鎖を解除しています。その中国は3カ月連続で米国債の保有を減らし続けており、日本も減らしましたが米国の説得でここのところ売却を停止しています。

 筆者注:ちなみに米財務省の各国国債保有高に関するデータに基づいて米国債保有高の推移の日中比較図を作成すると図表2のようになる。

図表2:米国債保有高の推移の日中比較図

米財務省データに基づいて筆者作成

【米ドルから離れてゴールドを購入する動き】

 そこで、黄金(ゴールド)は危険を回避するためのツールとして非常に重要な役割を果たすようになり、ゴールドの価格が高騰しています。

 これに関してはプーチンの動きにも注目しなければなりません。プーチンはウクライナと戦争をしていますが、彼は同時にイランと協力して「ゴールド安定通貨」を発行することによって米国から受ける制裁を突破しようとしています。中国の中央銀行もゴールドを購入しています。昨年12 月までに中国のゴールド準備高は 2010 トンに増加し、10 月と比べると30 トン増加しています。中国は絶え間なく、しかも高速でゴールドを購入し続けています。中央銀行はゴールドを購入するために狂奔しています。世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターの創設者レイ・ダリオは、「米国の国債が債務限度に達したため、世界経済は絶えず変化しており、東昇西降の傾向にある」と言っています。だから米国の信用は破損し、米国の覇権も揺らぎ、ドルも傷つき、世界秩序は瓦解しようとしているというのです。これが、経済学者たちが、経済と通貨の観点から見ている未来の世界です。

【米中の経済戦争と技術戦争】

 米中は経済戦争と技術戦争で常に対立していますが、本当に貿易においてディカップリングがなされているかというと、必ずしもそうとは限りません。たしかにハイテクで言えば半導体チップのようなものは、中国は米国からの制裁を受け滞っていますが、家具や衣料品、家電などの消費財は実際には切断されていません。それどころか、昨年11月、米国は中国に1400億ドルを輸出し、4990億ドル以上、5000億ドル近くを中国から輸入して、貿易総額は6395億ドルと過去最高を記録しているのです。むしろ米中貿易戦争の両国間の依存度は非常に高く、前代未聞の新たな高さを創出しているのです(筆者注:『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』の図表3-4~図表3-7で詳述)。

 習近平は米国と交渉することを望んでいません。全世界が米中貿易戦争の行方を注視していますが、エコノミスト北京支局長の任大偉は、「米中は両国ともに戦争を回避するための行動を取っているように見えますが、イエレンが劉鶴に会いに行くと同時に、一方では、彼らは互いに相手が戦争を仕掛けてくるだろうと思っているのです」と語っている。したがって、このたびの金融戦争とか世界通貨戦など、さまざまな経済戦争がすぐに勃発するわけではありませんが、不安定な要因があるため、将来の状況は非常に危険を孕んでいると思います。そこで、ならばどうすればいいのか、ぜひ、蔡正元委員(元台湾政府の立法委員)にお話を伺いたいと思います。

◆蔡正元(元立法委員)のコメント:米国債を買わせるため

 まず、イエレンの役割は何かに関して説明させていただきます。世界の財務大臣には国債を発行するという共通点があり、国際を売る人であり、国債を売るということは借金をするということです。世界中のすべての中央銀行は、おおむね国債を購入する、つまり財務省にお金を貸す人々であり、米国の連邦準備銀行もこのように財務省にお金を貸しています。しかし、額が大きすぎて連邦準備銀行が吸収できず、その約 40% を海外の他の中央銀行に買ってもらっています。台湾や日本あるいは中国大陸の中央銀行などが買っています。中でも、中国人民銀行と日本銀行が最も多く買っています。

 一昨年のことでしたか、中国人民銀行は約1兆1000億ドルの米国債を保有していましたが、昨年全体で2000億ドル以上を売却し、現在は9000億ドル以上にまで落ち込んでいる。そこで、昨年のG20の会議中に、イエレンは中国人民銀行の総裁である易綱に会いに行ったのです。多くの人は、この 2 人の会談を奇々怪々だと思いました。なぜならイエレンは財務長官で、なぜ財務省が中央銀行総裁に会いに行く必要があるのでしょうか? その理由はとても簡単です。売り手は買い手を見つけたいのです。「新しい借金を買い続けてください。古い借金を売らないでください。あなたが買わなければ、私はそれを非常に低い価格で売り、金利はさらに激しく上昇してしまいます。だから、お願いです…」と頼みに行ったのでしょう。しかし、結局のところ、昨年12月に中国大陸は引き続き米国債を売却し続けたので、イエレンが易綱に会ったのは無駄だったことになります。

 そこでイエレンは、今度は何としても劉鶴に会う必要があったのです。

 劉鶴は中国人民銀行を管轄する国務院副総理なので、彼女は走り寄って言いました:「現在の連邦政府債を売却しないでください。 私は日本に売らないように言いました。日本は少し前に非常に激しく売りました。米国国債を売却して米ドルに交換し、日本の通貨を買い戻して、日本の通貨の外国為替レートを支えようとしたのです。でも、中国には、その必要はないでしょ?」と、イエレンは劉鶴に、こう言いたかったわけです。

 劉鶴はまちがいなく習近平に伝えるでしょうけど、最終決定はどうなりますやら。

 これこそが、現在の中米間のターニングポイントの一つになるのです。

 でも、何だか変ではないですか?

 中国は米国のために9000億米ドル以上も借金を買ってあげているのです。だというのに米国は年中ファーウェイを叩きのめしたり、中国の半導体産業を破壊しようとしているではないですか?

 このような債権者がいますか?これは道理が通らない話ですよね。だからイエレンが劉鶴に会いに行くというのは、虫が良すぎる話なんですよ。

◆栗正傑(元戦争学院教官)のコメント:多くの米長官が訪中を狙う

 実はイエレン以外にも、米国のオースティン国防長官が中国の国防部長である魏鳳和(ぎ・ほうわ)に会いたがっています。しかし(1月14日)魏鳳和はオースティンの申し出を断りました。魏鳳和はオースティンの電話にさえ応じませんでした。(昨年12月)米国のRC135 が中国大陸のJ-11 と衝突したりなどしたからです。そのためイエレンは劉鶴に会いたがったのです。2月5日頃には、ブリンケン米国務長官が秦剛外交部長に会うため中国を訪問する予定です。

◆鄭村棋(労働運動関係者)のコメント:米国が支援した所は血がしたたる

 米ドルに対するシステム全体が揺らぎ始めているように思います。

 最近、サウジアラビアもダボス会議で「米ドル以外の通貨の取引システムを確立したい」と言いましたね。 BRIC5ヵ国の南アフリカも、「BRIC5ヵ国内でドル以外の貿易体制を確立するつもりだ」と表明しました。

 非ドルシステムを確立したいと考えているのです。

 だからこそ、米国は中国と談判しようとしている。

 しかし話し合う前に、まず南シナ海に軍艦を派遣して威嚇し、「米国債を買わないと、どういう目に遭うか分かっているな!」と威嚇するのは、カツアゲのようなものです。

 米国が支援した国や地域は、必ず血がしたたる残虐な状況に追い込まれます。

 だから台湾は台湾人を守るために疑米(米国を疑う)というよりも、むしろ反米になるべきです。そうしないと、台湾は穏死(知らない内に、じわじわと殺されていく)に追い込まれます。米国がやっつけたい相手の駒として弄(もてあそ)ばれるだけで、後は捨てられるのです。台湾人は、米国は自分の利益しか考えていないことに気づくべきです。

◆自由闊達な民意表現は投票率の高さにつながる

 以上が「新聞大白話」の動画の概要である。番組コメンテーターのコメントは個人の意見なのだから、これが台湾全体の意見と受け止めることは、もちろんできない。しかし、よくここまで自由に意見表明ができるということは注目すべきだろう。台湾での選挙が燃え上がるはずだ。台湾では投票率が実に高い。

 1月20日のコラム<台湾民意調査「アメリカの対中対抗のために利用されたくない」>の図表でも示したように、国民党系列と民進党系列および無党派層が拮抗していることを考えると、こういった意見も、まちがいなく「台湾の民意の一つ」であることは確かだろう。そのことを謙虚に受け止め、なぜ日本の投票率が低いのかを考えるヒントの一つにしたいと思う。

 なお、台湾人は誰も中国大陸に吸収されたいとは思っていない。国民党でさえ「日米中」と等距離でいたいと思っており、この状態で現状維持を望んでいる者が大多数であることを付言したい。

記事に関する報告

遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(2022年12月中旬発売。PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『「中国製造2025」の衝撃』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。』

イスラエル アラブ諸国と関係改善 内政面の司法上の問題の解決策として司法改革案 大規模抗議も

イスラエル アラブ諸国と関係改善 内政面の司法上の問題の解決策として司法改革案 大規模抗議も
https://blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/aea450117a963bb0c64fe7e05cebf315

『【イスラエル対パレスチナで対立が改めて表面化する国際社会】
イスラエルで保守強硬派のネタニヤフ首相が極右政党との連立を組む形で復権したこと、及び、その危うさについては、1月5日ブログ“イスラエル 「最も右寄り」政権の閣僚で極右政党党首の聖地訪問が惹起した緊張”で取り上げました。

同記事においても触れたように、こうした「最も右寄り」とされる対パレスチナ強硬政権の成立へのアラブ諸国などの懸念を反映して、国連ではイスラエルのパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区などへの占領政策をめぐり、国連総会の本会議で、パレスチナ人らの権利侵害などについて国際司法裁判所(ICJ)に見解を示すよう求める決議が採択されました。

****イスラエル占領で意見要請 国連総会、国際司法裁に****
国連総会本会議は30日、イスラエルによる東エルサレムとヨルダン川西岸の占領に関し、国際司法裁判所(ICJ)に意見を求める決議案を87カ国の賛成で採択した。イスラエルや米国、英国など26カ国が反対し、日本を含む53カ国が棄権した。

決議は国際法を考慮した上で、国連や加盟国にとってイスラエルの占領政策によるパレスチナ人の権利侵害がどのような法的問題をはらむのか、ICJに見解を示すよう要請した。

パレスチナのマンスール国連大使は採択後「国際法と平和を信じているのであればICJの意見を支持し、イスラエル政府に立ち向かうべきだ」と訴えた。【12月31日 共同】
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これに対し、イスラエルはパレスチナ自治政府の代理で徴収している税金の一部送金を差し止める報復を行っています。

****パレスチナへの税金52億円差し止め=占領巡る国連決議受け―イスラエル****
イスラエル政府は8日、パレスチナ自治政府の代理で徴収している税金のうち、約1億3900万シェケル(約52億円)の送金を差し止め、パレスチナ人によるテロ攻撃の犠牲者家族への補償に充てることを決めた。イスラエルのメディアが報じた。

国連総会が昨年12月30日、イスラエルによるパレスチナ占領を巡り国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)に法的見解を示すよう求める決議を採択したことへの事実上の報復措置。(後略)【1月9日 時事】 
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一方、アラブ諸国などはイスラエルのこの措置の撤回を求めています。

****パレスチナに対する「懲罰的」制裁の解除を40カ国がイスラエルに要請****
国連:16日、約40カ国がイスラエルに対し、今月初めにパレスチナ自治政府に課した制裁を解除するよう要請した。制裁は、同自治政府がイスラエルによる占領をめぐって国連の最高位の裁判所に勧告的意見を出させるように事態を推し進めたことに対するものである。(中略)

16日、約40の国連加盟国は記者向け声明の中で、ICJと国際法への「揺るぎない支持」を再確認した上で、「国連総会が同裁判所に要請したことを受けて、イスラエル政府がパレスチナの人々、指導者、市民社会に対して懲罰的措置を課す決定をしたことに深い懸念」を表明した。(中略)

加盟国の声明について質問された国連事務総長報道官は、「イスラエルによるパレスチナ自治政府に対する最近の措置」に対するアントニオ・グテーレス国連事務総長の「深い懸念」を改めて表明し、ICJに関連した「報復はあってはならない」と強調した。(中略)

ユダヤ教では神殿の丘として知られているアル・アクサモスクをイスラエルの閣僚が訪れたことを受けて今月開かれた前回の会合では、イスラエルとパレスチナの外交官の間で緊迫した言葉のやり取りが交わされた。【1月17日 ARAB NEWS】
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日本は同決議には棄権しましたが、「懲罰的措置を拒否し、その即時撤回を求める」共同声明には賛成しています。

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加盟国は、「決議に対する各国の立場にかかわらず、国際司法裁判所への勧告的意見の要請に応答した、より広い観点からは国連総会決議に応答した懲罰的措置を拒否し、その即時撤回を求める」と表明している。

声明の署名国には、同決議に賛成した国(アルジェリア、アルゼンチン、ベルギー、アイルランド、パキスタン、南アフリカなど)に留まらず、日本、フランス、韓国といった棄権国、ドイツやエストニアといった反対した国も含まれている。

パレスチナのリヤド・マンスール国連大使は声明で、「これは各国がその投票行動にかかわらず、これらの懲罰的措置を拒否する点で一致していることを示すものであり、重要である」と述べている。【同上】
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まだスタートしたばかりのネタニヤフ「最も右寄り」政権ですが、今後、パレスチナをめぐる軋轢はますます激化しそうです。

【アラブ諸国との関係改善を進めてきたイスラエル外交】
ただ、パレスチナをのぞく外交全般については、イスラエルの近年のアラブ諸国などとの関係改善は、共通の敵イランへの対抗、アメリカの影響力低下もあって、顕著なものがあります。

****中東、仁義なき新三国志 手を結ぶイスラエルと旧敵****
(中略)1948年にイスラエルが建国されて以来、アラブ諸国は4回にわたりイスラエルと戦争をした。難民となったパレスチナを支持することが「アラブの大義」だという信念が、根底にあった。

アラブ諸国は長年にわたり、イスラエルと敵対。エジプトとヨルダンを除けば、イスラエルと国交を持つ国は最近までなかった。

経済に安全保障の協力まで
ところが2022年12月に中東を訪れると、全く異なる光景が待っていた。イスラエルとアラブ側の一部が手を握り、経済はおろか、安全保障の協力まで進めているのだ。いちばんの典型がアラブ首長国連邦(UAE)である。

UAEの首都アブダビ近郊に最近、イスラエル製のミサイル防衛システム「バラク8」がひそかに配備された。ミサイルや無人機を撃ち落とせる新型兵器だ。イスラエルの軍事専門家によると、軍事協力の一環として22年秋までに引き渡された。

スパイ機関による協力も進む。イスラエルのモサドは、世界有数の情報機関として知られる。モサド首脳が23年1月にバーレーンを訪れ、情報協力で合意した。バーレーン当局者によると、モサド要員はすでに同国に駐在し、軍事情報などを共有している。

なぜ、宿敵だったはずのイスラエルとアラブ側の一部が仲間になり、協力に動くのか。直接のきっかけは、アブラハム合意と呼ばれる20年9月の劇的な調印だ。

トランプ米政権(当時)の仲介によりUAE、バーレーンがそれぞれイスラエルと国交を正常化、同年12月にはモロッコも続く。これにより、「イスラエルVS.アラブ」という二項対立の構図は大きく変わった。

「イランの拡張主義、脅威」
双方を結びつけるのは、地政学上の強い磁力だ。現地の専門家らは、2つの要因をあげる。

第1に、両者がともに反目するイランの動きだ。イランは核開発を進め、シリアやイラクの混乱に乗じ中東で影響力を広げる。

イスラエルにとっては、重大な事態だ。厳格なイスラム体制を敷くイランはイスラエルを天敵とみなし、同国と戦闘を構えるイスラム組織を軍事支援する。パレスチナの「ハマス」や、レバノンの「ヒズボラ」が一例だ。

王政を敷くアラブ諸国にも、イランは脅威だ。イランはかねて、イスラム革命の輸出をめざしているとされる。同国の影響圏が広がれば、王政の基盤が揺らぎかねない。

サウジアラビアの研究機関、湾岸研究センターのアブドゥルアジーズ・サグル創設者兼会長は、訴える。「イランの拡張主義は、本当に深刻な脅威だ。宗派対立を利用し、(レバノンなど各地の)民兵組織にてこ入れしている」

イスラエルとアラブ側が近づく第2の要因は、米国が戦略上の優先度をアジアに移していることだ。米軍はアフガニスタンから退き、イラクでの戦闘任務も21年末に終えた。

イランを抑え込むうえで、米軍の関与を以前ほど当てにできないという危機感が、イスラエルとアラブ側の双方にある。そこで「敵の敵は味方」という流れで、接近しているかたちだ。

この状況を単純にいえば、中東は仁義なき新三国志の時代に入ったということだ。自国の生き残りのためなら、旧敵と組むこともいとわない。そんな思考が広がっている。

これから最大の焦点が、シーア派のイランと対立する大国、サウジアラビア(スンニ派)の出方だ。サウジは「中東の盟主」を自認する。パレスチナ和平を置き去りにして、イスラエルと国交を結ぶわけにはいかない。

だが、サウジは他のアラブ諸国がイスラエルに近づくことは事実上、容認している。その表れとして20年9月、イスラエル―UAE間の航空便が自国上空を通過するのを解禁した。

イスラエルのオルメルト元首相に今後の見通しを聞くと、こう予測した。「イスラエルとサウジには、すでに非公式な接触が続いている。遅かれ早かれ、関係の突破口が開けるだろう。パレスチナ和平が実現すれば、イスラエルとサウジは翌日にも和平を結べる」

プラスと危険もたらす変化
むろん、目の前には火種もある。22年12月に発足したイスラエルのネタニヤフ政権は建国以来、いちばん極右寄りといわれる。パレスチナ問題で強硬な態度を続け、アラブ側との協力が足踏みすることもあり得る。

それでも長期でみれば、イスラエルとアラブの接近は後戻りしないだろう。中東にエネルギーを頼るアジア諸国に、この変化はプラスと危険の両方をもたらす。

イスラエルとアラブの対立が和らぎ、中東の緊張が弱まるのは良いことだ。一方で、イランが核やミサイルの開発を急ぎ、イスラエル・アラブ側とイランの軍事対立が強まる恐れもある。

そんな変化をにらみ、中国は22年12月、韓国も23年1月に首脳が自ら中東産油国に乗り込み、新たな協力の扉を開けた。慌てて中韓を追いかけるのが良策ではないにしても、中東、イランの両方にパイプを持つ日本も動くときだ。【1月20日 日経】
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記事にもあるように、短期的には「最も右寄り」政権のもたらす混乱で、関係改善が足踏みすることはあり得ます。

UAEとの関係についても、“アル・アクサ論争の結果UAE訪問がキャンセルされショックを受けるネタニヤフ氏”【1月6日 ARAB NEWS】といったことも。

本筋であるサウジアラビアとの関係については、アメリカに協力を依頼しているようです。

****イスラエル首相、米に協力依頼 サウジとの国交正常化に向け****
イスラエルのネタニヤフ首相は19日、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)とエルサレムで会談し、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化に向けた協力を依頼した。

