防衛省が整備する自衛隊のUAV戦力、MQ-9やTB2などが導入候補に

防衛省が整備する自衛隊のUAV戦力、MQ-9やTB2などが導入候補に
https://grandfleet.info/japan-related/uav-force-of-the-self-defense-forces-maintained-by-the-ministry-of-defense/

『防衛省の予算概要の中でスタンド・オフ・ミサイルの効果的な使用に欠かせない「視覚的な戦場認識力の強化=偵察型UAV」の整備について言及、さらに多用途/攻撃用UAVとしてMQ-9やTB2などを2023年度に試験導入する予定らしい。

参考:我が国の防衛と予算-防衛力抜本的強化「元年」予算- 令和5年度予算の概要
参考:自衛隊が導入を検討する無人機、ウクライナが使ったトルコ製機種も
防衛省が令和5年度予算の概要で言及した無人機関係に関する情報のまとめ

防衛省が発表した令和5年度予算の概要で新規に取得する装備に言及しているが、スタンド・オフ・ミサイルの整備計画、トマホークの調達、イージス・システム艦の建造など目立つ装備調達は主要メディアの方で報じられているためスポットライトが当たりにくい部分を中心に見ていく。

出典:防衛省 令和5年度予算の概要 スタンド・オフ防衛能力の運用イメージ

予算概要に登場したスタンド・オフ防衛能力(12式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用高速滑空弾・能力向上型、極超音速誘導弾、島嶼防衛用新対艦誘導、JSM、JASSM、トマホーク)を活かすには敵の位置を把握する能力が欠かせず、日本は情報収集衛星(光学センサーとSARを搭載した2種類の偵察衛星)を整備、新たに高高度(最大1万8,000m)を飛行して広範囲(最大100,000平方km)を長時間監視できるRQ-4を導入したが、これは戦術的ではなく戦略的な情報収集手段なのでEO/IRセンサーの能力=視覚的な認識力が特別優れている訳では無い。

RQ-4はMTIモードを備えたSAR(ポーランド軍による分析によると推定作動範囲は最大160km)による情報収集能力が優れていて、EO/IRセンサーの作動範囲は一般的な無人機が搭載するものと同じレベル(約50km前後)だと指摘されており、何百kmも先の地域を視覚的に長時間監視して敵の動きをリアルタイムに把握できる能力はなく、あくまでRQ-4はU-2と同じ高高度偵察機であって中高度や低高度で使用する無人機の上位版ではない。

出典:Northrop Grumman

さらに「防衛省は運用・維持コスト高騰が予想され陸上偵察にしか使用できないRQ-4/Block30導入を中止し、東シナ海で使用できる海上監視タイプの無人航空機を熱望していた」と共同通信が報じていた件は、RQ-4がRQ-4Cのように海上を移動する目標の識別に効果的なISAR(逆合成開口レーダー)を装備していないためだが、元々RQ-4とRQ-4Cでは用途が異なるので仕方のない話だ。

いきなり話が脱線してしまったが、予算概要に登場した「情報収集・分析の強化」という項目で偵察型UAV(戦術無人機)を整備すると言及しているのは、まさに中高度や低高度で使用する無人機を整備して「視覚的な戦場認識力を強化する」という意味で、レーダーだけでは認識できない戦場状況を収集してスタンド・オフ・ミサイルの効果的な使用に繋げるつもりなのだろう。

出典:防衛省 令和5年度予算の概要 情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)機能の強化

無人アセット防衛能力の中で言及されているUAV(中域用)機能向上型は「現有のUAVにSAR(合成開口レーダー)を搭載する」と言及してScanEagleの絵を載せているため、ImSARを搭載するScanEagleの導入して上陸した敵の情報収集に活用する可能性が高く、偵察用UAV(中域用・能力向上)は「衛星通信に対応した機体により侵攻部隊等の情報を遠距離から早期に探知し、指揮官の状況判断及び火力発揮等への寄与が可能」と言及しているため、非武装でISTAR任務に特化したMALE(中高度を長時間飛行できる無人機を指すカテゴリー)タイプのUAVを考えているのかもしれない。

UAV(狭域用)は「空中からの情報収集による指揮官の状況判断及び火力発揮等への寄与が可能」と言及してクアッドコプターの絵を載せているが、この手のタイプは戦場で最も消耗が激しい小型UAV(ウクライナでは両軍が数百機以上も消耗して使い捨て近い運用を行っている)だと思われ「5式:6億円」という高価な機種で必要な数量を揃えることが出来るのか心配だ。

出典:防衛省 令和5年度予算の概要 各種攻撃機能を持つ無人アセットの整備

多用途/攻撃用UAVは「情報収集機能に加えて、火力及び電磁波による攻撃機能を効果的に保持した多用途UAV、侵攻部隊等の情報を収集し即時に火力発揮可能な攻撃用UAV」と明確に定義しており、朝日新聞が23日に「防衛省が2023年度に試験導入を検討している無人機にMQ-9とTB2が含まれる」と報じた内容は多用途/攻撃用UAVのことだ。

MQ-9とTB2の滞空能力(両機とも24時間以上)に大きな差はなく、MQ-9(機体価格2,000万ドル前後)は有人機と同じヘルファイアや精密誘導兵器を使用できるが関連費用込みの導入コストは1億ドル前後で、TB2(機体価格500万ドル前後)は無人機向けの小型な精密誘導兵器しか使用できないものの導入コストは600万ドル~1,000万ドルの間と言われており、MQ-9やTB2をテスト(両機以外の試験導入も示唆している)するのは「損耗する可能性が高いUCAVにとって調達性も重要な要素」だからだと思われる。

出典:Uvision 徘徊型弾薬Hero

小型攻撃用UAVは「島嶼等における着上陸侵攻対処及び重要施設等の防護に際して、侵攻部隊を探知・識別して人員、車両、舟艇等に対処できる小型攻撃用UAV」と明確に定義しており、イメージとして掲載された絵を見る限りイスラエル製の徘徊型弾薬「Heroシリーズ」の導入を検討している可能性が高い。

残念なのは有人戦闘機とチーミング可能な無人戦闘機(予算概要の中でいうところ戦闘支援無人機)について言及がない点で、日本の場合は次期戦闘機のファミリーシステムに開発計画が含まれているのだが、欧米も中露も次世代戦闘機=第6世代機のサブシステムではなく第4.5世代機や第5世代機のサブシステムとして実用化時期を前倒しており、英国は「2020年代中にタイフーンやF-35Bとのチーミングを実用化させたい」といってモスキートプログラムを進めていたが「もっと早く実用化したい」といってプログラムを中止している。

出典:Baykar Kızılelma

ロシアは2024年末までに「Su-35やSu-57とチーミング可能なオホートニクの量産機が出てくる」と主張していたが、これはウクライナ侵攻以前の話なので現在も2024年末というスケジュールが守られている可能性は低く、中国は情報が全く出てこないので謎につつまれており、オーストラリア空軍とボーイングがテストを繰り返しているMQ-28Aは「輸出可能だ」と公言しているものの実用化時期は明確になっていない。

日本はF-15、F-2、F-35A/Bといった航空戦力とチーミング可能な無人戦闘機について言及がなく、2035年頃に実用化される次期戦闘機まで無人戦闘機の導入計画は無いのだろうか?

出典:Baykar TB2

因みにトルコやアゼルバイジャンなどTB2導入国では日本のUCAV導入候補にTB2が入っていることに関心が集まっている。

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※アイキャッチ画像の出典:GA-ASI MQ-9
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投稿者: 航空万能論GF管理人 日本関連 コメント: 29 』