ワグナー・グループ代表プリゴジン氏の怪しい動き

ワグナー・グループ代表プリゴジン氏の怪しい動き : 机上空間
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『プリゴジン氏と言えば、ロシアのプーチン氏の盟友でもあり、子飼いの傭兵集団ワグナー・グループを率いるリーダーです。ただし、あくまで、傭兵集団なので、プーチン氏との個人的な繋がり以外に、ロシア政権内に安定した地位を築いていません。ロシア政府からしても、何か国際的に問題が生じた時に、トカゲの尻尾切りのように、全ての責任を押し付けて逃げる為に飼っているようなものなので、都合が良いわけです。なので、ワグナー・グループは、ロシア正規軍ができない汚れ仕事を担当する、使い捨ての駒でした。

しかし、ここにきて、ロシアが政治的に固執する占領目標であるバフムート近郊の戦闘で、部分的にウクライナ軍を押し返して、ロシア国内で株を上げています。この辺りでは、完全にロシア正規軍が組織崩壊していて、実質的には、戦闘経験の豊富な傭兵部隊であるワグナーが仕切っています。そして、後方から送られてきた、戦闘未経験の動員兵を、相手の砲弾を減らす目的で、闇雲に突撃させて、戦線を前に押し出しています。前線から逃げて来た、兵士には、督戦隊として控えているワグナーの兵士が、銃撃をかけて、逃亡を許さない形で、無謀な突撃を強制しています。相手に撃たせて、砲弾を減らすのが目的なので、小銃さえ支給されずに突撃させられる兵士も出ているようです。どうせ、壁として突っ込ませるので、武器や銃弾を持たせるのは、もったいないという事らしいです。

1時間に1回程度の頻度で、動員兵が突っ込んで、相手の砲弾と気力を消耗させた結果、バフムートでは、一時的にロシア軍が、拠点になる郊外の工場や建物を確保するという事が起きています。まぁ、これを、最近のロシアン・フレンズの日本のブロガーの皆様が、「ロシア軍・反転攻勢開始。クリスマスまでに、バフムート奪還完了」とか言って、大騒ぎしていましたが、未だにバフムートはウクライナ軍の支配下にあります。すると、最近は、「年末までには」とか言っているらしいです。

ただ、ワグナーの兵士の行動が、どうも整合性に欠けていて、奇妙な動きをしています。一時的にロシア軍に占拠された拠点を奪還しにウクライナ兵士が進軍すると、その拠点を守る素振りは、まったく見せず、地雷やトラップを仕掛けて、戦闘が起きる前に、さっさと後退するという奇妙な行動を繰り返しています。つまり、観察から推察すると、ワグナー兵にバフムートを占領する気が無いんじゃないかというふうに見えます。

そして、代表のプリゴジン氏は、プーチン大統領を差し置いて、やたら政治的な発言をしています。最前線のバフムートに赴いた際には、ロシア政府の了解をとらず、ちょうど同じ時期にウクライナ軍のバフムート陣地を訪れていたゼレンスキー大統領に向けて、「私はゼレンスキーと対話をする用意がある」とSNSに呼びかける動画を投稿しました。これは、交渉に関する政治的な発言ですから、前線の、しかもロシア政府内に何の役職も持っていない傭兵のボスが勝手に発言して良い内容ではありません。そして、この時、ロシア国防相のショイグ氏が、飛行機でバフムートの前線視察に出ていたのですが、公開された動画の飛行機の窓から見えた外の景色が、緑の原野になっていて、今の時期雪で覆われているはずなのにオカシイ。本当は、前線に視察なんぞ行ってないだろうと、騒ぎになっていました。

つまり、プリゴジン氏の行動は、英雄的な態度で、あきらかにロシア国防省と、さらにプーチン大統領の権威を失墜させる方向で行動しています。逆に言えば、プリゴジン氏としては、プーチン氏の政治的な固執で執着しているバフムート攻略に成功する必要は無く、そこで果敢に戦って、ロシア国防軍には出せなかった成果を挙げていれば、自然と自分の株が上がるわけです。何も、無理して占領を試みて、優秀な傭兵の数を減らす必要はなく、小競り合いで陣地の取り合いをしていれば、「功労者」として、ロシア国内での人気は上がり、政府内にポジションを確保できる可能性が出てきます。

実際、ロシア正規軍の将校が戦死して、指揮できる人間が圧倒的に不足している為、ワグナーが指揮をとる軍隊しか、短期的にでも戦果を挙げられる軍隊がいません。プリゴジン氏の野心を感じていても、ロシア国防省も、プーチン大統領も、排除できない状況にあります。こうして、ロシア人の人気を集めておけば、ロシアが敗北してプーチン氏が排除されても、誰かしらロシアの代表として、国をまとめる人間は必要になるので、あわよくば、次期閣僚に入れるかも知れません。ロシアが反攻して、ウクライナに打撃を与えれば、バフムートでの戦果がロシア国内で知れ渡っているので、まさに救国の英雄として評価されるでしょう。つまり、ワグナーは、バフムートで、勇猛果敢に戦うフリをしていれば、もっとも美味しい結果が期待できるのです。

そう考えると、動員兵を消耗を気にせず突撃させて、郊外の拠点を確保しても、ウクライナ軍と拠点を巡って戦闘になる事を避けて、地雷とトラップだけ仕掛けて、さっさと自陣へ撤退する理由が判ります。拠点を一回落とした時点で、日本のロシアン・フレンズも含めて、ロシアの軍事ブロガーは、大勝利でも収めたかのように盛り上がるので、人気を得るには、それだけで十分です。

そして、つい最近、ダメ押しのように、まるで、政治家のような発言をプリゴジン氏はしています。共産党国家特有の富裕層の弾劾です。中国でも、良くやるのですが、政権批判が高まってくると、特定の富裕層を標的にして、「こいつらは、売国奴だぁ」と告発するのですね。これを始めました。いわゆる、海外に兆円単位の資産を持つロシアのオリガルヒの連中を、「国家にあだなす卑劣漢」呼ばわりして、攻撃し始めています。どこの国の一般国民も、自分より裕福な暮らしをしている金持ちが、罰せられると、溜飲を下げて、気持ちよくなれるし、告発した人間の人気は上がります。まぁ、ポピュリズムですね。傭兵部隊の隊長ごときが、やって良い行動ではないのですが、誰も今のプリゴジン氏を止める事はできないのです。バフムートの英雄ですからねぇ。

これは、プーチン大統領も既に始めていて、ウクライナ侵攻に批判的だったり、海外に巨額の資産をプールして、身の安全を確保していたオリガルヒを、少なくても7名ほど、家族ごと暗殺しています。表向きは、全ての事例で自殺・事故として片付けられていますが、短期間に、まとまった数のオリガルヒが死んでますので、まず暗殺でしょう。見せしめの意味もあるので、不自然でも何でも良いのです。「逆らうと死ぬよ」というメッセージが伝われば、プーチン氏的にはOKです。

これが、独裁国家・ロシアの本分です。』