イスラエル政府によると、ネタニヤフ氏は会談で「我々はこの地域と歴史を変えることができる」と強調。米国の支援を受けて、サウジとの関係改善を目指す意向を示した。ネタニヤフ氏は2020年、アラブ首長国連邦(UAE)などとの国交正常化を実現しており、アラブ諸国との連携をさらに進めたい考えだ。また両者は、イランの核開発を止める方策についても協議した。

パレスチナ自治政府のアッバス議長も同日、サリバン氏と会談。アッバス氏は、イスラエルがヨルダン川西岸でユダヤ人入植地を拡大しているとして、米国の介入を求めた。【1月20日 毎日】
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アメリカ・バイデン政権も、イスラエル・パレスチナ自治政府双方から頼られ対応に苦慮するのか・・・あるいは、この機を利用してパレスチナ問題の改善を図ることができるのか・・・後者のような余力はアメリカにはなさそうですが。

【内政面で司法問題 解決策として強硬な司法改革案提示 民主主義を揺るがすものとしての抗議も】
ネタニヤフ「最も右寄り」政権にとって、目下の悩みは内政。

****イスラエル内相就任認めず 最高裁、新政権早くも難局****
イスラエル最高裁は18日、ネタニヤフ新政権で内相兼保健相となった宗教政党「シャス」党首アリエ・デリ氏を巡り、過去の脱税罪での有罪判決を理由に閣僚に就任できないと判断、ネタニヤフ首相に罷免を求めた。

シャスには連立離脱をちらつかせてデリ氏の続投を求める議員もおり、昨年末に発足したばかりの政権は早くも難局を迎えた。

昨年11月の総選挙を経て発足した6党連立のネタニヤフ政権は国会(定数120)で64議席を確保するが、11議席のシャスが離脱すれば、政権崩壊の可能性もある。

最高裁判事11人のうち10人がデリ氏の閣僚資格剥奪を支持した。【1月19日 共同】
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ネタニヤフ氏自身が汚職で公判中の身でもあります。

そこで、こうした司法上の窮地を一挙に解決する策としてネタニヤフ政権が持ちだしたのが、最高裁判所の判決を、議会が過半数で無効化できるようにする司法改革案。

“新政権は、ネタニヤフ氏の所属する右派政党「リクード」のほか、過激な極右政党や宗教政党からなる。「リクード」以外の極右政党も、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地での建築許可など土地をめぐる訴訟について、従来の最高裁の判決に不満を抱いてきた。裁判官の任命についても政府が強い影響力を行使できるよう、検討されているという。”【日系メディア】

当然ながら民主主義の根幹・三権分立をないがしろにする司法改革案として、抗議が起きています。

****イスラエル、極右政権の「司法改革」に大規模デモ 独裁国家と批判****
イスラエルで昨年12月末に発足した右派のネタニヤフ政権が打ち出した「司法改革」を巡り、市民による大規模な抗議活動が起きている。

政権側は「国民に選ばれていない司法が力を持ちすぎている」として、最高裁による法律審査の権限を制限する案を発表した。野党や司法界は「政権が絶対的な力を持ち、独裁国家になる」と批判している。
 
「民主主義を守れ」「(政権は)恥を知れ」。イスラエル各地で今月14日、司法改革に抗議するデモが実施された。中部テルアビブには約8万人の市民が集結。イスラエル国旗を手に持って参加した会社員のダナ・コーヘンさん(54)は「政権は『ユダヤ人優位』の国家を目指し、アラブ人ら少数派を排除しようとしている。そのため、少数派の権利を守り、民主主義の基盤となってきた司法を弱めようとしているのだ」と主張した。

ネタニヤフ政権は複数の極右政治家が入閣し、史上最も「右」とされる。レビン法相は政権発足から6日後の今月4日、司法改革の素案を発表した。

イスラエルには憲法に相当し、少数派の権利などを規定した「基本法」があり、法律が基本法に合致するかチェックする権限が裁判所に認められている。日本の違憲立法審査権と同様の仕組みだ。

素案では▽最高裁が法律を無効とする条件を厳しくする▽国会で過半数が賛成すれば、最高裁による法律無効の判決を覆すことができる▽裁判官を指名する委員会のメンバーのうち、過半数を政権が選出する▽各省庁の法律顧問を政権が指名する――などだ。「改革」が実行されれば司法の介入は事実上排除される。

政権側は、これまで司法が過剰な力を持ち、国民に選ばれた政権の政策を妨害してきたとして「権力のバランスを戻す」と主張。野党側は、民主主義の土台となっている三権分立が損なわれると訴える。

改革が導入されると、何が起きるのか。極右政治家は多くのパレスチナ人が住むヨルダン川西岸で、国際法違反とされるユダヤ人入植地を拡大し、西岸を事実上「併合」しようともくろむ。

これまで最高裁は、国内法と国際法の双方を考慮し、入植地の拡大やパレスチナ人住宅の強制撤去などを一定程度抑制する役割を担ってきた。司法の機能が弱められれば、入植地は制限なく拡大する恐れがある。また、極右は性的少数者(LGBTQなど)の権利にも否定的で、ユダヤ人の間でも差別が広がる可能性がある。

政権は、すでに司法との争いを抱えている。最高裁は18日、過去に脱税などで有罪判決を受けているデリ内相兼保健相の閣僚就任を無効とする判決を下した。また、ネタニヤフ首相自身も汚職容疑で公判中だ。政権側は「司法改革」によって、これらの問題を解決しようとしている可能性もある。

司法の弱体化はイスラエルだけではなく、右派や中道右派が政権を握る東欧のポーランドやハンガリー、中東のトルコでも起きている。

ネタニヤフ政権は「他の民主主義国にある制度を、イスラエルでも導入するだけだ」と主張する。だが、イスラエルにあるヘルツェリア学際センターのヤニブ・ロズナイ准教授(比較憲法)は「イスラエルは他国と異なり、(政権を抑制する)システムが最高裁以外にほとんどない」と指摘する。

ロズナイ氏によると、他国では政権の力を抑制するため、国会の2院制▽権力を分散する連邦制▽国民が欧州人権裁判所など国際的な裁判所にも訴えることができる――などの仕組みがある。だが、イスラエルには、いずれも存在しない。

最高裁の判決を国会が「無効化」する条項はフィンランドやカナダにあるが、フィンランドでは国会で3分の2の賛成が必要であるなど、厳しい条件が付けられている。ロズナイ氏は、司法改革は「政権に絶対的な権力を与えるものだ」と指摘し、イスラエルの民主主義にとって「非常に大きなリスクだ」と警鐘を鳴らす。
 
イスラエルはこれまで他のアラブ諸国とは違い、中東の数少ない民主主義国家として欧米から一目置かれてきた。だが、司法改革はイスラエルの国際的な評価を落とし、今後の外交関係に影響しかねないとの見方も出ている。

司法界も、改革を強く批判する。今月12日には複数の元検事総長や元最高裁判事が、今回の改革は司法を「破壊しかねない」との意見書を発表した。

大規模デモが起きた翌日の15日、ネタニヤフ氏は「司法改革を公約にした我々に(選挙で)数百万人の人々が投票した。彼らは改革を求めているのだ」と強調した。政権は3月末までに司法改革を巡る法案を可決する姿勢を示している。【1月19日 毎日】
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ネタニヤフ首相の強引とも思える強硬策が実現するのか・・・。』

グリーンエネルギー政策は貧困国を「座礁した生活」の危険に晒す:IEF事務局長

グリーンエネルギー政策は貧困国を「座礁した生活」の危険に晒す:IEF事務局長
https://www.arabnews.jp/article/business/article_84114/

『 国際エネルギー・フォーラムのジョー・マクモニグル事務局長はアラブニュースに対し、開発途上国は富裕国の「グリーンな」投資政策のせいで苦しんでいると語る
同事務局長は、OPECプラスによる原油減産の決定は正しかったことが証明されたと指摘する

フランク・ケイン

ダボス:中南米、アフリカ、アジアの一部などのグローバルサウスは、富裕国の「グリーンな」投資政策のせいでエネルギー危機に不釣り合いに苦しんでいる。リヤドを拠点とするシンクタンク「国際エネルギー・フォーラム(IEF)」の事務局長が指摘した。

IEFのジョー・マクモニグル事務局長は、ダボスで開催された世界経済フォーラムの際にアラブニュースに対し、欧米諸国政府の政策、特に環境・社会・ガバナンスの問題に関する政策は貧困国の「座礁した生活」につながりかねないと語った。

「思うに、世界的に見て、金融部門や投資家に対して、場合によってはエネルギー産業に特化して、石油・天然ガス事業から脱却するための政策が行われている。グローバルサウスには資金は出せない、アフリカなどの石油・天然ガスプロジェクトには資金は出せないという状況だ。再生可能エネルギーのプロジェクトに資金を出すのはなおさら難しい。アフリカのような場所ではコストが高いからだ」

「この世界経済フォーラムのような会議や私が出席するエネルギー会議では座礁資産に大きな重点が置かれる。しかしアフリカでは、現在の座礁した生活が懸念されているのだ」
マクモニグル事務局長はそれでも、昨年シャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動会議(COP27)やUAEで開催予定のCOP28をはじめとする、エネルギー移行や気候変動についての新たな「双方向対話」の結果として、化石燃料への投資に対する欧米の敵意が下がるのではないかと期待している。

「COP27以前は、対話はかなり一方的なものだった。環境・気候面を重視する団体やNGOは話すばかりで他の意見に耳を貸していなかった。しかし今や、かなり双方的なものになっている」

「(COPが)2年連続で欧米諸国の首都以外で開催されることは、異なる観点をもたらすという意味で非常に重要だ」

「今や、石油・天然ガス企業の参加数が大きく増えている。そして、エネルギー危機の現実やエネルギー安全保障の必要についても全体的に受け入れられているようだ。エネルギー移行は簡単ではないということに皆が気づき始めたのだと思う」

昨年10月にOPECプラスが日量200万バレルの原油減産を決定したことの正しさが証明されたとマクモニグル事務局長は言う。

「この減産の後、彼らは自分たちの正しさが証明されたように感じていると思う。価格への影響について大袈裟な批判が多くなされたが、結局どれも間違っていた」

同事務局長は、原油需要の見通しは明るいと語った。「中国の再開で需要が急増すると思う。完全に予想外のことが起こらない限りは。ただリセッションの可能性についてはまだ未知数だと考える」』

グローバルサウスは化石燃料の座礁資産化に震撼している

グローバルサウスは化石燃料の座礁資産化に震撼している
http://blog.livedoor.jp/adachihayao/archives/2028188.html

『【日刊 アジアのエネルギー最前線】 グローバルサウスは化石燃料の座礁資産化に震撼している,でも温暖化は避けられず
http://www.adachihayao.net

2023年1月23日 月曜日 外は雨

昨夜のNHKスペシャルを聞き込んでいた,半導体,大体の筋書きは私にとって既知だが,米国の退役老政治家の発言,今回の中国への制裁は,かって1980年代に日本に対して制裁し日本の半導体を潰した経験が生きている,と,当時の実感は,HDなどの価格が暴落,高度な経済化の日本は断念

1980年代の半導体戦争の影響を身近に経験した我々だが,半導体製作が当時ニーズと言われた台湾韓国のような新興国に流れていくのは当然,と言う意識であった,でも日米の激しい半導体戦争が生んだ日本の凋落であったのだ,今,世界は,化石燃料が座礁資産に化して行く現実に震撼している

リヤドのシンクタンクの事務局長,ダボス会議を終わって,「グローバルサウスが化石燃料の座礁資産化する現実を目の当たりにして震撼している」と,でもウクライナ以降,米中欧が自国の化石燃料確保に動いている姿は,正に先進国の利益優先の醜い姿,地球温暖化の進展を避けるすべはない,』

スウェーデンで右派の反トルコデモが再燃

スウェーデンで右派の反トルコデモが再燃
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5405515.html

『北欧スウェーデンの首都ストックホルムで2023年1月21日、イスラム教やトルコのエルドアン大統領Turkish President Recep Tayyip Erdoğanに抗議するデモが行われ、トルコ大使館近くでは、イスラム教の聖典コーランの写し a copy of the Koranが燃やされた。トルコの外務省は声明を発表し「われわれの神聖な書物に対する卑劣な攻撃だ」として強く非難した。

FireShot Webpage Screenshot #543 – ‘Turkey strongly写真は、デモで、トルコのエルドアン大統領Turkish President Recep Tayyip Erdoğanの人形と練り歩く参加者=21日(ゲッティ=共同)。コーランを燃やしているのは、デンマークの過激極右組織のリーダー:Rasmus Paludan, leader of Danish far-right political party Hard Line。 デンマーク、スウェーデン両国の国籍を持つ政治家で極右団体「ストラム・クルス(強硬路線:Hard Line)Stram Kurs Party」の代表であるラスムス・パルダンRasmus Paludan氏は、以前にもコーランを燃やしている。過去ブログ:2022年5月スウェーデンが移民統合政策の失敗認める 理想主義の敗北   

 スウェーデンは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請中で、全加盟国の批准を必要とするが、このうちトルコは対テロ容疑者と見なすクルド人らの引き渡しを求めており、まだ批准を終えていない。トルコが反発を強めるのは必至で、加盟を巡る先行きにも影響を与えそうだ。参照記事 英文記事 、、、、トルコ人の中でも、比較的貧しいとされるクルド人は何世代にもわたって欧州、北欧に住んでいるものも多く、トルコ人の中でもエルドアン政権支持、不支持での対立が在り、状況は複雑だ。

人種差別やイスラム教排斥、難民問題につながる可能性が在り、過去にはイスラム寺院が放火される事件が頻発した。

長年の移民でドイツにはクルド人、トルコ人の社会が成立しており、うまく融合している一方で、根絶できない差別や偏見から、そこにはアンタッチャブルuntouchableな特殊な闇社会が存在し、国際犯罪の温床になっているのも事実だ。過去ブログ:2018年8月スウェーデンで組織的放火事件 失業や移民政策への不満? 2017年4月ストックホルム市中心部でトラックを使ったテロ 2月シリアからの亡命申請者に終身刑 スウェーデン 2016年2月警戒される難民とのトラブル増加 スウェーデン ドイツ 英国 2016年1月難民施設で殺人?スウェーデン 2015年12月予想を超えた難民の一部帰国 スウェーデン 難民対策で苦慮するフィンランド 2013年5月ストックホルム郊外で移民住民が放火や投石スウェーデン 2012年12月シリア難民受け入れのスウェーデンの問題 2010年12月ストックホルム市内で自爆テロ スウェーデン、犯人浮上』

独『シュピーゲル』によると、独国防相のボリス・ピストリウスは、すでに「レオ2」の「2A5」型を…。

独『シュピーゲル』によると、独国防相のボリス・ピストリウスは、すでに「レオ2」の「2A5」型を…。
https://st2019.site/?p=20809

『2023-1-22記事「Germany could transfer 19 Leopard 2A5 tanks to Ukraine ? Spiegel」。
   独『シュピーゲル』によると、独国防相のボリス・ピストリウスは、すでに「レオ2」の「2A5」型を19両、ウクライナに与える準備をさせているようである。
 ポテンシャルとしては、レオ2の各タイプ、総計312両の供与が、できる模様。昨年5月から、99両について、メンテナンス作業が始められていると。

 レオ2のいちばん新しいバージョンは「2A7V」で、ドイツ連邦軍はこれを53両、装備している。
 「2A5」は逆に、独軍が装備中のモデルとしてはいちばん古い型である。独軍では、演習時の「仮装ロシア軍戦車」として、この「2A5」を使っている。つまりほとんど「予備品」の扱い。

 ちなみにポーランド軍は「2A4」を保有している。

 整備上のひとつの懸念。独軍装備のレオ2のターレット駆動は、電動である。しかし他の欧州軍が装備しているレオ2のターレットは、油圧駆動だという。仕様がバラバラなものが一斉にウクライナ軍に与えられると、ちょっと面倒なことになる。

 ※「レオパルト2」は、13の欧州国家によって合計2000両は保有されているはずだという。

 ※ポーランドが宇軍へ大量に寄贈した面白兵器「MT-12」の活躍動画がさっそくSNSにUpされている。ペラペラの装甲しかないMT-LBの装軌シャシの上に、露天式に、ソ連製の100粍対戦車砲を背負わせたもの。貰った宇軍は、それを自走野砲として使っている。もし、旧日本陸軍の「ナト車」(四式中型装軌貨車+ボフォース7.5糎高射砲。伊良湖で技官が試射している写真だけが残る)が仕上がっていたなら、こんな感じだったのだろうな。

 ※ポルトガルが14両寄贈すると表明した古い「M113」の写真を見ていると、次のような想像を禁じ得ない。これは西側世界に千両以上、残存している可能性があり、もっと活用余地があるはずだ。天板の後半を溶断して切り欠いてしまって、これまた、世界のあらゆる地域から余剰品をかき集めることが可能な中古の81ミリ迫撃砲を、ガレージ改造式に据え付けるのだ。現地改造だから、初弾の命中精度こそ悪いだろうが、今はドローン観測との連動が可能だから、修正射でカタがつく。

 ※雑報によると、フィンランド国境に2022-1時点で集結していた露軍は今、当時の25%にまで減少しているという。あきらかに露軍は人手が足らず、もはや、あらゆる国境からウクライナへ戦力を抽出転用しているのだ。だからバルト沿海諸国はここぞとばかりに手持ちの全重装備をウクライナへ供給しはじめたのか。

 ※英国人によると、「チャレンジャー2」にウクライナ兵が習熟するまでには6週間かかる、とのこと。すでに教練は始まっているようだ。おそらく単車訓練にとどまらず、3~4両の小隊で交互躍進したり、IFVと連携して進退する訓練も含むのだろう。

 ※ウォリアーIFVをウクライナ人に操縦させる訓練もすでにスタートしている。

 ※さいきんウクライナ国内で撮影された「PzH 2000」は、塗装からしてどうもイタリア軍からの寄贈らしい。

 ※キプロスはT-80Uを手放すかわりに、ギリシャが手持ちの「レオ2」を寄越すことを欲している。これはできるわけがない。ギリシャはトルコ軍(レオ2+M60)ときびしく対峙中だからだ。最初からできるわけがないことをアナウンスしているのだ。不誠実な連中だ。』

金曜日、シリアにある米軍の駐屯地、「アル・タンフ」基地に、3機の自爆ドローンが襲来。

金曜日、シリアにある米軍の駐屯地、「アル・タンフ」基地に、3機の自爆ドローンが襲来。
https://st2019.site/?p=20806

『By J.P. Lawrence 記者による2023-1-20記事「Drone strikes coalition base in Syria as part of multi-drone attack」。

   金曜日、シリアにある米軍の駐屯地、「アル・タンフ」基地に、3機の自爆ドローンが襲来。1機は兵舎に命中した。
 「シリア自由軍」に属するシリア兵×2名が負傷。米兵は無被害だった。

 セントコムによると、のこりの2機は撃墜したのだという。
 セントコムは、ドローンの型については一切公表していない。※ということはイラン製の「シャヘド136」か。

 10月にもアルタンフ基地をドローンが空襲していた。そのときの米軍は、イランが犯人だと名指し非難した。
 いま、シリア全土に900名の米軍が所在する。IS狩り作戦を展開しつつ、「シリア自由軍」に稽古をつけてやっている。』

