[FT]中国、「経済リセット」を最重視 ゼロコロナ後The Big Read(下)

[FT]中国、「経済リセット」を最重視 ゼロコロナ後
The Big Read(下)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB131ZB0T10C23A1000000/

『中国が西側諸国への敵対心を自制しようとしている兆候として、相手国に威圧的に振る舞う「戦狼(せんろう)外交」の代表として著名な趙立堅・前副報道局長の異動が挙げられる。中国外務省の報道官だった同氏は現在、比較的目立たない政府機関である国境海洋事務局の3人の副局長の1人として名を連ねている。

ツイッターで190万人のフォロワーを持つ趙氏は、自身のツイッターアカウントを使って頻繁に西側諸国を非難してきた…

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『2019年には米首都ワシントンの人種関係について挑発的なツイートを投稿し、オバマ政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたスーザン・ライス氏に「恥知らずの人種差別主義者」と呼ばれたこともあった。』

『「ノー・デカップリング」を提唱

欧州勢力との関係修復を求める中国政府は、欧州側に対して「ノー・デカップリング(非分断)」というスローガンを唱えることに同意するよう強く主張している。(編集注、デカップリングは中国経済が先進国経済とは非連動という意味で使われてきた)とりわけ機密的な技術などの特定分野で中国との経済的な関係を制限しようとしている米国政府とは明らかに異なる対応を求めている。

香港バプティスト大学の中国専門家、ジャンピエール・キャベスタン氏は「中国は同時にあまりにも多くの国々、特に現在も主要な貿易・経済上のパートナーである西側諸国と敵対していることに気づいた」と分析する。

「そのため、欧州連合(EU)や欧州主要国のドイツ、フランス、イタリア、スペインだけではなく、日本や韓国などアジアの米同盟国、米国と(安全保障面で密接な関係にある)ベトナムなどに(関係修正を)懸命に働きかけている」

EUは中国にとって最大の貿易相手だ。中国はEUに対して巨額の貿易黒字を計上している。同様に中国に投資する海外投資家の上位には、複数の欧州大手企業が含まれている。』

『ドイツに続き仏伊首脳も訪中へ

欧州勢との外交を(改善方向に)リセットしようとする中国側の試みはすでに大きな成果を上げているようだ。昨年11月にはドイツのショルツ首相とEUのミシェル大統領が訪中し、今年早々にマクロン仏大統領とメローニ伊首相も訪中を予定している。

ドイツのショルツ首相(左)と顔を合わせた習近平国家主席(2022年11月、北京)=ロイター

マクロン氏はショルツ氏に追随して、中国との「デカップリング」に反対の意を表明する見通しだ。これは、欧州主要国と米国との間に分断の種をまこうとする中国の長期的な戦略に対していくらかの譲歩を許すことを意味する。

ショルツ氏は中国への依存を減らすと表明しながらも、訪中時にはドイツ政府が中国との「デカップリング」に反対するだけではなく、中国を「重要な経済的・商業的パートナー」とみなしているとの認識を示した。』

『欧州の当局者やアナリストらによると、欧州各国首脳の大きな動機付けとなっているのが、ロシアによる核兵器使用の抑制を中国が手助けすることができるという期待だ。』

『米カリフォルニア大学サンディエゴ校の教授で21世紀中国センターの会長を務めるスーザン・シャーク氏は「中国は常に核兵器の使用に反対してきたはずだ」と指摘したうえで、「しかし習近平(シー・ジンピン)国家主席が欧州首脳らにこのようなことを語る際には、(中国と)ロシアの間には一定の距離があることを強調しようとするだろう」と話す。』

『このアプローチが中国政府に有利なように働いていることを示すいくつかの事例がある。中国・上海にある復旦大学の丁純(ディン・チュン)欧州問題研究センター長は「欧州と中国の関係が大きく改善しているのは、欧州が中国からのデカップリングを唱えず、中国から戦略的に独立することを求めていないからだ」と解説する。

チュン氏は「欧州はまた、エネルギー危機や経済回復への圧力など一連の問題に直面している」と付け加える一方で「中欧の関係が改善していることは確かだが、どこまで改善するのかについてはあまり過大な期待をしない方がいい」とくぎを刺す。

中国はロシアから(ウクライナ全面侵攻について)事前に知らされていなかったと強く主張しているにもかかわらず、欧州内には中国がどこまで関係修復に本気なのか懐疑的な見方も根強くある。』

