トルコ与党、21年目の試練 選挙控え若者がそっぽ

トルコ与党、21年目の試練 選挙控え若者がそっぽ
イスタンブール支局 木寺もも子
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR28B9Z0Y2A121C2000000/

 ※ 今日は、こんな所で…。

『11月に政権樹立から丸20年を迎えたトルコの与党、公正発展党(AKP)が有権者の支持離れに苦慮している。80%を超える高インフレに加え、過去のめざましい経済成長を知らない若者の不満が強く、2023年半ばに予定される選挙ではエルドアン大統領の再選も予断を許さない。

「選挙で国が変わることを期待する」。イスタンブールの男子高校生、オルハンさん(17)は、来年5~6月ごろの実施が有力な大統領選・議会選で初めて選挙権を得る。航空機のパイロットになるのが夢だが、「今のままなら欧州への移住も考える」と閉塞感を口にする。

18年6月の前回選挙から5年、人口8500万人のトルコでオルハンさんのような新人有権者は約600万人。15~24歳人口では約1300万人にも上る。与党AKPが最も苦戦するとみられるのがこうした若年層への浸透だ。

イスタンブール経済研究所の11月調査によると、トルコの将来に「不安」を抱く人は年齢別で18~24歳の若年層が最も多く、58%に上った。反対に「希望」(18%)や「誇り」(9%)を持つのもこの若年層が最も少なかった。

年齢別の内訳は明らかになっていないが、同調査で与党連合に投票すると答えた人は31%で、今年夏ごろからは上昇したものの、野党連合(30%)と拮抗している。若者の動向は選挙戦のカギになりそうだ。

「若者は過去の苦労を知らない」。エルドアン氏はこう嘆いてみせたことがある。AKP政権下でトルコの1人当たり国内総生産(GDP)は3000ドル(約40万円)台から13年までに1万2000ドル台と約10年で3倍超に増えた。全県に空港や大学ができ、医療へのアクセスも大幅に改善するなど、国民は成長を実感した。

だが、近年は伸び悩み、1人当たりGDPは1万ドルを割り込む。「ほとんど使われない空港を造っても我々将来世代への負担になるだけ」(オルハンさん)などと若者の視線は冷ややかだ。

新憲法案を軸に野党連合は攻勢

AKP政権でいったんは前進したようにみえた民主主義も近年は後退が著しい。外資系企業に勤務する女性、チライさん(41)はこれまでエルドアン氏を支持していたが、次回は野党に投票するつもりだ。その理由の1つとして強権ぶりへの不満を挙げる。「外国メディアだから取材に応じられる。今は政府が怖くて自由に発言もできない」と話した。

英国の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が公表する民主主義指数でトルコは13年ごろから年々、スコアを低下させている。しかし、人々に不自由を感じさせるだけの欧米的な自由主義を浸透させたのも現政権の功績といえる。

支持者に手を振って応えるエルドアン大統領(11月27日、イスタンブール)=トルコ大統領府・アナトリア通信

AKP政権以前のトルコでは世俗主義の守護者を自任する軍が強い力を持ち、クーデターが繰り返された。公共の場で女性のスカーフの着用が禁じられ、イスラム主義を掲げるAKPが裁判で違憲とされるなど人口の大半を占める敬虔(けいけん)なイスラム教徒が抑圧されていた。

エルドアン氏自身、政治集会でイスラム教の詩を朗読したことで逮捕され、党が政権を取った02年11月には党首でありながら被選挙権を剥奪(はくだつ)されていた。首相に就任したのは翌03年の3月になってからだった。

今や言論を締め付ける側に回ったAKP政権は主要メディアの8~9割を影響下に置いたとされる。SNS(交流サイト)への規制も年々厳しくし、最近では当局が国家の安全を脅かすなどと判断する投稿をリツイートするだけでも刑事罰が科されるようになった。

AKPを離党したダウトオール元首相、ババジャン元副首相らも加わる野党6党の連合は11月28日、「今こそ民主主義の時だ」というスローガンを掲げて新憲法の草案を発表した。大統領を政党と切り離すほか、議会の権限強化や人権、批判的表現の重視などを盛り込んだ。

