防衛財源、24年度から段階増税 法人税は中小に軽減措置

防衛財源、24年度から段階増税 法人税は中小に軽減措置
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA123860S2A211C2000000/

『政府・与党は12日、防衛費増額の財源の協議を続けた。2024年度から段階的に増税する方向で調整している。法人税を中心に、たばこ税と東日本大震災の復興特別所得税の枠組みを使った新税を組み合わせ年1兆円強の確保をめざす。

自民党税制調査会の幹部会合などで議論を続行した。岸田文雄首相は27年度以降に必要な年4兆円の防衛費増加分のうち、1兆円強を増税でまかなう考えを示した。

政府内には法人増税とたばこ増税でそれぞれ7千億~8千億円と2千億円強をまかなう案がある。さらに防衛財源向けの新税をつくり2千億円ほどを確保する案も浮上している。

所得税額に2.1%をかける復興所得税は22年度に4624億円の税収を見込む。このうち2000億円程度は新たにつくる防衛財源向けの所得税に振り向ける。

復興所得税の課税期間は37年までの25年間だ。この期限を延長して復興所得税の税率を下げ、浮いた分を防衛向けの新税に活用する。

首相は「個人の所得税の負担が増加するような措置はとらない」と強調した。復興と防衛の合計の税率は2.1%で据え置き個人の負担感が増えないようにする。

復興財源の総額も課税期間を延長することで、従来の計画と同額を維持する。

法人税は湾岸戦争の多国籍軍支援や震災復興の財源確保のために増税した。湾岸戦争のときは法人税額から300万円を差し引いた金額に2.5%をかけた特別税を課した。今回もこの付加税方式が検討の軸になる。

22年度の法人税収は13兆7870億円を見込む。7千億~8千億円の確保には単純計算で5~6%の税率をかける必要がある。もうけが少なく法人税の納税額が小さい中小企業は事実上増税の対象から外す方針だ。

たばこ税収は22年度の見通しで9340億円。21年度の販売本数は紙巻きが937億本、加熱式は460億本だった。

単純に1本あたり1円の増税で1400億円ほどの財源になる。東日本大震災の際もたばこ増税を検討したものの、葉たばこ農家の反発で見送った経緯がある。

一連の増税の大半は法人税が占める。防衛力強化の受益は個人や企業に幅広く及ぶ一方、大企業に負担が偏る可能性が高い。潤沢な内部留保や法人税の引き下げ競争からの世界的な反転に着目し、比較的批判が出にくいところに負担を求めた印象は残る。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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分析・考察

「防衛力強化の受益は個人や企業に幅広く及ぶ」わけであり、個人・法人を問わず、国民が広く負担するのが筋である。だが実際には、物価高に苦しむ家計や中小企業に追加で負担させることは政治的に回避され、議論の流れは「大企業に負担が偏る」「比較的批判が出にくいところに負担を求める」状況になってきた。この「とれるところからとる」発想に政府が傾く場面は、社会保障負担増をどこに求めるかでも増えている。だが、それらは弥縫策(びほうさく)と言わざるを得ない。縦割りで前例踏襲色が濃い予算編成手法の抜本的見直し、税収増加につながる可能性が高い海外からの人材受け入れ強化など、もっと早くやっておくべき施策があったと考える。
2022年12月13日 8:01

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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別の視点

『赤字国債=将来世代への負担先送り」ととってつけたように言われますが、政府債務はその裏で民間の資産となります。
そして賢く使われれば、その資産も将来世代に財産として引き継がれることになります。
このため、財政規律を過度に意識する前に、金融・財政政策を総動員して一刻も早く経済の長期停滞から脱することが未来の世代に対する政治の責任だと思います。
2022年12月13日 8:20

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鈴木亘
学習院大学経済学部 教授
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分析・考察

短期間に官邸と与党間のドタバタ劇が続いているが、国民の側からは、理解に苦しむ事ばかりである。まず、防衛予算を43兆円増やすというが、何に使うのか、中身が全くわからない。普通、何にどう使うから、予算を増やしたい、そのために国民に増税をお願いするというのが順番ではないか。予算増ありきで、中身は白紙委任というのは、政府としては自由度Maxで都合が良いのだろうが、国民としては(例え、予算増はやむを得ぬと思っている人でも)、納得いかないだろう。また、1兆円増税も唐突である。なぜ1兆円なのか。歳出改革で多くを捻出すると言うが、その積算根拠は何か。防衛費財源の「イメージ」?とは、随分、国民を馬鹿にした話だ。
2022年12月13日 7:52』