『EU内には中国の対ロ政策に不満

EU当局者や加盟国政府は、中国政府がロシアのプーチン大統領による戦争を支持し、習氏がプーチン氏に戦争を終わらせるよう圧力をかけていないことに対して不満を募らせている。さらに今回の戦争でEUがエネルギー面でロシアに全面的に依存していることが明らかとなり、中国に対しても戦略的に重要な鉱物や技術部品について、依存を縮小しようとする動きが強まっている。

EUの外交当局は昨年10月、非公式の文書を使ってEU加盟国に対中姿勢を厳しくするよう求めた。このことについて、EUのある高官はフィナンシャル・タイムズ(FT)の取材に対して「経済的だけではなく政治的にも(中国と)全面的に競争するという論理に移行した」と打ち明けた。』

『不動産リスク、取り除く方針

中国が意図する外交的リセットの影響は世界に広がりつつあるが、中国政府がより重要視しているのが国内の経済成長を押し上げる経済リセットだ。具体化されつつある成長志向戦略の背景には、向こう数カ月に中国経済はコロナがもたらした景気低迷から脱却するという不透明な前提がある。

中国共産党中央財経委員会の主要幹部である韓文秀氏は昨年12月、23年1〜3月期は大きな混乱による悪影響は避けられないとしながらも、4~6月期には「加速したペース」で景気が回復する見通しだと言明した。

韓氏は「我々には中国経済を全体として良い方向に転換させる自信と条件と能力がある」と言い切った。

中央財経委員会は習氏がトップを務めていることもあり、韓氏の発言には特別な重みがあるとみられている。

韓氏は不動産と個人消費の2つを注目すべき分野として挙げた。過去20年間、中国の国内総生産(GDP)をけん引してきた不動産市場については「不動産市場のリスクを予防し、取り除くことが最優先課題だ」と表明した。』

『アナリストらは、韓氏の発言について中国政府が不動産市場を23年中に安定させる計画であると解釈している。韓氏の口頭での支援に加え、中国政府は不動産市場向けに16項目に及ぶ包括支援策を発表しており、国有銀行は特定の不動産開発企業向けに推定2560億ドル(約33兆8000億円)の融資枠を設定している。

昨年12月中旬に開催された(23年の経済運営方針を決める)中国共産党・政府の中央経済工作会議でも、個人消費の拡大が焦点となった。この年次会議は第20回中国共産党大会の後に続いたため、3期目に入った習指導部新体制の方針を打ち出す会議として大きな注目を集めた。

中国政府の顧問らによると、中国政府は長期的に「中間所得層」を大幅に増やすことで「共同富裕」という目標の実現を目指すという。しかし複数のアナリストは短期的に、コロナによる混乱が収束した後、中国政府は「救済の波」となる財政出動に動くと予想する。

米運用大手マシューズ・アジアの投資ストラテジストであるアンディ・ロスマン氏は、中国ではコロナを巡る移動制限が撤廃されれば巨額の家計貯蓄が消費意欲を刺激する可能性があるとみている。中国家庭の預金残高は20年に入ってから42%増加、金額としては4.8兆ドル増加しており、その額は英国のGDPを上回ると指摘する。』

『経済政策、実用主義に回帰へ

ロスマン氏は、ここ数年国家主義に傾倒していた中国政府の経済政策に「プラグマティズム(実用主義)」が戻ってきたと評価する。習氏が党大会で「1人当たりのGDPを新たな高水準に引き上げる」、「民間企業のための環境を整備する」と公約したからだ。

ポートフォリオ投資家らは、中国経済が健全な状態に戻りつつあるという考えを受け入れる準備ができているようだ。中国経済に対する投資家心理を示す香港株式市場のハンセン指数は、昨年10月に底を打った後、力強く回復している。

一方で、中国のロックダウン解除に伴う混乱を警戒し、慎重な姿勢を保持するアナリストも複数いる。

調査会社チャイナ・ベージュ・ブックのチーフ・エコノミスト、デレク・シザーズ氏は「ゼロコロナ政策を終えた中国に対して市場は23年、大きな景気回復を期待している。その予測は最終的には正しかったということになるだろう」との見方を示したうえで次のように警戒する。「しかし、コロナ感染の波が続き、投資が10四半期ぶりの低水準に落ち込み、新規受注も低迷が続いていることから、23年1〜3月期に意味のある景気回復を期待することはますます非現実的となっている」』