ロシア政府は、101万3628人だった露軍の現役定員を、115万628人に増やした。

ロシア政府は、101万3628人だった露軍の現役定員を、115万628人に増やした。
https://st2019.site/?p=20806

『ストラテジーペイジの2023-1-21記事。
  ロシア政府は、101万3628人だった露軍の現役定員を、115万628人に増やした。しかしこの定員が埋まることは、将来も無いだろう。

 2021末時点でロシア陸軍は40万人ほどである。

 2021年末時点で、ロシア海軍とロシア空軍は、それぞれ定員が15万人であった。空軍の15万人のうち、三分の一は「落下傘降下兵」または「空中機動歩兵」である。

 ※露軍の中でいちばん頼られている空挺部隊は空軍の所属だった。ここにも空軍の制服トップがウクライナ戦区を任された理由があったのか。しかし、その損耗が甚大で、神通力も消えてしまった。

 海軍の15万人のうち、1万2000人は、陸戦隊である。平時には、海軍基地内に駐屯している。やはり、今次戦役で、損耗が甚大。

 露軍の輸送トラックのドライバーは、すべて、戦時の臨時動員兵である。平時に民間のトラックドライバーをなりわいとしている者たちが、駆り出される。とうぜん、それによって民間経済の物流は止まってしまう。ロシア国家が侵略戦争を仕掛ける場合、プロイセン流の短期決戦主義だから、それでいいと考えられていたわけだが、プー之介のような素人が戦争をいたずらに長引かせれば、じわじわと、国内経済を自死に向かわせる。』

ロシア国会の副議長ヴィクトル・ソボレフ(現役中将)が、もじゃもじゃのみっともない顎鬚をロシア軍隊は許してはいかんだろうと水曜日に発言。

ロシア国会の副議長ヴィクトル・ソボレフ(現役中将)が、もじゃもじゃのみっともない顎鬚をロシア軍隊は許してはいかんだろうと水曜日に発言。
https://st2019.site/?p=20806

『2023-1-20記事「Chechen Leader Calls Rumored Ban on Beards in Russian Army ‘Provocation’」。

    ロシア国会の副議長ヴィクトル・ソボレフ(現役中将)が、もじゃもじゃのみっともない顎鬚をロシア軍隊は許してはいかんだろうと水曜日に発言。
 これに、チェチェン軍閥のもじゃもじゃ髯頭目カディロフが、猛反発している。

 ネットメディアの「テレグラム」にも、ウクライナ戦線の露軍正規兵は必ず髯を剃って身だしなみを良くしろという主張が、今週になって、広報されている。

 カディロフいわく。わが部隊の99.9%は髯を生やしている。それはスンナに書いてある戒律だからである。』

ポーランドは、同国内で、ウクライナ兵に「レオパルト2」の取り扱い法を練習させる。

ポーランドは、同国内で、ウクライナ兵に「レオパルト2」の取り扱い法を練習させる。https://st2019.site/?p=20806

『ディフェンスエクスプレスの2023-1-23記事「Poles Will Train Ukrainian Crews of German Leopard 2 Tanks」。

   ポーランドは、同国内で、ウクライナ兵に「レオパルト2」の取り扱い法を練習させる。

 ※今まで3人乗りの戦車で慣れてきた軍隊に、自動装填装置の無い4人乗りの流儀を教えるのだから、道は遠い。これはM1でも同じだ。

 ※キプロスは、保有する「T-80U」×82両をウクライナに供与してやってもいいそうだ。その代わりにドイツが「レオパルト2」をくれるのならば。

 ※ポルトガルは、同国軍が保有する「M113」APCの1割にあたる14両を、ウクライナ軍へ寄贈する。』

――独政府は何故「レオパルト2」をおいそれと提供し得ないか……の理由を説明する。

――独政府は何故「レオパルト2」をおいそれと提供し得ないか……の理由を説明する。https://st2019.site/?p=20806

『消防出初め式における「梯子乗り」の妙技を思い出して欲しい。
 あのパフォーミングが、主役の「乗り手」1名では完結していないことは、日本人なら誰しも知っているであろう。

 乗り手は、垂直に聳立した竹梯子の先頭へ登り、人びとから注目される。

 而してその垂直梯子は、おおぜいの《支え役》が、下から支えているのだ。
 三種類の長さの鳶口を、上段、中段、下段に四方八方からひっかけて、集団で引っ張ることで、梯子の垂直を小揺るぎもさせずに保持しているのである。

 西側最先端の「主力戦車」や「マルチロール戦闘機」を機能させるためには、この、手練の鳶口係のような後方支援体制が、それこそピラミッド状に、ぶ厚く備わっている必要があるのだ。

 もしドイツ政府が、欧州諸国軍の装備品である「レオパルト2」の一部のウクライナ軍への供与を認めたとする。
 いったい、その整備は、誰がするのか?

 ウクライナ人には、どうにもならない。その専門教育を受けた整備兵が1人もおらず、スペアパーツもないのである。

 けっきょく、「ドイツが面倒を見ろ。近いんだから」という話になってしまう。蔵相を経験しているショルツには、迷惑だ。(ショルツは若いときにはINFの西独内配備に反対した。しかし2022-2-27には独国防費をGDPの2%超にすると声明。何度も要職に落選した経験のおかげで、風見鶏の才能はある。)

 1個大隊分のMBTを最前線で動かすためには、まるまる1個小隊の、整備専従の兵隊が、毎日、ガレージで働いている必要がある。
 それをドイツで負担しなければならない。果てしのない負担になる。専門技倆のある整備兵の人手は、不足することはあっても、余っている軍隊など、どこにもない。

 とうぜん、スペアパーツもドイツが自腹を切れという話になるだろう。
 エンジン部品くらいなら、しのぶこともできる。

 だが、サーマルセンサーやデジタル無線機やFCSとなると、軽量ではあってもバカ高い。えてしてタダで高性能兵器を貰ったユーザーは、そうした電装品を丁寧に扱わない。簡単に壊してしまう。

 電装品が壊れると、ハイテク兵器はパフォーミングが半減する。それはすべてウクライナ人の責任なのだが、けっきょく「ドイツ製戦車はダメだ」という責任転嫁の宣伝をされてしまうだろうことも、今からありありと目に見える。ドイツ人にとってはこれも大迷惑だ。

 「レオ2」のようなMBTを、垂直梯子の上の「梯子乗り」だとするならば、たとえば「パンツァーファウスト」のような使い捨ての対戦車ロケット弾は、「短い鳶口」に相当するだろう。そしてまた、カミカゼドローンのようなアセットは、「長い鳶口」だ。

 鳶口は、歩兵が一人でふりまわして操作ができる。
 長い梯子=後方支援体制は、まったく無用である。

 鳶口は、他者からの支援を必要としない。しかしみずからは他者を支援することができる。

 まず、多層的な「鳶口」の集団から形成させるのがよいのだ。
 ハイテク軍備先進国が、ハイテク軍備後進国に武器弾薬を援助するときは、「鳶口」だけを送れ。

 「長い鳶口」が今、足りてないのである。
 敵地、特に鉄道線路を片道攻撃できるカミカゼドローンが、必要とされている。

 その準備が、まったく、NATOには無かった。
 ウクライナにも準備はなかった。これほど効率的な対露戦備はないのに……。

 ウクライナ人は、NATOに文句を言うのを止め、露領の鉄道線路を攻撃できるカミカゼドローンを総力を挙げて国産するのが、筋だろう。ターボシャフトエンジンで定評のあるモトルシチ社は、それ専用のエンジンくらい、すぐに設計・製造ができるはずだよな? 都市民は、軍需工場に勤労奉仕の動員もされずに、何をやっているんだ?』

独外相はレオパルト2の未承認移転を容認、仏大統領はルクレール提供を検討

独外相はレオパルト2の未承認移転を容認、仏大統領はルクレール提供を検討
https://grandfleet.info/european-region/german-foreign-minister-allows-leopard-2-unauthorized-transfer-french-president-considers-leclerc-offer/

『ドイツのベアボック外相は「承認なしにポーランドがレオパルト2をウクライナに送っても邪魔しない」と発言、フランスのマクロン大統領はショルツ首相との会談後「ルクレールのウクライナ提供を検討するよう国防相に指示した」と明かした。

参考:Germany won’t keep Poland from sending tanks to Ukraine
参考:Макрон на пресс-конференции с Шольцем не исключил поставки Украине танков Leclerc

この発言がドイツ政府の総意なのか、外相の私的な見解なのかは不明なので、暫く様子を見なければならない

ポーランドは正式に「保有するレオパルト2をウクライナに移転したい」とドイツに要請していると推定(英国のウォレス国防相が遠回し示唆)されているが、RMF-FMの番組に出演したポーランドのパヴェル・ヤブロンスキー外務次官は「もしドイツがレオパルト2の移転に強く抵抗するようなら非正規なアプローチを採用する用意があると思う、、、結果を予測するのは止めておこう」と述べたため、最終使用者の変更に関する承認手続きを無視して「戦車提供に踏み切る用意がある」とロイターが報じていた。

L’Allemagne franchit un seuil inédit sur @LCI par la voix de la ministre A.Baerbock. Elle «ne s’opposerait pas» si la Pologne envoie les Léopards.
-J’ai bien entendu, vous avez dit, si les Polonais l’envoient, vous ne vous y opposeriez pas?
-A.Baerbock: Vous m’avez bien compris. pic.twitter.com/HGykBGhocL

— Darius Rochebin (@DariusRochebin) January 22, 2023

仏メディア(LCI)の取材に応じたドイツのベアボック外相は「もしポーランドが承認なしにレオパルト2を送ったらどうなるのか?」という問いについて「我々は邪魔しないだろう。この戦車がどれだけ重要かを知っており、だからこそ我々は同問題をパートナーと協議している」と述べたたため注目を集めている。

ベアボック外相の発言を額面通りに受け取れば「ポーランドが直ぐにでもレオパルト2のウクライナ提供」を発表しそうな勢いだが、この発言がドイツ政府の総意なのか、外相の私的な見解なのかは不明なので暫く様子を見なければならない。

出典:Pierre-Yves Beaudouin/CC BY-SA 4.0

因みにフランスのマクロン大統領はショルツ首相との首脳会談後「ルクレールのウクライナ提供を検討するよう国防相に指示した。(戦車提供について)何も除外するものはなく総合的に評価が行われている」と述べている。

関連記事:ポーランド、ドイツが反対してもレオパルト2提供に踏み切る可能性を言及
関連記事:ウクライナへの戦車提供、英国に続きフランスもルクレール提供を検討か

※アイキャッチ画像の出典:Mateusz Włodarczyk/CC BY-SA 4.0
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 35 』


K(大文字)
2023年 1月 23日

返信 引用 

未承認移転を容認…政治修辞の極致ですね(笑)
まぁ、ドイツも「もう各国のレオパルト提供を止めようとしても無理」と分かっているのでしょう。
で、無断提供した国に何か制裁措置を取れるかと言ったら、取れるわけがない。今ですら針のむしろなのに、そんなことをしてもますます自分のクビを締めるだけ。
だから「私は認めてないけど関知しませんよ」と問題をぶん投げた、と。
ひたすらに決断から逃げに逃げた挙句の言い逃れそのものなんですけど、結果的にウクライナにレオパルトが渡るなら何でもいいでしょう。
この後のドイツの立場がどうなるかは、まぁ…
40

    k
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

ドイツは非難されていますが、私はドイツの気持ちも分かります。ドイツはロシアの核攻撃を真剣に警戒しているのではないでしょうか。

ドイツはイギリスやフランスと違って核兵器を保有していません。また、ウクライナやポーランドなどと違って民族的人種的に近いわけでもなく、かつてソ連として同じ国家だったこともない。むしろ過去の大戦でロシアはドイツにとんでもない被害を受けています。

以上の理由から、仮に今回のウクライナ侵攻が核兵器の撃ち合いに発展した場合、ドイツがロシアの核攻撃の対象になる可能性は十分に考えられます。少なくともドイツ国民は過去の遺恨からロシアに狙われる可能性があることに不安を感じているでしょう。

もともと旧東ドイツ出身者など親ロシア派も多い国みたいですし、核兵器に狙われる恐怖も考慮するとドイツのこれまでの対応も仕方ないように思いますね。
11
        K(大文字)
        2023年 1月 23日
        返信 引用 

    ドイツの理屈としては、そういうこともあるでしょうね。それは理解できます。
    しかし、たとい本人にどのような事情があろうとも「いざという時に決断をしないリーダー」は次第にアテにされなくなるのが世の習いです。
    周りから頼られないリーダーなんて、有名無実ですよね。ロシアもそうなりかかってますけど。
    だから、今回のことはドイツが欧州の盟主の座から降りる遠因になると思っています。
    もちろん今日明日にどうにかなる訳ではありませんが、中長期的に「この後のドイツの立場」はそのような経過を辿ることになるのではないでしょうか。
    16
        成層圏
        2023年 1月 23日
        返信 引用 

     ドイツが核攻撃を恐れている可能性はあると思いますが、私はロシアがウクライナやポーランドを飛び越してドイツに核攻撃を仕掛ける可能性は極めて少ないと思います。また、核シェアリングの取り決めもあることですし。
     それより、ドイツ国内の旧東ドイツ国民がロシアに同情的で(西側の価値観からすると)足を引っ張っているんだと思います。
     ここでフランスがアメリカ・イギリスに続いてドイツより先にMTBを供給すると、EUでの主導権が奪われるかもしれないですね。
    知らんけど。
    9
            F
            2023年 1月 23日
            返信 引用 

        ロシアに同情的ってところで東ドイツの左派の話ばかりでるけど
        韓国の反日、ポーランドの反独、ウクライナの反露
        こういう部分でロシア側に共感を感じる右派こそが
        最大の親露勢力なんじゃないかとおもうけどね

        日本国内でも韓国嫌いを公言してる右派の人がウクライナ嫌いでロシアを応援
        その一方で中国や北朝鮮好きな左派もロシアを応援してるでしょう

        アジアでいうなら中国が韓国を侵略したって状況で
        どっちも嫌いだけど韓国のほうが不快だから中国の応援しますみたいな人がいるって感じかな
        9
                成層圏
                2023年 1月 23日
                返信 引用 

            Fさん、すいませんが嫌韓だからロシアを応援する人ってどんな感じなのでしょうか?
            私は韓国があんまり好きではないですが、さすがに中国に侵略されたら助けるのが日本としては普通だと思います。
             おっしゃられているような人って具体的にどのくらい(ざっくり何%程度)いてるのでしょうか?そんな人たちのコミュニティーって実際あるんですか?
            (単純な左派なら分かるんですが。)
            9
                    ムタ
                    2023年 1月 23日
                    返信 引用 

                反米、反グロ、大日本主義、アジア主義な民族主義者辺りでしょうか。
                その中でも穏健な参政党ですら殆ど議席を持って無いので右派の中でも極少数派だと思います。
                3
        ネコ歩き
        2023年 1月 23日
        返信 引用 

    ロシアがドイツに先制核攻撃=NATO加盟国への先制核攻撃ですから、プーチンとてロシア本土への核報復(=核戦争へのエスカレーション)を覚悟した上でないとその決断は出来ませんよ。
    NATOとロシアの間に相互確証破壊の概念は現在も有効でしょう。

    ドイツメディア人曰く、戦後のドイツ国民はナチスの戦争責任を強く意識し続けることがアイデンティティになっているそうです。最大の人的損害を与えたロシアに対し特にその意識が強く、西側諸国首脳が出席をボイコットした後も対独戦勝記念日に代表者を送り謝罪の意を示してきた(さすがに昨年はキャンセル)のはその表れなんだとか。
    結果的に誤りでしたが、これが冷戦終結後に積極的経済相互依存親露融和政策を取ってきた動機の一部だったそうです。ドイツ人はロシアとの戦争に主導的立場をとることに強い忌避感があるのかもしれません。
    3

F
2023年 1月 23日

返信 引用 

ロシアが通常戦力で敗戦に追い込まれることで
NBC兵器の使用による戦況打開やWW3への戦線拡大などが発生した場合に
西側民意からドイツが悪いと責任を押し付けられること

独露関係が致命的に悪化して終戦後も再起不能な国交断交に陥ること

ドイツとしては全力で反対したし契約違反だって批判してるんですよって
表向きの態度を用意できればこの二つの問題に関しては回避可能なんだよね
この場合エスカレーションの責任やロシアから更なる敵意を向けられるのはドイツではなく提供した当事国だけで済むからドイツとしてはそうなってほしい
ドイツと当事国の契約問題に関しては別にどうでもいいってのが本音だろう
ドイツが言いたいのは「契約違反だぞ」じゃなくて「責任は一切負いません」
ドイツ政府が公式に許可したら責任を伴うんですよ
16

    ヤゾフ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

論理性は理解出来ますが、EUの盟主として振る舞って何かあったら逃げるてムーブは流石ドイツだなと感心してます。、
14

k
2023年 1月 23日

返信 引用 

対空兵器もセットじゃないとまずいじゃないの
1

    panda
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

野戦防空ならアベンジャーが供与されているし追加供与される予定だったと思います
5
    くらうん
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

ウクライナではゲパルトがアイドル的人気だそうですよ
2

58式素人
2023年 1月 23日

返信 引用 

戦車については、問題が終わりつつあるのかもですが。
次(?)は、戦闘機/攻撃機で続くのでしょうか。
地上戦力だけでロシアを短期間に押し返せるとも思いません。
元々、西側は東側の圧倒的な地上戦力に対し、航空機を
含めた戦力で対抗することを考えていたわけですし。
攻撃ヘリは、もう、ほとんど価値がない様ですが。
7

    匿名希望係
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

フランスの中古やイスラエルの中古の提供じゃあないかなー
ミラージュ2000やクフィールの近代化仕様あたりならまだ使えると思うし。
5
    おわふ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

オランダにF-16の提供予定があるようです。
6
    58式素人
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

なんだかですが。
上のコメントで書かれている、”未承認移転を容認” の概念は
流行りそうな(笑)気がします。もちろん、悪い意味で。
WW2後、湾岸戦争を除いて、戦争でない戦争が多数起こったように、
事実上、無制限の”武器援助でない武器援助” が流行りそうな。
ドイツは、また、ロクでもないことをしでかしたのでは?。
当面、ウクライナを助けることにはなる、とは思うのですが。
1

次席エクソシスト
2023年 1月 23日

返信 引用 

もしもフランスがEUに対して強い指導力を発揮しその波及効果でルクレールの採用国が増えてたら戦車供与を巡って大騒動にならないで済んだのかもしれない
ただ自国中心主義の傾向が強いフランスがEUにおいてドイツ並みの影響力が持ているかとかルクレールがレオ2のシェアを奪い取れるほど力があったのか知らんけど