選挙が予定される23年はトルコ共和国の建国から100年の節目でもある。野党連合はこれまで大統領選の候補者選びでも一致できておらず、政権交代に向けた勢いには陰りがみられた。今回は国の形を問う新憲法案を軸に論争を挑む構えだ。

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グローバルViews https://www.nikkei.com/theme/?dw=17110100 』

シリアで異例の反政府デモ 当局と銃撃戦、生活苦不満か

シリアで異例の反政府デモ 当局と銃撃戦、生活苦不満か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB043CI0U2A201C2000000/

『【ドーハ=共同】シリア南部スワイダで4日、アサド政権打倒を訴えるデモ隊が県知事公舎に乱入し、当局側と銃撃戦となった。ロイター通信などが報じた。2011年に反政府デモが内戦に発展したシリアで、強権的なアサド政権は反体制運動をほぼ封じ込めており、政権支配地域での抗議行動や衝突は異例。緊張が高まる恐れがある。

内戦下でシリア経済は疲弊しており、デモ隊は生活苦に不満を高めたとみられる。

シリア人権監視団(英国)によると、デモ隊は庁舎建物に掲げられていたアサド大統領の写真を破り、警備当局の車両に火を放った。当局側は銃を使って鎮圧を試みた。

シリアでは11年、スワイダ県に隣接するダルアー県などで反政府デモが始まり、政権側が武力弾圧して内戦に陥った。政権はロシアやイランの支援を受けて勝勢を固め、現在は国土の大半を支配している。

スワイダはイスラム教少数派ドルーズ派の住民が多い。20年にも一時、通貨の急落や物価高騰を受けた抗議が起きたが、当局がデモ隊を拘束し、抑え込んだ。』

ベラルーシ大統領、ロシア国防相に「条約義務果たす」

ベラルーシ大統領、ロシア国防相に「条約義務果たす」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR034BF0T01C22A2000000/

『ロシアのショイグ国防相は3日、ベラルーシの首都ミンスクを訪問し、同国のルカシェンコ大統領やフレニン国防相と会談した。ルカシェンコ氏は会談で「ベラルーシは公開された実際の条約に基づいて、すべきことをする」と強調した。発言の詳細は不明だが、両国は連合国家を形成し軍事同盟も結んでいる。

ベラルーシの国営通信社ベルタによると、ルカシェンコ氏はショイグ国防相との会談で、「われわれの領土の一体性を守るための今後の行動について、統一の立場を練ろう」と表明した。ロシアのウクライナ軍事侵攻については、欧米が望む限り、特別作戦が続くとの見方を示した。

ロシアとベラルーシは3日、地域の安全保障に関する軍事部門の国家間協定を修正することで基本合意した。両国は10月に合同部隊を編成し、9千人近いロシア兵がベラルーシ領内に展開した。ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナや欧米諸国は、ベラルーシが侵攻作戦に加わる可能性があるとの警戒を強めている。

2日にはロシアのプーチン大統領とルカシェンコ氏が電話で協議した。ベラルーシ大統領府によると、両首脳は12月中にモスクワで会談することで合意した。電話協議では、経済問題のほか、ウクライナへの軍事侵攻を巡る状況や合同部隊についても協議した。』

原爆放射線について

原爆放射線について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku09/15e.html

 ※ ヒロシマ、ナガサキの場合は、まだ「プロトタイプ」、「試作品」みたいなものだった…。

 ※ 今現在では、相当に「改良され」「完成している」から、その「威力も」比較にならないだろう…。

 ※ それで、「戦術核」と言えども、「威力は、100倍」なんて話しが出てくるんだろう…。

 ※ そういうものを、「自軍」が近辺に存在する、「実際の戦場で」、使用することができるものなのか…。

 ※ いかに、「兵士は、畑で採れる。」と言われていたとしてもだ…。

『第2次世界大戦で使用された他の兵器にはない、原子爆弾特有の特徴として放射線があります。原子爆弾の放出したエネルギーの50%は爆風に、 35%は熱線に、15%は放射線となりました。また、放射線は爆風で飛ばされるものではないため、爆風や熱線が届いたからといって、 放射線が届いたわけではありません。

