メディア王、トランプ氏に絶縁状 試される「岩盤」強度

メディア王、トランプ氏に絶縁状 試される「岩盤」強度
ワシントン支局長 大越匡洋
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN29DIH0Z21C22A1000000/

『「フロリダ男が発表」。保守系の米大衆紙ニューヨーク・ポストは11月16日付の1面の最下段にこんな1行を載せた。トランプ前大統領(76)が事前に「重大発表」と宣伝し、前日に南部フロリダ州の自邸マール・ア・ラーゴで臨んだ2024年次期大統領選への出馬表明というニュースをこれ以上ないほど軽く扱った。

トランプ氏が2024年大統領選に出馬表明した翌日、ニューヨーク・ポストの1面に載ったのはたった1行「フロリダ男が発表」だけ

中間選挙を受けてトランプ前大統領が「勢いよく落ちた」とからかったニューヨーク・ポストの紙面

26ページ目にようやく載った短い記事は「フロリダ州の退職者が大統領選に立候補するという驚きの発表をした」と書き出し、「トランプは第45代大統領も務めた」と結んだ。同紙はメディア王、ルパート・マードック氏(91)の傘下メディアの一つだ。

11月の中間選挙で野党・共和党は期待された「大勝」を逃した。現政権の実績に対して米国民が初めて意思表示する中間選挙は政権与党が負けやすい経験則がある。ところが今回、民主党は議会上院の多数派を維持した。20年大統領選の敗北をいまだ認めない過激なトランプ主義を嫌悪し、無党派層や穏健な保守層が共和党に背を向けた。

マードック氏傘下の保守系メディアは一斉にトランプ批判を始めた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は投開票日直後の論説記事で「共和党の最大の敗者はトランプ」と断じた。ニューヨーク・ポストは卵を擬人化したハンプティ・ダンプティをトランプ氏の顔にした「トランプティ・ダンプティ」を1面に載せ、トランプ氏が「勢いよく落ちた」とからかった。
ライバルを称賛

マードック氏が1996年につくり、トランプ支持を鮮明にして保守層に圧倒的な人気を誇る「FOXニュース」もトランプ氏から微妙に距離を取り始めた。人気司会者ローラ・イングラム氏は「あなたが自分のエゴや恨みを国益より優先していると有権者が結論付けたら、彼らはほかを探すことになる」とトランプ氏を暗に批判した。
保守系メディア「FOXニュース」を傘下に持つメディア王、ルパート・マードック氏=ロイター

一方で次のリーダーとして持ち上げているのが有力なライバル、フロリダ州のロン・デサンティス知事(44)だ。

トランプ氏は強く反発している。「FOX、WSJ、もはや偉大ではないニューヨーク・ポストはロン・デサンクティモニアス(DeSanctimonious)に全面的に協力している」。聖人顔をした偽善者といった意味の「sanctimonious」を組み合わせたあだ名でデサンティス氏を呼び、保守系メディアもろとも攻撃対象とした。

マイケル・ウォルフ氏の著書「炎と怒り」によると、マードック氏はかつてトランプ氏との電話を終え、「なんてバカだ」と吐き捨てた。それでも両者の蜜月は続いた。両者はこのまま決別するのか。長い大統領選は候補者の浮沈が激しいだけに、世論の動向次第で両者が復縁する可能性は否定できない。

6日のジョージア州の上院選決選投票でもトランプ系候補は敗れた。トランプ氏の求心力が陰るなか、党内予備選をまず勝ち抜かなければならない共和党議員は引き続きトランプ信奉者の動きに目をこらし続ける。トランプ氏は約40%の支持率を保ち、信奉者は「岩盤支持層」と呼ばれるからだ。マードック氏傘下のメディアが強硬な保守層にどれだけ影響力を持つか。メディア王の実力と「岩盤」の強度を試す局面となる。
米中Round Trip

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