「半導体戦争」、10年かけて中国抑止 米連合の結束が要

「半導体戦争」、10年かけて中国抑止 米連合の結束が要
「CHIP WAR」著者、タフツ大のクリス・ミラー准教授に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1402T0U2A211C2000000/

『「ゲームチェンジャーになり得る」。中国との競争の最前線でバイデン米大統領は断言した。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が巨費を投じるアリゾナ州の工場を訪れた6日のことだ。半導体を巡る米中競争を描いた「CHIP WAR」の著者、タフツ大学のクリス・ミラー准教授に「半導体戦争」の行方を聞いた。

――TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は6日のアリゾナ州での式典で「グローバリゼーションはほぼ死んだ。自由貿易もほぼ死んだ」と述べました。

「私は違うと思う。中国が世界の他の経済圏に結びついたことは過去30年以上にわたる重要な傾向だった。その特定の傾向が限界に達し、多くの国が中国のリスクに過度にさらされることや技術移転を懸念しているとの見方は正しい。だからといってグローバリゼーションが終わるとは思わない。変化しながらプロセスは続く」

「半導体は石油のように持つ国と持たざる国に分かれるわけではないが、生産は集中している。台湾は世界のプロセッサーチップの3分の1以上を生産し、オランダのASMLは最先端のEUV(極端紫外線)露光装置を100%生産している。その集中ぶりは半導体に石油以上の政治的要素をもたらしている」

――バイデン政権は10月に先端半導体の対中輸出を厳しく制限しました。中国を抑止できますか。

「短期的にはノーだ。10年単位の時間軸で考えるべきだ。10年かけて規制が効けば、米国と仲間ができることと中国ができることの差は広がる。コンピューティング、センシング、コミュニケーションのすべてが半導体に依存し、軍事技術に不可欠だ。米国が半導体技術で中国より優位に立てば、情報技術や軍事技術でも優位となる」

――経済の「相互依存の武器化」はどんな未来をもたらしますか。約80年前、米国による石油の禁輸を1つの要因として日本は米国との戦争に突き進みました。

「1941年の日本との比較はそぐわない。中国が輸入できなくなる先端半導体は全体の数パーセントで、中国は電話用やPC用などほとんどの半導体を輸入できる。中国が民生用に提供された技術を自国の軍事に利用しているため、米国は相互依存が乱用される状況を続けられないと判断した。私たちは今、危険な状態にある。 少なくとも今後2、3年は軍事的な力学が中国に有利な方向に変化し続けるからだ」

――中国が台湾に侵攻してもASMLの製造装置がなければ先端半導体は作れません。一方で中国共産党の目標は半導体製造能力の獲得ではなく、台湾統一そのものです。

「その通りだ。世界のほとんどの国にとって台湾は半導体を製造しているがゆえに重要だが、中国共産党は半導体の発明以前から台湾を支配しようと考えていた」

「中国が第2次大戦中のノルマンディー上陸作戦のような侵攻を考えるなら、コストが高すぎると判断するかもしれない。では中国が米国との戦争の引き金となる基準に満たない行動に出たらどうなるか。それを心配している。例えば台湾が統治する台湾海峡の無人島を中国が占拠したら、米国は次に何をするだろう。戦争に踏み切れば世界経済に莫大な損害がおよぶことを米国は考慮せざるを得ない。半導体産業における台湾の重要性が逆に、米国が台湾を助けることを抑止するかもしれない」

――米国が対中競争に敗れるとしたら、何が敗因となるでしょう。

「米中だけの競争ではなく、日本、オランダ、台湾、韓国が絡む。米国は仲間の十分な合意を得られるような連合を維持し、機能させる必要がある。今後10年、(半導体の性能が1年半から2年で2倍になる)『ムーアの法則』が続くと確信することも難しい。法則が働かなくなると(最先端の技術開発で先行しても性能の差が開かなくなるため)米国がライバルより速く走ることも難しくなる」

Chris Miller 米エール大で歴史学博士。10月に出版した新著は5年前に書き始めた。当初は冷戦時代の軍拡競争を書くつもりだったが、ミサイル技術の重要な進歩は誘導システムにあり、そのカギは半導体だと気づいて構想を膨らませた。

米中Round Trip https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B001&n_cid=DSREA_roundtrip 

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

「米国は仲間の十分な合意を得られるような連合を維持し、機能させる必要がある」という部分が、極めて重要な指摘だと思います。米国は、半導体の対中デカップリング政策の目的を、明確に定義しないと、同盟国の協力を維持するのが難しくなります。「中国に対して米国の軍事的優位性を維持し、台湾への軍事的な冒険主義を抑止する」というのであれば、同盟国は支持すると思います。しかし単なる経済競争で米国の産業の優位性を追求する、というのであれば、そして同盟国の産業や経済が犠牲になるというのであれば、連合の維持は難しくなるはずです。このあたりが今後の難しい課題になりそうです。
2022年12月15日 7:20
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

少し前に、中国製造2025について大きく騒がれていたが、今は、中国の公式メディアでは、その言い方はまったく出てこなくなった。中国が技術覇権を握ろうとトランプ政権に見抜かれてしまい、制裁が始まった。バイデン政権になってから、米国の制裁に加え、半導体連合を作り、対中制裁をさらに強化している。それに中国はどうして対抗できない。WTOに提訴したが、WTOはもはや国際機関として役割を果たせなくなっている。ある意味では、半導体戦争の勝負はすでに明らかになっている。問題はその下流にある諸産業の行方である。半導体不足は様々な産業に影響するこれからも供給網は不安定になろう
2022年12月15日 6:44 』

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