第2次世界大戦は全国民が被害を被った戦争であり、米軍の空襲による被害は全国に及びましたが、広島、長崎の原爆被災者だけに「被爆者援護法」による、 特別に手厚い援護施策が実施されているのは、原爆特有の「放射線」があったからです。援護施策のうち、健康手帳の交付や健康管理手当の支給等は、 原爆の被害を受けた人をもれなく幅広く救済するため、放射線被曝の要件が相当程度緩和されていますが(被爆者の約9割が健康管理手当(年間約40万円)を受給)、 原爆症認定については、被爆者援護法上で放射線起因性を厳密に要求されているため、認定の要件として、その病気が放射線に起因することが必要となります。 つまり、いわゆる原爆症と言われているものは「原爆放射線症」のことになります。この放射線起因性という要件を外しまうと、 原爆被爆者が一般戦災者より特別に援護されている理由がなくなってしまうのです。

原爆の威力

人は日常生活でも放射線を受けています。自然放射線は宇宙や大地から出ており、世界平均で年間2.4ミリシーベルトを被曝しています。 また、健康診断や医療行為で人工放射線を利用することもあり、レントゲン写真を撮ると0.6ミリシーベルト、CTスキャンで6.9ミリシーベルトを被曝することになります。 一般公衆の線量限度は1ミリシーベルトとされています。がんの治療では数十グレイ(1ミリシーベルトの数万倍)という放射線を浴びることになります。 自然放射線も原爆放射線も同じ放射線であり、違いはありません。原爆の放射線起因を考える場合、これらとの整合性を考える必要があります。

日常生活で受ける放射線 自然に浴びる放射線

原爆の初期放射線(爆弾が爆発した時に出た放射線)は、爆心地から遠くなるほど減少し、長崎では爆心地から3.5km付近で1.0ミリシーベルトにまで減少しました。 これより遠距離においては、人が日常生活で受ける放射線よりも少なかったことになります。 胸のレントゲン写真を撮ったときに受ける被曝線量は、爆心地から4.0km付近の被曝線量と同じくらいということになります。

放射線の線量と影響について(長崎の場合) 放射線の線量と影響について(広島の場合)

また、初期放射線の他に、「残留放射線」もありましたが、原爆投下時から放物線状に急速に減少し、短期間でほとんどなくなりました。 長崎では爆心地から100m地点での初期放射線量は約300グレイでしたが、原爆投下24時間後には0.01グレイ(3万分の1)まで減少したとされています。 この残留放射線があったことを考慮して、原爆投下時には市内にいなかった入市者にも、幅広く被爆者健康手帳が交付されています。

残留放射線とは

これらの放射線量は、戦後60年間にわたる専門家達の研究によって得られた唯一の成果である「DS86」及び「DS02」に基づいています。 残留放射線についても科学者が被爆地の土や建築資材などを採取して調査してきたデータに基づいているのです。 科学的検証に基づいた最も信頼できるデータによっているのであり、原爆の威力を過小評価しているということではありません。 原爆による死者は広島では約14万人、長崎では約7万人とも言われており、原爆の殺傷力、破壊力が甚大であることは間違いない事実です。 また、最新の核兵器の威力は、64年前に世界初で開発された広島・長崎型の何万倍にもなり、広島・長崎に投下された原爆の何百万倍もの放射線を放出する恐るべき兵器であり、 このような核兵器を世界中から廃絶すべきであることには変わりがないのです。
放射線量の評価 核兵器のない世界を

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プーチン氏の戦術核兵器がもたらす破壊、日本の原爆に匹敵する可能性

プーチン氏の戦術核兵器がもたらす破壊、日本の原爆に匹敵する可能性
https://www.cnn.co.jp/world/35193816.html

『(CNN) ウクライナでロシア軍が撤退する中、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は改めて核兵器使用を示唆して脅しをかけた。ここでいう核兵器とは、しばしば戦術核兵器と呼ばれるものになる公算が高い。

プーチン氏は先週の演説で「我が国の領土保全が脅かされた場合、ロシアおよび国民を守るために、当然我々は利用可能なすべての武器システムを使用する。これははったりではない」と警告した。

米国科学者連盟によれば、ロシアの武器システムには配備核弾頭と貯蔵核弾頭が合わせて4477基ある。そのうち約1900基は「非戦略核弾頭」、いわゆる戦術核兵器だ。

だが戦術核兵器とは何なのか? 通常の核兵器とはどう違うのか?

