米国、台湾軍の訓練拡大 中国抑止へ「州兵」活用

米国、台湾軍の訓練拡大 中国抑止へ「州兵」活用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN074DF0X00C23A1000000/

『【この記事のポイント】
・複数の州政府所属の軍隊が多様な訓練実施か
・米台双方で開始 ウクライナ軍への訓練でも実績
・米、台湾への武器提供も強化 中国抑止を急ぐ

【ワシントン=中村亮】米国が台湾軍への軍事訓練を拡大したことが分かった。米国の州政府所属の軍隊である「州兵」が台湾と米国の双方で始めた。複数の州兵を活用し、訓練を多様化して中国抑止を急ぐ。州兵によるウクライナ軍の訓練がロシア軍の進軍阻止に効果を…

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
ひとこと解説

欧米の戦略論の論考を見ると、ウクライナ軍善戦の要因には事前に米英等と周到な準備をしてきたことが指摘されています。台湾軍訓練拡大も同要諦を意識したものと思われます。日本でも話題になっている165ページに及ぶCSISの台湾レポート。分析結果に加え前提条件も詳細に明記していますが、注目…。』

『複数の関係者が日本経済新聞に明らかにした。州兵は全米各州が1つずつ保有し、平時は州知事の指揮下にある。災害対策や治安維持を担い、海外で戦争が起きれば連邦軍に組み込まれて戦闘や後方支援の任務にあたる。アフガニスタン紛争やイラク戦争にも参加した。

台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は22年5月末、台北を訪れた米国のタミー・ダックワース上院議員と会談し「米国防総省が州兵と台湾軍の協力を積極的に計画している」と述べた。

米国と台湾の防衛協力に直接携わる関係者によると、州兵の台湾軍に対する訓練は蔡氏の発言前に始まった。州兵にはハワイ州などの部隊が含まれているもようだ。』

『米国は訓練の種類や規模を増やしたとみられる。州兵は主に「州パートナーシッププログラム(SPP)」を通じて世界各国の軍隊に訓練を提供し、現在は80カ国以上を対象とする。内容は支援国に応じて異なり、歩兵部隊の作戦実行や航空機の運用、サイバー防衛、災害・テロ対策、医療支援など多岐にわたる。

SPPは原則として1つの国に対して1つの州兵が訓練を担うが、関係者は「台湾(の訓練)は複数の州と取り組んでいる。台湾はSPPよりも多くの訓練の選択肢を持っている」と話した。

国防総省の報道担当者は取材に「我々の台湾への支援や防衛関係は中国による現在の脅威に応じて調整されている」と指摘した。バイデン政権は台湾に対する中国の脅威が高まったとみており、訓練拡大に意欲を示したとみられる。「我々の台湾への関与は強固であり台湾海峡や地域の平和と安定に寄与する」とも言及した。』

『従来は米国が売却した兵器の使い方を教える例が多かった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは21年10月、米特殊部隊や海兵隊が台湾で台湾軍を訓練していると報じた。「象徴的な取り組み」と指摘しており、現在はさらに訓練の内容を拡充したとみられる。
新アメリカ安全保障センターのヤコブ・ストークス上級研究員は台湾軍の訓練について自衛力強化に向けた「大きな一歩だろう」と指摘した。予備役の育成に重点を置く可能性があると指摘した。

米国は台湾への武器提供も強化している。22年12月に対戦車システムの売却を承認し、9月に地上配備型対艦ミサイル「ハープーン」や空対空ミサイル「サイドワインダー」を売却する方針も示した。台湾との武器の共同生産も検討し、台湾への武器の引き渡しを可能なかぎり早める考えだ。

州兵はウクライナ軍も訓練してきた。14年のロシアによるウクライナ領クリミア半島併合を受け、米国はウクライナ向けの訓練プログラムを創設。州兵をウクライナ西部リビウ州の訓練所に輪番で派遣した。

米陸軍のジョゼフ・ヒルベルト准将は22年5月の記者会見で、約7年間で2万3000人のウクライナ兵を訓練したと説明した。「ウクライナ軍の能力や部隊への全ての投資は時間をかけて報われた」と語った。』