日本の「戦略的覚醒」を米国はどう後押しするべきか?

日本の「戦略的覚醒」を米国はどう後押しするべきか?
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28853

 ※ またゾロ、これの再来か…。

『ウォールストリート・ジャーナル紙コラムニストのミードは、11月28日付け同紙に‘Global Tensions Spur a Sea Change in Japan’と題する論説を書き、防衛力強化に向けた最近の日本の動きは重要な戦略的覚醒であり、米国はその支援のためにあらゆることをすべきだと論じている。要旨は以下の通り。

 ここ数年、日本周辺の緊張は着実に高まった。中国の戦狼外交、北朝鮮ミサイル計画高度化、ウクライナ戦争は戦後体制に慣れた大衆にショックを与え、中国のロシア支持により、台湾侵攻の危険性に改めて気づかされた。

 新国家安全保障戦略は厳しい内容になると国内外で予想されている。日本は防衛費を倍増し、反撃能力を取得し、防衛産業を発展させ、自衛隊を世界最強軍の一つに格上げする道を進んでいる。日本は過去3年で曲がり角を迎えた。絶対的平和主義だった世論は変わり、今や国民の60%以上が防衛費増額を支持する。中国を脅威と呼ぶことを避けてきた政府高官は、今や中国に対抗し、台湾を守る必要性を明確に語る。識者は、台湾と周辺海域を中国がコントロールすれば日本の地位に深刻な影響があると見ている。

 日本で何が起こるかは重要だ。日本は米国の最重要の同盟相手で、両国の戦略的関係はインド太平洋での米国の地位の基礎だ。日米同盟と自国能力双方を強化するという日本の決断は、東アジア再構成を目論む中国の努力にとり大きな妨げとなる。東南アジアでは、日本の投資と貿易が中国の経済力への対抗を助けている。米国の説教外交と異なり、相手を尊重する日本外交はアジアではより効果的だ。日本が印・豪との関係を着実に促進させてきたことで、クアッドの急速な進展が実現した。

 引き続き課題は多い。一定の改善はあるが、日韓関係は未だ難しい。減速する経済とOECD最大の対GDP債務比率の下、軍事力強化に必要な予算維持には困難がある。しかし、今は東アジアのために米国がやるべきことの方が多い。長い軍事物資供給ラインと、紛争発生時の供給継続の困難を考えれば、米国は多くの武器と物資を予め地域に集積しておく必要がある。米、台、日の高官は、現状は極めて不十分だと言う。

 地域経済戦略も必要だ。アジア友好経済圏との経済統合拡大は長期的インド太平洋政策の必須要素だ。日本の戦略的覚醒は歴史的な出来事であり、米国はその支援のためにあらゆることをすべきだ。

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 この論説は、日本の現状を正確に描写するだけでなく、米国の対応についても注文を付けており、的を射ている。日本で現在起こっている変化は確かに歴史的なものだ。』

『ここ数年の日本周辺の緊張の高まりは、特に世論の防衛力強化への支持の急速な拡大との関係で、極めて重要な要因であることは間違いないが、その「対」として、米国の中国に対する相対的優位性低下への日本関係者の危機感がある。そこから出てくる自然な結論は、日米同盟の抑止力維持・強化のためには、米国の能力の相対的低減を補うために、日本自身が強くなる必要があるし、日米同盟を越えた地域の有志国とのネットワークの強化が重要だということだ。これが、新国家安全保障戦略がよって立つ基本認識の全体像なのだと思われる。

 そうであれば、「米国がやるべきことは多い」とのミードの指摘は全く正しいが、その内容は武器・物資の事前集積などには留まらないはずだ。最も重要なのは、米国自身が軍事力の増加・近代化を真剣かつ急速に進めることである。2011年をピークとして減少し2016年にようやく反転増加、2020年にやっと2011年のレベルを超えた米国の国防費は、今後も着実に増加させていく必要がある。

 よく中国の台湾侵攻があり得る時期の一つとして指摘される2027年は、米側関係者によれば、中国の軍事的優位確立を防ぐために必要な米軍の強化・近代化のための期限という意味合いの方が強い(もちろん、それを実現できなければ、中国の台湾侵攻を抑止できないと言う側面もある)。そんな中で、来年、バイデン政権が提案する国防費が議会で大幅に増額されるというのは、結果オーライではあるが、政権側の覚悟が問われる事態とも言えるだろう。
経済戦略なくして「アジア回帰」は説得力を持たない

 米国は東アジアにおける経済戦略を必要としている、というミードの指摘も大変に的を射たものであり、現在のIPEFなどの動きに加え、何らかの形で「友好国」への市場開放(最近よく言われるFriend Shoring)に踏み込むこと無しには、特に東南アジア諸国は米国の「アジア回帰」を本気で受け止めることは無いだろう。しかし、米国が東アジアでやるべきことは、それに留まらない。より重要なのは、各国が置かれた状況にオーダーメイドで配慮しながら、優先度をつけて安全保障関係の着実な強化を図っていくことである。

 このような努力を通じて、米国を中心とする安全保障のためのネットワークを構築することが、米国の相対的優位性低下を補い全体的抑止力を維持・強化するためのもう一つの重要な要素である。その意味で、最近の米比関係の進展には大変に勇気づけられる。インドネシアとの関係でも、最近の米インドネシア首脳会談で発表されたドローン調達の支援や共同訓練などを通じた沿岸警備隊の能力構築支援は、台湾危機に際する同国の重要な役割が同国内の国際航路の自由で安全な航行の確保であることを考えれば、非常に重要な動きだと思われる。』