以下、知っておくべき点を挙げる。
戦術か、戦略か

戦術核弾頭とは、限定された戦場での使用を目的とした兵器を指す。たとえば戦車の隊列や、海上で使用する場合は空母打撃群の壊滅が目標となる。こうした兵器は破壊力がTNT換算で10~100キロトンで、「低出力」とも呼ばれる。

これに対し、ロシアが保有する中でもとくに強力な「戦略」核兵器の破壊力はTNT換算で500~800キロトン。複数の都市全体、さらにそれ以上の範囲を壊滅させることが目的となる。

戦術核兵器を「低出力」と呼ぶのは、いささか誤解を招く。破壊力が10~100キロトンでも、大規模な破壊を引き起こすには十分だからだ――1945年、米国が広島と長崎に投下した原爆で世界が目にした光景がまさにその例だ。

この時の破壊力はTNT換算でそれぞれ15キロトンと21キロトン。おおむねロシアの戦術核兵器の範囲内だ。

米国政府の公文書館によると、広島と長崎では最初の爆発でそれぞれ約7万人と3万5000人の命が瞬時に奪われた。その後さらに数万人が放射能の影響で亡くなった。

ニュージャージー州のスティーブンス工科大学で科学技術研究の責任者を務めるアレックス・ウェラースタイン氏いわく、核兵器を分ける本当の違いは破壊力の大きさではなく、何を目標に据えるかにあるという。

「日本の原爆は、士気を打ち砕き、日本の最高司令部を恐怖で降伏に追い込むことに主眼をおいた『戦略的』攻撃だった。15キロトンが『戦略的』出力になりえたのは、その目標をどこに置くかによってだ」とウェラースタイン氏は今年初め、安全保障関連のブログ「Outrider」に投稿した。

他にはジェームズ・マティス元米国防長官のように、そうした違いなどは全く存在しないと言う人もいる。

「私の考えでは『戦術核兵器』などというものは存在しない。いかなるタイミングで使用されるいかなる核兵器も、戦略的に流れを一変させるものとなる」と18年に議会公聴会で語っている。
ロシアが1発でも展開したらどうなるのか?

ロシアはソビエト連邦の時代から、戦術核兵器を大量に製造し、備蓄してきた。

米国の科学者団体「憂慮する科学者同盟」によると、当初の考え方は、戦場での核兵器使用は指導者に対して、自国が持つ最大級の核兵器に訴えずに敗北を回避できる、決定的な攻撃をしかける選択肢を与えるというものだった。最大級の核兵器については、反撃を受けて「文明を壊滅させる核戦争」につながると考えられていた。

同団体はウェブサイトで、そうした考え方は「欠陥があり危険」だと述べた。

「戦術核兵器は……さらなる不透明さをもたらす。限定的な攻撃をしかけても逃げ切れると考える国が出てくる可能性がある」と同団体は述べた。

専門家の中には、こうした理論を支持する者もいる。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のシダース・コーシャル氏、サム・クラニーエバンス氏がこの夏発表した情勢解説には、欧州の司令部や空軍基地で戦術核兵器を使用しても、周辺地域の民間人の死者数は限定的になるだろうとある。

このRUSIの報告書によれば、北大西洋条約機構(NATO)同盟国であるポーランドとリトアニアの陸の国境で、ロシアの飛び地カリーニングラードと隣国ベラルーシを隔てるスバウキ回廊で仮に戦術核兵器が使用された場合、民間人の死者は数百人規模にとどまるという。