    ヤゾフ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

ルクレールはパワーバックあたりのメンテ面倒というのが散見されるのでメーカーの供給体制整わないと難しいところもありそうです。
3

無無
2023年 1月 23日

返信 引用 

なし崩し的に強力な戦車供与の流れになったのは、それだけウクライナ側の戦況が芳しくないからかという不安が先立つ
ロシアが二月攻勢に出たときに戦線を持ちこたえられるのか
8

    ヤゾフ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

とはいえ、ロシアの進軍がバフムートあたりのみという中々笑える結果ですし、ウクライナ側は意図的に苦戦を誇張してハードル下げを狙っている部分もあるでしょう。
ロシア側の苦戦は人員補充だけで解決出来ない問題もありそうなので戦線瓦解はないと思います。
7

戦略眼
2023年 1月 23日

返信 引用 

ドイツは、Leopard2を買い戻したいのではないのかな。
ドイツ軍自身1000輌程は確保したいのでしょう。
現在、NATO諸国で戦車を新造していないので、A7Vへの改修ベースとして必要なのでしょう。
まずは、ドイツ手持ちのLeopard1をA6に改修して送り、C2やASも確保出来ればベストなんだが。
もう、T-72系列のストックは、枯渇したのかな?
1

    ヤゾフ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

末尾No.がイスラエルのマガフみたいになってきたなと…
    panda
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

いえ、T-72系列を装備した新たな旅団を編成しているとの事なので枯渇したと言う事はないと思います
1

k
2023年 1月 23日

返信 引用 

戦車って運用する為に意外とマンパワー必要
いくらスペック高い戦車でも慣れない寄せ集めの車両だとあちこち乗り捨てられそう
鹵獲されてもいいのかな
1

    hoge
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

供与されるのは恐らくLeopard2はA4,A5のような80年代〜90年代の骨董品で博物館にいるようなやつだから技術的に問題なく、Challenger2も90年代から更新していない骨董品で当時から装甲以外の性能不足が叫ばれていた。
Leclercも多分旧モデル。

逆に言うと、ロシアのアップグレードが適用されていない旧モデルの戦車(T-72A/B, T-80BV, T-62M)相手にしか性能の優位性はなく、言われているようなゲームチェンジャーにならない可能性が高いのでは。
3

ななし
2023年 1月 23日

返信 引用 

現時点のドイツのスタンス
①レオパルト2を供与する方向で関係各国と詳細条件の詰めを行っている
②一部の国が先走ってレオパルト2を供与しても黙認する
こんな感じなのかな
3

    ヤゾフ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

現時点では両方並行してやってる感じです。
ドイツ内の見解見てても割れてるので、ラインメタル社を表にしてリスクヘッジやってる状態です。
レオ2の能力実証出来ればその後の戦車開発もやり易くなるとは思うのですが、ドイツ内は親ロシアや共産主義者多いです。
2

名無し
2023年 1月 23日

返信 引用 

東ドイツに親ロが多いというのがそれこそ解せん
旧共産圏はほぼほぼ反ロなのになぜ旧東ドイツだけ?
2

    み
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

大戦後の反米感情が残っているのではないでしょうか。
敵の敵は必ずしも味方ではないのに・・・。
1
     
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

親露が多いわけではなく、反宇(ウクライナというより現体制)が多いだけです。
元々アメリカが入れ込んで成立させたマイダン革命というものについて、ドイツはロシアにケンカを売る行為で周辺を不安定化させるとして懸念しており、このリスクをウクライナを封じ込めることでヘッジするためにミンスク合意などでも大きな役割を果たしてきました。
そしてドイツが再三ミンスク合意違反についてロシアを刺激するなとウクライナに警告していたにも関わらず、このドイツの懸念が現実に武力衝突として起こったのが今回のウクライナ戦争です。
(ロシアのミンスク合意違反についてはドイツから見て重要ではないのでここでは触れません)
ドイツ国民からして見れば自分達の言うことを聞かずに事態を悪化させ何の得にもならない戦争を起こしておいて……という感情が大きいです。
その感情の矛先は主にアメリカとウクライナに向けられています。
4
        ぁ
        2023年 1月 23日
        返信 引用 

     アメリカから言えば、再三ロシアにエネルギー供給を依存するなと警告してたのにこのざまか、って感じじゃないですかね。
     再生可能エネルギーというリベラル思想と、安いエネルギーが欲しかったドイツ産業界の思惑が一致した結果が今の有様かと思いますね。

     正直、戦争開始のずいぶん前から、私なんかは個人的には、ドイツのロシアからのエネルギー依存の大きさは、民主主義国家が独裁国家に依存する限度をはるかに超えてると思ってましたので、正直、愚の骨頂じゃないかと思っていましたね。
    1
        ぁ
        2023年 1月 23日
        返信 引用 

    追記で。

     NATO側に無責任な拡大志向があったのはこれもいなめませんが、しかしドイツ側にも、今の自分達のおかれた現況の責任がないとも、これはまったく思えないほどの体たらくぶりはあるんじゃないかとは思いますね・・。

R232
2023年 1月 23日

返信 引用 

レオ2譲渡が始まるのは評価するけどさ。
契約変更じゃなくて契約無視を黙認って法治国家的にどーなのよ?
ロシアのウクライナ侵攻を国際法違反って批判してたの忘れた?
3

折口
2023年 1月 23日

返信 引用 

管理人殿のおっしゃる通りで、この「妨害しないだろう」というのは透明な注釈が何枚もついた言葉に見えますね…。

国防相が個人の見解として述べた事は連邦軍の見解とは限りませんし(やらかした大臣のはしごを軍が外した事件から1ヶ月と経ってない)、戦車の運用に必要な部品や弾薬の供給でドイツ国内企業のお世話になる以上はどっちみち国家としての最終承認は必要でしょう。また、長期的にはKMWやラインメタルが持つパテントの問題もあるので、やはり「見てないから今のうちに送っちゃえば」は厳しいですよ。第一次中東戦争のクロムウェル巡航戦車のような事は今じゃなかなか出来ませんよね。』

激しいバフムート巡る戦い、ゼレンスキー大統領が追加動員を行うよう指示

激しいバフムート巡る戦い、ゼレンスキー大統領が追加動員を行うよう指示
https://grandfleet.info/european-region/fierce-battle-over-bakhmut-president-zelensky-instructs-additional-mobilization/

『ウクライナ軍とロシア軍のバフムート巡る戦いは激しさを増しており、ゼレンスキー大統領も22日「軍に追加の予備戦力を確保するよう指示した」と明かしため一般人の追加動員に踏み切るようだ。

参考:Военное руководство получило задание создать резервы личного состава – Зеленский

戦況マップは「少ない手がかり」を元に推定の前線位置を引いたものなので、その辺を差っ引いて見てほしい

まずウクライナ軍がイワニフスキーのⒶ=48.568371, 37.911894で「ロシア軍と交戦している可能性」を示唆した視覚的証拠が登場、これが事実ならロシア軍はコンスタンチノフカからバフムートに向かう幹線道路「T0504」まで約800mの位置まで来ていることになる。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ロシア軍が「バフムート市内の南にある墓地からコトフスキー通りに向かって前進している=Ⓑ」と主張する視覚的証拠も登場、ジオロケーション的に動画の撮影された座標がどこなのかは特定できないが、もう南の防衛ラインは市街地から市内に下がってしまったのかもしれない。

さらにバフムート市内のⒸ=48.592215, 38.031754付近をロシア軍がTOS-1で攻撃(サーモリック爆薬を弾頭に搭載したロケット弾による攻撃)している視覚的な証拠、クラスナ・ホラのⒹ=48.671771,38.019501付近の敵がウクライナ軍の砲撃で壊滅している視覚的な証拠が登場、この両方は推定前線の位置と符号する。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

ウクライナ軍参謀本部が21日に「ヤヒドネに対する攻撃を撃退した」と発表した件について「様々な解釈」と「推定前線の位置」がSNS上に披露されてるが、最も現実的な解釈は「高台にヤヒドネの梺付近にピドロドネ方向からロシア軍が前進してきた」というもので、Ⓔ付近=48.634603, 37.999797に線を引く観察者が多いものの所詮は推測なので信じ過ぎるのは危険だ。

上記の戦況マップは「少ない手がかり」を元に推定の前線位置を引いたものなので、その辺を差っ引いて見てほしい。

出典:President of Ukraine

因みにウクライナは昨年の7月までに約100万人(軍70万人、国家親衛隊9万人、国境警備隊・沿岸警備隊6万人、国家警察10万人)を動員、レズニコフ国防相は「一般人の追加動員は今のところ必要なく、軍が要求する専門技術を有した人々のみ招集を行っている」と述べていたが、ゼレンスキー大統領はキーウ大学の学生と会談した中で「軍に追加の予備戦力を確保するよう指示した」と明かしため、ウクライナは一般人の追加動員に踏み切るようだ。

関連記事:ウクライナ侵攻331日目の戦況、ロシア軍がバフムート包囲に向けて前進
関連記事:祖国を守るウクライナ軍、兵士の総動員数が約100万人に到達する

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 16 』

『 (=^・^=)
2023年 1月 23日

返信 引用 

ロシアの侵攻スピードが極端に速くなってきてるのでウクライナ軍の撤退が既に開始されてるように感じるな
9

まつ
2023年 1月 23日

返信 引用 

追加動員よりブラットレーの早期導入だろうが。
1

もへもへ
2023年 1月 23日

返信 引用 

去年末頃に出たウクライナの戦死者数は彼らが言うには1万ぐらいで、その通りだとするとソレダル近辺の戦いで倍になったとしても2万、負傷者をその4倍と考えても10万いくかどうか。

まだ余裕があって追加動員しなきゃいけないほどの状況ではないと思うが。
ただでさえ総動員に近くて民間に余裕ないのに。
3

    タカ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

 おそらくウクライナの死傷者はそれより多いのでしょうね。
ただモーツァルトグループのアメリカ人教官がバフムートで戦っている兵士の8割がろくに訓練を受けていない、と言っていたので、動員していても訓練リソースが足りない状況なのだと思います。
今訓練している最中ということなのでしょう
 ウクライナは直接の戦場になっており普通の経済活動は大幅に収縮した状況なので、サービス部門から軍隊への動員はむしろスムーズなんじゃないかと思います。
 ひどい話ですが…。
15
        スマック
        2023年 1月 23日
        返信 引用 

    開戦初期は志願兵が殺到して自宅待機を命じられるくらいだったが、動員せねば兵が集まらないということは以前のような熱狂は無くなったということだろう
    政府がいくら優勢アピールをしてもネットで現地情報を得られるから、経験の浅い素人兵が行っても肉壁にしかならないことを皆知ってしまった
    13
    ななし
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

どこの国でも同じだけど自軍の犠牲者の発表はできる限り少なく発表するものだし、その倍以上死傷者がいても驚かない
そして何より守る戦線が広すぎて、攻撃側がある程度戦力集中できるのに対して防衛側は分散しなきゃいけないのもある
ロシアがベラルーシへの戦力移動とか南部での攻勢で牽制しまくっているしね
そして精鋭兵力は攻勢のために温存する必要があり、おまけに多種類送られてくる新規装備のために訓練で相応の人数が一定期間戦場を離れる必要もある

…と考えると、防衛と足止めのための『そこまで訓練が必要とされない』徴収兵が必要になっててもおかしくない時期なのではないかな、と思ったり
ロシアではないですが、大砲の餌になるとわかってはいてもそれで時間が稼げるのも間違いないですし

TKT
2023年 1月 23日

返信 引用 

ごく普通に考えて、ここでウクライナが追加動員を行うというのは、ウクライナ軍の死傷者が物凄く多い、あるいは最近ではロシア軍よりも多いということかもしれません。

ソレダルのウクライナ空挺旅団の兵士が言っていたように、実際はもはや死傷者の人数は不明、というのもこの状況では当然で、もちろん捕虜になったり、失踪したウクライナ兵も少なくないでしょう。

動員自体も全て上手く行っているとはもちろん限らず、強制的な総動員では徴兵忌避者などもいて当然です。

バフムトはこのままだと、完全包囲に至る前に陥落する、あるいはバフムトを守るウクライナ軍が完全包囲される前に先に退却するかもしれません。ただイワノフスキーのロシア軍がそれより先にチャシブヤールや00506道路を制圧すると、退路を遮断されてしまいます。北のヤビドネもすでにロシア軍に攻撃されていて、ウクライナ軍が守り切れるかわかりません。

また道路自体を制圧しなくても、クリシェイフカのような高地から退却するウクライナ軍を観測して砲撃することも可能です。
10

タカ
2023年 1月 23日

返信 引用 

 これは今というより近い将来、新たな戦線を作ろうとしているロシアへの対応なのではないでしょうか。
今訓練している攻勢用の戦力を、防衛に回さざるを得なくなるのを防ぐためかと。
 ロシアはおそらく装備の全然そろってない兵士でも、首都の近くで突撃させてウクライナへの対応を迫ってくるでしょうから。
3

     
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

まずそのロシアは装備で劣っていて数で補っているという幻想を捨てましょう。
記事にある通りウクライナの動員規模はこのようなもので、死傷者がどれくらいいるのかは推計しか出来ませんが、現在展開している戦力は少なく見積もっても50万を超えるでしょう。
対してロシアの規模はおそらく40万程度です。
それでもなお拮抗する程度なのがウクライナ軍の現状です、単純に見積もればロシア軍の方が1.5倍程度装備なりシステムなりで精強です。
6

ニワカアメ
2023年 1月 23日

返信 引用 

ドンバスの「平定」はロシアにとって
この戦争の意義そのものでもあるので
流石に兵力の投入度合いが大きいようですね
少し話題から逸れてすみませんが
バフムートの近くに「ニューヨーク」
という町があるなんてなんか皮肉ですよね
1

panda
2023年 1月 23日

返信 引用 

ドンバス平定と言っても中心都市のクラマトルスクやスラビャンスクは遥か遠く
どう決着するにしろ戦争は長引きそうですね
5

    ヤゾフ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

結局バフムート落として何?てレベルですからね
ロシア側がもっとやる気出してドンバス平定するには人員に兵器も足りない
正直ロシアにはピュロスの勝利が常に付き纏っている状態で戦術上の勝利がどうなるか…
4

paxai
2023年 1月 23日

返信 引用 

100万人動員してもまだ足りんというぐらい被害が大きいならもう停戦交渉するべきだよ。
ウクライナの人口から考えて今回動員される人々の兵士適正は低いでしょ。なんなら女子供年寄りかもしれん。そしてそんな人達に戦わせても戦果は乏しいものになる。
そりゃ辛い選択だけども・・・
8

    panda
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

ウクライナ国民が言うならともかく外野から見ている我々が言うべきことではないでしょう
少なくともウクライナが抗戦の意思を示しているうちはね
18
    ヤゾフ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

それそのままロシアに当てはまるけど、ちゃんと人口動態とかの統計データ見てますか?
より良い未来のために生きて未来を見ることなくても、戦うのが防衛です。
5

りにあ
2023年 1月 23日

返信 引用 

日本もロシアも寒波近しではあるものの大寒になってもウクライナ泥濘という温暖化ぶりです。冬将軍泥将軍は双方にメリット・デメリットがありますが。
バフムト南境はサッカー場あたりが前線に来そうですね。いっそ両軍サッカー試合でサッカー場争奪すれば・・・と思いますが。
また、温暖化もロシア経済にプラスになっているかもしれません。不毛の冬季酷寒シベリアも温暖化で経済活用しやすくなるかもしれません。そうなるとロシアはメルカトル図法で、でかく見えるだけ、でもなくなります。』

国防省情報総局、ウクライナ勝利を望んでいない人間がキレフ氏を処刑した

国防省情報総局、ウクライナ勝利を望んでいない人間がキレフ氏を処刑した
https://grandfleet.info/european-region/defense-ministry-intelligence-directorate-says-kirev-executed-by-people-who-dont-want-ukraine-victory/

『ウクライナ国防省情報総局のブダノフ准将は22日、キレフ氏殺害事件ついて「和平交渉における立場の弱体化が目的でウクライナ勝利を望んでいない人々が一定数いる」と明かして注目を集めている。

参考:«Денис Кірєєв – співробітник ГУР, якого вбили в автівці СБУ, а тіло викинули на вулицю». Інтерв’ю з Кирилом Будановим
ウクライナの勝利を望んでいない人間による英雄(キレフ氏)への冒涜を絶対に許さない

ポドリャク大統領府顧問は事件について「キレフ氏はウクライナ侵攻計画に関する貴重な情報をもたらした人物で、彼が誤って殺害されたの保安庁と情報総局の間に統一された調整がなかったためだ」と明かし、国防省情報総局(GBR)のブダノフ准将も「もし彼がいなければ恐らくキーウは占領されていただろう」と述べて注目を集めていたが、Radio Free Europeもブダノフ准将への取材に基づき「キレフ氏の殺害状況」や「事件の背景」について報じている。

出典:Головне управління розвідки Міністерства оборони України キリロ・ブダノフ准将

前回記事「ロシアのスパイとして射殺されたキレフ氏、実際はキーウ占領を阻止した功労者」を読んでいる前提で書き進めると、ウクライナ保安庁(SBU)に拘束されたキレフ氏は事情聴取を受けるため車輌でSBU本部に移送されていたが、本部建物の200m手前でアルファ部隊がキレフ氏の身柄を強奪して別方向に走り去り、数ブロック離れた街中で射殺したキレフ氏の遺体を投げ捨てたらしい。

ブダノフ准将は「キレフ氏を処刑した犯人をよく知っている(捜査が行われているので実名は明かせない)。犯人達はロシア代表団の主要人物に精通したキレフ氏を排除することでウクライナ代表団を混乱させたり、交渉におけるウクライナ側の立場を弱めたいという目的を持っていた。GBRの干渉を排除して防衛のための時間稼ぎ(和平交渉)を壊そうした」と指摘し、国内にはウクライナの勝利を望んでいない人間が一定数いると付け加えている。

出典:Public Domain

つまりブダノフ准将は「保安庁と情報総局の調整不足(情報共有)がキレフ氏殺害の原因ではなく、国内に存在する『ウクライナの勝利を望んでいない人間』がSBUのアルファ部隊を動かして処刑(超法規的措置)させた」と示唆しており、我々の英雄(キレフ氏)を冒涜するようなことは絶対に許さない述べているのが印象的だ。

因みにウクライナ大統領府顧問を辞任したオレクシー・アレストビッチ氏も「もう自由に喋ることができる、キーウ内部は権力闘争の真っ最中だ」と述べた。

関連記事:ロシアのスパイとして射殺されたキレフ氏、実際はキーウ占領を阻止した功労者
関連記事:ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問、ロシア側のエージェントと非難され辞任

※アイキャッチ画像の出典:Служба безпеки України
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 17 』

『 チェンバレン
2023年 1月 23日

返信 引用 

疑心暗鬼・内部抗争
ウクライナ側もいろいろ見えてきましたね

侵略という絶対悪に対抗するにも一枚岩とは行かないものですな
29

     2023年 1月 23日

返信 引用 

なかなかキナ臭い話になってきましたね。
元は以前から言われていた内務省+保安庁vs国防省の主導権争いなんでしょうが、そこに国立貯蓄銀行副総裁が暗殺されるほど絡むとなると金の匂いまでしてきます。
国防省の側が保安庁にスパイがいると公然と発表するほど強気に出るとなると、この間のヘリ墜落と内務相らの死亡の件も事故とは言い難い感じがします。
29

