石垣市長「有事シミュレーション必要」 避難要領改定へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC15EBA0V11C22A2000000/


『政府は16日、国家安全保障戦略など防衛3文書を閣議決定した。台湾有事への懸念が強まるなか、沖縄県の先島諸島にある石垣島(石垣市)の中山義隆市長に自治体として必要な備えを聞いた。
――中国軍が8月に台湾周辺で大規模な軍事演習を実施し、台湾に近い先島諸島でも懸念が強まっています。
「中国の海洋進出を考えると石垣島が危険にさらされる可能性はある。無防備ではいけない」
――石垣島を含む八重山諸島には5万人以上が在住しています。有事に備えた島外避難のシミュレーションは十分ですか。
「国民保護計画でどこからどこまでを有事と判断し、どの時点で島外へ避難させるのか、民間の船舶や航空機がどこまで協力してくれるのかが明確でなく具体的な想定がしづらい。民間輸送機関には国の要請で動いてもらうしかない」
――石垣市は国民保護計画に基づき策定した避難要領で、住民らの島外避難に10日弱かかると試算しています。
「現状の試算は飛行機の運用時間や便数について限定的な前提をもとに見積もっている。2022年度中にも改定したい。万一の際は24時間運用とし、タラップから乗ってピストン輸送すれば3日程度で避難できる可能性はある。しっかりしたシミュレーションが不可欠だ」
――避難経路の想定は。
「個人的な考え方だが、多くの人数を輸送するには宮古島にある下地島空港を使えば30分程度で行き来できる。沖縄本島に紛争が拡大した場合も想定し、下地島空港から直接本土へ避難しておくのが望ましい」
「沖縄近海にいる自衛隊や米軍の艦船もぜひ使ってほしい。スピードが重要だ」
――住民が身を隠せるシェルター設置の必要性をどう考えますか。
「必要だ。石垣島が直接攻撃されることはないと思うので、まず島外避難を最優先にする。一般住民を避難させた後に市の職員や消防、警察など最後まで島に残る人がいざという時に逃げ込める規模を想定している」
――陸上自衛隊は22年度内にも石垣島で駐屯地を新設します。自衛隊拠点の必要性をどう認識していますか。
「(台湾まで約110キロの)与那国島の後方支援部隊になるであろう石垣島に駐屯地がない状況は非常に危険だ。市側から誘致したわけではなく過剰な負担は問題だが、国全体で国を守るなかで、穴があった石垣島への配備を容認した」
――石垣島で日米共同訓練が実施される場合、是非をどう考えますか。
「訓練をしてみないとどこに問題があるのか分からない。有事の際にぶっつけ本番でやるほど怖いことはない。特に石垣島や与那国島などでは失敗が許されないので理解を示して協力したい。ただ米軍単独の訓練は一線を引きたい」
(聞き手は児玉章吾)』