だが現実はこれをはるかに超えるだろう。

「米国の机上作戦演習によれば、戦術核兵器を伴う紛争はあっという間に歯止めが利かなくなるだろうと予測される」と憂慮する科学者同盟はブログに投稿した。

「プリンストン大学が戦術核兵器を発端とする米ロ紛争をシミュレーションしたところ、事態は急速にエスカレートし、9000万人以上の死傷者が出ると予測された」

プーチン大統領の先週の脅しを受け、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は核兵器の使用について、2022年の欧州は1945年の日本よりもはるかに危険な場所だと述べている。当時の日本は今の欧州より人口も少なく、他の地域からも比較的隔絶されていた。

ICANは今日の欧州について、「たった1回の核爆発で、民間人の死者が数十万人、さらにそれ以上の負傷者が出る可能性がある。放射性降下物で、複数の国にまたがる広範囲な地域が汚染されうる」とウェブサイトで述べた。

さらに「救急隊も事実上対処することができず、パニックが広がって大規模な集団移動が発生し、深刻な経済的打撃に見舞われるだろう。もちろん爆発が複数回に及べば、はるかに悪い事態になる」と続けた。』

ウクライナ軍、迫るレッドライン ロシア核使用の懸念も

ウクライナ軍、迫るレッドライン ロシア核使用の懸念も
編集委員 高坂哲郎
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM291TH0Z21C22A1000000/

 ※ 『ロシア軍がこれらを使用する地点として考えられるのは、①ウクライナ軍が今後つくるドニプロ川東岸の橋頭堡や西岸の補給拠点②同軍がヘルソン州南部のクリミア半島付け根部分まで前進した場合の兵力集積地③オデーサなどの黒海沿岸都市の沖合洋上(威嚇目的の核爆発)――などだろう。』…。

 ※ オイオイ、ホントか?

 ※ そんなことしたら、自軍もモロに巻き込まれてしまうんじゃないのか?

 ※ 「戦術核」と言っているが、爆発の規模は、「ヒロシマ型」の5倍とも言われているぞ…。

『ウクライナでは、侵攻中のロシア軍が戦力を南部から東部に再配置し始めたことで、今後の戦闘の焦点は東部に移るとの見方が浮上している。ただ、ウクライナ軍は東部だけでなく、南部でも反転攻勢を続けており、ロシア軍が南部で大きな後退を強いられれば、化学兵器や小型核兵器といった大量破壊兵器の使用に踏み切る事態がかつてなく現実味を帯びそうだ。

ロシア軍は11月、南部へルソン州のドニプロ川西岸から部隊を撤退させ、東岸地域で防衛線を構築している。同時に、後退させた部隊の一部を東部戦線に振り向けたことで、東部地域で攻防が激化するとの見方が多い。

ただ、主戦場が東部に限定される保証はない。ウクライナ軍は9月以降、南部にロシア軍主力を引き付けたうえで、東部で一気に占領地を奪回してみせた。一方、現在はロシア軍が東部を重視していることで、南部でのロシア側の守りは手薄になっている。
ロシア軍によって破壊されたドニプロ川にかかる橋(ヘルソン)=AP

ウクライナ軍にとって9月と状況が異なるのは、南部での前進を阻むドニプロ川という地理的障害があることだ。ただ、これまでの戦闘でもウクライナ軍は渡河作戦を実施しており、ロシア軍がウクライナ軍のドニプロ渡河作戦を警戒しているとの情報もある。仮にウクライナ軍が東岸に橋頭堡(きょうとうほ)を築ければ、そこを起点に障害が比較的少ないヘルソン州南西部を経てクリミア半島の付け根部分まで短期間に進出する展開がみえてくる。

一方、そこはロシア軍にとってはレッドライン(越えてはならない一線)で、「過激な反応」を誘いやすい。これには二つの事情がある。まず、ロシア軍が2014年の電撃侵攻の成果であるクリミア半島を失う可能性が出てくる。これが現実になると、ロシア国内の厭戦(えんせん)気分や、強硬派によるプーチン政権への突き上げが強まるのは避けられない。もう一つは、ロシアの中長期的計画が狂うことだ。「ロシア軍はヘルソン州からさらに西に支配地域を広げ、モルドバを制圧することで、ウクライナを海への出口を持たない内陸国にしてしまうことを企図している」(防衛省情報部局関係者)。できれば、目下の戦闘を膠着状態に持ち込んだ上で、今後数年間かけて軍を再建し、14年、22年に続く3度目となる次回侵攻でウクライナの内陸国化を果たしたいと考えているわけだ。その意味でも、ロシア軍はドニプロ東岸(へルソン州南部)を失うわけにはいかない。

