カンボジア動脈、中国が建設・運営 初の高速道路開業

カンボジア動脈、中国が建設・運営 初の高速道路開業
Zoomインフラ
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『カンボジアで初めての有料高速道路が開業した。中国の国有企業が約20億ドル(約2700億円)を投じ、首都プノンペンと南部の港湾都市シアヌークビル間の約190キロメートルを結ぶ。人やモノの円滑な移動ニーズに応えるほか、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一部も担う。事業としては採算の確保が課題となるが、日本企業なども活用する見通しで、中国の影響力拡大を警戒する向きもある。

移動時間が半分の2時間に

「高速道路は人生で初めて。短時間での移動は思った以上に便利でした」。正式に開業した11月、会社員のラクスメイさん(40)は利用後に笑顔でこう話した。営業の仕事で日常的に両都市を移動するため、業務も円滑に進む。

従来の国道だと約5時間かかった移動が半分以下の約2時間になる。初年度の通行料金は一般車が片道12ドル。大型トラックだと同60ドルで決して安くはない。まずは所要時間と安全性を重視する商用ドライバーを対象に、収益の確保を急ぎたい事業者側の意欲がにじむ。

高速道路の建設と事業運営を担うのが中国路橋工程(CRBC)だ。カンボジア政府が2018年に「建設・運営・譲渡(BOT)方式」の事業として契約し、企業側が50年間にわたって通行料金を徴収する。カンボジア側の費用負担は実質ゼロとされる。

▼BOT方式 事業会社が道路や施設を建設し、一定期間、管理・運営、採算を確保したうえで国などに譲り渡す仕組み。インフラ整備の資金が乏しい発展途上国にとって有効な手段とされる。運営期間が長期にわたるため、政策変更やインフレなどを企業が予測することが難しい点は、投資回収のリスクとなる。

一帯一路の「先兵」

CRBCは道路や鉄道、橋梁建設に強く、北京市の本社のほか約60カ国・地域に支社や事務所を持つ。同社の業績は不明だが、親会社の中国交通建設集団はグループ全体の売上高が21年12月期で8428億元(約16兆円)。米建設調査会社エンジニアリング・ニューズ・レコードによると、中交集団は建設関連企業の海外売上高で世界3位につけ、習近平(シー・ジンピン)指導部が展開する一帯一路の「先兵役」だ。

プノンペン側の高速道路の入り口には「中国交建」と書かれた青や赤ののぼりがはためき、中交集団が主導したインフラとしてアピールされていた。19年の着工時点では道路の敷設場所すら不明確だったが、CRBCが計画を上回るスピードで工事を進めた。

開通式典に参加した中国の李克強首相(左)とカンボジアのフン・セン首相(11月、プノンペン)=フン・セン氏のフェイスブックより

「中国はカンボジアの人々の生活を改善するために最善を尽くす用意がある」。11月9日、プノンペンでの開通式典に出席した中国の李克強(リー・クォーチャン)首相はフン・セン首相との会談で強調した。フン・セン氏は「両国の友好関係は強固だ」と表現し、蜜月を内外に示した。

投資誘致の推進役に

カンボジアにとって今回の高速道路は投資誘致の推進役として期待が大きい。プノンペン―シアヌークビル間は国道4号線が走っているが、片側1車線で年々渋滞が悪化していた。対向車線で追い越しを試みるトラックと「正面衝突のリスクが常にあり、何度も怖い思いをした」(物流業者)との声も聞かれる。

新たに開通した高速道路は片側2車線で整備し、中央分離帯も設置。安全性が高まった。数年前まで投資ラッシュに沸いた近隣国のミャンマーが政情不安で外資企業の投資を大きく減らすなか、カンボジアには追い風が吹いている。カンボジア総合研究所の鈴木博最高経営責任者(CEO)は「カンボジアの潜在力が相対的に高まっている。高速道路の開業と港湾整備は外資が新たに進出する動機になる」と指摘する。

中国にとっても、速く安全に移動できる道路インフラを整えることで、料金収入だけでなく自国の官民の活動を円滑にする狙いがあるとみられる。シアヌークビルには中国が拡張を支援するリアム海軍基地があり、南シナ海の実効支配をめざす中国軍が利用する可能性がある。市内では中国系企業によるホテルやカジノへの投資も加速している。

一段と高まる中国の影響力

中国による海外インフラ支援は近年、相手国の返済能力を考慮しない過度な貸し付けで批判されるケースが多い。そうした視線をBOT方式でかわしながら、カンボジアの主要な道路インフラを中国企業が実質的に押さえることになる。カンボジアへの21年の外国直接投資における中国比率は6割強に達しており、影響力が一段と高まる。

カンボジアにとって基幹インフラの運営を外国企業に任せることには、寸断リスクがついてまわる。今回は道路であるため迂回の選択肢があるが、同様の発注方式を電力などのライフラインにどこまで広げるかは慎重に検討していくとみられる。

CRBCはアフリカ東部のケニアでもBOT方式で高速道路を建設し、5月に試験運用を始めた。こうした支援を「新・新興国」と呼ばれる市場で広げていく公算が大きいが、中国政府の支援があるとはいえ一定の採算を確保する必要がある。料金設定やサービスエリアの充実などの運営ノウハウの蓄積が求められそうだ。

港湾都市シアヌークビル、日本の官民が整備支援

 シアヌークビルは日本の官民も足場を築いてきた重要都市だ。日本政府はカンボジアで唯一の深海港を運営するシアヌークビル港湾公社(PAS)を長年支援。現在は港湾物流大手の上組が13%の株式を持っている。

 8月には日本政府が最大413億円の円借款を供与し、拡張計画を支援する方針を打ち出した。完工すれば大型コンテナ船の寄港が可能になる。これまで北米や欧州を結ぶ航路はシンガポールで荷物を積み替える必要があった。

 シアヌークビル自治港のコンテナ取扱量は年平均10%以上のペースで増えている。PASのルー・キム・チュン総裁は同港を使うことで「カンボジアに進出する企業は輸送時間やコストで競争力が高まる」と話す。

 イオンモールはPASが運営する経済特区で専用の物流拠点を整備する。23年中に稼働させ、輸入品の保管や通関代行などの業務を始める。保税倉庫では輸入手続きが終わっていない貨物を関税無しで保管できる。メーカーのほか小売企業などの利用も想定している。
(プノンペンで、大西智也、大連=渡辺伸)』

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