[FT]中国が経済・外交リセット模索 外交関係修復も視野

[FT]中国が経済・外交リセット模索 外交関係修復も視野
The Big Read(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB116GH0R10C23A1000000/

『中国が「ゼロコロナ」政策を事実上終了したことで起きた大混乱に伴う代償が急拡大している。公式発表では死者数はあまり増えていないが、学識者やオペラ歌手など高齢の著名人についておびただしい数の追悼記事が流れ、中国の感染症弱者を襲うウイルスの影響力の大きさを物語っている。

中国の複数の地域で医療体制が逼迫、奪い合いとなった抗ウイルス薬と鎮痛剤の供給不足がアジア全土に広がっている。非公式な予想では、ゼロコ…

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『中国の複数の地域で医療体制が逼迫、奪い合いとなった抗ウイルス薬と鎮痛剤の供給不足がアジア全土に広がっている。非公式な予想では、ゼロコロナ解除に伴う中国の「出口波」で死亡しかねない人の数は約100万人とされている。

こうした状況は、毛沢東以来最も強力な中国の指導者である習近平(シー・ジンピン)国家主席のイメージに傷をつけるだけではない。2年間、西側諸国の膨大な死者数を中国の統治の秀逸さの証拠として伝えてきた中国のプロパガンダ(宣伝活動)機関も、政府政策の擁護に四苦八苦している。』

『実は、この大混乱の裏で、習氏の外交・経済政策の抜本的なリセットが進んでいる。中国の当局者と政府顧問によると、中国政府は著しく悪化した外交関係を修復し、疲弊した経済を立て直すための政策を組み立てつつある。

中国政府が抜本的なリセット(成功する保証はない)を目指す背景には、経済、社会、外交政策上の様々なストレスが重なり、危機的レベルに達したことがあると当局者や顧問は語る。』

『複数の当局者と政府顧問の話によると、その目的は、経済面では、減速する経済に力強い成長を取り戻すこと、中国農村部の数億人の労働者の暮らし向きを改善すること、不況に陥った不動産市場を安定させること、苦境に立つ地方自治体の財政を下支えすることにあるという。

中国政府が成長志向の政策をとると予測する有力エコノミストの1人である香港大学の陳志武教授(金融学)は、政府は2023年の成長目標は「6%かそれ以上」になると予想している。国際通貨基金(IMF)が予測する4.4%成長より大幅に高い数字だ。

「彼らが平均5%の成長率を狙う可能性もあり、22年の実績が約3%になりそうなことを考えると、23年については7%程度の目標値を打ち出す必要があるだろう」と陳氏は指摘する。他の数人のエコノミストも23年について5%超の国内総生産(GDP)成長を予想している。』

『外交面では、中国は、国際的な孤立感を経験した後、一部の西側諸国との関係を改善することに主眼を置いている。焦点は欧州との関係にある。ウクライナに対してロシアが仕掛けた戦争に関し、中国がパートナー国であるロシアを支持したことで中欧関係は著しく悪化した。』

『「中国政府は自国が西側諸国と外交面で敵対することは望んでいない。また多国間のフォーラムで孤立しているとみられるのも本望ではない」。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中国専門家、ユー・ジエ氏はこう話す。「ロシアがウクライナへの軍事侵攻でつまずき、中国にとっては、中ロ関係に関して、投資に対する見返りが著しく悪化した」

習氏とロシアのプーチン大統領は先月、オンラインで協議し、中ロ関係を深化させることを約束した。しかし、複数の中国政府高官はフィナンシャル・タイムズ(FT)との非公式な会話で、ウクライナ問題に関して中ロ両政府のスタンスには違いがあると強調した。これは彼らが一部の欧州外交官に向けて繰り返しているメッセージでもある。

なかには痛烈な批判を口にする人もいる。ある中国高官は匿名を前提に「プーチンはクレージーだ」と発言した。「侵攻の決断を下したのはごく少数の人間。中国はロシアに単純に従うべきではない」』

『習氏の外交的リセットは、ロシアとの緊密な関係がもたらすメリットを中国政府内で再検討したことに端を発する。

複数の中国の当局者によると、中国は今、ロシアがウクライナに対して勝つことができず、紛争後に国際舞台において経済的にも外交的にも著しく衰えた「弱小国」となる可能性を認識している。

加えて、公の場でどれだけ2国間の友好関係をうたっているとしても、一部の中国高官は個人的な場では、プーチン氏自身に対し、幾ばくかの不信感をあらわにする。

過去9カ月、様々な折に、この問題に通じた5人の中国政府高官がFTに対し、ロシア政府はウクライナ全面侵攻に乗り出す意向を中国政府に事前に伝えていなかったと発言した。

こうした見方は、ウクライナ侵攻開始のわずか20日前にあたる22年2月4日に、習氏とプーチン氏が北京で会談した後に出した共同声明の印象とは食い違う。声明は「中ロ協力に制限や禁じられた分野はない」と宣言していた。』

『会談の議事録は非公開のため、二人の間でどんなやり取りがあったのか正確にはわからない。しかし、ある政府高官はFTに対し、プーチン氏が習氏にその意図を伝えたというに近い発言は、「ウクライナ東部の分離主義者がロシアの領土を攻撃し、人道的な惨事を引き起こした場合には、(ロシアは)どんな措置を取ることも排除しない」という言葉だったと語った。

中国側はこの発言を、プーチン氏が始めた全面的な侵攻ではなく、限定的な軍事作戦の可能性を伝えるシグナルと受け止められたと同高官は語った。』

『中国の当局者によると、侵攻当時に筆頭外務次官を務め、中国外務省トップのロシア専門家だった楽玉成氏が6月に更迭されたことが、中国側の誤認を裏付けているという。中国の政官界では、楽氏は次の外務大臣になるとみられていた。同氏は現在、国家新聞出版広電総局の副局長の役職に就いている。

中国前筆頭外務次官の楽玉成氏。ウクライナ侵攻時に中国外務省トップのロシア専門家だった同氏は6月に更迭された=ロイター

事情通の関係者によれば、「楽氏は2段階降格された」という。「ロシアの侵攻に関する諜報(ちょうほう)の失敗の責任を問われた」

中国の当局者や欧州の外交官の証言によると、プーチン氏が習氏にどんなことを語ったにせよ、欧州における中国の地位回復を図る中国外交官は、「ロシアの全面侵攻の意図を中国側は認識していなかった」と主張しているという。

こうした発言は、中国の孤立感を和らげ、欧州が米国に一段と接近するのを防ぐための大きな戦略の一部といえる。』

『中国、欧州双方の外交当局者によると、プーチン氏に核兵器使用を思いとどまらせるために、中国には、ロシアとの緊密な関係を利用する用意があると言うことで、欧州諸国の政府を安心させるのが中国側の戦略だという。

中国政府の戦略のもう1つの側面は、自国を潜在的な仲裁役としてのみならず、戦後のウクライナ復興を支援する取り組みに積極的な参加者として位置付けることだと中国当局者は話す。

習氏自身が先月末にプーチン氏に向けて語った発言からは、自分自身を和平の支持者として打ち出そうとしていることがうかがわれる。

「和平交渉への道のりは平たんではないが、努力をあきらめない限り、和平の見通しは常に存在する」と習氏は語った。「中国は引き続き客観的で公正な立場を維持しながら、国際社会の結束に力を尽くし、ウクライナ危機の平和的な解決に向けて建設的な役割を果たす」

(下に続く)

By James Kynge, Sun Yu and Xinning Liu

(2023年1月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)』