今次ウクライナ戦争前、ロシアの国庫歳入のうち45%は、石油と天然ガスの輸出の儲けに依拠していた。
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『Sergio Miller 記者による2023-1-7記事「Russian oil and gas industry: the impact of sanctions」。
今次ウクライナ戦争前、ロシアの国庫歳入のうち45%は、石油と天然ガスの輸出の儲けに依拠していた。これがロシア戦費のベースだから、戦争勃発と同時に欧米は、この部門に経済制裁を加えた。
2021年の統計によると、ロシアは470万バレル/日の原油を国外へ輸出していた。それは世界の石油供給量全体の14%を占めていた。
戦争前、欧州は、ロシア原油を240万バレル/日、輸入していた。
そのうち、全長5500kmの「ドルジバ・パイプライン」によって欧州の精油所まで圧送されていたのが、75万バレル/日。
残りは、タンカーによって、欧州の諸港まで運ばれていた。
ロシアは天然ガスでは米国に次ぐ世界第二の生産国である。
2021年に欧州が輸入した天然ガスのうちほぼ4割は、ロシア産天然ガスだった。
最大の買い手は、ドイツ、トルコ、イタリアだった。
2021年にロシアが中共に「シベリア・パイプライン」を通じて売った天然ガス量は、欧州向けの輸出量の6%ちょいである。
LNGの形態でロシアが輸出した天然ガスは、2021年において、世界のLNG取引量の8%だった。LNG輸出国の中では、ロシアは輸出量が第四位であった。
今次戦争前、米国はロシアからも原油と石油製品を輸入していた。それは総輸入量の8%だったが、2022-3に、天然ガスとともに全面禁輸。(ロシアからの天然ガス輸入量は、ほぼ無視できるレベルだった。)
2022-12初旬、EUはタンカーで運ばれるロシア産の石油の輸入を停止した。またロシア産石油製品の全面禁輸は2023-2からスタートする。これは、スロヴェニアやハンガリーがドルジバ・パイプラインにものすごく依存してしまっているための遅れである。
米国とEUと同盟諸国は、2022-12から、ロシア産原油をバレルあたり60ドルを超えた値段では買わないことを申し合わせた。これに対してプー之介は、2023-2から5ヵ月間、石油をそれら諸国に売ることを禁ずるという正式命令を国内に出している。
このキャップ規制、ロシア産の天然ガスには、かけられていない。
しかしEUは、ロシアからの天然ガス輸入を「三分の二」減らすことで合意している。
英国は、もともとロシア産天然ガスをわずかしか輸入していなかったので、2022末に全面禁輸とした。
ロシアは「ノルドストリーム1&2」をわざわざ水中爆破したことで、EUの努力目標「三分の二」削減のオーバー達成を助けてしまった。
すなわち、戦争前はEUは全天然ガスの40%をロシアから買っていたのに、いっきょにそれが4%に落ち込んだ。
おそらくロシアはEUという最上のガス市場を永久に失ったと見ていいだろう。
EUも、これからはロシアに天然ガスをほとんど依存しないようになるであろう。
石油に関する対露経済制裁は2022-12-5に発動されたばかりだが、すでにロシアはタンカーによる石油輸出量を22%減らしている。
この制裁にともなって、インド、中国、トルコの3国が、ロシア産原油のタンカー輸出全体の70%を買いつけるようになった。
どのくらい買い叩いているか。2022-12中旬のウラル原油は、バレルあたり30ドル以下で買い取られた。これは世界ベンチマークであるブレント原油よりも安い。
インドが最も得をした。戦争前は全石油輸入の2%しかロシアから買っていなかったのだが、いまやロシア石油の最大の買い手である。ただし、ディスカウント価格で。
中共は、買い増したようでも、全需要の7%にあたる石油しか、ロシアからは買っていない。ロシアの必死の売り込み努力にもかかわらず。
※深入りすると弱みを握られるとよく分かっている。』