米国防長官、オーストラリアの潜水艦能力にギャップを生じさせないと約束

米国防長官、オーストラリアの潜水艦能力にギャップを生じさせないと約束
https://grandfleet.info/indo-pacific-related/us-defense-secretary-promises-no-gaps-in-australias-submarine-capabilities/

『米国とオーストラリアの閣僚協議「AUSMIN」でオースティン国防長官は「コリンズ級潜水艦から原潜への移行にギャップが生じることを許容しない」と約束、これを埋めるための新たな潜水艦取得に注目が集まっている。

参考:SecDef pledges to close Aussie Collins sub gap; Japanese forces to ‘integrate’ with US, Aussies
参考:Will US supply Australia with AUKUS subs? ‘That’s not going to happen,’ key US lawmaker says
コリンズ級潜水艦から原潜に直行するスケジュールで行くのか、通常動力型潜水艦を挟む緩やかなスケジュールで行くのか

アタック級潜水艦から原潜導入に方針を転換したモリソン政権は「コリンズ級潜水艦から原潜への移行」を目指していたが、原潜の国内建造には準備に時間がかかり、米海軍も英海軍にも豪州に売却もしくはリースできるほど原潜に余裕がなく、米英には豪州向けの原潜を新たに建造する余剰能力がないことが濃厚で「コリンズ級潜水艦から原潜への直接移行は無謀だ」と野党から批判を浴びていた。

出典:Royal Australian Navy アタック級潜水艦の完成イメージ

さらに今年5月の総選挙で労働党が勝利、アルバニージー政権は2012年に策定された国防戦略が「急速な中国軍の台頭」や「台湾海峡の軍事的対立」をカバーしていないこと主張して見直しを指示、米国と英国のどちらから原潜の導入するのか、コリンズ級潜水艦から原潜に直行するスケジュールで行くのか、通常動力型潜水艦を挟む緩やかなスケジュールで行くのかについても「2023年に発表する」明かし、既にフランスや韓国が通常導力型潜水艦の売り込み開始している。

米ディフェンスメディアの説明によれば「韓国大使や国防部高官とオーストラリア国防省の関係者が会談した今年7月、韓国側は提案中のRedback、KF-21、潜水艦、低軌道通信システム、高速列車の売り込みについて議論を行った」と報じており、韓国の3,700トン級潜水艦はAIP機関とディーゼルエンジンの組み合わせで従来の通常動力型潜水艦より長距離航行が可能な点、水中発射式の弾道ミサイルを搭載している点、乗組員の士気を保つため居住性が優れている点などをアピールしたらしい。

出典:韓国大統領府 潜水艦「島山安昌浩」進水式

米ディフェンスメディアはオースティン国防長官の発言背景は不明だと言及した上で「通常動力型潜水艦の購入するよう働きかけている国々には歓迎されないだろう」と指摘しているが、米議会では政府が海軍の原潜を豪州に売却するのではないかと警戒しており、シーパワー・戦力投射小委員会(下院軍事委員会)のロブ・ウイットマン議員は「豪州が独自に原潜を建造できるようになるまで米国がロサンゼルス級かバージニア級を提供すればいいという話もあるが、米国の原潜建造に余裕はないので絶対にあり得ない」と主張している。

豪州が原潜を早く手に入れるには「伝統的な主権に基づく考え方を捨てて創造的なアプローチが必要だ」とも述べており、ウイットマン議員は「新たに建造するバージニア級を米海軍と豪海軍の混成クルーに対応した仕様を変更して二重指揮の下で運用すべきだ」と提案しているが、異なる主権国家が同じ軍艦を二重指揮するとなると管轄権や作戦権など法的な問題に直面するため米ディフェンスメディアは議員の提案には懐疑的だ。

出典:U.S. Navy photo courtesy of General Dynamics Electric Boat

ウイットマン議員は「米国がコマンド&コントロールの51%(決定権の優越を米国が握るという意味)を持つことになると思うが、これはオーストラリア海域での活動を妨げることにはならないし、作戦計画や実行についてもオーストラリア人と協議すればいい」と述べて実現可能と力説しているが「緊急事態の際は米国に戻ることになる」とも付け加えており、伝統的な主権に基づく考え方を捨てて創造的なアプローチが必要という割に「米国主権」を優先させる運用方法と言える。

混成クルー対応への改造費用や運用費用を負担するのにコマンド&コントロールが49%では「緊急事態時の確実性に欠ける=オーストラリア側が下した決断が確実に実行できるか怪しい」ため、安全保障上の観点から言えば絶対にオーストラリアは納得しないだろう。
出典:public domain 基地でコリンズ級に搭載されている戦闘システム「AN/BYG-1」のトレーニングを行うオーストラリア海軍将兵

もし豪州が新たな通常動力型潜水艦の導入に踏み切ればフランスと韓国の戦いになり、豪海軍にとって米国製のAN/BYG-1とMk.48の統合が絶対なのでオースティン国防長官の発言は「この辺りの事情」で協力する意思を示している可能性もあるが、仮に政治主導で海軍保有の原潜を豪州に提供するつもりなら議会との衝突は避けられない。

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 ※アイキャッチ画像の出典:Public domain コリンズ級潜水艦 』