米、伸び低迷で薄れる人口優位 移民問題は政権の急所に

米、伸び低迷で薄れる人口優位 移民問題は政権の急所に
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『米国の強さを支えてきた「人口優位」が薄らいでいる。2022年の人口の伸びはやや持ち直したものの、前年に続く歴史的な低水準にとどまった。構造的な人手不足で労働市場の熱は冷めず、インフレを退治する利上げ局面の出口はかすむ。人口優位の柱である移民をめぐる党派間の対立は激しく、バイデン米政権の急所となっている。

「米国人は再び技術革新し、再び夢をみる」。バイデン大統領は22日、クリスマス前の演説に臨み、新型コロナウイルス禍を乗り越えて日常を取り戻したことに自信をみせた。だが、現実は厳しい。

米国勢調査局の22日の発表によると、22年7月1日時点の推計人口は3億3328万7557人と前年比0.4%増にとどまった。過去最低の0.1%台に沈んだ21年から上向いたとはいえ、年1%超で伸び続けた1990年代や年200万人超の増加を重ねた2000年代以降と比べれば、「崖」に近い低迷に直面している。

21年に38万人弱まで縮小した移民の純増幅は100万人超へと6年ぶりに拡大した。それでも16年の120万人超には届かず、人手不足から米失業率は3%台後半の完全雇用の水準にある。米連邦準備理事会(FRB)が強烈な利上げを続けても賃上げを伴う雇用の過熱が続き、どこまで引き締めればインフレが2%目標に落ち着くか見通せない。

米国は先進国の中でも例外といえる安定した人口増で社会の新陳代謝を進め、経済成長と競争力向上の源泉としてきた。「アワー・ワールド・イン・データ」によると、米国人の中位年齢は20年で37.5歳。日本の48歳、英国の39.5歳より若く、中国の37.4歳と並ぶ。40年に中国が48歳に高まっても、米国は41.5歳にとどまるとされる。

こうした優位の循環が揺らぐ。米国の合計特殊出生率は2010年代以降、2を下回り、低下傾向が続く。コロナ禍と薬物中毒のまん延で米国人の21年の平均寿命は76.4歳と20年より0.6年短くなった。2年連続で縮まり、96年以来の短さだ。

日本総研は、移民の頭打ちなど労働投入量の伸びの横ばいが続けば「2%弱と推計されている米潜在成長率は26年にかけて1.5%台に低下する」とみる。

22年にカリフォルニアやニューヨークなど18州が人口減となるなか、2%近く急増したフロリダ州では「デサンティス知事のおかげで経済が好調だ」(同州オーランドの観光業者)との声があがる。同知事は11月の中間選挙で民主党の対立候補に20ポイント近い大差で再選を決め、24年次期大統領選の共和党の有力候補に躍り出た。

米国がライバルとみる中国は今後、高齢化と人口減が急ピッチで進む。米国にとって人口優位を保つことは安全保障上も重要となるが、子供を持つかどうかという個人の究極の選択を政策で誘導することはただでさえ難しく、短期に効果は上がらない。

移民国家への回帰には高い政治の壁が立ちはだかる。メキシコと接する南西部国境での不法移民の拘束は22会計年度(21年10月~22年9月)に約238万人と前年度より4割増えた。中南米の政情不安などからかつてない規模の人々が米国に押し寄せている。

野党・共和党は「国境の安全を守る」と公約した。有効な対策を講じることが難しく、治安悪化などへの不安に駆られる米有権者の支持を得やすい移民問題は、共和党が狙うバイデン政権の格好の急所となっている。

バイデン政権は民主党内の左派に押され、不法移民を即時送還する「タイトル42」と呼ばれる措置の撤廃に動いている。ところが民主党の地盤であるテキサス州の国境の町、エルパソは不法移民があふれ、緊急事態を宣言した。

打つ手を誤れば、中間選挙での「敗北回避」で得た政権の勢いなど簡単に消し飛ぶ。バイデン大統領が意欲をみせる再選出馬に向けた戦略も狂わせるだろう。米国はこれまで正面から取り組んだことのない人口問題という難問に直面している。

(ワシントン支局長 大越匡洋)

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米中Round Trip https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B001&n_cid=DSREA_roundtrip 』

図録▽主要国における生産年齢人口増減率の長期推移
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