投機筋に追い込まれた日銀 国債空売り再燃、緩和限界に

投機筋に追い込まれた日銀 国債空売り再燃、緩和限界に
動いた日銀 緩和修正を読む
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB214JQ0R21C22A2000000/

 ※ 『※ またもや、「日銀」は、時々は、こういう「荒業(あらわざ)」に出るんだということを、満天下に示した形だな…。

※ ある意味、「見事な」仕事だった…。』…。

 ※ と書いた…。

 ※ しかし、「そう単純な話し」でも、無かったようだ…。

 ※ こういう「一国の通貨政策」を材料に、「儲けようとするヤカラ」との闘いは、延々と続いていくんだろう…。

『日銀が10年続いた大規模な金融緩和政策の修正に動いた。止まらぬ円安に政府の危機感が強まり、政策変更を見越した投機筋の債券売りも膨らむなか、10年債利回りの上限金利の引き上げという「事実上の利上げ」に追い込まれた。政策変更の準備は11月には始まっていた。日銀との賭けに勝った投機筋の攻勢が、さらに激しくなるとの見立てもある。

【関連記事】2年債、7年ぶりプラス圏 日銀の利上げ織り込む市場

政策転換に向けた動きが本格化したのは、円相場が32年ぶりに151円台まで下落した直後の11月10日。黒田東彦総裁は首相官邸で岸田文雄首相と面会すると、金融政策を従来よりも機動的に運営すると説明した。具体策には踏み込まなかったが、円安の原因になっている日銀のかたくなな緩和姿勢の修正をにじませた。

その動きの裏で、日銀幹部がメガバンク幹部と接触して金利を引き上げた場合の影響を探っていた。金融機関を無視して猛反発を食らった2016年のマイナス金利導入時の轍(てつ)を踏むわけにはいかない。ある関係者は「(金融政策を)いつか修正しないといけないのはわかっていたこと。必要なコミュニケーションだった」と振り返る。

20日の金融政策決定会合後の記者会見。これまで金融引き締めにあたるとして上限金利の引き上げに否定的だった黒田氏は、今回の決定と過去の発言との整合性を厳しく問われた。「期待と違うことが出て裏切られた気持ちという方もいるが、市場や経済・物価の動向が変わればそれに応じたことをやるのは当然」。黒田氏は開き直るしかなかった。

日銀を追い詰めたのが、投機筋の債券売りだ。「日銀はいずれ政策修正に踏み込まざるを得なくなる」(海外ヘッジファンド)との思惑で6月に海外投資家を中心に国債を売り浴びせる動きが拡大。一度沈静化したものの、9月から10月に再燃した。

防戦に回った日銀。金利を抑え込むため国債を大量に買う状況に追い込まれ、22年の国債購入額は6年ぶりに100兆円を超えた。9月末時点の国債発行残高に占める日銀の保有割合は50.3%と初めて5割を超えた。日銀が操作対象とする10年金利が低く維持される一方、それ以外の年限の金利は米欧発の圧力によって上昇し、利回り曲線(イールドカーブ)に大きなゆがみが生じた。

「私たちが予想していた通りだった」。日本国債を空売りしていた英ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は日本経済新聞の取材にこう勝利宣言した。ダウディング氏は日銀が23年春にも長期金利上限を撤廃するとみて、空売りを続ける構えだ。

日銀は政策を維持し続ければ、いずれ投機筋は攻撃の矛先をほかに向け始めると高をくくっていた節がある。だが、市場のゆがみはどこかの時点で解消されるとみるヘッジファンドなどの信念は日銀以上に固かった。日本国債の空売りで利益を得た米系の債券運用会社の関係者も「それなりにパフォーマンスがよかった」と満足げだ。

ブルーベイのような空売り勢をもうけさせてでも、緩和修正に踏み切ったのは別の投機筋に対抗するためだった。日銀は0.25%という10年債の水準を死守し続けたが、30年債など日銀の目標から離れた国債については相対的に防御が甘くなった。投機筋は日銀が抑え込む10年債を買って30年債を売り、長短金利差が拡大すると自動的に儲かるポジションを組んだ。

こうした投機筋の動きはイールドカーブのゆがみを増幅させた。日銀が長期金利の変動幅拡大に動いたのは、投機筋がイールドカーブをゆがませることを許容しない姿勢を鮮明する意味があった。ゆがみを放置したままだと企業や地方自治体は起債しにくくなり、日本経済への悪影響が強まる。

もっとも今回の政策修正の「後遺症」への警戒も残る。日銀は20日、2年、5年、20年の新発国債を対象に、指定した利回りで無制限に買い入れる「指し値オペ」を実施すると通知した。日銀は10年だけでなく、利回り曲線全体を抑え込む姿勢を鮮明にしたといえるが、戦線の拡大は投機筋との戦いをさらに激しくする危うさをはらむ。

今回の投機筋との戦いの過程で日銀の情報発信の信頼性は揺らいだ。黒田総裁は利上げ観測に対して「全くない」と否定し続けていた。10月28日の記者会見でも「今すぐ金利引き上げとか、出口が来るとは考えていない」と語ったが、まさかの豹変(ひょうへん)。市場関係者からは「もう信じられない」との声が漏れる。

今回の政策変更で金融政策は正常化に向けて一歩踏み出した。ある関係者は「黒田氏の決断。退任前の置き土産だ」との見方を示す。ただ、緩和からの出口に向けた市場との攻防戦が本格化するのはむしろこれからで、来年春に就任する新総裁は重い課題を背負い込むことになる。

【関連記事】

・異次元緩和「解体」の始まり 黒田日銀、問われる有終の美
・日銀「1989年」以来の大決断 未来は天国か地獄か
・住宅ローン金利、変動型は影響ない見方 固定は上昇圧力

ニューズレター
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
コメントメニュー

分析・考察

YCCを巡る海外投資家との攻防が想定外に長期化する中、日銀は11月10日時点ですでに、YCCを手直しする方針を固めていたようである。その背後には、円安への対応で苦慮する首相官邸からの度重なる要望と、地方債や社債などにも及んで無視し得なくなった市場機能低下の弊害の2つがあったとみられる。振り返ってみると、11月14日 に発売された週刊エコノミスト11月22日号「深層真相」には、「木原誠二官房副長官を中心に日銀に対して、『指値オペ』の修正や、記者会見での円安けん制発言などを官邸側は連日要望」との記述があった。日銀総裁が交代した後の23年4月の金融政策決定会合に向けて、海外投資家の動きが焦点になる。
2022年12月22日 8:23』