「米国の裏切り」にサウジ反発、中国への接近に危うさ

「米国の裏切り」にサウジ反発、中国への接近に危うさ
編集委員 岐部秀光
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB099EC0Z01C22A2000000/

『中国がアラブ産油国への接近を加速し、中東での影響力拡大を目指している。事実上の盟主サウジアラビアにはどんな思惑があるのだろうか。

サウジアラビアはエネルギー危機でみずからの地政学上の戦略的価値が高まったことを自覚している。米国と中国という二大国を競わせ、投資や技術協力を双方から十分に引き出せると計算しているようだ。

7月に訪問したバイデン米大統領への応対とは対照的な、習近平(シー・ジンピン)中国国家主席への盛大な歓迎ぶりは、米国に対するあてつけの演出である。サウジの対米不信の根っこには、石油と安全をめぐる長きにわたる戦略同盟で米国がその責任を果たさなくなったことへのいらだちがある。

サウジが石油を市場に安定供給する代わりに、米国はサウド王室による国の支配をみとめ安全を守るのが暗黙の約束だったはずだ。ところが、2019年の対立するイランによるとされる石油施設へのミサイル攻撃で米は行動を起こさなかった。

サウジの人権問題を批判するバイデン氏がかつて述べた「サウジをパーリア(のけ者)として扱う」という言葉は、公衆の前でリーダーを侮辱する、アラブ世界におけるタブーの一線を大きく越えるものだった。

若き実力者ムハンマド皇太子は、波長が合わないバイデン氏がホワイトハウスを去ったあとに対米関係を立て直せればよいと計算し、ひとまず中国に接近している。

しかし、そこには自信ゆえの落とし穴もある。中国の中東における利益の追求は機会主義的で、サウジを守る意図も能力もない。同盟で米国が果たしてきた役割を中国が取って代われるはずもない。そして、石油の時代が終わりに近づくなか、米国は中東に2度と戻っては来ないかもしれないのだ。

(編集委員 岐部秀光)

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