ただ、ロシア軍は既に10万人前後の死傷者を出しているもようで、新たに動員した新兵らの能力や士気も低いままだ。南部でウクライナ軍の足を止められる手段があるとすれば、まずは通常兵器だが、破壊力が大きな「気化爆弾」や、放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」、それでも効果がなければ国際社会の反発を覚悟の上で、化学兵器や、爆発力が限定的な小型核兵器を実戦使用する形で戦闘をエスカレートさせる可能性が大きくなる。

ロシア軍がこれらを使用する地点として考えられるのは、①ウクライナ軍が今後つくるドニプロ川東岸の橋頭堡や西岸の補給拠点②同軍がヘルソン州南部のクリミア半島付け根部分まで前進した場合の兵力集積地③オデーサなどの黒海沿岸都市の沖合洋上(威嚇目的の核爆発)――などだろう。

ロシアのプーチン大統領は核兵器の使用をほのめかす(モスクワ郊外)=ロイター

ロシア軍の大量破壊兵器使用の可能性に関しては、米軍を基幹とする北大西洋条約機構(NATO)軍の直接介入を招きかねないことから、多くの西側の安全保障専門家が「ロシアが合理的に考えるならば、使用は控えるはず」との見方を示している。

ただ、プーチン政権に本当に合理的な思考力があるのであれば、そもそも2月のウクライナ侵攻はなかっただろうし、開戦後の不本意な戦況をみて停戦に動き出していたはずだ。「大量破壊兵器の使用には合理性がない」との西側安保専門家の思考には「使ってほしくない」という願望バイアスが働いているようにみえる。「史上3回目の核の実戦使用」という考えたくない展開を、頭の片隅に置くことが必要になってきたのかもしれない。

[日経ヴェリタス2022年12月4日号掲載]

日経ヴェリタス https://www.nikkei.com/theme/?dw=20062208 』

ロシア、当初計画は「10日で制圧」 英王立研究所報告

ロシア、当初計画は「10日で制圧」 英王立研究所報告
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB041OI0U2A201C2000000/

『英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、ロシアによるウクライナ侵攻について「(2月下旬の開始から)10日間で作戦を終えて占領し、8月までに全土を併合する計画だった」とする報告書をまとめた。方面によってはロシア軍の戦力が最大12倍だったにもかかわらず、首都キーウ(キエフ)制圧に失敗した要因を詳述している。

RUSIがウクライナ軍から聞き取りを行った上で報告書を作成し、11月末に公表した。侵攻初期にロシア軍の進撃を許したウクライナ側の問題点も指摘しているのが特徴だ。

それによると、ロシア軍参謀本部は奇襲による「電撃作戦」の効果を高めるべく、秘密保持を徹底。演習名目で国境付近に集結していた部隊への命令は、侵攻開始のわずか24時間前だった。これがあだとなり「弾薬、燃料、食料、そして作戦への理解」が不足する結果になったという。

一方、報告書はウクライナ軍の「判断ミス」も列挙している。2014年からロシアと事実上の紛争状態にあったことで軍事力は強化されていたものの、情報機関は侵攻開始の数日前まで、東部ドンバス地方を主戦場と予想。戦力の半分をそこに振り向けたことで、キーウ周辺の防衛が手薄になっていた。

また、北の隣国ベラルーシにロシア軍が演習名目で集結していたことを巡り、北部にあるキーウ侵攻につながる恐れがあると西側諸国が事前に警告していたにもかかわらず、ウクライナはこれを軽視。戦力を引き付けるための「おとり」と誤認していた。侵攻を察知し部隊の配置転換を命じたのは、攻撃が始まる7時間前だったという。(時事)』

