米国、中国の経済圧力抑止へ連携 同盟国と

米国、中国の経済圧力抑止へ連携 同盟国と
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08EKQ0Y2A201C2000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】米政府・議会は日本や欧州連合(EU)など同盟国・地域と協力し、中国による経済的な威圧行為の抑止策を検討する。中国は巨大な経済力を外交の武器に利用する動きを鮮明にしている。同盟国・地域が足並みをそろえて中国に圧力をかけて、中国が対立する国に経済規制を課すのを阻止することを狙う。

米議会の上院・下院で可決した国防権限法案に新たな政策を盛り込んだ。近くバイデン大統領が署名し成立する。成立後半年以内に米政府内に省庁横断の専門組織を設け、同1年以内に報告書の素案をまとめるよう政府に義務付ける。

専門組織は国家安全保障会議(NSC)や国家経済会議(NEC)のメンバーを中心に構成する。日本やEUなどの同盟国・地域と協議しながら戦略を練ると定める。中国の動向をにらみながら毎年、更新し3年後に最終案をまとめる。

中国は巨大な経済力をてこに、対立する国に対して貿易を制限するなどの方法で威圧する動きを強めている。新型コロナウイルス問題などで関係が悪化したオーストラリアにはワインや石炭などの関税引き上げや輸入制限を行った。台湾と関係を強化したリトアニアには輸入制限をかけた。日本にも過去にレアアースの輸出を止めて揺さぶりをかけた経緯がある。

経済的威圧には各国で協力して対峙するのが有効だ。巨大な経済力に1カ国では太刀打ちできなくても、多国間連携の枠組みがあれば対応しやすい。

例えば、中国が特定の国に制裁関税の引き上げをちらつかせた場合、米国を中心に同盟国が一致して対抗措置を打ち出すと事前に具体案を公表していれば、中国は手を出しづらくなる。

米国には多国間で協力する仕組みを前面に打ち出すことで、東南アジアなど中国の圧力にさらされやすい国々を米欧日の陣営にひきつける狙いもある。バイデン政権は米中関係を民主主義と権威主義の「体制間競争」と位置づけ、仲間を増やす努力を進めている。

新しく立ち上げる専門組織は、米企業からも要望を聞き取る。中国の経済政策による産業界への影響を分析・評価する。

米産業界からはバイデン政権の対中政策によって経営環境が不利になっているとの不満がくすぶる。10月から導入した先端半導体の技術や装置をめぐる禁輸措置は米国だけが先行した。「日本やオランダの企業にビジネスチャンスを奪われている」として早期追随を要求している。

米国には定期的に対中経済政策について意見を交わす組織があれば、同盟国と足並みをそろえやすくなるとの期待もある。中国との経済関係が深いドイツや日本には圧力が増す可能性がある。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、日米欧はエネルギーなどの制裁を講じた。戦争が長期化するなかで、ロシアが苦戦する要因となっている。安全保障は軍事面に加え経済面も大きな影響力を持つとの認識が改めて広がった。

国防権限法案には米国政府が中国製品の調達を禁じる規制も入った。長江存儲科技(長江メモリー・テクノロジーズ、YMTC)や中芯国際集成電路製造(SMIC)、長鑫存儲技術(CXMT)の3社の製品・サービスを購入できなくする。華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などは既に禁止している。

米当局は現時点で新しい規制内容の詳細は示していない。日本企業が米政府と取引する場合、サプライチェーン(供給網)の一部であっても対象の中国企業の製品・サービスが組み込まれることを禁じる可能性も残る。この場合、供給網をくまなく検証する必要があり、大きな手間が生じる懸念がある。

【関連記事】

・中国YMTCなど30社超を禁輸リスト 米商務省が発表
・「半導体戦争」、10年かけて中国抑止 米連合の結束が要
・米半導体輸出規制、中国がWTO提訴 日蘭は米追随協議
・米政府高官、対中半導体規制「日本やオランダと協議」

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/US-China-tensions/U.S.-sees-China-as-economic-bully-seeks-united-front-with-allies 

ニューズレター https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?n_cid=DSREA_newslettertop 

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
コメントメニュー

ひとこと解説

人類が一番愚かなのは互いに助け合えば、とても平和な社会になるのに、絶えず無意味の戦いを続ける。グローバル時代において国益とは何かをあらためて再考する必要がある。国益のために、気に入らない相手国にレアアースを供給しない経済圧力政策はたちまち自分にも跳ね返ってくる。国際紛争を解決するのに、一番重要なのは外交努力である。むろん、戦争犯罪に対しては、外交努力だけでは不十分で制裁も選択肢の一つ。現状をみれば、国際社会はますます不安定化すると思わざるを得ない
2022年12月19日 8:28

白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
コメントメニュー

ひとこと解説

米国は中国中心のグローバルサプライチェーンを再構築しようとしているようだ。現在でも米国の輸入の最大相手国は中国で、完全なデカップリングを目的としているのではなく、戦略的にも将来的にも重要になる半導体や気候変動関連のクリーンエネおよび関連する鉱物資源をできるだけ信頼できる国地域で再構築する計画のようだ。欧州もほぼ同様な考えで政策を進めようとしている。これまでは低価格で効率的な貿易ネットワークに日本も世界も依存してきたが、米国の強いイニシアチブで戦略的分野では構造変化がみられそうだ。日本企業にとっても新しい成長機会が生まれる可能性がある。ただ米国は自国中心主義の姿勢があるところがやや懸念される。
2022年12月19日 8:03 』