くじら
2023年 1月 23日

返信 引用 

ポーランド領内にミサイルが着弾した時の初動もこのあたりの事情に起因してるんだろうか……SBUの職員数が約三万人、本来ならСЗРУとGBUを加えて三角形の相互監視関係を構築、緊張関係を維持しつつその上に立つ政治家が裁定者として振る舞うことで抑止関係を構築させるべきなんだろうけど(ロシアはそうしてる)、SBUが巨大すぎてこれが成立してなさげに見える

親ロ派が諜報機関に派閥持ってるなんて次元を越えて、それ自体が軍閥ムーブかましてるのかね。アゾフ連隊始め民間資本出資を受けた保守系軍閥が誕生してく過程なんて中国清朝末期の郷勇みたい

……ようは正規軍や諜報機関、警察組織といった法執行機関に存在する親ロ派(もとい旧ソ連信奉者?)を排除しきれなかったからこそ、化学反応みたいにオリガルヒが軍閥を自分で作ったわけで。とはいえウクライナの新興財閥連中も当初はロシアに領土が占領されたら利権を失うからこそ、権益維持のために武装したというのが実態だったんだろうけど

改めてこの侵略戦争はソ連帝国崩壊の余波なんだなって、帝国復活を目指す連中と旧宗主国から独立を回復・維持したい連中との対立そのもの。プーチンがいなくても他の誰かが帝国の復活を意図して侵略戦争を始めてたのかね、歴史的構造にはまってるというか
22

    魚虎
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

まさにソ連の断末魔というやつですね
規模的にもこの戦争がそう呼ぶにふさわしい形となりそうです
5
    ぁ
    2023年 1月 23日
    返信 引用 

まあ、個人的には・・、
この戦争はウクライナの独立戦争だと思ってますね、実質的な・・。
8

ウクライナ侵攻331日目の戦況、ロシア軍がバフムート包囲に向けて前進

ウクライナ侵攻331日目の戦況、ロシア軍がバフムート包囲に向けて前進
https://grandfleet.info/european-region/331st-day-of-ukraine-invasion-russian-forces-move-forward-to-besiege-bakhmut/

『331日目が経過したウクライナ東部戦線の状況は「ロシア軍がバフムート包囲に向けて前進」「これと並行してシヴェルシク方面にも突破を図っている」というのが最大のポイントで、ザポリージャ方面でもロシア軍が動き出している。

参考:Генеральний штаб ЗСУ Situation update as of 6 a.m., January 21, 2023

ロシア軍は動員した兵士への訓練が完了する2月に向けて何かを企んでいるのかもしれない

331日目を経過したウクライナ東部戦線の状況はロシア軍がバフムート包囲に向けて前進、これと並行してシヴェルシク方面にも突破を図っており、ウクライナ軍参謀本部が21日に発表した戦況報告を反映した戦況マップ(推定)は以下のようになる。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

参謀本部が「敵の攻撃(砲撃ではなく地上部隊による接触)を撃退した」と発表した拠点は円で囲んだ6拠点で、攻撃を受けていた「クラスノポリフカ」と「クリシェイフカ(露国防省は20日に占領したと発表)」に触れなくなったためロシア軍に奪われた可能性が高く、逆に「ヴァシュキフカ」と「ヤヒドネ」への攻撃が新たに登場した。

ヴァシュキフカ付近まで敵地上部隊が到達しているということは「ソレダル北西にある高台の防衛ラインが破られた」と解釈するのが妥当で、シヴェルシク方面は幹線道路「T0513」によるアクセスを失っているためヴァシュキフカからライ・オレクサンドルフカ方向に突破されるとウクライナ軍にとっては不味いことになる。

出典:Сухопутні війська ЗС України

さらに「バフムートの西に位置するヤヒドネ付近で戦闘があった」という言及をどの解釈すればいいのか難しいが、ピドロドネ方向からの攻撃が「バフムート市内のT0513まで到達している」としか言いようがなく、バフムートへのM03経由によるアクセスは厳しくなっているのだろう。

クリシェイフカを突破したロシア軍がどこまで到達しているのかは謎だが「Predtechyneで敵地上部隊の攻撃を撃退した」と参謀本部が言及しているため、クリシェイフカの北西に広がる高台(クルデュミフカ~チャシブ・ヤールを繋ぐ道路沿い)もロシア軍に押さえられた可能性があり、この地域に関してはウクライナ軍にとってポジティブな要素(個々の交戦シーンの動画は沢山見つかる)が全く見つからない。

出典:GoogleMap ザポリージャ州の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

比較的平穏だったウクライナ南部戦線でもロシア軍が動き出しており、ザポリージャ方面におけるウクライナ軍の防衛ライン(T0812~オレホボ~T0815)で両軍が交戦して「マリ・シェルバキーをロシア軍が占領した」という報告があるものの、この地域の情報は殆どがロシア側の情報源に基いているので「ザポリージャ方面でロシア軍の攻勢が始まった」と判断するには時期尚早だ。

ただ「ドネツク近郊のパブリフカ方面でもロシア軍が攻勢に出た」という報告があり、ウクライナ軍参謀本部も「敵がクピャンスクに対する攻撃を強化している」と指摘しているため、ロシア軍は動員した兵士への訓練が完了する2月に向けて何かを企んでいるのかもしれない。

因みにクレミンナについては専用のマップを作成中だが特に大きな動きは観測されていない。

追記:ロシア軍元大佐のイゴール・ガーキン氏は「ザポリージャ方面で大規模な攻勢が始まった。ザポリージャ(州都のこと)に向けて前進することは可能だが、ザポリージャやドニプロに配備されている敵予備戦力をバフムート方面に引っ張りだせなかったため戦いは長引くだろう」と予想し、戦争全体の主導権を巡る第二ラウンドが「予想よりも少し早く始まった」と述べている。

関連記事:ウクライナ侵攻323日目の戦況、ロシア軍がソレダル周辺で突破口を開く
関連記事:米政府、武器の準備が整うまで攻勢を控えるようウクライナに助言
関連記事:米軍のミリー統合参謀本部議長、ロシア軍の死傷者数は10万人を大幅に上回る
※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 21 』

『 たら
2023年 1月 22日

返信 引用 

一気に戦線が動くとすれば、一日でどのくらいの距離、面積の動きがあり得るのでしょう?今見ている状況はウクライナがコントロールし得ているのでしょうか?それとも、戦線崩壊と評価した方が良いのでしょうか?
3

    ため息
    2023年 1月 22日
    返信 引用 

はっきり書いてしまいますが、私は諸処の事情から心情的にロシア寄りですが、
それでも戦線が全面崩壊してるとは思えません。ザポリージャにはウクライナの
予備役が向かっているので、まもなく食い止められるでしょう。

ウクライナにとって最も問題なのはバハムトの北、シヴェルシクの南です。
ここの前線は部分的に崩壊していると言っていいと思います。ロシアの進軍を
止められていません。

一気に戦線が動くとすれば管理人さんが記載しているように、ロシアが残りの
追加動員兵20万をどこに投入するか?で変わりますね。
現状攻勢をかけている所に追加投入するのか、要塞化されていない他の地域か。
それによって、前線がいつどのくらい動くかは全く変わると思います。
今ゲラシモフとスロヴィキンはじっくり作戦を練っているはずです。

ロシアが一貫しているのは、要塞化されている都市を時間をかけても包囲して
いっているので、そこから考えると個人的には電撃戦はないように思えますが。
26
     
    2023年 1月 22日
    返信 引用 

距離で言えば1日で数キロも動くようであれば防御側の戦線は崩壊したと見ていいでしょう。
第二次大戦中のソ連だとドイツ前線を完全に撃滅せしめて5週間で700キロ前進した例もありますが、市街の増えた現代でこの前進速度はまあ無理な気がします。
現在の状況で言うと、東部は相当マズいです。
この方面の都市は要塞化されているのでそうそう簡単に落ちませんが、どうやらロシアの郊外から包囲する動きに対応出来る機甲戦力がウクライナにはもはや残されていないようで、都市の要塞に籠もっては包囲殲滅される状況に近づいているように見えます。
南部はまだ動きがあった段階なのでなんとも言えませんが、ロシアから見て首尾良くザポロージェを陥落せしめたとしても他の戦線に利することはあまりないので、これは助攻でやはり主攻は東部だと思います。
ただしこの方面の部隊がザポロージェに拘らず北東に進出する場合には東部と連携される可能性があるのでこちらが主攻の可能性もあります。
ドニプロから東部への大動脈となっているE50が遮断された場合ウクライナが東部に展開する全軍の補給に深刻な悪影響が出ます。
もっとも、E50までの縦深は深いのでそこまで短期で進出を許すことはないとは思いますが。
13
    TKT
    2023年 1月 22日
    返信 引用 

まずウクライナ軍の損害は公表されておらず、またソルダルのウクライナ空挺旅団の兵士の証言のように、もはや死傷者の正確な人数はわからない、というのはこの戦況では当然と思われ、またそうであるなら、なおさらウクライナ軍の発表する死傷者の人数も不正確であると考えるべきでしょう。

そもそも戦争、特に野戦などは、敵味方の正確な死傷者の数や人数、残存兵力など、わからないままで戦うしかない、というのが普通なのです。

しかしロシア軍の方についていえば、ロシア軍の死傷者の人数がたとえ何人であろうとも相当な数の予備の兵力や武器、弾薬、装備を持っていると考えるべきでしょう。そうでなければ、これほど各地で攻勢を行えるわけがありません。

クレミンナでは、第76赤旗親衛空挺師団が、バフムトでは第106赤旗親衛空挺師団が投入されていると言われますが、ロシア空挺軍のこれらの師団が最精鋭の戦略予備兵団であることは間違いありません。ロシア軍はそれらを投入し、クレミンナではウクライナ戦車部隊の突撃を阻止し、また一方でバフムトではウクライナ軍を包囲しつつあります。

あとはウクライナ軍の方にどれだけの戦略予備の精鋭と言える部隊が残っているかということに、総崩れの崩壊なのか、予備の精鋭を投入しての阻止が可能であるかが左右されます。

クレミンナでは戦車が主力の部隊を突撃させましたが、これは結局阻止されたと言われ、おそらく戦車の損害も多いでしょう。

ソレダルに投入された空挺旅団の損害はよくわかりませんが、いずれにしてもかなりのものでしょう。

バフムトには、フォーブス紙の記事では、戦車旅団、空挺旅団などを中心とする最精鋭の数個旅団が投入されていたと言われ、今どれくらい残っているかわかりませんが、下手をすると完全包囲されて壊滅します。

またさらにそれら以外のどんな部隊、旅団が残っているかですが、領土防衛隊などは素早い移動は難しく、トヨタや日産のピックアップなどで移動しているとも言われますが、砲撃により移動中に相当の損害を出しているともいわれ、ブラッドレーやストライカーなどを供与しようというのもそのため、つまりウクライナ軍の損害が多いからです。

ポーランド軍はT-72を装備する戦車旅団をこれから編成すると言われますが、それはウクライナ軍の戦略予備が少ないからで、西側諸国が戦車が足りないと連呼するのもそのためです。

もしも、クレミンナやバフムトで、ウクライナ軍の戦車旅団が壊滅していて、もはやほとんどウクライナ軍に戦略予備の精鋭部隊が残っていない場合は、文字通りウクライナ軍は総崩れ、戦線崩壊となる可能性もあります。昔のファレーズを突破した後のパットン大戦車軍団のように
「燃料が切れるまで突っ走れ!」
となるかもしれません。ガスタービンのエイブラムス戦車と違って、小型軽量でディーゼルのT-72の燃費はいいのです。

もともとドネツク州は地形が兵站で、障害になる場所が少なく、そうであるからこそ地下鉱山のあるバフムトやソレダルが重視されていました。バフムトなどはNATOの支援で数年かけて要塞化されたとも言われます。

またいくら要塞化しても、敵を阻止するのは火線、火網の構成であり、砲弾がないとか、またそれ以前に砲身がないとか、砲撃ができない状態では、たとえ穴だけあっても隠れることしかできません。

ロシア軍としては、チャレンジャー2とか、チェコのT-72とか、ブラッドレーや、ストライカーが前線に来る前に行けるだけ行っとこう、というような気分になっているかもしれません。

ザポロジェなども、様子見しながら進んでいる状態だと思いますが、アメリカのミリー参謀総長が今年中の失地奪回は無理と言ったり、米軍がしばらく攻撃するなとか、とか言っているので、メリトポリ奪回のためにウクライナ軍が南下することは当分ないとロシア軍は判断しているのでしょう。
9
        日出超
        2023年 1月 23日
        返信 引用 

    状況の分析というよりも、自分の思い描くロシア大進撃のシナリオに酔いしれている感じがする。事実としての情報に希望的な観測が侵食して大戦末期の旧陸軍の分析みたいだ。
    3

ウクライナとNATOの東方拡大

ウクライナとNATOの東方拡大
https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/47/fujimori/fujimori-1.html

 ※ 北大の「スラブ・ユーラシア研究センター」というところ発出の情報のようだ。

 ※ 『センターの歴史は、1953年6月24日、北海道大学にスラブ 研究室が組織されたときに遡ります。これはロシア(ソ連)を はじめとするスラブ地域との関係が深かった北海道の地に、 日本のスラブ研究の核を作ろうとする歴史的な試みでした。 1955年7月1日、スラブ研究室は北海道大学法学部附置ス ラブ研究所(後にスラブ研究施設に改称)として官制化され、 わが国唯一の総合的なスラブ地域研究機関として活動するこ とになりました。そして1978年4月1日、北海道大学共同教 育研究施設に改組されるとともに、スラブ研究センターと改称されました。 』というものらしい…。
( https://src-h.slav.hokudai.ac.jp./center/index11.html )

『はじめに

 1999年3月、北大西洋条約機構(以下、NATO)は、ポーランド、ハンガリー、チェコの加盟を正式に承認した。この結果、ウクライナはNATO加盟国及びロシアとそれぞれ国境を有することになった。ウクライナはソ連末期の共和国主権宣言以来、中立・軍事ブロックの外に立つことを標榜しており、この二つの勢力の間でウクライナがとる安全保障政策は、NATOとロシアの両者にとって極めて重要な意味を持つ。つまり、ウクライナの動向は欧州安全保障の重要な構成要素となっているのである。

 近年、ウクライナは、NATOの東方拡大を「ヨーロッパにおける安全と安定を強化し民主主義と自由を確立するもの」として歓迎している(1)。実際、NATOが提唱した「平和のためのパートナーシップ構想(以下、PfP)」に対してウクライナは独立国家共同体(以下、CIS)諸国の中でもっとも早く参加を表明し、NATOへの将来の加盟を示唆するなど、NATOに対する積極的な姿勢を見せている。一見すると、ウクライナは独立以来一貫してNATOや欧州連合(以下、EU)への接近を模索しており、NATOの東方拡大を利用して西欧との関係強化に乗り出しているかに見える。しかし、実際のところウクライナが採ってきた政策はそれほど単純ではない。ウクライナは独自の安全保障圏構想をヨーロッパ諸国に提起し、PfPに不快感を表明したことさえある。また、EU経済圏との統合は進まず、依然として経済の対露依存傾向が続いている。特にエネルギー面での対露依存は現在でも圧倒的であり、それが最も顕著に表れたのが93年から94年にかけてのウクライナ経済危機であった。
 本稿は、ウクライナとNATOとの関係を分析しつつ、ウクライナ独自の安全保障政策に注目する。そして、その政策が、対ロシア、対NATOとどのように関係していて、どのような特徴・方向性を持つのかを検討することを目的とする。NATO=ロシア間でウクライナが置かれている位置が明らかになれば、自ずとウクライナが採り得る政策の幅も明らかにすることができる。

 本稿は以下のような構成をとる。第一節において、ウクライナが置かれている客観的条件として経済問題を論じる。いうまでもなく、安全保障政策は、軍事力によってのみ維持されるものではなく、経済もその重要な構成要素となる。特に、ウクライナは経済的にロシア依存度が高く、従って経済問題は安全保障上大きな位置を占めている。多くの論者は93-94年の経済危機によって、ウクライナは政治的にも軍事的にもロシアに回帰せざるを得ず、国家として存続することが困難になるのではないか、と予測した(2)。

しかしウクライナは大統領選挙後の94年秋から国際通貨基金(以下、IMF)と協同した経済改革を実施し、結局ロシアへ回帰しなかった。その理由は何だろうか。この最も動揺した時期におけるウクライナの経済安全保障政策はどのようなものであったのか。

 第二節では、ウクライナの主体的な姿勢として、ウクライナが展開した中立外交について論じる(3)。ウクライナは主権宣言において、中立・軍事ブロック外国家であることを宣言している。ウクライナが提唱した「中・東欧安定・安全保障圏」および「中・東欧非核兵器圏構想」は、欧州中立国の架け橋外交を模したように見える。ウクライナも、欧州中立国が展開した外交に類する活動を行っていたのではないか。これらの構想には、欧州中立国が冷戦期に展開した中立外交と同じ論理が働いたのか。そしてなぜウクライナの中立外交がことごとく実現せずに終わったのか、以上の点を検討したい。

 第一節で論じたウクライナが置かれている客観的な制約条件、第二節で論じたウクライナの主体的な姿勢を踏まえて、第三節においては、NATOの東方拡大に対してウクライナが示してきた解釈の変化を論じる。ウクライナが、ロシアからの影響と自国の主体的な姿勢としての中立外交を考慮した上で、NATOの東方拡大に対してどのような反応を取ったのかを論じる。ウクライナは、NATOを自国の安全保障政策の中でどのように位置付けているのか、最終的にはどのような欧州安全保障の展望を抱いているか、を明らかにしたい。

1. ウクライナ経済とロシア

(1)新経済政策からCIS経済同盟へ

 1992年1月、ロシアは価格自由化を一国で開始した。ウクライナ側は、事前協議において価格高騰に伴って必要とされるルーブル・キャッシュの準備不足から、価格自由化開始の延長を要求した。また、CISルーブル圏のための造幣局を創設し、各共和国に必要なルーブル紙幣が行き渡った後に価格の自由化を同時に実施するよう求めた。しかしロシアは、各共和国の経済が異なる条件や問題を抱えることを理由に一国での価格自由化を強行したため、ウクライナはルーブル圏離脱を余儀なくされた。ルーブル圏にとどまる限り、ロシア発のインフレがウクライナに波及し、ウクライナ商品がロシアへ流出することが不可避となることは明らかであった。さらには、ロシア中央銀行がルーブル札の発行を独占するために、ウクライナはルーブル紙幣の不足にも対応することができなくなる状況に直面したのである。

