送電網、10年で1000万kW増 北海道―本州に海底線新設

送電網、10年で1000万kW増 北海道―本州に海底線新設
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA16D180W2A211C2000000/

『【この記事のポイント】

・政府が10年で1000万キロワット分の送電網を整備する
・北海道や九州などの再生エネを広域で融通する狙い
・課題は巨額の費用。電力会社の資金調達も支援する

政府は今後10年間で原子力発電所10基の容量にあたる約1000万キロワット分の広域送電網を整備する。過去10年の8倍以上のペースに高める。太陽光や風力など再生可能エネルギーによる電気を無駄にせず、地域間で効率よく融通する体制を整える。脱炭素社会の重要インフラとなるため、事業主体の電力会社の資金調達を支援する法整備も急ぐ。

【関連記事】

・広域送電網とは 再生エネ大量導入のカギ
・送電線整備に最大7兆円、再エネ拡大へ50年まで計画素案

岸田文雄首相が近くGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で整備計画を表明する。

日本は大手電力会社が地域ブロックごとに事業をほぼ独占し、競争原理が働きにくい状態が続いてきた。2011年の東日本大震災では広域で電力をやりとりする送電網の脆弱さがあらわになった。

大都市圏が夏冬の電力不足に直面する一方、九州では春に太陽光発電の出力を抑えるといった事態が続いている。50年の脱炭素には再生エネの発電に適した北海道や九州の電気を、東京や大阪に送って消費する体制が欠かせない。ウクライナ危機でエネルギーの供給不安も高まった。地域間の連系線の抜本的な強化を急ぐ。

新たに日本海ルートで北海道と本州を結ぶ200万キロワットの海底送電線を設ける。30年度の利用開始をめざす。30年度の発電量のうち、再生エネの割合を36~38%にする政府目標の達成に必要とみている。九州―本州間の送電容量は278万キロワット増やして、556万キロワットにする。

27年度までに東日本と西日本を結ぶ東西連系線は90万キロワット増の300万キロワットに、北海道―東北間は30万キロワット増の120万キロワットに、東北―東京エリア間は455万キロワット増の1028万キロワットに拡大する。

東西連系線については28年度以降、さらに増強する案もある。

過去10年の整備量は東西連系線と北海道―東北間であわせて120万キロワットにとどまっていた。今後10年間は8倍以上に加速させる。

巨額の費用の捻出は課題となる。北海道―本州間の海底送電線は1兆円規模の巨大プロジェクトで、九州―本州間の連系線は約4200億円を要するとみている。

電力会社を後押しするため、資金調達を支援する枠組みを整える。いまの制度では送電線の整備費用を電気料金から回収できるのは、完成して利用が始まってからとなる。

それまでは持ち出しが続くため、投資に及び腰になりかねなかった。必要に応じて着工時点から回収できるように改める。23年の通常国会への関連法案の提出をめざす。

例えば、海底送電線の建設期間中に計数百億円規模の収入を想定する。初期費用の借り入れが少なくて済み、総事業費の圧縮にもつながると期待する。

50年までの長期整備計画「マスタープラン」も22年度内にまとめる。原案では北海道―本州間の海底送電線を3兆円前後で計800万キロワットに、東西連系線は4000億円規模で570万キロワットに増強する。50年までの全国の整備費用はトータルで6兆~7兆円に上ると見込む。

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諸富徹
京都大学大学院経済学研究科 教授
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ひとこと解説

今回の政府の決定は、日本の再エネ大量導入を強力に後押しするうえで画期的と評価できる。せっかく北海道や九州で再エネ発電を行っても、送電網の容量不足で大消費地である大都市圏に届けられないことが大きなネックとなっていたからだ。これで大量の電力融通が可能になれば、再エネの大量導入だけでなく、事故や災害の際に大規模停電を防ぐことも可能になる。今年3月の首都圏における電力ひっ迫の際も、西日本では電力が余っていたが東西連系線の容量不足のため、十分な送電ができなかった。この脆弱性は、東日本大震災以来の日本のアキレス腱とすらいえる。それが今回の送電網増強によって相互バックアップ能力が高まり、解消が期待できる。
2022年12月19日 7:47』