トルコ与党、21年目の試練 選挙控え若者がそっぽ

トルコ与党、21年目の試練 選挙控え若者がそっぽ
イスタンブール支局 木寺もも子
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR28B9Z0Y2A121C2000000/

 ※ 今日は、こんな所で…。

『11月に政権樹立から丸20年を迎えたトルコの与党、公正発展党(AKP)が有権者の支持離れに苦慮している。80%を超える高インフレに加え、過去のめざましい経済成長を知らない若者の不満が強く、2023年半ばに予定される選挙ではエルドアン大統領の再選も予断を許さない。

「選挙で国が変わることを期待する」。イスタンブールの男子高校生、オルハンさん(17)は、来年5~6月ごろの実施が有力な大統領選・議会選で初めて選挙権を得る。航空機のパイロットになるのが夢だが、「今のままなら欧州への移住も考える」と閉塞感を口にする。

18年6月の前回選挙から5年、人口8500万人のトルコでオルハンさんのような新人有権者は約600万人。15~24歳人口では約1300万人にも上る。与党AKPが最も苦戦するとみられるのがこうした若年層への浸透だ。

イスタンブール経済研究所の11月調査によると、トルコの将来に「不安」を抱く人は年齢別で18~24歳の若年層が最も多く、58%に上った。反対に「希望」(18%)や「誇り」(9%)を持つのもこの若年層が最も少なかった。

年齢別の内訳は明らかになっていないが、同調査で与党連合に投票すると答えた人は31%で、今年夏ごろからは上昇したものの、野党連合(30%)と拮抗している。若者の動向は選挙戦のカギになりそうだ。

「若者は過去の苦労を知らない」。エルドアン氏はこう嘆いてみせたことがある。AKP政権下でトルコの1人当たり国内総生産(GDP)は3000ドル(約40万円)台から13年までに1万2000ドル台と約10年で3倍超に増えた。全県に空港や大学ができ、医療へのアクセスも大幅に改善するなど、国民は成長を実感した。

だが、近年は伸び悩み、1人当たりGDPは1万ドルを割り込む。「ほとんど使われない空港を造っても我々将来世代への負担になるだけ」(オルハンさん)などと若者の視線は冷ややかだ。

新憲法案を軸に野党連合は攻勢

AKP政権でいったんは前進したようにみえた民主主義も近年は後退が著しい。外資系企業に勤務する女性、チライさん(41)はこれまでエルドアン氏を支持していたが、次回は野党に投票するつもりだ。その理由の1つとして強権ぶりへの不満を挙げる。「外国メディアだから取材に応じられる。今は政府が怖くて自由に発言もできない」と話した。

英国の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が公表する民主主義指数でトルコは13年ごろから年々、スコアを低下させている。しかし、人々に不自由を感じさせるだけの欧米的な自由主義を浸透させたのも現政権の功績といえる。

支持者に手を振って応えるエルドアン大統領(11月27日、イスタンブール)=トルコ大統領府・アナトリア通信

AKP政権以前のトルコでは世俗主義の守護者を自任する軍が強い力を持ち、クーデターが繰り返された。公共の場で女性のスカーフの着用が禁じられ、イスラム主義を掲げるAKPが裁判で違憲とされるなど人口の大半を占める敬虔(けいけん)なイスラム教徒が抑圧されていた。

エルドアン氏自身、政治集会でイスラム教の詩を朗読したことで逮捕され、党が政権を取った02年11月には党首でありながら被選挙権を剥奪(はくだつ)されていた。首相に就任したのは翌03年の3月になってからだった。

今や言論を締め付ける側に回ったAKP政権は主要メディアの8~9割を影響下に置いたとされる。SNS(交流サイト)への規制も年々厳しくし、最近では当局が国家の安全を脅かすなどと判断する投稿をリツイートするだけでも刑事罰が科されるようになった。

AKPを離党したダウトオール元首相、ババジャン元副首相らも加わる野党6党の連合は11月28日、「今こそ民主主義の時だ」というスローガンを掲げて新憲法の草案を発表した。大統領を政党と切り離すほか、議会の権限強化や人権、批判的表現の重視などを盛り込んだ。

選挙が予定される23年はトルコ共和国の建国から100年の節目でもある。野党連合はこれまで大統領選の候補者選びでも一致できておらず、政権交代に向けた勢いには陰りがみられた。今回は国の形を問う新憲法案を軸に論争を挑む構えだ。

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