中国とサウジが急接近 習近平氏、米国の間隙突く

中国とサウジが急接近 習近平氏、米国の間隙突く
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『【リヤド=福冨隼太郎、北京=羽田野主】中国とサウジアラビアが急接近している。習近平(シー・ジンピン)国家主席が約7年ぶりにサウジを訪問し、エネルギーや通信技術を含む戦略的包括協定を締結した。サウジと米国の関係にくさびを打ち込み、中東での影響力拡大を狙う。サウジは石油収入依存からの脱却へ中国の技術や投資を呼び込む。

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中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)によるサウジへの技術供与や、中国企業のサウジへの直接投資、水素エネルギー分野での協力などで覚書を交わした。サウジ国営通信は習氏の訪問時に両国が1100億サウジリヤル(約4兆円)以上の取り決めを結ぶと報じた。

「原油貿易の規模を拡大し、油田探査・開発の協力を強める」。習氏は8日、事実上の最高権力者として国政を取り仕切るムハンマド皇太子と会談し、サウジからの原油輸入をさらに拡大する考えを示した。中国にとってサウジは最大の原油輸入先だ。中国国営企業によるサウジの油田開発にも意欲を示した。

中国の巨大経済圏構想「一帯一路」において、中東はアジアと欧州をつなぐ要衝だ。サウジは世界最大の原油輸出国であるとともに、国内にイスラム教の二大聖地を抱えるアラブの盟主でもある。同国との関係が中国の中東政策の基軸となる。

ファーウェイは2022年2月に首都リヤドに海外で最大の旗艦店を開業した。サウジは習指導部が開発に力を入れる軍事用ドローンの主要な輸出先でもある。ムハンマド氏は習氏に「より多くの中国企業がサウジの工業化に積極的に関与し、重要インフラ建設やエネルギー協力事業に参加することを歓迎する」と述べた。

両首脳は会談で蜜月ぶりを誇示した。会談に先立つ歓迎式典で、皇太子は習氏を出迎え自ら握手を求めた。皇太子は7月にサウジを訪れたバイデン米大統領とは拳を突き合わせて出迎えた。新型コロナウイルス感染を警戒して外国首脳と一定の距離を置いて接してきた習氏も、至近距離の会談に応じた。

サウジに接近する中国には、ドルを基軸通貨とする体制への長期的な挑戦が念頭にある。中国人民大学国際関係学院の王義?教授は、石油取引の人民元建て決済が両国の検討課題になると指摘する。「実現はサウジの決定にかかっている」と期待を込める。

原油取引はドル建て決済が国際的なルールだ。サウジは石油を売って得たドルを米国債などに投資し、米国に資金が還流する仕組みができあがっているとの指摘がある。中国は人民元決済が一部でも認められれば「アリの一穴」になるとみている。

伝統的に親米のサウジだが、バイデン米政権とは人権や原油の生産政策を巡って関係が悪化している。習氏との会談では米欧の人権批判に対抗する姿勢で一致した。米シンクタンク「湾岸諸国分析」のジョルジオ・カフィエロ氏は「サウジが習氏を迎え入れたことで、他にも強力な友人がいるという強いメッセージをワシントンに送ることになる」と指摘する。

米国は2000年代からの「シェール革命」で世界最大の産油国となり、中東に頼る必要が薄れた。08年まで年間5億バレルを超えていたサウジからの原油輸入は21年に1.3億バレルまで減少した。

資源調達を前提とした米国とサウジの利害関係が崩れ、その間隙を突いて中国がサウジに接近する。中国は現在のサウジにとって最大の貿易相手国で、輸出・輸入とも取引額の2割近くを占める。

習氏は「中国はサウジが国家主権、安全、安定を守るのを断固支持する。サウジが国情にあった発展の道を歩むことを支持する」と宣言した。ムハンマド氏は中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国原則」を支持する方針を伝えた。

石油収入に依存しない経済改革を急ぐサウジは、中国の技術や投資マネーに期待する。世界2位の経済大国とのパイプを太くすることで、米国に対して発言力を強める狙いもある。

習氏がサウジを訪問するのは16年1月以来。9日にはアラブ諸国や湾岸協力会議(GCC)諸国首脳との会議を開く。サウジだけでなく広くアラブ諸国とも連携深化を探る。

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説

習近平国家主席のサウジアラビアへの訪問は、7月のバイデン大統領の訪問よりもかなり手厚い接遇となっている。欧米メディアもこの点に注目して報道している。実際のところ、サウジアラビアだけではなくイランやイラクも、そしてイスラエルまでもが中国との関係強化に動いている。先手を打つような政策を展開できないならば、アメリカも日本も中国の後追いに終始することになる。
2022年12月9日 22:30 』