いまウクライナの砲兵は露軍砲兵に対して劣勢である。これを挽回するためには、クラスター弾薬を使わせるしかないだろう…。
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『Jakub Palowski 記者による2023-1-10記事「Break the Taboo: Cluster Munitions Needed by Ukraine, Poland, and NATO [OPINION]」。
一ポーランド人からの大胆な提案。いまウクライナの砲兵は露軍砲兵に対して劣勢である。これを挽回するためには、クラスター弾薬を使わせるしかないだろう、と。
欧米は全力で野砲を供与したが、牽引式155ミリ砲が200門チョイ、SPの155ミリ砲が150両チョイというところだ。たった9ヵ月でこれだけ増えたというのは1国にとってはすごいことだが、それでも露軍の砲兵には数で負けているのが現実である。今の調子では砲兵の戦力逆転は難しい。
※だから鉄道を切断するしかないのだ。鉄道切断だけが、露軍の砲力を劇的に退潮させられる。その作戦のための事前の準備がなかったというのが信じられない。NATOは空軍力の優越を過信して胡坐をかいていた。ロスはその優越を使わせない戦争をプランニングしてきた。どっちがプロフェッショナルか?
砲弾の増産は、米国にとってすら、容易なこっちゃない。昨年、米国工業は155㎜砲弾を月産1万4000発、供給した。それをなんとか拡張して、今年の春には、月産2万発にできそうだという。そのていどの弾撥性しかないのだ。
そして激しい戦争では大砲じしんが磨耗したり、敵によって破壊されたりする。その更新がすぐに必要になるのだが、十五榴をそう簡単に補充できるものじゃない。
それで今、欧米からは、各種の105mm榴弾砲が、ウクライナ軍に供与されつつある。そうでもするしかないのだ。
米国はクラスター禁止条約を批准してない。しかしウクライナ軍にその弾薬を供給する決心はまだついていない。西欧諸国は、無誘導の単純クラスター弾薬は、ほとんど保有していない。
しかし、米国以外に、ポーランド、ルーマニア、トルコ、ギリシャ、イスラエル、ロシア、中共などが、クラスター弾禁止条約を批准していない。
つまりポーランドは、やろうと思えば、供給が可能なのである。
だがこの政策には難関が多い。
たとえばフランスは、ポーランドの国産MLRSである「FeniksZ」(122ミリロケット弾)のロケットモーターを供給していたが、ポーランドがその弾頭をデフォルトでクラスター仕様にし続けているというので、モーターを禁輸してしまった。
米国は、そのMLRS用の無誘導のクラスター弾頭をすでに製造していない。そして一部の在庫は破壊処分した。将来の本格戦争用の保険として、少数の在庫を保管している状態。それは、今のウクライナに供給できる性質の在庫ではない。とっておきの「戦場報復用手段」なのだ。
1弾で1標的だけを破壊するPGM155粍砲弾は、とにかく高額すぎる。米国は4700発以上のエクスカリバーをウクライナに供給したけれども、それは米軍用ストックの25%にも相当する。もうこれ以上は不可能だろう。
この戦争前、クラスター弾は、その不発弾が市民生活の脅威となるから禁止するべきなのだ、と西欧人は信じていた。ところが、露軍に町を占領されれば、その危害は、ちっこいクラスター弾の炸裂どころのレベルじゃないのだ。ロシア兵によって征服されることこそ、市民の地獄なのである。この最大最悪の地獄を遠ざけるためには、われわれはクラスター弾を使うべきだ。さもないと露軍だけが一方的にクラスターのMLRSを使って、安価に有利に戦争を進めてしまう。
それに、非クラスターの砲弾類にもちゃんと不発があるという事実を、クラスター禁止条約の当時、騒ぎまくった市民団体どもは、意図的に無視している。実戦では、発射した大砲のタマのうち25%もが不発弾となることがあるのだ。
実戦場における、この高い不発率があるからこそ、実戦では、クラスター弾を使える側が、断然に有利になって来るのである。
まずウクライナの砲熕砲兵用に、クラスター弾を供給してやるというのが、合理的な優先順位になるであろう。砲熕砲兵の弾薬量における劣勢が、最も深刻だからだ。
米国製のMLRS用のクラスター弾は、とりあえず無用だ。というのは、その射程はたったの30~45kmでしかないのだ。もっかのウクライナの戦場でわざわざそんなものを使わせようとしたら、むしろMLRSが敵からやられてしまうリスクを高める。
やはり、単弾頭のGMLRSに、レンジ85kmで敵の高価値目標を狙わせるのが、合理的である。
105mm野砲弾にもクラスター・タイプがあるのを知っているか? いま、105mm砲のPGM砲弾は、ほとんどどこの国でも製造していない。だから、既存の105mm砲アセットを最大限に活かしてやるためには、そこからクラスター弾をばら撒かせるのが最適解となるのだ。
オスロ条約のアーティクル21は、クラスター禁止を批准した国が、批准してない国との軍事的協働をすることを、認めている。※だから日本は米軍をそのまま国土に受け入れられるしその作戦を支援することもできる。
したがってポーランドその他の国がクラスター砲弾を生産再開したとしても、現下の必要性を考えたなら、欧州内部での大問題にはならぬのである。
記者は提言する。今次ウクライナ侵略勃発を区切りとして、欧州諸国はオスロ条約を正式に廃棄するべきである。それしか自由世界が生き残る道はないであろう。
具体的には、ロシアに6ヵ月以内の撤退を求める。6ヵ月しても撤退しなかったら、欧州はオスロ条約から離脱し、クラスター砲弾の全力生産に移るのだ。欧州一丸となってこういう圧力をかけなかったらダメだ。
ポーランドは今、クラスター弾を製造していない。オスロ条約には署名すらしなかったが、欧州に付き合って、10年以上前に、製造を自発的に止めているのである。
ポーランドの軍需産業は、最新型のクラスター砲弾を提案している。それは98ミリ迫撃砲用、および「2S1」榴弾砲用である。20年前の西側先進国製のものよりも、ずっと洗練されているという自信もある。コラテラルダメージなど、惹き起こしたりしない。
※ポーランドは韓国にも表立ってよびかけるといいだろう。あそこでも製造が続いているはずだからね。しかも、即座に供給可能なはずだ。』