 そのため、ウクライナはルーブル圏からの離脱を主目的として、92年3月に「新経済計画」を採択した。クラフチュク大統領(当時)は議会演説において、新経済政策の意義を次のように述べた。「連邦消滅にもかかわらず、ウクライナ経済は財政・金融・通貨政策を通じて外部から支配されており、それは共和国経済に危機的状況を作り出している。独立国として独自の経済政策を実施して危機から脱出する必要がある」(4)。その具体策として、ルーブル圏諸国からの輸入の漸減、ウクライナが独占的地位を有する商品のルーブル圏諸国への輸出、兌換性を有する新通貨の導入、を挙げていた。

 つまり、経済危機の原因はロシアから生じており、ロシア・ルーブル圏から離脱すれば、経済危機は解決できる、とする見方である。

ルーブル圏からのインフレ波及の阻止以外にも、ウクライナがロシアから離脱すれば経済危機を克服することができると想定できる理由が存在した。第一に、ウクライナは元来豊かな国であり、ソ連から独立すればその潜在力が発揮されると、国民の多くが考えていた。クラフチュクは、ソ連体制のもとでウクライナは搾取されていたと主張し、国民の多くも独立によってウクライナが豊かになれると信じていた。第二に、ウクライナが元来有していた民主主義、市場経済、私有財産制などのヨーロッパ的な社会・経済的価値観を70年にわたるソ連体制が「人工的」に抑制していた、とする考えがあった。ウクライナがソ連から独立し、移行期の困難を克服し法整備を整えれば、「自然と」ヨーロッパへ回帰でき、またヨーロッパにとってもヨーロッパ的価値観を有するウクライナは魅力ある投資先になると想定されたのである(5)。

 新経済政策によってロシアより低いインフレ率を達成し、モノ不足を解消できたのであれば、独立間もないキエフ政府はその正当性を増したであろう。しかし、期待に反して、ウクライナはロシアを上回る経済危機に見舞われた。90年よりルーブル不足を補うために補助的に発給されていたクーポンは92年11月には、唯一の法定通貨「カルボバネッツ」となったが、キャッシュやクレジットの形で増発され、インフレが制御できなくなってしまった。92年1月にルーブルとの交換率1:1で導入されたクーポンは、93年初には1:2にまで下落した。また、クーポンが周辺国との協議がないままに導入されたため、旧ソ連諸国との決済関係を混乱させ、社会主義的分業で成り立っていた生産ラインを破壊した(6)。

それに加え、93年1月から実施されたロシア産エネルギーの国際価格化にウクライナは対応できず、エネルギー債務が累積した。ロシアによるガス供給の縮小・停止は、エネルギー供給をロシアに依存するウクライナの経済を直撃した(7)。また、ウクライナのガス消費量の10%を占めるトルクメニスタン・ガスは、ロシア領土を経由してウクライナに輸出されており、実質的にウクライナはエネルギーのほとんどをロシアに依存していたのである(8)。

 エネルギーの代替供給源を見つけるため、ウクライナ首脳は中東諸国を歴訪したが、外貨が決定的に不足した状態では、得られるものは全くなかった。ロシアの西側向けガスの90%はウクライナ領土経由であるため、ウクライナには、自分が持つパイプライン網を交渉材料にして、ロシアや旧ソ連諸国からエネルギーを得る選択肢しか残されていないことが明らかになったのである(9)。

 こうした中、「新経済計画」は1年後には早くも方向転換を余儀なくされた。93年5月、当時の首相クチマは、議会演説の中で、経済危機は何よりも「エネルギー危機」、すなわちエネルギー価格の高騰によるものであると指摘した。さらにクチマは、エネルギー供給源の多元化に3-5年かかるため、ウクライナ政府はロシアとの関係改善に努め、CIS諸国との経済統合路線を採用する意向である、と言明した(10)。ウクライナの対外経済政策は、「ロシア・ルーブル圏からの離脱」から「ロシアとの経済統合」に代わったのである。

 ロシア側は、ウクライナとの経済統合が政治・軍事部門での統合過程への一歩になると歓迎した。しかしながら、ウクライナ政府は、経済同盟から政治的・軍事的統合への発展を強く否定した。経済面でのロシアとの統合も、ウクライナ経済再生のための「手段」であって、「最終目標」とはみていなかったのである。であるからこそ、93年夏に議会で採択された「外交の基本方針」において、EU加盟が究極的目標であるとされ、この方針は現在に至るまで国是とされているのである。また、94年6月にEUと調印された「EU・ウクライナ提携・パートナーシップ協定」は、ズレンコ外相(当時)によれば「EU加盟への第一歩」であり、「CIS枠内での伝統的関係を失うことなく、EUとの関係が発展するもの」と位置付けていた(11)。後述するように、ロシアとの経済統合を主張したクチマもこのような考えを有していた。

(2)CIS経済同盟

 ウクライナにとってロシアは経済的には、第一に安いエネルギーの供給源、第二に国際競争力のないウクライナ製品の市場を意味していた。このため、ロシアと何らかの経済同盟を結成することが必要であると考えられた。

 まず、93年7月、スラブ系三共和国の首相が「(スラブ)三国経済統合の強化宣言」に合意した。この宣言書は、三国国民の歴史的共通性、領土の隣接、経済の発展レベルの近似を考慮し、より緊密な経済統合を目指すことを目的としていた(12)。

 モスクワで宣言書に調印したクチマ首相は、三国経済同盟の域内価格の同一化、すなわちロシア・エネルギーの内外価格差の解消を緊急の課題として挙げ、三国経済同盟はウクライナにとって有利であり主権の喪失にはならない、と述べた。また条約化のためのウクライナ側準備委員であるランデュク副首相も、三国経済同盟が第一に安価なロシア・エネルギーを求めたものであるとの認識を示した(13)。

 しかしながら、ウクライナ国内の民族主義政党は、三国経済同盟は超国家機構であり、ロシアへの隷属、ウクライナ国家の主権喪失を意味するとして、調印したクチマを厳しく批判した。彼らの中からは、CISから即座に離脱し周辺諸国(旧東欧諸国、バルト、ベラルーシ、モルドバ)との経済統合を強めて欧州統一の場を見出すべきである、との主張すら表れた(14)。

さらに、ウクライナのいくつかの州議会からも、経済同盟に対する賛否の決議が上がった。ウクライナ西部のリボフ州議会が経済同盟加盟への反対決議を採択し、翌日には東部のドネツク州議会が加盟を求める決議を行う、という状況が生じた。ウクライナ最高会議での審議は紛糾し、折りからのロシア国内情勢の混乱(大統領と議会の対立)とあいまって、ウクライナ議会における加盟決議は見送られた。

結局、ウクライナは93年9月、CIS経済同盟条約に「準加盟」資格で参加した。モスクワで条約に調印したクラフチュク大統領は、「ウクライナの危機脱出は経済同盟なしには成し遂げられないが、東西ウクライナ間の経済同盟に対するアプローチに違いがあり、ウクライナの分裂を防ぐために準加盟に賛成した」と述べた。しかし、準加盟の権限は不明確で、クラフチュクの選択は解決を先送りしたものに過ぎなかった(15)。

(3)ウクライナ国民と大統領選挙

 93年に入るとインフレーションと生産低下が加速し、93年度のインフレ率は1万パーセントを突破した。さらにはエネルギー危機が市民生活を直撃し、国民の間で経済問題に対する関心が高まった(16)。このような状況に直面し、多くの国民はCIS経済同盟ないしはロシアとの経済統合が、ウクライナの危機を救う道であると認識するようになった。

93年に行われた世論調査によれば、「ウクライナの経済同盟への加盟が危機脱出のための最優先課題である」とみなすウクライナ国民は69%に達しており、不支持は僅かに15%であった。

西部のガリツィア三州においてのみ、経済同盟に対する不支持(70%)が支持(19%)を上回った。しかし、その一方で、国民の多くは、軍事・政治的なCIS同盟の加盟には賛成しなかった。軍事・政治的なCISへの参加を支持する国民は僅かに13%であり、最も支持率の高いクリミアでもその数字は20%にすぎなかった(17)。

 94年6月に行われた大統領選挙は、実質的に現職クラフチュクとクチマとの一騎打ちとなった。一般に、両者の政治傾向は異なると言われているが、選挙公約には相当の類似が見られた。選挙公約において、クラフチュクも「CIS内での経済統合トレンドを支持」し、「二言語の公用語化」に賛成を表明していた(18)。にも関わらず、民族主義政党はクチマを「(ウクライナ国家に対する)最も危険な人物」と呼び、クラフチュクへの投票を呼びかけた。クラフチュクも選挙キャンペーンにおいてウクライナの守護者として振る舞い、争点を自らの任期中に生じた経済危機からそらそうとした。

 クチマは、ロシアとの統合は経済部門のみであり軍事的・政治的な統合はないとし、また経済統合に関しても、ロシアなしにウクライナは生き残ることができないことを認めつつも、ベラルーシ案(ロシアとの共通ルーブル圏、金融・税政策の一体化)は旧ソ連への回帰であり反対である、と言明した(19)。オデッサでの大統領選挙キャンペーンで、クチマは「我々が非常に依存しているエネルギーの供給、市場の点からロシアとの経済統合に賛成である。ウクライナ製品は旧ソ連諸国でのみ売りさばくことができる。しかしウクライナ産業は西側の最先端技術を必要としている。この点ではロシアはあてにならない」と演説し、ロシア(CIS)との経済統合がウクライナ経済生き残りのための「手段」であることを認めた(20)。

 決選投票の結果、クチマが逆転で大統領に当選した。ウクライナ東部-西部間で、投票パターンに著しい違いが生じた。確かに、この選挙には「親ロシアのクチマ」対「ウクライナ国家の守護者、クラフチュク」というロシア問題を巡る対立図式があったことは否定できない(21)。しかし、それだけでこの選挙結果を語ることはできない。

この選挙は、経済不振を招いたクラフチュク体制の存続の是非を問う側面があったことも指摘しなければならないのである。決選投票でクチマに投票した国民は、ロシアとの経済統合が経済再生への道であると見なして投票したわけであり、ウクライナ国家がロシアに吸収されることを望んだわけではなかった。つまり、この選挙を「親ロシア」対「ウクライナの守護」の選択とみなす国民より、「経済再建者」対「経済不振の元凶」の選択とみなすことも可能であった。多くの国民には「ロシアとの経済統合」は、「ウクライナ国家性の喪失」ではなく「ウクライナ経済の立て直し」として映り、この認識がクチマ逆転当選の原動力になったのである(22)。

(4)CIS経済同盟からIMFへ

 しかしながら当選したクチマは、10月にIMFと協力した経済改革を宣言し、ロシアとの経済統合の道を選ばなかった。それはなぜであろうか。

 かねてより改革志向が強かったクチマが大統領に就任することによってはじめて経済改革の途が開かれたとする見方がある(23)。しかしこの説は、93年末よりウクライナ自らが実施してきたインフレ抑制型の経済改革を無視している。この政策の結果、94年7月には月インフレ率が2.1%にまで低下したが、不払い危機によって生産が更に落ち込み、最終的に頓挫してしまったのである(24)。

またクチマ自身は、首相時代から大統領選挙時に至るまで、経済改革に関して「統制された市場経済への移行」を主張しており、IMF流のインフレ抑制型経済改革には批判的であった(25)。ここでは、クチマが「経済改革を開始した」ということより、「IMFと協力した」という事実に注目する必要がある。

 IMFとの協力の意味は、第一にエネルギー債務危機の解消にあったのである。ロシア・ガスプロムは再三、ウクライナのパイプラインを含むガス関連企業の株式取得による債務相殺を提案し、また94年9月に来訪したショーヒン・ロシア副首相は、ウクライナの対露ガス債務の償還を迫り、ウクライナ領土上のガス輸送施設の長期貸与、株式譲渡を求めた(26)。ウクライナ側が期待していたエネルギーの廉価供給に、ロシアは全く応えようとしなかったのである。

 ガス債務問題が、経済改革の開始と深く関係していることは、94年10月のクチマ大統領の経済改革に関する議会演説の中にも強く表れていた。クチマはその中で、エネルギー債務の返済のためには選択肢がないことを次のように吐露した。

 「皆が理解してほしいのだが、今年度末までに、我々は、ロシア、トルクメニスタンに対するものだけで、ガス代のみで10億ドル以上支払わねばならない。我々にこのような資金はない。諸々の国際金融機関との交渉決裂の末路を想像してほしい」(27)。

 10月末にウィニペグで開催されたIMF主催「ウクライナ経済再編パートナー会議」には、G7に加え、債権国ロシア、トルクメニスタンが参加し、ウクライナの債務再編に協力することを約束した。ロシアやトルクメニスタンから見れば、ウクライナの債務再編に協力することによって、ウクライナが国際金融機関のクレジットを得ることは有益であった。
11月にクチマ大統領がトルクメニスタンを訪問した際には、両大統領の会談の席にコリンズ米国特使が同席し、ウクライナの対トルクメニスタン・エネルギー債務の繰り延べが決定された(28)。IMFの協力によって、ウクライナは切迫したエネルギー債務問題を乗り切り、G7諸国からのクレジットを得て、貿易収支赤字(すなわち、エネルギー債務)の補填に成功した。

つまり、IMF勧告による経済改革は、IMFという国際金融機関が、ウクライナの切迫した対露エネルギー債務を肩代わりし、さらに将来のウクライナ経済に深くコミットしたことに意味があったのである。ウクライナの対露エネルギー債務問題は、ウクライナ・ロシア間の二国問題ではなく、アメリカ、IMFを巻き込む国際的な問題となった。

 これ以後、CIS経済同盟に対するウクライナの態度は再び冷淡なものへと戻っていった。ウクライナのCIS諸国、ロシアに対する関心は、ウクライナ製品の市場を確保するための二国間自由貿易協定へと移った。

ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタンによる関税同盟はウクライナにとってもはや魅力的なものとは映らなかった。何故なら、安い原材料から生産されるロシア製品に自国市場が席捲される可能性があったからである。関税同盟への勧誘に対し、クチマは「ロシアは原料に関しては安価な国内価格を維持しており、他国の企業にとって不平等な条件を提案している」と述べ、関税同盟への加盟が経済的にメリットがないことを強調した(29)。つまり、ロシア・エネルギーを安価で得ることはできないが、クレジット充填によって安定供給が受けられ、また二国間貿易協定によってウクライナ製品の市場確保ができる以上、経済同盟に加入する経済合理的な理由はないとウクライナは判断したのである。

(5)ウクライナ経済展望

 IMFとの協力によってウクライナはエネルギー危機を脱したとはいえ、経済は依然としてマイナス成長であり、また貿易面での対露依存も高い水準にある(30)。

98年度のウクライナ貿易総額のうちロシアは38.5%(輸出31%、輸入45.8%)を占めている。現在、ウクライナ政府は、財政・エネルギー債務を、国際金融機関のクレジット及び外債で凌いでいるが、国際金融機関からの借入れを含む対外債務は97年初めの時点で88億ドル(内エネルギー債務は42億ドル)、99年初には115億ドルへと膨らんでいる(31)。

 ウクライナは対露経済依存を減らすために、EU諸国との貿易拡大、エネルギー供給源の多元化を推し進めている。

しかし、EUに関しては、ウクライナの主要輸出品である鉄鋼製品がダンピング認定を受けるなど、EU市場への参入は進展していない。ウクライナはEUに対し、EU・ウクライナ自由貿易圏の創設や、EU準加盟の付与を求めているが、EU側の反応は芳しくない(32)。EU市場が閉ざされれば、ウクライナ製品は、参入がより容易なロシア市場に向かうことになる。
96年10月、ロシアは国内産業保護を名目にウクライナ製品の輸入に付加価値税(VAT)を課した。それに対し、ウクライナ政府は政治的解決を求め、VAT対象外の輸出割当を得た経緯がある。この例は、ウクライナ経済が、依然としてロシア側の政治的配慮によって左右される状況を示している(33)。

 対露エネルギー依存からの脱却に関して、ウクライナはアゼルバイジャンの石油をグルジア・黒海を経由してオデッサ石油ターミナルに接続し、ウクライナ国内のパイプラインを通じてヨーロッパ市場へ輸出する計画(「ウクライナ案」)を推進している。

このルートが稼動すれば、ヨーロッパ向けアゼルバイジャン石油のパイプライン通過料が見込める上にアゼルバイジャン石油を購入することが可能となり、対露エネルギー債務を大幅に減らすことができる。

しかしながら、このルートを大規模に整備するだけの資金がアゼルバイジャン・グルジア・ウクライナ何れの国にもなく、ウクライナはEUに資金協力を求めている。

ロシアは国内の既存パイプラインを使う「ロシア・ルート」を、アメリカは「トルコ・ルート(アゼルバイジャン-グルジア-トルコ)」をそれぞれ推しており、ウクライナが推すルートが実現する可能性は低いとみられている(34)。国内エネルギー自給率を高めるために黒海大陸棚の埋蔵エネルギーの調査も開始されているが、技術面からも資金面からも、やはり外資頼みである(35)。

 長期的に見れば、ウクライナ経済が国際競争力をつけてEU市場に参入し、他方でウクライナが提唱するエネルギープロジェクトが稼動するシナリオも有り得る。その場合には、ウクライナの対露経済依存は減少することになるだろう。しかし短・中期的に見れば、ウクライナ経済の対露依存傾向が続くことは間違いない。

2. 軍事ブロックと中立外交

(1) 中・東欧地域と全欧州型安全保障機構

 ソ連邦末期の1990年7月にウクライナ最高会議で採択された「主権宣言」は、今日のウクライナの中立および非核化の法的出発点となっている。しかしその「対外安全保障」の項には、僅かに以下の方針が述べられているにすぎない。

「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国は、将来において恒久的に中立国家となり、軍事ブロックに加わらず、非核三原則――核兵器を受け入れず、使用せず、保持しないという自らの意向を厳に宣言する」。

 ところで、この時期のウクライナは、自国とヨーロッパとの関係をどのように認識していたのであろうか。当時のウクライナ外相ズレンコは次のように述べていた。

「ウクライナ外交は欧州志向であり、ウクライナは対外世界との直接関係を築き、さらに全欧安保協力会議(以下、CSCE)の枠内で進行中の『欧州共通の家』建設に直接参加する」(36)。

 この時点では、近い将来にウクライナがヨーロッパに統合され、モスクワ、キエフを含む「欧州共通の家」が建設されるのというのが、ウクライナの展望であったのである。この時期のウクライナの中立政策には、少なくとも欧州大陸で対立するNATO-ソ連ブロック間でバランスをとるための中立という意味はなかった。

 連邦崩壊後に作られたCISはその創設文書において「共同の経済空間、軍事空間の維持」を謳っていたが、ソ連邦から独立し中立国を標榜していたウクライナに、CIS軍事同盟へ加盟する意志はなかった。

その代替として、ウクライナは、CIS軍事同盟(タシケント条約)及びNATOの両ブロックを含む全欧州型の安全保障システムの創設を提唱したのである。

それが93年初に提案された「中・東欧安定・安全保障圏構想」である(37)。この中・東欧安定・安全保障圏は、ユーゴ型の内戦の脅威を防止することを目的とし、バルト-黒海地域の全ての国々を含み、西欧-ロシア間の「架け橋」として、将来、CSCE参加国を全て含む全欧州型安全保障システムの一部となることを意図していた。

