白紙デモ、習近平政権への打撃は限定的

白紙デモ、習近平政権への打撃は限定的 ラッド元豪首相
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『オーストラリアのケビン・ラッド元首相は都内で日本経済新聞のインタビューに応じた。中国各地での白紙デモと呼ばれる「ゼロコロナ」政策への抗議活動が「差し迫った習近平(シー・ジンピン)政権の困難になるとみるのは間違いだ」と指摘。当局が監視技術を使って巧みな鎮圧を進めるとの観測を示した。

白紙デモは厳格な新型コロナウイルス対策に抗議する参加者が無言の抵抗を意味する白い紙を掲げたのが由来。中国の各都市や有力大学に及び、一時は習氏本人への批判の声も公然と広がった。中国共産党の指導者が公然と批判されるのは極めて異例の事態だ。

ラッド氏は「抗議活動のレベルに習政権は驚いている」と語る一方で「これは抗議活動で、西側で多く言われる暴動とは違う」と述べ、政権への影響を過大視すべきでないとの姿勢を示した。「この強権国の力は恐ろしい」とも話し、露骨な弾圧でなく、顔認証技術を活用して抗議活動への参加者を特定し、締め付ける可能性を示唆した。

その半面「中国は抗議活動によってカニの横歩きのように(目立たない形で)ゼロコロナ政策の修正を加速している」とも言及した。中国は過去30年間で最も鈍い経済成長の状況にあると指摘し、少子化、民間投資の減退、米欧など世界景気の減速で「もう2~3年は低成長に陥る」との展望を語った。

習指導部が統一をめざす台湾の情勢については「今はおそらく嵐の前の静けさに入っている」と述べた。習国家主席が「当面の経済活動を改善するため、米国や欧州などとの地政学的な発熱をいくぶん下げようとしている」とし、米中首脳会談などで対話継続の意思を示したことを評価。同時に「中長期で台湾を巡り故意の戦争が起きるリスクが低下したわけではない」と警告した。

「中国は2030年代に力ずくでの台湾統一を実現するため、向こう5~7年は国の勢力関係や軍事、金融、経済や技術で自らを有利にしようと準備するかもしれない」との見通しを示した。20年代の戦闘リスクの低減だけでなく、日米欧の同盟国などによる中長期的な抑止の重要性を強調した。

米中関係は8月のペロシ米下院議長による台湾訪問で緊張を高めた。ラッド氏は「ペロシ氏の訪台は台湾の安全保障にとって明らかに助けにならなかった」と明言した。

米中間選挙では野党・共和党が下院の過半数を制した。下院トップのマッカーシー院内総務が議長に就いた場合、訪台するとの観測がある。この点についてラッド氏は「台湾の安定に有益な策は何かということよりも、米国の内政的な必要性から出ている話だ」と述べ、生産的な動きではないとの懸念を示した。

ラッド氏は07~10年と13年に豪首相を務めた。現在は米アジア・ソサエティー政策研究所所長を務める。

(編集委員 菅野幹雄)』