軍事企業に供給制約 兵器増産鈍化でウクライナ影響も

軍事企業に供給制約 兵器増産鈍化でウクライナ影響も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR01ES80R01C22A2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は5日、世界の軍事企業に関する報告書を発表した。2021年の販売額は7年連続で増えたが、新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーン(供給網)寸断を受け、低い伸びにとどまった。SIPRIは22年はロシアのウクライナ侵攻が混乱に拍車をかけ、兵器の増産ペースに影響が出るとの見通しを示した。

21年の上位100社の兵器の販売額は5920億ドル(約80兆円)と20年比で1.9%(実質)増えた。新型コロナ感染拡大前の4年間の年平均増加率(3.7%)を下回った。主因は新型コロナによる供給網の制約だ。

世界的に納入の遅れや重要部品の不足が見られ、契約の見込みが立っても売り上げの計上を先送りした事例が相次いだ。軍事産業は多くの取引先を抱えており、例えば欧州2位のイタリアのレオナルドは1万1千社にかかわる供給網に依存している。

米ゼネラル・ダイナミクスや欧州エアバスなど一部の企業は労働力不足に直面した。ユーロ圏の10月の失業率は6.5%と過去最低を記録した。

22年はロシアのウクライナ侵攻で、SIPRIは「供給網の状況は一段と悪化する可能性が高い」とみる。世界の分断が深まり、従来通りの材料調達や生産、輸送が難しくなっているためだ。

ロシアは武器生産に欠かせないアルミニウムや銅、鉄、チタンなどの原材料の主要供給元になっている。西側諸国はロシアに経済制裁を科し、鉄鋼製品の輸入などが制限されている。世界的な半導体不足もなお尾を引いている。

一方で西側諸国は自らの軍備を増強したり、ウクライナに供与したりしているため、兵器需要は急増している。米国は10月までにウクライナに携行型の対戦車ミサイル「ジャベリン」を8500基提供したが、これは通常ならば4年分の生産量に相当するという。

SIPRIのベロシュドロー氏は取材に「軍事企業は政府の増産要求と供給網の混乱の板挟みにある」と語り、生産が需要に追いつくのに数年かかる可能性があるという。

各国・企業は調達先の多様化を急いでいる。北大西洋条約機構(NATO)は10月の国防相理事会で、兵器や装備の備蓄を増やすことを決め、産業界との協議に入った。供給網の混乱は、米欧各国の兵器の補充計画を狂わせ、ウクライナとロシアの戦いにも影響が出る懸念がある。

一方、ロシアも増産に動いているが、制裁の影響で半導体の入手が困難になっているほか、一部企業は支払いを受けられない状態にあるという。

上位100社を国別で見ると、ロッキード・マーチンを筆頭に5位までを米国企業が独占した。米企業は100社のうち40を数え、販売額も全体のほぼ半分を占めた。6位は英国のBAEシステムズが続き、7~11位には中国企業がつけた。

中国を含むアジア・オセアニア地域の企業は21社が上位100位に入り、販売額は1360億ドルと5.8%増えた。うち、中国企業は8社で地域の総額の8割を占め、アジアの市場拡大をけん引した。日本企業は三菱重工業など4社が入った。』

ロシア副首相「原油輸出しない」 上限価格設定国に

ロシア副首相「原油輸出しない」 上限価格設定国に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB043NJ0U2A201C2000000/

『ロシアのノバク副首相は4日、主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)、オーストラリアがロシア産原油の取引価格の上限を1バレル60ドルとする制裁導入を決めたことについて、「上限価格を設定する国には原油を輸出しない」と述べた。G7などは5日から制裁を発動する。

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ノバク氏は、価格上限の設定は「非市場的で非効率であり、世界貿易機関(WTO)のルールなど自由貿易の規範に反する市場への介入」と強調し、減産も辞さない構えを見せた。国営テレビのインタビューで明らかにした。

同氏は、上限価格設定を禁止する手段をロシア政府内で検討しているとも述べ、日米欧の動きをけん制した。「仮に減産する場合でも、市場の条件で取引する国々には原油の輸出を続ける」とし、アジア諸国などとの取引を増やす方針を示した。

