[FT]マクロン大統領、プーチン氏の主張「容認」に批判

[FT]マクロン大統領、プーチン氏の主張「容認」に批判
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『フランスのマクロン大統領が4日、ロシアに関する発言でウクライナ政府とバルト諸国から厳しい批判を浴びた。ウクライナでの戦争を終結させるための将来の交渉の一環として、ロシアに安全保障面での確約を与える必要があると述べたためだ。

プーチン大統領の主張に沿ったようなマクロン大統領の発言に批判が集まっている(1日、米ホワイトハウス)=ロイター

仏テレビTF1のインタビューでの発言は、マクロン氏が公式訪問したワシントンでバイデン米大統領と会談し、ロシアによるウクライナ侵攻と米仏両国によるウクライナ支援の継続について協議した後に出たものだ。マクロン氏は米国と欧州が地域の「あすに向けた安全保障構造」を準備する必要性についてバイデン氏と話し合ったと述べた。

「これは、我々が対処しなければならない重大事項の1つが、(ロシアの)プーチン大統領が常々語っているように北大西洋条約機構(NATO)がロシアの玄関先まで迫ってくるという不安とロシアを脅かしかねない兵器の配備であることを意味している」とマクロン氏は語った。

「このトピックは和平に向けた議題の一部となる。このため我々はやる用意があることや同盟国と加盟国を守る方法、ロシアが交渉のテーブルに戻ってきた時に保障を与える方法について準備する必要がある」と同氏は話した。

マクロン氏の発言は4日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)で強い批判を招いた。

ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記はツイッターで「誰かがテロリストで殺人者の国家に安全の保障を与えたいと思っているのか」と問いかけた。さらに第2次世界大戦後の戦争裁判に触れて「ニュルンベルクの代わりに、ロシアとの合意に署名して握手したいのか」と疑問を投げかけた。

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、むしろ世界がロシアからの安全の保障を必要としており、ロシアに責任を果たさせるべきだと語った。「文明世界はプーチン後のロシアの野蛮な意図からの『安全の保障』が必要だ」と同氏はツイートした。
以前もロシアに甘いとの批判

戦後の自国の安全保障について欧米諸国からの確約を求めているウクライナ政府は侵攻したのはロシアであることを理由に、紛争後にプーチン氏に譲歩する提案を一切拒絶してきた。

マクロン氏は以前、紛争が終わってもロシアは隣国であることに変わりはなく、欧米は戦争を巡って「ロシアに屈辱を与えるべきではない」との考えを表明し、ロシアに甘いと批判された。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けてNATOに加盟申請したフィンランドのストゥブ元首相は、マクロン氏の意見に根本的に反対だと語った。「我々が重点的に取り組むべき唯一の安全保障の確約は、基本的にロシア以外だ」とツイッターに投稿した。「ロシアがまず他国を攻撃しないことを保障する必要がある。それではじめて我々は(欧州の安全保障について)議論を始めることができる」という。

ラトビアのパブリクス副首相はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に対し、「欧米がロシアに安全保障を確約することによってロシアのウクライナ侵攻を終結できるという考えは、この戦争の責任は欧米とウクライナにあり、ロシアは罪なき犠牲者だというプーチン氏の言説に惑わされている」と語った。

リトアニアのリンケビチュス前外相はツイッターで「近隣諸国を攻撃したり、併合や占領をしたりしなければ、ロシアはあらゆる安全保障が確約される。テロ国家が威嚇行為を継続するのを許す新しい安全保障構造を築きたい人がいるのなら考え直すべきだ」とコメントした。

NATOは「門戸開放」を堅持

マクロン氏の発言は、NATOが旧ソ連各国を迎え入れることでロシア国境に向かって「拡大」し、それが侵攻の正当な理由になるというプーチン氏の主張に信認を与えたようにも受け取れる。

NATOはこの主張を断固否定するとともに、地理的な場所を問わずいかなる国も加盟を申請する主権的判断を下すことができ、ロシアには申請国に拒否権を発動する権利がないという「門戸開放」政策を事あるごとに確認してきた。

フランスのある政府高官は4日、同国の優先事項は依然、ウクライナがロシアの攻撃に抵抗するのを支援することとロシア軍の撤収でウクライナの主権が回復されるようにすることだと述べた。

この高官はマクロン氏がロシアに甘いとの見方を否定し、大統領はロシア軍が犯したとされる残虐行為を非難し、戦争犯罪の調査に加わるためにフランスの調査員を送り込んだと指摘した。だが、将来の戦争を回避するには欧州の「新たな安全保障構造」が必要になるとし、「ロシアはどこへも行かないし、こうした協議に参加する必要がある」と語った。
戦争が始まって10カ月になるなか、欧米政府高官は紛争の終結に向けた正式な協議は開かれていないと話す。米国やフランスを含むウクライナの同盟国は繰り返し、ウクライナが受け入れる条件について決めるのは同国のゼレンスキー大統領だとの考えを示してきた。
バイデン氏は1日、もしプーチン氏が本気で戦争の終結を探るなら同氏と話す用意があると語る一方、現時点ではそうではないと述べた。

ロシア政府高官はその後、ロシア側も「我々の利益を守るために交渉に臨む用意はある」が、欧米諸国が一定の要求を認めた場合に限られると語った。

By Leila Abboud, Henry Foy, Roman Olearchyk and Richard Milne

(2022年12月5日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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