[FT]米国の対中国禁輸リスト、新興半導体企業を狙い撃ち

[FT]米国の対中国禁輸リスト、新興半導体企業を狙い撃ち
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB221840S2A221C2000000/

『中国南部のハイテク産業拠点、深圳市で先週、新興半導体メーカーの鵬芯微集成電路製造(PXW)の従業員らがパニック状態に陥った。米政府が同社を事実上の禁輸リストに加えたからだ。

米政府は中国人民解放軍への技術供与が疑われる監視技術や半導体、ドローン(無人機)、スマートフォン関連のハイテク企業や研究機関を次々にELに追加してきた=ロイター

ある従業員は「チームリーダーと幹部のほぼ全員が緊急会議に招集されたが、残った平社員は『デリケート』な問題に関する議論を禁じられた」と話した。米政府は15日、安全保障上問題がある企業を並べた「エンティティー・リスト(EL)」にPXWなど計36社の中国企業を追加すると発表した。この従業員によれば、緊急会議は翌16日も続いたという。

米国のサプライヤーがELに載った企業に輸出するには米政府の許可が必要となり、申請しても却下される可能性が高い。米政府は10月、中国による最先端半導体やその製造装置、技術者の調達を大幅に制限する措置を導入している。今回の追加措置は10月の規制強化策の抜け穴を塞ぐための「保守管理作業」だとアナリストはみている。

もぐらたたきゲームの様相

コペンハーゲン・ビジネススクール(デンマーク)で中国半導体産業を専門とするダグラス・フラー氏は「もぐらたたきゲームのようだ」と表現する。「米政府が制裁を発動するたびに中国側が新たなプロジェクトを立ち上げ、米国がその阻止に動くという繰り返しだ」

米国が中国の技術的台頭を抑えるために輸出制限を課したのは、2019年5月に通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)をELに登録したのが最初だ。それ以来、米政府は中国人民解放軍への技術供与が疑われる監視技術や半導体、ドローン(無人機)、スマートフォン関連のハイテク企業や研究機関を次々にELに追加してきた。

15日の追加措置では半導体開発に乗り出したばかりのPXWなど、ファーウェイのような大企業と比べて制裁の影響を受けやすい新興企業が標的になった。

香港の調査会社カウンターポイントの台湾駐在アナリスト、ブレディ・ワン氏は「米政府は中国の半導体サプライチェーン(供給網)を熟知しており、優先的に標的にすべき企業や将来性の高い企業を見極めている」と指摘した。

PXWは深圳市政府から資金を受け、ファーウェイの元幹部が経営に参画するなど強力な後ろ盾がある。同社の2人の従業員によれば、複数の米企業に発注した半導体製造装置を23年に受け取る予定だったが、その可能性はついえた。

合肥兆芯電子も今回、期せずしてELに名を連ねた。同社は米インテル製に代わる国産のパソコン用プロセッサーの開発を目指し、台湾の半導体設計会社、威盛電子(VIAテクノロジーズ)の元社員によって設立された。合肥兆芯電子の技術者は今回の措置について「不快な驚きだ」と語った。「米政府の目に留まるとは誰も予想していなかった」

西側諸国のある貿易当局者は、合肥兆芯電子がスーパーコンピューター向けのプロセッサーの開発に携わっているか、中国の先端半導体開発を支援していることを米国が察知した可能性があると見ている。スパコンと先端半導体はいずれも10月の輸出規制強化の対象になった分野だ。

無名企業も有名企業もリスト入り

この当局者は「米国はこれまで無名だった企業を含め、中国のハイテク業界をより細部まで把握しつつある」と指摘した。

一方、今回の措置では著名な企業もELに加えられた。

中国の半導体大手、長江存儲科技(YMTC)は10月に輸出規制の対象になり、すでに大打撃を受けている。YMTCの上級技術者によれば、同社は生産拡張計画を中止し、米国の製造装置メーカーに発注済みの機器の頭金を返還するよう求めているという。

この技術者は「当初は最先端ではないチップの製造に戻ることも考えたが、今回の措置で逃げ場が完全になくなった」と話し、ELに加えられたことで生産拡大のための装置の輸入が許可される見込みはほぼ消えたとの見方を示した。

YMTCは中国国内で米アップルにスマホ「iPhone」向けのメモリーチップを供給する計画を進めていたが、10月に交渉が中断した。台湾の調査会社トレンドフォースによれば、YMTCは製造装置メーカーから必要な支援を受けられなくなれば最先端の3次元NAND型フラッシュメモリーの競争力を失い、24年までに同市場からの撤退を余儀なくされる可能性がある。

米政府は半導体製造装置を開発する有力企業もELに加えた。上海微電子装備(SMEE)は、現在オランダのASMLが独占している最先端の露光装置の国産化を託せる唯一の企業とみられている。

SMEEは半導体に回路を形成する露光装置の部品を輸入に依存しているうえ、大量生産の現場に導入した実績もない。SMEEの開発プロジェクトを指揮した上海市の当局者は「製品化はまだずっと先の話だ」と述べる一方、ASMLが派遣した現場作業員の仕事を担えるよう経験豊富な技術者のチームを社内に立ち上げていたと打ち明けた。だが、ASMLの作業員は米国の輸出規制を受けて引き揚げていった。

フラー氏は「一部の中国の半導体製造装置メーカーとは異なり、SMEEには米国人技術者はいない。そのため、10月の措置で追加された米国人技術者の移動規制による影響は比較的少ない」と述べた。

ファーウェイの国産半導体計画に関与

今回の追加制裁の対象の中で、もう1社見逃せないのが上海集成電路研発中心(ICRD)だ。同社はファーウェイによる国産半導体の増産計画に関与しているとみられるが、ファーウェイは否定している。

「ICRDをELに追加するのには時間がかかった」と西側の貿易当局者は話した。「2年前から禁輸リストに加わるだろうと予想していた。米国はファーウェイの半導体開発プロジェクトに関与している疑いのある企業を厳しく取り締まってきたからだ」

今回の記事で取り上げた中国企業にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

米政府は中国の最先端半導体開発にも狙いを定め、人工知能(AI)向け半導体設計の中科寒武紀科技(カンブリコン)と9つの子会社をELに追加した。これらの企業とその母体となった中国科学院は「外国直接製品ルール」の対象となり、米国の技術を一定比率以上含む製品やサービスの提供を受けられなくなった。

カンブリコンは電子商取引(EC)大手のアリババ集団や上海市政府から資金を得て、20年に上海のハイテク新興企業向け市場「科創板」に上場した。英半導体設計大手アームの知的財産や、米ケイデンス・デザイン・システムズとシノプシスの半導体設計支援ソフトを利用しているほか、半導体の製造を台湾積体電路製造(TSMC)に委託している。

カンブリコンは最新の資金調達資料で「米中の貿易摩擦が激化すれば、今後の製品開発やサプライチェーンに深刻な悪影響が及ぶ可能性がある」と懸念を表明した。

アナリストは中国の他の新興企業にも同様の運命が待ち受けているとみている。フラー氏は「半導体設計の分野ではさらに多くの規制の動きがあるだろう」と述べた。

By Qianer Liu and Kathrin Hille

(2022年12月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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