フィリピン、日米と防衛協力強化 自衛隊が戦闘機初派遣

フィリピン、日米と防衛協力強化 自衛隊が戦闘機初派遣
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『【マバラカット(フィリピン北部)=志賀優一】フィリピンのマルコス政権が日米との防衛協力の強化に乗り出している。6日には自衛隊の戦闘機派遣を受け入れて部隊間交流を実施した。米国とは米軍とフィリピン軍が共用できる備蓄施設などの拠点を増やす見通しだ。中国と南シナ海の領有権を巡り対立する中、日米との連携を前面に打ち出す。

6日、マニラ首都圏北郊のクラーク空軍基地に自衛隊のF15戦闘機2機が到着した。航空自衛隊にとって、戦闘機を海外に派遣するのは、米国やオーストラリアに続いて3カ国目だ。戦闘機派遣は長距離飛行や空中給油などの高い運用能力が必要で、フィリピンと日本が防衛協力を深める象徴的な事例となる。

空自とフィリピン空軍が防衛協力と交流を進展させる目的で開く「部隊間交流」は11月27日から12月11日まで実施される。浜田靖一防衛相は6日の記者会見で戦闘機派遣の意義を強調し「自衛隊とフィリピン軍の協力が一層強化され日本の安全保障に資するのみならず、両国が国際社会の平和や安全により積極的に寄与することにもつながる」と言明した。

フィリピン空軍のカンラス司令官は日本経済新聞に対し「自衛隊の戦闘機派遣は両国間で防衛協力関係がより強化されていることの表れだ」とコメントした。

日本とフィリピンの防衛協力は急速に深まっている。4月には東京で外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を初めて実施。日本は戦闘機やミサイルなどを探知する警戒管制レーダー4基を輸出するほか、全長97メートルの巡視船2隻も供与した。

海上警備では11月下旬、南シナ海に面するスービック周辺でフィリピン海軍の哨戒船「コンラッド ヤップ」と海上自衛隊の護衛艦「はるさめ」を使い戦術運動などの訓練も実施された。

フィリピンのファウスティーノ国防相代行は11月14日に「日本とフィリピンは日本の部隊(自衛隊)が演習できるよう『訪問軍地位協定(VFA)』を結びたい」と発言した。フィリピンはすでに米国や豪州とVFAを結んでおり、日本も加われば日米豪とともに踏み込んだ合同演習が可能となる。

フィリピンは軍事同盟を結ぶ米国との防衛協力も深めている。11月下旬にはハリス米副大統領が南シナ海の最前線であるフィリピン西部パラワン島を訪問した。

両国は米軍が巡回駐留できる新しい拠点を追加することでも合意した。米軍は拠点に弾薬や燃料、医療品を備蓄し、長期戦に対応できる態勢を整えることが可能になる。フィリピンは南シナ海問題や台湾有事を想定した場合の軍事的要衝となる。

フィリピン憲法は上院が条約を批准しない限り、外国軍駐留を禁じている。1990年代初めに比上院が米軍の基地利用を延長する条約の批准を拒否し、米軍基地が撤退した。南シナ海などでの米軍の存在感低下につながり、その後、中国の海洋進出を許した。

2010~16年のアキノ政権で米国がフィリピン軍基地を利用できるようにする軍事協定を結ぶなど、軌道修正しようとしたが、16~22年に政権を担当したドゥテルテ前大統領は主要な貿易相手である中国との経済関係を重視して、対中融和的な政策をとった。

6月末に就任したマルコス大統領はこれまでのところ、日米やオーストラリアとの連携を重視する姿勢を打ち出し、前政権での対中傾斜を修正し始めている。マルコス氏は1日、「(米国との)相互防衛条約は継続的に交渉され改善されるものだ」と発言し連携を強化する姿勢を打ち出した。

背景にあるのが南シナ海における中国の海洋進出だ。領有権を巡り対立が続くなか、中国の実効支配が進み、環礁などを埋め立てて滑走路を造るなど、軍事拠点化も着々と進行している。

11月20日には南沙(英語名スプラトリー)諸島でフィリピンが実効支配するパグアサ島周辺の海上で、同国軍が浮遊物を回収・けん引した際、中国により妨害された。けん引に使う綱を切断され浮遊物を奪われる事案が起きた。

フィリピンが日米と関係を深める動きを中国が警戒するのは必至だ。マルコス氏は23年1月3日から国賓として訪中し、習近平(シー・ジンピン)国家主席と首脳会談するとみられる。マルコス氏は「私にとって西フィリピン海(南シナ海)問題を言及せずに中国と対話することは不可能だ」と話しており、中国とどのような交渉を進めるかも注目される。
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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Indo-Pacific/Japan-sends-fighter-jets-to-Philippines-for-1st-time-in-air-force-exchange?n_cid=DSBNNAR 』