具体的な原則として、参加国の政治主権と領土保全の相互尊重、現存の国境不可侵、参加国の承認なしの外国軍駐留を認めない、紛争の平和的解決、等が挙げられていた。

ウクライナが当初想定した加盟国は、バルト諸国、ウクライナ、ベラルーシ、チェコ、スロバキア、ハンガリー、オーストリアであり、ロシアは含まれなかった(38)。

何故なら、この構想は、NATO及びタシケント条約に加わっていないこれらの国々が、2つのブロック間に位置しているという自覚のもとに、西欧とロシアとの架け橋となり、CSCE参加国を網羅する安全保障システムへの発展を目指すというものであったからである。

 ウクライナ側の論理に従えば、全欧州型安全保障システムが成立した暁には、NATOやタシケント条約はブロックとしての存在意味を失い、ウクライナの中立も解消されるはずであった。両ブロックの同時解消という発想は、80年代から90年にかけて各国が提唱した様々な欧州新秩序構想と明らかに類似していた(39)。

 さらにこの構想には、ウクライナの中立ステイタスと矛盾しないという以外に、次のような利点があったと考えられる。

第一の利点は、欧州統合プロセスへの参加の道が開かれることである。ウクライナは西に位置する東欧諸国と連帯することで、自国をヨーロッパ国家と見做すことが可能になり、ヨーロッパの統合プロセスへの参加が可能となる(40)。93年7月に採択された「外交方針」に記されているように、ウクライナはヨーロッパへの統合、特にEUへの完全加盟を国是として掲げている。その第一歩として、中・東欧諸国が主催する中欧イニシアチブ(CEI)、中欧自由貿易協定(CEFTA)、あるいは欧州審議会(CE)、西欧同盟(WEU)への加盟を望んでいた(41)。自国をヨーロッパ国と見なすことによって、ソ連時代の過去を払拭する意味を込めることもできる。

 第二の利点は、緊張の緩和である。ウクライナによれば、NATO、もしくはタシケント条約の中・東欧地域への拡大なしに全欧州型安全保障機構が実現できれば、2ブロック間の分断線が生じないと想定することが可能であった(42)。

 ウクライナと国境を接する中・東欧諸国は、ウクライナの独立をいち早く承認して、それを歓迎したが、ロシアを刺激しかねない安全保障圏構想には難色を示した。

NATO加盟を熱望する中・東欧諸国にとって、この構想に参加すること自体、西欧統合政策からの後退を意味した。またウクライナ提案は、CIS軍事同盟とは相容れない構想であり、「バルトから黒海に南北に走る対ロシア防疫線(cordon sanitaire)」の印象をロシアに与えかねないものであった。実際、CIS軍事同盟への対抗として、ウクライナがこの構想を推進していた側面は否定できない(43)。米国は、ロシアを疎外する安全保障圏構想を取り下げるよう、ウクライナ側に働きかけたといわれる(44)。

 もとよりロシアがこの構想を受け入れるわけはなかった。ウクライナがタシケント条約に加わらずにロシア・西側の橋渡しをし、さらにはロシアを排除する安全保障圏の中心となるというこの構想は、ロシアにとって到底納得できるものではなかった。

また、提唱したウクライナ自身にも問題があった。ウクライナは、92年7月からユーゴスラビアの国連平和維持活動に積極的に参加しており、ヨーロッパ社会の活発なメンバーであることをアピールしていた。しかし、この時期にウクライナはあらゆる分野でロシアと係争を抱えており、また非核化過程をめぐっては国際社会とも対立していた。さらには、危機的な経済状態からロシアへ回帰する可能性があり、架け橋外交に必要な第三者的役割を担える状況になかった。つまり、国際社会は、ウクライナには「架け橋」構想を行う資質がないと見て、その架け橋的役割をウクライナが担うことを受容しなかったのである(45)。

 ウクライナの提唱する安全保障圏構想が国際的支持を得られない中、94年1月にNATOが提唱した「平和のためのパートナーシップ構想(PfP)」が実現したことによって、ウクライナの構想は完全に存在価値を奪われた。なぜなら、PfPの精神はウクライナの安全保障圏の目的と同じく、NATOと非NATO加盟国との間に架け橋をつくることにあったからである。PfP文書は、対象国をNACC(北大西洋協力理事会)及びCSCE参加国とし、その目的を東方との関係強化による全欧州地域の安全保障と安定の強化である、と記していた(46)。
 PfP構想が公表された直後に、ウクライナ外務省はPfPに対して次のような否定的コメントを発表した。

「(PfPは)中・東欧地域の力の真空に関わる全ての問題を解決できず、理想的ではない。ウクライナは、自らが主導する中・東欧地域の安全保障創設構想と合同した欧州安全保障の地域機構の深化に努めるつもりである」(47)。

 しかし、多くの中・東欧諸国がPfP構想への参加を表明する中、ウクライナ自身もPfPへの参加表明を行い、結局ウクライナの構想は自然消滅してしまった(48)。

(2)クラフチュク後の「架け橋」論

 大統領選挙においてクチマは、クラフチュク政権の対欧米重視の外交を、何ら成果が伴わないロマン的なものであると批判した(49)。しかし、クチマ自身、ウクライナの「架け橋」的役割を否定することはなかった。クチマの選挙公約には次のように書かれていた。

「ヨーロッパ諸国とロシアとの政治ゲームの仲介的役割でなく、ユーラシア地域の中心における指導的・統合要素的役割は、ウクライナをして豊かで文明的な国家の隊列に位置せしめるであろう(強調:藤森)」(50)。

 クチマは、大統領当選後の外交団との初会見において「ウクライナは、欧州と現在ユーラシア大陸と呼ばれる地域との接点に位置する。ウクライナはここに、緩衝板として存在するのではなく、頼りうる橋として、期待の持てる接続板として存在する」と述べ、地政学的位置から生ずる「架け橋」の役割を前任者同様に強調したのである(51)。

 一方、クラフチュクは、大統領選で敗れた後に最高会議代議員に当選したが、ウクライナの中立がブロック対立を緩和し、平和に貢献するとして次のように論じた。

「ヨーロッパのブロック化を許してはならず、したがって我々は中立を宣言したのである。ウクライナなしではロシア・ブロックは成り立たない。ロシアと共に、真の統一されたヨーロッパが現れるのである。世界の人々、国々は戦争を望んでおらず、平和は皆の利益である。ここに、我が国の中立がしかるべき役割を果たすのである」(52)。

 コソボ危機の際にも、中立ウクライナが調停的役割を果たすべきであるとの意見が国内に現れた。99年4月、ウクライナ最高会議は、NATOのユーゴ空爆に対する決議を採択したが、その決議文でウクライナ最高会議は、ウクライナの軍事ブロック外の立場を再確認し、大統領に対してはユーゴ問題解決のための国際会議をキエフで開催するイニシアチブを取ることを、政府に対しては集団安全保障モデルを議論するためのOSCE諸国首脳会議をキエフで開催する提案を行うことを、それぞれ求めたのである(53)。

このように、ウクライナ指導部内には、中立国としての立場を活かした外交を行おうとする意図が常に存在したが、他方ではそれに対する批判も出ていた。例えば、99年の大統領選挙の候補であるマルチュク代議員(元首相)は、西側とロシアの経済・安全保障レベルでの協力関係の強化、ソ連時代から「架け橋」的役割を果たしてきた北欧諸国の存在、カスピ海地域とヨーロッパとの架け橋はトルコが担うとアメリカが考えていること、などを挙げて、ウクライナの「架け橋」的役割は幻想に過ぎないと指摘した(54)。

(3)中・東欧非核兵器圏構想

 NATOの東方拡大が不可避な情勢下、ウクライナは「架け橋構想」を打ち出した。それが「中・東欧非核兵器圏構想」である。

 NATO-ソ連に挟まれた中・東欧地域に「非核兵器圏」(Nuclear-Weapon-Free-Zone、以下「非核圏」と略す)を設定しようとする構想は、ポーランドの「ラパツキー構想」に始まり、その後にはフィンランド、スウェーデンがそれぞれ独自の非核圏構想を提案してきた。

 NATOの東方拡大に際して非核圏構想を最も早く打ち出したのは、実はベラルーシであった。95年4月、国連の核不拡散条約(以下、NPT)再検討・延長会議上で、ベラルーシのシンコ外相は、中・東欧地域に非核圏を設置する必要性を訴えた。彼は、ウクライナのNPT加盟によって中・東欧地域に非核圏を設置する条件ができたことを指摘し、NATOが拡大し欧州東部に核兵器が配備される事態に憂慮を表明したのであった(55)。

 ウクライナも、95年末から、NATO加盟を希望する東欧諸国に対し、核兵器配備に反対を表明していたが、東欧諸国の反応は軒並み否定的であった。にも関わらずウクライナは、96年6月1日に非核化を完遂した直後に「クチマ構想」と呼ばれる「中・東欧非核圏構想」を国際社会に提唱した。96年6月、NACCベルリン会議において、ウドベンコ外相はウクライナが非核圏を提唱する意義を次のように述べた。

「(核兵器の配備を認める用意があるとする中・東欧諸国指導者の発言は)核兵器の撤去を履行したウクライナの立場を理解しておらず、ウクライナとの信頼関係に反するものである。ウクライナが、中・東欧に非核圏を創設する構想を支持することは極めて自然であり、この地域に信頼と安定をもたらすであろう」(56)。

 このコメントから明らかなように、ウクライナ政府は、自国が非核化を完遂したという「画期的な」事実と将来の非核圏構想とを結び付けようとしたのである。ウクライナによれば、非核国となったウクライナと中・東欧諸国との間に「非核保有国」という共通項が生じ、そして新たにNATOに加盟する中・東欧諸国の領土にNATOが核兵器を配備する戦略的必然性はなかった。ここに、中・東欧非核圏構想の実現が可能となるのである。黒海からバルト海に至る地域に非核圏を設置することによって、欧州諸国間の信頼醸成を促進し、NATO拡大のインパクトを和らげ、欧州大陸における新たな分割線が出現する可能性を著しく減ずることになると考えられた(57)。

 しかしながら、ウクライナが、どこまで制度化された非核圏の実現を目指したか疑問である。一般に非核圏成立のためには、非核圏参加国に核兵器を配備・持ち込ませないことに加え、非核圏参加国に対する消極的な安全保障確約(negative security assurances)、すなわち核保有国が核兵器による攻撃・威嚇を控えることを条約で約束することが必要とされている(58)。

実際、ウクライナは、NPTに非核兵器保有国として加盟する際、5大核保有国から消極的安全保障確約を受けていた(59)。ウクライナを含む中・東欧地域に非核圏を設置するのであれば、ウクライナが既に受けている消極的安全保障確約を中・東欧諸国にも適用する必要があった。しかし、ウクライナの非核圏構想には、この議論が欠けていた。

 東欧諸国にしても、加盟に際して将来の自らの権利を放棄するような非核圏に加わる意味は皆無であった。ウクライナが強固に非核圏の設置を主張すれば、東欧諸国との友好関係が損なわれることが十分に予想された。従って、ウクライナの非核圏構想は、制度化・条約化された非核圏の設置を求めたものではなく、単なる政治的な宣言文とみなすのが適当であると思われる。

 また、ウクライナの非核圏構想の趣旨が、ロシア側の主張と合致していたことに着目するならば、この構想は、第一にロシアへの配慮を目的としたものであると解釈することができよう。ロシアは、東欧諸国へのNATO核兵器の新規配備に懸念を表明しており、非核圏構想を支持していた(60) 。

 東欧諸国への核兵器配備の問題は、97年5月に調印された「NATO・ロシア相互関係・協力・安全保障基礎文書」(以下、「NATO・ロシア文書」)において、次のように規定された。

 「NATO加盟国は、新規加盟国の領土上に核兵器を配置する意図、計画、理由がなく、NATOの核体制、あるいは核政策のいかなる方針変更も必要なく、そしてそのような将来的な必要性を予測しないことを再確認する」。

これは、新規加盟国の領土に「法的(de jure)」な「非核兵器圏」を作ることにNATOが同意したものではなく、中・東欧諸国に核配備がされていない現状の「凍結」を宣言したものと見るべきであろう。

仮にNATO新規加盟国に核が配備されないことになれば、核の傘を提供する集団防衛機構としてのNATOの組織的整合性に悪影響を及ぼし、信頼性が損なわれることになる。東欧諸国に非核圏を設置した場合、NATOに新規加盟した国々に核配備はなされず、そしてそれらの地域はロシアから核兵器不行使の安全保障確約を受ける、という形態をとることになり、NATOの安全保障の実効性が大いに削がれることになるのである。

冷戦時代において、NATO加盟国でありながらアイスランド、ノルウェー、デンマークは自ら非核国宣言を行った。それと同様の「事実上」(de facto)の非核圏が、今度は新規加盟諸国の領土に出現したのである。

 その一ヶ月後に調印された「ウクライナ・NATO特別パートナーシップ憲章」(以下、「ウクライナ・NATO憲章」)内では、ウクライナがこれを「歓迎」する旨が僅かに記されているだけであり、非核圏設置への言及はなかった。

 「ロシア・NATO文書」及び「ウクライナ・NATO憲章」が締結された後、ウクライナは非核圏の条約化を主張していない。結局のところ、ウクライナの非核圏構想は、両ブロックの架け橋として実現を目指したものというよりは、非核化を達成したウクライナの自己宣伝と、ロシアとの「共通の言葉」を見出すことを主目的としたものであったといえよう(61)。

3. ウクライナとNATOの東方拡大

(1)平和のためのパートナーシップ構想(PfP)

 ウクライナは当初、PfP構想を批判していたが、東欧・バルト諸国が挙って参加表明する事態に直面し、自らの安全保障圏構想を捨ててPfP参加へと転じた。ウクライナは1994年2月8日にPfPに調印し、結果的にCIS諸国内で最も早いPfP参加国となったのである。

 東欧・バルト諸国は、NATOが提唱するPfPをNATO本加盟への第一歩と捉えた。これとは対照的に、ウクライナはPfPを、中立を保ちつつNATOの安全保障に関わり持つことができる協力形態と捉えた。PfP協定は「PfP参加国が領土保全、政治的独立、あるいは安全保障に対する直接的な脅威を受けた場合、NATOは当該パートナー国との協議を行う」(PfP枠組み文書第8条)と定めているが、ウクライナはそれをNATOが提供する安全保障とみなして高く評価したのである。

 また、ウクライナ側の解釈によれば、PfPは集団防衛に関する規定を持たない協力形態であるため、軍事ブロックの性格を帯びなかった。したがって、ウクライナの中立ステイタスに抵触せず、欧州の再分割につながらなかった。PfP参加を通じてNATOとの信頼醸成、関係を強化しながら、NATOブロックに加盟せずにNATOや西側が提供する安全保障網に関わることで、自国の安全保障を高めるという論理である(62)。ウクライナは、自国を中・東欧諸国と同一視できないことを自覚し、ユニークな安全保障政策を採りはじめたのである。

 「中・東欧安全保障圏」構想が消滅した時期のウクライナが描く欧州安全保障モデルは以下のような特徴をもっていた(63)。

 第一に、欧州における再ブロック化の否定である。ブロック化が進めば、ウクライナ領土上に分割線が走ることになり、ウクライナが緩衝国化する危険性が生じた。

 第二に、「バンクーバーからウラジオストクまで」を含む全欧州型安全保障システムの提唱である。ブロック化を解消するためには、全欧州型の安全保障システムを創設しなければならなかった。現存する安全保障機構の中では、OSCEがしかるべき地政学的規模、経験、機構を有しており、将来の全欧州型安全保障システムにおけるOSCEの立場、役割が追求されるべきである。ヨーロッパの全ての国、アメリカ、カナダを含む全欧州型安全保障システムが発足すれば、その中でOSCEが主たる役割を果たすという論理は、ロシア側と共通するものであった(64)。

 第三に、NATOの消極的評価である。NATOが冷戦期の軍事的・政治的ブロックとしての性格を払拭し、全欧州安全保障システム内の安定的要因としての役割を証明すれば、全欧州型安全保障システムの構築を促進する一要素として作用することになる。しかし、NATOだけがその役割を担うのではない。NATOのみならず、WEUや、EUといった既存の欧州安全保障組織も、OSCEが主たる役割を果たす中で競合することなく相互補完し、発展することによって、全欧州型の安全保障システムが創設されるのである。

ウクライナは、特にEU・NATOの同時拡大に賛成したが、それはNATOの急速な拡大を防ぐことができると考えられたからであった。また、ウクライナは、ロシアとは対照的に、東欧諸国がNATOに加盟することに反対せず、NATO加盟国以外に拒否権は存在しないとしていたが、東方拡大はバランス良く、周辺国の利害を考慮して漸進的かつ発展的に、新たな分割線の出現を排除しつつ行われるべきである、と主張した。以上の特徴は、第一節で論じた客観的制約と第二節で論じたウクライナの主体的姿勢の論理的帰結であった。そしてウクライナが持つ対露関係の重要性と中立国としての立場追求の姿勢は、次の段階においても確認された。

(2)NATOの東方拡大

 NATOが漸進的に且つ他の欧州機関と協同して拡大し全欧州型安全保障へと至るならば、ウクライナが中立を堅持し、軍事ブロックの外に立つことが、自らのみならず欧州全体にとっても望ましい、とウクライナは見ていた。しかし、予想を越えた早さでNATOの東方拡大が現実化する中で、ウクライナはNATOとの関係を自国安全保障の中心に据えざるを得なくなった。ウクライナが中立に固執してNATOとの良好な関係を築くことができなければ、NATO・ロシア間で孤立化し、締結されるであろうNATO・ロシア関係文書によって自らの処遇が定められる危険性さえ生じたのである。

 このためウクライナは、OSCEを将来の全欧州型安全保障システムの基礎とする従来の考えを放棄し、NATO評価を消極的から積極的なものへとシフトさせた。すなわち、NATOの役割は欧州安全保障の重要な要素であり、ボスニア・ヘルツェコビナ紛争解決に代表されるように欧州安定の保証であり、欧州大陸の新たな民主主義国家にとってもっとも効果的かつ魅力的な安全保障組織である、と定義したのである。クチマ大統領は、96年末のOSCEサミットにおいて「ウクライナは、NATO拡大に対して何ら弊害を感じていない。NATOは真の民主主義国家の共同体に変った」と述べ、NATOが単なる防衛機構から質的に変化したことを強調した(65)。NATOの東方拡大は、ロシアにとって脅威にならず、「ヨーロッパにおける安全・安定圏の拡大」に他ならないとしたのである。

 また、ウクライナは、NATO拡大の門戸は常に開かれたものでなければならないと主張した。そうでなければ、二ブロック間の地域は「グレーゾーン」、すなわち緩衝地帯として固定されてしまい、両ブロック間の抗争の場、もしくは利益分配の場となるおそれが出てくるからである(66)。特に、ロシアとの2国間友好条約交渉は、95年2月の仮調印以来まったく進展しておらず、NATOの東方拡大によって、ロシアからの圧力が強まることも予測された。実際、ロシアは、95年9月の「CIS参加国に対するロシア連邦の戦略路線に関するロシア大統領令」において、CIS諸国との問題解決のために経済的手段を用いる意向を示していた(67)。ウクライナは、ロシアからの経済的圧力を危惧しており、自国の非核化に際しては核大国による経済的圧力の不行使確約を求め、それは条約内において明文化されていた(68)。こうしたロシアからの圧力に対する「保険」として、NATOとの関係強化がウクライナに必要となったのであった(69)。

