[FT]米政権エネルギー担当、シェール増産拒否を批判

[FT]米政権エネルギー担当、シェール増産拒否を批判
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB134310T11C22A2000000/

『米政府の国際エネルギー問題担当特使を務めるアモス・ホッホシュタイン氏は、ロシアによるウクライナ侵攻で世界の石油・ガス市場が混乱する中、米シェール企業の株主が増産を阻んでいることを「米国の国益にそぐわない」と評した。

米シェール業界には増産を期待する見方がある一方で、十分に応じきれていないとの指摘もある=AP

バイデン米大統領はインフレ高進を食い止めるため、国内の石油業界に生産拡大を繰り返し呼び掛けている。だが、これらの企業は今年、記録的な株主還元を期待する投資業界からの圧力を受けている。

「過去最高益を計上する米国企業に『増産はせず、自社株買いと増配をしろ』と出資者から指図するのは言語道断だ」。ホッホシュタイン氏はこう話し、「米国の国益にそぐわないだけでなく、米国民にとって極めて不公平だ」と続けた。

「配当金を支払いたければ、支払えばいい。株主に還元したければ、還元すればいい。ボーナスを出したければ、それもすればいい。全部やった上でも、投資は増やせる。われわれが求めているのは、生産を拡大し、好機をとらえることだ」

こうした発言の背景には、海上輸送されるロシア産原油を対象とした欧州連合(EU)の禁輸措置と、主要7カ国(G7)によるロシア産原油の価格制限が始まったことがある。ロシアから国際市場への原油供給を維持しつつ、ロシア政府の収入を減らそうというのが西側諸国の狙いだ。

ロシア政府は、上限価格を守る国に原油を販売しない考えを重ねて強調してきた。同国のプーチン大統領は9日、「減産の可能性も検討する」と明らかにした。

ロシアが引き続き石油市場の不安定要因

ホッホシュタイン氏はロシア政府について、「極めて不安定な」石油市場に対する脅威の種であり続けているとの見方を示し、今年これまでのドイツへのガス供給停止など、エネルギーを武器として使うやり口を繰り返していると指摘した。

同氏は、原油輸出の停止も辞さないというロシアの脅しに触れ、「そのことをずっと考え続けている」と語った。「だが上限価格があってもなくても、そのリスクは存在する」

2022年は原油価格の変動が激しく、ロシアによるウクライナ侵攻開始直後の3月には1バレル140ドル近くに達した。そこで米政府はインフレを抑え込もうと、石油備蓄の放出を決めた。

最近は世界的な景気後退の恐れから、原油が大幅安に転じ、欧州の指標である北海ブレント原油先物は9日、年初来安値となる1バレル76.10ドルをつけた。

しかしホッホシュタイン氏は、プーチン氏と欧米の対立が一段と深まっていく間、欧州のガス市場を中心とした国際エネルギー問題が長引く公算が大きいとみている。

米国などの液化天然ガス(LNG)輸出国による「前例のない」努力により、欧州が今冬を乗り切れるだけのガス備蓄を確保できたとはいえ、パイプラインを通じたロシア産ガスの供給が失われれば「一冬ごとに」同じ取り組みを繰り返す必要が生じるとホッホシュタイン氏は警告する。

化石燃料の消費削減が長期的な解決策

米国やカタールで建設中の液化プラントが数年後に稼働するまでは、LNGの国際的な供給が増えない見通しだ。ホッホシュタイン氏は「来年に向けたガスの備蓄で越えなければならない山はもっと高い」と強調する。

「われわれは真剣に準備をし、エネルギー面において欧州などでギリギリのやりくりに一歩ずつ対処している」

LNG企業で幹部経験のあるホッホシュタイン氏だが、より長期的な解決策としては、天然ガス供給を拡大するための投資ではなく、化石燃料の消費自体を削減することを挙げた。

「(化石燃料の)需要を頭打ちにし、そこから減らしていかなければならない」と同氏は言明した。

今回のホッホシュタイン氏の発言は、米シェール業界に波紋を呼びそうだ。これまでも同業界は、増産を呼び掛けながら需要の削減や脱化石燃料の推進に言及するというバイデン政権の矛盾したメッセージに不満を募らせてきた。

ただホッホシュタイン氏は、矛盾があるとの見方を否定し、「力強い世界経済のために十分な(石油の)供給を確保しながら、エネルギー移行を加速するという2つのことを同時に実行できる」と述べた。

エクソンの自社株買いを批判

同氏は、石油がまだ何年かは経済にとって有益であり続けると考えている。米国産石油の価格が1バレル70ドル前後に下落すれば、バイデン政権が主な買い手となって連邦レベルの石油備蓄を積み増すつもりだという。

ホッホシュタイン氏は、12月上旬に米石油大手エクソンモービルが500億ドル(約6兆8000億円)の自社株買いを実施すると発表したことを批判した。ダレン・ウッズ最高経営責任者(CEO)は「米国民に対する直接の」利益還元と位置付けている。

「自社株買いの発表もひどいが、米国民に利益を還元するためだという説明はもっとひどい」とホッホシュタイン氏は話す。「米国民に利益を還元したいなら、米国に投資し、従業員に投資し、生産を増やし、米国が他国への依存を減らせるようにすべきだ」と苦言を呈した。

By Derek Brower

(2022年12月11日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』