ロシア人旅行者、タイで急増 国際社会から批判も

ロシア人旅行者、タイで急増 国際社会から批判も
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『【バンコク=井上航介】タイでロシア人旅行者が急増している。ロシアのウクライナ侵攻後に運休していたロシアとタイのリゾート地を結ぶ定期便が10月末に再開したほか、ロシアからのチャーター便も増えている。米欧など国際社会が経済制裁を科す中、タイ政府のロシア人観光客取り込みには冷ややかな視線も注がれている。

1日、タイ東部にあるリゾート地パタヤの砂浜では多くの外国人客が海水浴や飲食を楽しんでいた。飛び交う言葉の多くはロシア語だった。マッサージ店を営むチューンさん(56)は「ビーチにいる観光客の9割がロシア人だ」と話す。

温暖なタイはロシア人にとって人気の渡航先で、新型コロナウイルス禍前の2019年には、148万人がタイを訪れた。今年1~10月は累計で14万人超と、コロナ前の10分の1程度だが、欧州連合(EU)が査証(ビザ)発給を厳格化して、ロシア人観光客のEU域内への受け入れを事実上制限する中、タイでは足元でロシア人観光客が急増する。

ロシアが2月にウクライナへの攻撃を開始して以降、タイを訪問するロシア人の数は、3~8月には毎月1万人未満で推移していたが、9月に入ると1万5900人に拡大。10月は4万4314人と、侵攻開始前の1月(2万3760人)の倍近くに達した。

10月単月では、日本(3万7186人)やオーストラリア(4万3827人)の観光客数を上回る。
米欧の経済制裁でロシア発着の航空便の多くは運休が続くが、ロシアとタイを結ぶ航空便は増えている。ロシア航空最大手アエロフロートは10月末、モスクワ・タイ南部プーケットの定期便を再開した。11月下旬には西シベリアからのチャーター機がパタヤ近郊のウタパオ空港に到着した。

パタヤのビーチではロシア語を併記した看板も立つ(1日)

観光はタイの主要産業だが、中国で厳格な新型コロナ対策を取る「ゼロコロナ政策」が続き、19年に約3割を占めた中国人観光客の回復は見込めない。タイ政府はロシアからの誘客を強めることで、中国人客の減少分を補おうとしている。こうした姿勢には一部の国から批判も出るが、タイ政府が対ロシア制裁を導入する気配はない。

タイでは3月、ロシア人の観光客数千人が帰国できず立ち往生する問題が起きた。ロシア発着の国際線の多くが運航を停止したためだ。ロシアで発行されたクレジットカードの決済停止措置により滞在費の支払いも困難になった。

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最近タイを訪れるロシア人観光客はこうした経験を踏まえ、対策をとっているもようだ。タイに拠点を置くロシア人専門の旅行会社の担当者は「顧客は2週間近く過ごすのに十分な現金を持ち込んでいる」と話す。

モスクワからパタヤを訪れたアーシャ・カリアチェバさん(26)は、現金が底をついても他のロシア人客に譲ってもらい、代わりにスマホで同額をロシアの銀行口座に送金する「裏ワザ」を明かした。「制裁の被害を避けるため、私たちも必死に戦っているのよ」と得意げに語った。

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