 こうして、「ロシア・NATO文書」から独立した「ウクライナ・NATO文書」の締結を、ウクライナ側は積極的にNATOに求めるようになったのであった(70)。ウクライナは、NATOと関係文書を締結することにより、自国を欧州安全保障システムに組み込み、その緩衝国化となる可能性を払拭し、「欧州における安定化要素」としての地位を得ようとしたのである。そのようなNATOとの協力拡大を、ウクライナ政府は、EU加盟と並ぶウクライナの「欧州への統合」過程の一要素として位置づけた。

(3)NATOとの特別のパートナーシップ憲章

 ウクライナ・NATO文書の出発点は、PfP枠組み文書第4条における「個別パートナーシップ計画」にあった(71)。95年9月に、ウクライナ・NATO共同宣言の形で関係文書の作成が謳われ、96-97年を通じて交渉が続けられた。交渉過程において、ウクライナは、安全保障の確約をNATO側に求めた。それがNATO内「準加盟」ステイタスである。

 96年6月、ウドベンコ外相は、ワルシャワで開催されたNATOワークショップ「ヨーロッパの安全保障-新世紀の始まり」に出席し、「NATOとの特別なパートナーシップは、NATO内におけるウクライナの準加盟ステイタスと見ることができる」と述べた(72)。

ウクライナ側の認識では、「準加盟」とは、集団防衛を定めたNATO条約第5条を除く全条約文が適応される地位を意味した。NATO加盟国とロシアとの間に「準加盟」のウクライナが存在することによって、欧州の分割線が生じないことになるのであった(73)。

しかし、この「準加盟」発言にロシアがただちに反応し、ウクライナ側は「準加盟」発言の撤回を余儀なくされた(74)。それでもウクライナは、「準加盟」という言葉を用いないまでも、安全保障の確約を「文書」に盛り込むこと、そして「文書」の性格を法的な条約文とすることを交渉過程でNATO側に要求したのである(75)。

 「NATO・ロシア文書」締結の1ヶ月後、97年6月にソラーナNATO事務総長とクチマ大統領の間で「ウクライナ・NATO特別パートナーシップ憲章」が調印された。「憲章」の内容 はNATO側に押し切られたものとなった。すなわち、文書の性格は、法的拘束力のない「憲章」、すなわち政治的性格のものとなったのである。

 ウクライナ議会内では、97年3月に民族主義政党「ルフ」がNATOへの加盟申請を求める政府宛てアピールを行い(76)、これに対し5月には共産党、社会党、農民党、進歩社会党議員を中心とした187名が「ウクライナ・NATO外」議員グループを結成した(77)。

このNATOの東方拡大と「ウクライナ・NATO憲章」の調印に反対する議員グループに対し、政府は「憲章は法的な性格を持つ条約ではなく、また主権宣言で謳われた非同盟・中立・非核ステイタスを変更するものではないので、議会の批准の対象外である」と反論し、結果的に対NATO政策に議会内の対立が影響を及ぼす事態を避けることに成功した(78)。

 NATOから提供された安全保障確約は、「NATOがウクライナの主権・独立・領土保全を支持する(第14条)」こと、「ウクライナがその領土保全、政治的独立、安全保障に対する直接の脅威を受けた場合、NATOとウクライナは協議するために危機協議メカニズムを発展させる(第15条)」こと、「NATOはNPT加盟の際に五核保有国からウクライナが受けた安全保障確約を歓迎、支持する(第16条)」ことというものであった。

しかし、いずれの条項も、既にウクライナに提供された安全保障を、NATOが再確認したものに過ぎなかった(79)。

ウクライナに提供された安全保障がこのような「柔らかいもの」にとどまった理由は、NATO・ロシア関係の文脈から理解できる。何よりも、NATO側から見れば欧州安全保障の安定のためには、ロシアに次ぐ大国ウクライナと特別な関係を結ぶ必要性があった。

NATOにとっては、今日の、政治的に親西欧で軍事的に中立なウクライナが好ましく、ウクライナが経済のみならず軍事的にもロシアに再統合されることが最悪のシナリオであった(80)。

他方で、ウクライナがNATO加盟を表明すれば、ロシアを刺激し欧州に緊張状態を招くことになり、これも好ましくなかった。そのためにはNATOの東方拡大問題に対して「ウクライナを黙らせる」ために何らかの関係文書を結ぶ必要があったのである。

 クチマ大統領は、「ウクライナ・NATO特別パートナーシップ憲章」の調印式典において「交渉過程では、ウクライナの希望の全てが考慮された訳ではない」と認め、「『ウクライナが中・東欧と不可分である』と明示され、中・東欧ならびに大陸全体における安定の重要要素であるとされたことが『憲章』の要点である」と評価するにとどめた(81)。

(4)NATOの東方拡大とウクライナ・ロシア関係

 NATOの東方拡大という国際環境の変化は、ウクライナ・ロシア関係にも影響を与えた。95年2月の両国首相レベルでの仮調印以来、全く進展のなかった2国間平和条約は、NATOの東方拡大が差し迫った97年5月に調印されたのである(82)。

 97年5月31日、エリツィン大統領がキエフを訪問し、「ウクライナ・ロシア友好・協力・パートナーシップ条約」が調印された。調印に際しヤストルジェムスキー・ロシア大統領報道官が「ウクライナとの関係が近くなればなるほど、我々はNATO問題で頭を悩まさずに済む」と述べたように、ロシア側は、2国間平和条約が両国の関係強化につながり、結果としてウクライナのNATOへの接近を防げると踏んでいたのである(83)。

実際、セバストーポリ軍港の賃貸期間は20年と定められており、その間のウクライナのNATO加盟はロシアの賛成なしには有り得なくなった。他方で、ロシア黒海艦隊の基地使用料と黒海艦隊分割に際しての艦艇のロシア譲渡分に対する支払は、ロシアに押し切られた形になり、ウクライナの対露ガス債務と相殺されることになった。また、平和条約内において「両国が条約当事国のどちらかに敵対する行動、条約の締結を差し控え、その安全保障を犠牲にするような領土の利用を許可しない」(第6条)ことも規定されていた。これも、ロシア側がウクライナ側に課した言質と見ることが出来る(84)。

 ウクライナの観点から見れば、ウクライナ・ロシア平和条約の締結は、最大の隣国ロシアとの関係を正常化するだけではなく、ヨーロッパ安全保障上の点からも重要な意味を持った。なぜなら、ウクライナとロシアとNATOはヨーロッパ安全保障における重要な要素であり、その三者がそれぞれに関係文書を締結すること、すなわち「ウクライナ・NATO憲章」、「ロシア・NATO文書」、そして「ウクライナ・ロシア平和条約」の調印は、ヨーロッパが一つになる証拠であったからであった(85)。そのような状況下では、ウクライナは、NATOへの更なる接近を「ヨーロッパ共通の家」の名のもとで正当化することができたのである。また、条約文では、経済的圧力を行使しないこと(第3条)も明記された。

(5)NATOと国内世論

 ところで、以上に見たようなウクライナ政府の対NATO政策の変化は、何らかの国内世論を反映したものなのであろうか。

すでに論じたように、ウクライナ政府は次第にNATO寄りの姿勢を強めている。しかしながら、世論調査を見る限り、この間の国民のNATO加盟に対する支持が増えているとはいえない。

例えば、デモクラティク・イニシアチブ社が行った世論調査を見るならば、93年にNATO加盟支持率が40%(うち、CIS諸国と同時加盟20%、個別加盟20%)であったのに対し、97年には、支持率は29%(単独加盟19%、同時加盟10%)へ低下した(86)。

さらに言えば、NATO自体に対する国民の関心も高いとはいえない。

先の97年の世論調査によれば、NATOの活動そのものに対して、26%が全く知らないと回答し、関心なしが16%となっていた。

地域別に見ると、ガリツィア三州の親NATO傾向、対露警戒感は群を抜いて高く、またキエフ市、北西部の親NATO、ロシア警戒の傾向も比較的強い。

しかしその他の地域では、一定した反NATO/親ロシア、もしくは親NATO/反ロシアの傾向を認めることはできない。

概して言えば、この時期のNATO問題に対する国民意識は低く流動的であり、また東西対立はゆるやかであったとみるべきであろう(87)。対ロシア問題がウクライナの地域分極化をもたらす最大の要因であるとする研究結果を援用すれば、NATO問題が国民の間でウクライナ・ロシア問題に結合していないために、地域の分極化を生じていないと言うこともできよう(88)。

 こうした流動的な状況にあったため、NATOによるユーゴ空爆は、ウクライナ国民の対NATO観に大きな影響を与えた。ソツィス・ギャロップ社が99年5月にウクライナ全土1200人を対象に行った世論調査によれば、NATOのユーゴスラビアに対する軍事攻撃によってNATO観が悪化したと回答する国民は61%に及んだ(89)。しかしその一方で、ユーゴスラビアのロシア・ベラルーシ同盟加盟を肯定的に捉える国民は僅かに22%で、NATO観が悪化した世論がそのまま親ロシアに傾くことはなかった(90)。この結果も、国民の間ではロシアがNATOの対抗概念でないことを示している。

むすびにかえて-方向性と展望

 第一節では、ウクライナが抱える経済的制約、特にロシア対してエネルギーを全面的に依存している状況を検討した。ウクライナは経済的なロシア離れを模索したが失敗し、93年から94年にかけて反対にロシアとの経済統合を模索した。大統領選挙ではロシアとの経済統合を掲げるクチマが当選した。にもかかわらず、当選したクチマはIMFとの協同を選んだ。その理由は、クチマが国内統合を優先したり改革志向が強かったからではなく、エネルギー危機を解消するためにはIMFに頼るしか選択肢がなかったからである。

 こうした厳しい条件に置かれているにも関わらず、ウクライナは中立国の立場を活かして主体性を保とうとし、独自の安全保障圏構想を提唱した。第二節では、こうした中立ウクライナが提唱した安全保障圏構想の意図と、その実現困難な状況を検討した。独立以来、ウクライナ指導部には、クラフチュク、クチマ政権を通じて、独自の中立ステイタスを活かして調停的、架け橋的役割を担おうとする意図が一環して存在している。しかし、ウクライナの意図に反して、これらの構想は実現しなかった。コソボ危機の際、ウクライナ調停案はユーゴ側からも国際社会からも無視され、結局は中立国フィンランド、そして大国であるアメリカとロシアが直接対話を持つことで危機解決に至った。このことが示すように、今日ではウクライナの調停的役割が国際社会で実現できる余地はほとんどない。有り得るとすれば、それは国際社会に向けた自己宣伝だけである。

 第三節では、ウクライナが対露関係に配慮し中立国としての自国の主体的姿勢を維持しつつ、NATOの東方拡大を自国流に解釈して安全保障政策を次第に変更していった状況を見た。しかし、NATOの東方拡大はウクライナの意図と無関係に進み、ウクライナは受動的に安全保障政策を変更せざるを得なかったのであった。ウクライナが主張した「NATO準加盟」は、ロシアとの関係を重視するNATOによって受け入れらず、「ウクライナ・NATO憲章」は、政治的な意味を持つにとどまった。

 ウクライナ経済がロシアに依存しているという現実は、ウクライナにいかなる指導者が現れようとも、考慮せざるを得ない制約条件であり続ける。

1999年11月、大統領選挙でクチマが再選されたが、こうした制約条件は何ら変わっていない。特に1999年末からは、ロシア側がエネルギー債務の償還を求めて圧力をかけている一方で、ウクライナ・IMF間のクレジット再会交渉が難航しているという状況が生じており、クチマ政権は一層厳しい政策運営を迫られているのである。

ウクライナ経済の不振が続く中で自国の経済主権をロシアに委譲しないのであれば、国際金融機関に頼る他に途はない。

しかしIMFからのクレジットが安定的に続く保証はないのである。他方で、NATOとは距離を置き、中立に価値を見出すことは国際的に困難な情勢である。国内的にも、国民の姿勢が速やかに変わるとも考えられない。

 以上見た国際的制約が今後も続くのであれば、ウクライナが採り得る政策の幅は限られており、国際金融機関に依存しつつ中立にとどまりながら親NATO的政策を採る現在の政策に変化は起こらない(起こせない)といえよう。』

ロシアとの戦争を予期しながらNATOを東へ拡大させた米国の支配層

ロシアとの戦争を予期しながらNATOを東へ拡大させた米国の支配層 | 《櫻井ジャーナル》 – 楽天ブログ
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『岩塩の採掘場を利用して築かれた全長200キロメートルという「地下要塞」があり、戦略的に重要な位置にあるソレダルを制圧したロシア軍は次の目標としてバフムート(アルチョモフスク)に狙いを定めているようだ。その間にキエフ政権側の軍事拠点を破壊、アメリカ/NATOは兵器の追加供給を強いられている。

 そのアメリカ/NATOは現在、ロシア軍の新たな軍事作戦がいつ、どのような形で始まるかを気にしているはずだ。ウラジミル・プーチン露大統領は昨年9月21日に部分的な動員を実施すると発表、集められた兵士のうち約8万人は早い段階でドンバス入りし、そのうち5万人は戦闘に参加、さらに20万人から50万人が訓練中だという。

 朝鮮戦争で休戦後に設定されたようなDMZ(非武装地帯)を考えている人もいるようだが、兵器の能力が飛躍的に進歩していることを考えてもそうした形の決着は考えにくい。DMZの幅を100キロメートル単位に広げてもネオ・ナチが存在している限りロシアは納得しないと推測する人は少なくない。

 ウクライナでの戦闘は2010年の1月から2月にかけて実施された大統領選挙でアメリカと一線を画す立場のビクトル・ヤヌコビッチが勝利したところから始まる。

 この結果を懸念したアメリカ政府は7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)をキエフへ派遣、彼女はヤヌコビッチに対し、ロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、西側の植民地になることを望まないヤヌコビッチはこの要求を拒否した。そこからバラク・オバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。

 その計画が指導したのは2013年11月、翌年の2月にネオ・ナチがヤヌコビッチ政権を倒した。このクーデターが始まるのは2013年11月。キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で行われたカーニバル的な集会が始まりだ。

 12月になると集会への参加者は50万人に達したと言われているが、人が集まったところでネオ・ナチのグループが活動を始める。2月18日頃から棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めたのだ。この年の2月7日から23日にかけてロシアのソチでは冬期オリンピックが開催されていた。

 クーデターを仕掛けたのはアメリカのバラク・オバマ政権にほかならない。その際、混乱を話し合いで解決しようとしたEUについて国務次官補だったビクトリア・ヌランドはウクライナ駐在アメリカ大使のジェオフリー・パイアットに対し、電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。アメリカ政府は暴力でヤヌコビッチ政権を倒そうと決めていたのだ。

 アメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチはクーデターでキエフを制圧したものの、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民は反発し、クリミアはロシアと一体化する道を選び、ドンバスでは内戦が始まった。

 そのドンバスでの戦闘を停止するという名目でドイツやフランスを仲介者とする停戦交渉が行われ、ウクライナ、ロシア、OSCE(欧州安全保障協力機構)、ドネツク、ルガンスクの代表が2014年9月に協定書へ署名している。これが「ミンスク合意」だが、キエフ政権は合意を守らず、2015年2月に新たな合意、いわゆる「ミンスク2」が調印された。

 この合意について、アメリカの元政府高官を含む少なからぬ人が時間稼ぎに過ぎないと批判していたが、それが事実だとうことがここにきて明確になった。​アンゲラ・メルケル元独首相​は12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと語ったのだ。メルケルと同じようにミンスク合意の当事者だった​フランソワ・オランド元仏大統領​もその事実を認めた。

 ​ウクライナの議員として議会でクーデター計画の存在を指摘したオレグ・ツァロフ​は昨年2月19日、緊急アピール「​大虐殺が準備されている​」を出している。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らしたのだ。

 キエフ軍の作戦はロシア語系住民を狙った「民族浄化」で、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を虐殺しようとしているとツァロフは主張、SBU(ウクライナ保安庁)がネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行するともしていた。

 ツァロフがアピールを出した3日後にロシアのウラジミル・プーチン大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地を破壊されたと言われている。同時に​ウクライナの生物兵器研究開発施設も狙われた​。

 西側ではミンスク合意をアメリカ/NATOの時間稼ぎだと考え、プーチン政権を「甘い」と批判んする人もいた。その判断が正しかったことをメルケル元独首相やオランド元仏大統領は認めている。プーチン政権もどこかの時点でそれを認めざるをえなくなったのだろう。プーチン政権のアメリカとつながっている勢力はドンバスの問題でも「バランスの取れた取り組み」を主張し、西側に戦争の準備をする余裕を与えて事態を悪化させた。「特別軍事作戦を始動させたことでロシアは批難されるべき」で、ミンスク合意を尊重するべきだと今でも主張する人がいるが、それならばメルケルやオランドの発言をどう考えるのかを明らかにするべきだ。

 現在、ウクライナでNATO軍とロシア軍が本格的に軍事衝突する可能性が高まっている。短期的に見れば2010年の大統領選挙から始まるのだが、中期的に見ると1990年の約束が大きな意味を持つ。西側諸国はNATOを東へ拡大させないと約束していたのだ。

 例えば東西ドイツが1990年に統一される際、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で国務長官を務めていたジェームズ・ベイカーはソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領やエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと語った。その事実の記録をジョージ・ワシントン大学のナショナル・セキュリティー・アーカイブは2017年12月に公開している。

 またドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはロシアに約束したとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っているほか、ドイツの外務大臣だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年2月にシェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約したという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 しかし、アメリカ/NATOは勢力圏を東へ拡大させ、ウクライナに到達。そうした中、ジャック・シラク仏大統領の外交顧問を務めたモーリス・グルドー-モンターニュはウクライナをNATOへ受け入れることがモスクワにとって微妙な問題だと指摘、ヨーロッパにおける戦争の原因になる可能性があると警告している。ところがオバマ政権はウクライナでクーデターを実行、国を乗っ取った。

 オバマ政権で副大統領だったジョー・バイデンは2021年1月から大統領を務めているが、就任して間もない頃からプーチン大統領を愚弄、挑発、経済戦争を仕掛けてきた。

 その年の12月7日にプーチン大統領とオンライン会談を実施した際、プーチン大統領はバイデン大統領に対してNATOの東への拡大は止めるように求めたが、バイデンはウクライナのNATO加盟へロシアは口を出すなという態度を示した。

 同じようにEUのジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表(外相)は自分たちのことを決める権利を持っているのは自分たちであり、ロシアは口をはさむなと言っている。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長もロシア政府の要求を拒否している。

最終更新日 2023.01.22 02:08:52 』