欧州経済・安保不可分に ダボス会議、膨らむ防衛コスト

欧州経済・安保不可分に ダボス会議、膨らむ防衛コスト
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR17DFU0X10C23A1000000/

『【ダボス(スイス東部)=北松円香、赤川省吾】スイス東部で開催中の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)は17日、ロシアのウクライナ侵攻による経済への影響が主要議題となった。欧州各国は防衛増強とエネルギーの脱ロシアを相次ぎ表明したが、財政や家計の負担は一段と増す。地政学リスクの高まりで安全保障と経済が不可分になったことを象徴する。

今回のダボス会議は欧州安保を討議するセッションが目立つ。17日の冒頭セッション「欧州の防衛」で、口火を切ったポーランドのドゥダ大統領は強調した。「ウクライナへの武器支援がロシアに歯止めをかける」

すでにポーランドはドイツ製の主力戦車「レオパルト2」供与を決めており、欧州の動きを左右するドイツに同調を呼びかけた格好だ。焦点のドイツも態度を軟化させつつあり、ダボス入りしたハベック独経済・気候相は16日夜、供与を容認したいとの考えを記者団に示唆した。

会議には多くのウクライナ要人が参加し、異口同音に継続的な支援を要請した。ゼレンスキー大統領夫人、オレナ・ゼレンスカ氏は17日、「ロシアの侵攻はウクライナ国境を越えてさらに広がる恐れがある」と述べ、欧州全体への脅威だと指摘。ゼレンスキー大統領も18日にオンラインで特別講演をする。

ウクライナを支援しつつ、ロシアの脅威に身構える欧州の防衛コストは膨らむ。米マッキンゼー・アンド・カンパニーの試算によると、欧州諸国の国防費は2026年に21年比65%増となる可能性がある。侵攻がなければ14%増にとどまる見通しだった。

北大西洋条約機構(NATO)加盟国のうち、国防費が国内総生産(GDP)比2%に達していたのは14年時点で3カ国だったが、22年は9カ国に増えた。いまは未達のドイツなども予算を増やすと表明済みだ。

軍事面でロシアに備える一方、エネルギーの脱ロシアは加速する。「欧州での戦争、2年目に」がテーマのパネルディスカッションで、フィンランドのマリン首相は「エネルギー戦争ともいえる状況」と述べ、経済を過度に強権国家に依存すべきではないとの認識を示した。

今回のダボス会議にロシア代表団は参加せず、欧州を軸に西側諸国が結束をアピールする場になった。「ロシアの攻撃やエネルギー高騰でも我々の決意は揺らがなかった」と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は胸を張った。

高いコストを払ってでもロシアを含めた強権国家と対峙すべきだという欧州。弱みはある。停戦は遠く、戦争は長期化する見通しだ。「戦時モード」というだけでインフレなどで貯蓄がむしばまれる国民を納得させられるのか。

「西側諸国はエネルギー高騰で疲弊する可能性がある」とリトアニアのナウセーダ大統領は警鐘を鳴らす。

ロシアへの制裁網に加わっていないグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)との連携も不十分だ。会議にはインドや南米からの参加者が目立ったが、ウクライナ支援ばかりに目を向ける欧州に不満も漏れた。「気候変動対応について投資が足りない。アマゾンの熱帯林を保護する責任は我々だけのものではない」とブラジルのシルバ環境・気候変動相は語った。』