米中首脳会談の舞台裏 「誤解なき対話」は維持されるか

米中首脳会談の舞台裏 「誤解なき対話」は維持されるか
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28682

『11月15日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、「バイデン・習近平会談は激しい競争を管理する方向への移行を意味」と題する解説記事を掲載し、米中高官からの取材に基づき会談の舞台裏を報じている。
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 11月14日の米中首脳会談は3時間を超えた。習は共産党支配を強く擁護し、(中国共産党による)台湾の歴史の説明に力を入れた。米国は、中国が台湾侵攻の差し迫った計画を有していないとの印象を得た。首脳会談により、両国間の厳しい競争を管理し、紛争を予防し、可能なら共通利益を見出すという、米中関係の新段階が始まった。

 米中両国は今や全ての分野で衝突を深めている。バイデンはトランプ時代の関税を維持しつつ、先進半導体対中輸出制限の新措置を導入した。

 しかし、米国はバイデンと習双方が「副」だった時のような広範な対面会談を望んだ。7月の電話会談の際に両首脳は対面会談の可能性を探るよう指示したが、8月に中国は、ペロシ下院議長の訪台に対し、大規模軍事演習と広範な主要連絡ルートの遮断で応じた。この膠着状態は、9月の国連総会時にブリンケン長官が王毅外相に会ってから緩み始めた。その際ローゼンバーグNSC中国上級部長とクリンテンブリンク国務次官補が謝鋒外交副部長と会談した。両者は過去のオンライン会談設定の連絡チャネルを再開した。

 首脳会談は同時通訳で2時間を予定していたが、休憩を挟み3時間続いた。会談後の記者会見でバイデン大統領は、率直な議論をしたと発言した。中国政府は会談を前向きに評価し、両首脳が笑顔で握手するシーンを報じた。王毅外相は、首脳会談は、中米関係が管理不能に陥ることを避ける明確な方向性を打ち出したと述べた。

  • * * * * *  WSJらしい綿密な取材に基づいた「検証記事」であり、中国側のキーパーソンが誰かを含めて大変に参考になる。  今回の米中首脳会談は、両国が相手を唯一の戦略的競争相手と認識し、ある程度長期に亙り厳しい競争が不可避の中で、「競争を対話で管理する」という共通認識に双方が達した点で高く評価されるべきである。米国は、首脳会談の約1か月前の10月13日には、ウクライナ紛争進行中にもかかわらず中国を唯一の競争相手と位置付け、安保・経済両面で米国の優位性死守を宣言した国家安全保障戦略を発表し、それに先立つ10月7日には、その具体化とも言える先進半導体の対中輸出制限を打ち出している。その舞台裏でバイデン大統領にとって初の対面首脳会談の準備が着々と進んでいたのには驚かされるが、トランプ政権の際の「制裁の打ち合い」と異なり、先進半導体規制に対して中国が対抗策を打ち出していないことにも注目すべきだろう。』

『依然変わらぬ台湾問題の構図

 一方、台湾問題については、基本的な構図が変わったとは思わない。会談直後にバイデン大統領が「中国側に台湾に侵攻する差し迫った計画があるとは思わない」と発言したので、具体的にどのようなやり取りがあったのか関心があったのだが、この記事によれば、習主席は「中国は台湾再統一を望んでいるが、そのために力を使わないで済むことを望んでいると伝えようとした」とのことであり良く理解できた。しかし、これら全てのことは、中国側が共産党支配を正当化する究極の根拠である台湾再統一を決して諦めないという事情を変えるものではなく、有事に対する最善の準備をすることで中国側に失敗のリスクがあることを理解させ、唯一の道である抑止を確固たるものにするのは引き続き最優先の課題である。 

 今回のバイデン大統領の「印象」で、例えば米軍近代化の歩みが緩むことなどは有ってはならない。その観点からは、G20に際する米インドネシア首脳会談で、米国がインドネシアの海上保安機構に対してドローン入手他の海上監視能力向上のための支援を打ち出したのは、注目されていないが、大変意義深いことである。台湾海峡、バシー海峡、更にはマラッカ海峡が使用できなくなれば、唯一の代替航路はインドネシアのロンボク・マカッサル海峡であり、同国がその安全確保に貢献できるようになるのは、広い意味では抑止の一環であり、日米欧にとって大きな意味を持つ。米国は、抑止強化に向けた手も着々と打っていると言えるだろう。

 いずれにしても、中国側が失敗の可能性を正確に理解することで抑止が働くためにも、米中間で誤解のない「対話」が維持されていることが必須で、その意味でも、今回の首脳会談の意味は大きい。

 その後の日中首脳会談についても、その準備のための舞台裏での接触は「楊潔?-秋葉」間の7時間の議論でも明白なように、しっかりと行われていたはずであり、首脳会談を受けて同様の誤解のない「対話」が維持されることを期待したい。』