焦点:ゼロコロナで分断進む中国世論、根強い規制緩和への懸念

焦点:ゼロコロナで分断進む中国世論、根強い規制緩和への懸念
https://www.epochtimes.jp/2022/12/127152.html

『[上海 2日 ロイター] ? 中国・上海市に住む20代半ばのサミュエル・レンさんは、ゼロコロナ政策に嫌気が差している。

「オミクロンは脅威じゃない。ただの風邪みたいなものだ」と語り、新型コロナウィルス封じ込めのために続いているロックダウン(封鎖)を「ばかげている」と切って捨てた。
だが、心臓病と高血圧を患う上海市民ツァイ・シーユーさん(70)は、そうした不満を聞いてゼロコロナ政策への支持を変えることはない。1人でも感染者が出るのを黙認すれば「この疫病は必ず盛り返す」と感じており、「しばらくすれば消えてしまう風邪とは違う」と反論した。

新型コロナを徹底的に封じ込めるゼロコロナは習近平国家主席の看板政策だが、国民の間で賛否は大きく分かれている。

ロックダウンに抗議するデモが散発する一方で、死者の少なさがゼロコロナ政策の正しさを証明していると考え、最近始まった規制緩和に不安を覚える国民もいる。

公式発表によると、新型コロナによる累計死亡者数は中国が約5200人なのに対し、米国は100万人、ブラジルは69万人、英国は21万2000人を超えている。米国並みの死亡率を人口14億人の中国に当てはめると、死亡者は400万人を超える計算だ。

中国は高齢者のワクチン接種率が低い上に、医療制度にも不安があるため、新規感染者数が過去最高を更新している中で、制限を緩和することの潜在的リスクはなおさら高い。

上海の広告業界で働くサイラー・サンさんは「新型コロナ感染者をゼロに抑えることはできるが、そうすれば健全な経済は手に入らない。健全な経済を手に入れれば、感染者はゼロにできない」と、葛藤を口にした。

ロイターは中国国家衛生健康委員会にコロナ対策についてコメントを求めたが、今のところ回答はない。

<蚊に高射砲>

ロックダウンなどの制限措置により、中国の若年失業率は過去最悪を記録し、経済成長は落ち込み、工場やサプライチェーン(供給網)が打撃を被っている。

武漢の医師、ワン・ウェイジェンさんはソーシャルメディアの「微博(ウェイボー)」に「このウィルスに感染拡大初期と同じ政策で対処し続けるとすれば、蚊を殺すのに高射砲を用いるような感じだ」と投稿した。

当局は最近、隔離期間の短縮や検査義務の縮小を決めた。これはゼロコロナ政策から撤退する最初の試みだと受け止められている。多くの国民はこの変化を歓迎したが、警戒を解かない国民もいる。

例えば、河北省石家荘市では先月、当局が無料の新型コロナ検査場の閉鎖を決めたが、住民が感染爆発のリスクがあると不満を訴えたため、撤回を余儀なくされた。

米ブラウン大学の研究者がソーシャルメディアのデータと上海市の住民にインタビューし、8月に公表した研究結果では、ゼロコロナ政策が中国で強い支持を得ていることが分かった。人々は、コロナ対策が緩い国々の「陰惨な光景」を目にして、規則を順守しているという。

上海の会社員ワン・ジアンさん(32)は「私は海外に暮らした経験があり、中国の管理方法は海外よりずっと良いと感じている。このウィルスへの対処法は色々ある。中国は自国の状況を踏まえて対処を決めたまでであり、数字を見る限り、これで大丈夫だと思う」と語った。

<ワクチンと医療体制>

医療専門家の間でも、ゼロコロナ政策への賛否は分かれている。

上海市の新型コロナ対策専門家チームを率いるジャン・ウェンホン氏は先月、オミクロン変異株になって毒性が弱まっただけでなく、全体的にはワクチン接種率が高いため、ついにゼロコロナ政策から「抜け出す」道が開けるかもしれない、と述べた。

中国の初期の新型コロナ対策立案に関わった専門家ジョン・ナンシャン氏も、オミクロン株の致死率は比較的低く、「国民はあまり心配し過ぎる必要はない」と語った。

しかし、広西チワン族自治区の疾病管理センター長、ジョウ・ジャトン氏は先月公表した論文で、中国本土が今年の香港と同様に制限を緩和していた場合、感染者数は2億3300万人を超え、200万人余りが死亡していたとの悲観的な推計を示した。

ブラウン大学の研究に携わったキャサリン・メーソン氏は、中国はゼロコロナ政策を廃止する前に、ワクチン接種の強化や医療受け入れ態勢の拡大など、準備が必要だと指摘した。

復旦大学(上海)公衆衛生大学院が昨年公表した論文によると、2021年時点で中国は人口10万人当たりの集中治療室(ICU)の病床数がわずか4.37床だった。米国は15年時点で34.2床だ。

また、中国の疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、60歳以上のワクチン接種率は、2回接種が11月時点で86.4%、3回以上の接種が68.2%にとどまっている。米国の60歳以上はこの数字がそれぞれ92%と70%、ドイツは91%と85.9%、日本は92%と90%だ。

<猛虎か、張り子の虎か>

ニュースアプリ「今日頭条」には最近、「かつて、このウィルスは猛虎のようだったが、今では張り子の虎だ」という投稿があった。ロックダウンを支持しているのは年金生活者か、働かなくても生活できる人々だけだと主張している。

だが、ロックダウンへの抗議デモが正しい解決策だと、だれもが思っているわけではない。

食品業界で働くアダム・ヤンさん(26)は「頭を使わずにこうした手段に訴える必要はない。こうした行動は公序を乱す」と語る。「新型コロナの状況は非常に複雑で、次々と新しい問題が持ち上がる。政府を信じ、各々が最善を尽くすのが一番良いと思う」と続けた。

(David Stanway記者)』