「制約ある国際化」始まる マービン・キング氏

「制約ある国際化」始まる マービン・キング氏
英イングランド銀行元総裁
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA27AKV0X21C22A2000000/ 

『世界が1990年代に本格的なグローバリゼーションに踏み出したとき「資本主義の敗者を誰がどう補償するか」という議論を皆が避けた。貿易の拡大による利益は明らかだったが(失業や賃下げの影響を受ける)敗者を守ろうとしなかった。

西側諸国では製造業が急激に衰退し、特に米国では地域社会が損害を被った。その結果、グローバリゼーションへの反発が強まった。恩恵を敗者の補償に生かせなかったことが問題だ。その時点でグ…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り1008文字

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料! https://www.nikkei.com/promotion/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOUA27AKV0X21C22A2000000&n_cid=DSPRM1AR07 

『西側諸国では製造業が急激に衰退し、特に米国では地域社会が損害を被った。その結果、グローバリゼーションへの反発が強まった。恩恵を敗者の補償に生かせなかったことが問題だ。その時点でグローバリゼーションは一つの到達点だった。』

『新型コロナウイルスとロシアのウクライナ侵攻で大きな変化が起きた。これまでのサプライチェーン(供給網)は安さや効率性を追い求めてきたが、感染症や経済制裁による分断のリスクに備えるため、今後は強靱(きょうじん)さやバックアップを意識したシステムが重要になる。』

『もし中国が台湾に侵攻したら非常に強力な経済制裁が中国に科されるだろう。グローバリゼーションは今後も続くが「Constrained Globalization(制約されたグローバリゼーション)」が西側諸国にとって当面の唯一の代替案になる。』

『こうした分断の時代における中央銀行の役割は何か。私は、今の世界的なインフレは「マネーのだぶつきがいずれインフレの芽になる」という原則を各国の中銀が忘れ、金融緩和を続けすぎる過ちを犯したためだと指摘してきた。

中銀は気候変動や格差是正など他の領域にも使命を広げすぎた。物価と金融システムの安定という本来の役割に立ち返るべきだ。2つの役割について説明責任を果たし、社会の信頼を保つだけで至難の業だ。』

『今後は非常に厳しい数年間になる。エネルギー価格の上昇は一服するが、労働市場の逼迫などを背景にインフレ率は高止まりが続く。インフレ率を下げる過程で住宅市場や株式市場の大幅な調整が起き、痛みが起こる。これを乗り越えなければ、より深い経済減速に向かう。

世界の金融政策の協調は岐路にある。米欧がウクライナ侵攻で金融部門に制裁を科したのをみて、今後数年間でロシアと中国など複数の国は西側に依存しない決済網の構築を加速させるはずだ。西側か中国(主導)かを選ぶ国が増え、分断は強まる恐れがある。』

『私自身も権威主義的な国家の中銀幹部と以前ほど率直に意見交換できなくなり、危機感を持つ。様々な問題をはらみつつも、金融の発展は生活水準の向上やグローバリゼーションの推進に貢献してきた。

世界に蓄積する官民の過剰な債務と暗号資産などノンバンクのあり方が次の金融危機の芽となり得る。政策の効果を高めるためにも、対話の枠組みを探るべきだ。』