CSISが台湾軍に非対称戦術を迫る

CSISが台湾軍に非対称戦術を迫る:東京の郊外より・・・:SSブログ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2023-01-15

『戦闘機VS戦闘機や艦艇VS艦艇の戦いはあきらめよ!
台湾海空軍は対称戦を捨てろ。小さな米軍を目指すな
非対称な戦い「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」を
高価で豪華だが脆弱な装備追及を止めろ!

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先日ご紹介したCSISによる台湾有事Wargameレポート(1月9日発表:中国による台湾侵攻)は、台湾が早期に降伏しないとの前提で、日米が協力して精力的に支援すれば、中国の侵略企図は破砕できるが、台湾経済は壊滅的な被害を受け、米軍は空母2隻と数十隻の艦艇や数百機の航空機を数千人の兵と共に喪失し、長期にわたり世界の指導的役割を果たせなくなるとの厳しい現実を突きつけ話題となりました。

本日は同レポートの中から、CSISが台湾軍に求めた軍装備体系の大改革に関する部分(123-125ページ)を取り上げ、陸軍を最優先せよ、弾薬や装備品は紛争開始前に台湾に備蓄しておけ(ウクライナ方式の侵略後提供は不可能)、そして台湾海軍や空軍は高価ながら有事に役に立ちそうもない艦艇や戦闘機調達を止め、移動式の対艦ミサイルや対戦車ミサイルや防空ミサイルや地雷などを最優先し、非対称な戦いで長期持久を図れるような装備体制変革を直ちに推進せよと訴えた部分をご紹介します

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CSISは、以前から多数の研究が台湾に非対称戦体制への変革を迫っているにもかかわらず、台湾政府や台湾軍により変革がとん挫している現状を踏まえ、米国に対し「アメとムチ」を駆使して台湾軍改革を進めるよう強く迫っていますが、日本の自衛隊にも程度の差はあれ台湾軍と同方向の変革が必要なことは、2010年5月のCSBA「エアシーバトル」レポート当時から明確ですので、「喉元に刃を突きつける」気持ちでご紹介いたします

2010年5月のCSBA報告書の解説

「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30

元祖ASB:CSBAの報告書
「ASBの背景:対中国シナリオ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30

CSISの台湾軍への提言部分(123-125ページ)より

ウクライナ方式は通用しない

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●ウクライナでは、ロシアの侵略開始後に、西側からウクライナへの兵器や装備品提供が始まり、現在も継続して可能であるが、台湾ではこのウクライナ方式は通じない。ロシア軍と異なり、中国軍は台湾への補給物資輸送を阻止する能力があることから、侵略開始前に必要な装備や弾薬を台湾が保有している必要がある

●米国は、遅れている台湾へのFMS装備提供を加速前倒しし、台湾も自身で製造可能な多様な弾薬調達を急ぎ、中国による侵略開始前に必要量を確保しておく必要がある

台湾陸軍に対して

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●台湾陸軍が必要な質や能力を保有しているか不明確(怪しい)であるが、戦力差からして中国軍を台湾上陸前に撃破することは不可能であり、中国軍上陸部隊に台湾沿岸部で粘り強く抵抗することが不可欠であることから、これが可能なように、急いで台湾陸軍の効率性や残存性を高める必要がある。台湾軍は陸軍強化を最優先すべきである

●台湾は山脈や河川により地形が複雑であり、これを最大限に活用して戦いを長引かせ、中国軍に消耗戦を挑むべきである。台湾主要都市の防衛は大きな被害を生むが、都市を失うことは中国側の作戦を容易にしてしまう

台湾海軍や空軍に対して

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●歴史的に台湾軍は、米軍の小型版を目指すように多様な装備を導入し、大型水上艦艇や最新戦闘機、更には潜水艦や地上装備を現在も追求し、戦闘機470機、水上艦艇26隻、潜水艦4隻等を保有している。

●このような装備は、まだ中国軍が弱体であった当時には、台湾の能力を誇示して中国侵略を抑止するには意味があったかもしれないが、中国軍が急速にミサイル部隊や海空軍戦力を増強した今となっては、現在の対称戦を想定した戦力構成(symmetrical capabilities)は不適切である

●有事になれば、台湾海軍水上艦艇は中国艦艇部隊にほとんどダメージを与えることなく壊滅するであろうし、残存性の高い潜水艦もわずか4隻では継続的な海洋戦力とはならない

●台湾空軍も、中国軍のミサイル部隊を前に台湾海軍と同様に極めて脆弱であり、強固な地下シェルターに格納されて中国ミサイル攻撃を生き残る可能性のある僅かな戦力では、ほとんど戦い全般に貢献できないだろう

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●我々のWargame結果が有効性を示した非対称な戦いを追求する「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」では、台湾軍が「艦艇VS艦艇」や「戦闘機VS戦闘機」の戦いでは中国軍に対抗できない現実を踏まえ、台湾軍が高価で脆弱な通常兵器よりも、機動性や隠密性を備えたJavelin対戦車ミサイルやStinger携帯防空ミサイルなどへの重点投資を求めている
●このような結論は他の多くの台湾軍事戦略への研究提言と方向を同じくするもので、最新の軍事バランスに当てはめても一貫している。この非対称戦略では、台湾海軍に大型艦艇よりも安価な、沿岸防衛用の移動式対艦巡航ミサイル、機雷、小型対艦ミサイル搭載ボート、機雷敷設能力強化に投資するよう強く求めている。空軍には移動式防空ミサイルの充実など。

●特に、例えば台湾に提供予定で未到着の地上発射ハプーン対艦ミサイル400発などは、今回のWargameで死活的に重要であることが示されており、200発追加することで政治的リスクや兵站補給の課題などを局限しながら極めて大きな追加効果を上げることが示されている。MLR or MDTFシステム等と同様で高い効果を上げる。

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●ただし、このような非対称戦型への変革、つまり「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」追求は、当時のLee Hsi-Min台湾軍参謀総長により2017年にまとめられているが、その後の台湾軍幹部はこの構想導入に消極的なままである

●今日の脅威環境を踏まえれば、「アメとムチ」の組み合わせで台湾軍改革を推進させることに、強い決意をもって米国は望むことが不可欠である

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CSISレポートの台湾軍への提言部分(123-125ページ)は分かり易い英語で書かれており、116ページからの他の提言部分と合わせ、一度目を通してはいかがでしょうか。

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2014年12月にCSBAが発表した台湾軍戦略への提言レポートと共通する部分が多く、「古くて新しい」指摘です。繰り返しになりますが、2010年5月にCSBAが提案した「エアシーバトル構想」で示された日本への提言も、未だに「古いが新しい」提言であると認識すべきです。特に依然として戦闘機命派が牛耳る航空自衛隊にあっては・・・

CSISの同レポート紹介webページ
https://www.csis.org/analysis/first-battle-next-war-wargaming-chinese-invasion-taiwan
CSISレポートの現物(165ページ!)
https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/230109_Cancian_FirstBattle_NextWar.pdf?WdEUwJYWIySMPIr3ivhFolxC_gZQuSOQ

インパクト強烈なCSISレポート・台湾有事で日本も・・・
空母2隻・数10隻の艦艇と数百機の航空機喪失、台湾経済大打撃・米軍の影響力当面喪失危機
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/

旧態然とした台湾軍の問題は根深く、対中国に向けた政府主導の軍改革も、国防省や軍幹部や軍OBの抵抗で進まず、時間的余裕もない現状。日本にも通じる米国専門家指摘の問題点を確認
https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/

CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

2010年5月のCSBA報告書の解説
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30

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https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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