EUは2日、ロシア産原油の取引上限を1バレル60ドルとすることで合意した。G7と豪州も同日、EUの決定に歩調を合わせて、同様の上限を設けることで合意した。米財務省によると、この制裁の枠組みに参加する国はすでにロシア産原油を輸入しないなどと決めている。
上限を超える取引に対しては、欧米の金融機関による保険の提供を禁じる。原油などを輸送するタンカーへの海上保険や再保険は主に欧米金融機関が引き受けているため、制裁に加わらない第三国も上限を超えた取引は難しくなる。

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・OPECプラス、原油減産維持を決定 日量200万バレル
・ロシア産原油価格上限、サハリン2除外 経産相表明
・日本、ロシア産原油「輸入ゼロ」の代償
・石油連盟、ロシア石油価格上限設定「機能するか不透明」
・原油タンカー運賃2.5倍 ロシア産忌避、長期航路が増加

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「エネルギー安全保障」という言葉が重く感じられます。歴史の教科書で、世界各国が過去にエネルギー・資源のために戦いを繰り広げてきたことを学びますが、リアルタイムでそれが起きているわけですね。友好国以外にエネルギー供給を握られてしまうと、隷属するか、戦うしか選択肢がなくなります。日本の場合、残念ながら、石油・天然ガスは友好国からの供給では間に合わないのが実情です。綱渡りの状況が続きます。
2022年12月5日 12:06 』

ロシア人旅行者、タイで急増 国際社会から批判も

ロシア人旅行者、タイで急増 国際社会から批判も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS024R30S2A201C2000000/

『【バンコク=井上航介】タイでロシア人旅行者が急増している。ロシアのウクライナ侵攻後に運休していたロシアとタイのリゾート地を結ぶ定期便が10月末に再開したほか、ロシアからのチャーター便も増えている。米欧など国際社会が経済制裁を科す中、タイ政府のロシア人観光客取り込みには冷ややかな視線も注がれている。

1日、タイ東部にあるリゾート地パタヤの砂浜では多くの外国人客が海水浴や飲食を楽しんでいた。飛び交う言葉の多くはロシア語だった。マッサージ店を営むチューンさん(56)は「ビーチにいる観光客の9割がロシア人だ」と話す。

温暖なタイはロシア人にとって人気の渡航先で、新型コロナウイルス禍前の2019年には、148万人がタイを訪れた。今年1~10月は累計で14万人超と、コロナ前の10分の1程度だが、欧州連合(EU)が査証(ビザ)発給を厳格化して、ロシア人観光客のEU域内への受け入れを事実上制限する中、タイでは足元でロシア人観光客が急増する。

ロシアが2月にウクライナへの攻撃を開始して以降、タイを訪問するロシア人の数は、3~8月には毎月1万人未満で推移していたが、9月に入ると1万5900人に拡大。10月は4万4314人と、侵攻開始前の1月(2万3760人)の倍近くに達した。

10月単月では、日本(3万7186人)やオーストラリア(4万3827人)の観光客数を上回る。
米欧の経済制裁でロシア発着の航空便の多くは運休が続くが、ロシアとタイを結ぶ航空便は増えている。ロシア航空最大手アエロフロートは10月末、モスクワ・タイ南部プーケットの定期便を再開した。11月下旬には西シベリアからのチャーター機がパタヤ近郊のウタパオ空港に到着した。

パタヤのビーチではロシア語を併記した看板も立つ(1日)

観光はタイの主要産業だが、中国で厳格な新型コロナ対策を取る「ゼロコロナ政策」が続き、19年に約3割を占めた中国人観光客の回復は見込めない。タイ政府はロシアからの誘客を強めることで、中国人客の減少分を補おうとしている。こうした姿勢には一部の国から批判も出るが、タイ政府が対ロシア制裁を導入する気配はない。

タイでは3月、ロシア人の観光客数千人が帰国できず立ち往生する問題が起きた。ロシア発着の国際線の多くが運航を停止したためだ。ロシアで発行されたクレジットカードの決済停止措置により滞在費の支払いも困難になった。

【関連記事】ロシア人観光客、タイで立ち往生 国際線停止で数千人

最近タイを訪れるロシア人観光客はこうした経験を踏まえ、対策をとっているもようだ。タイに拠点を置くロシア人専門の旅行会社の担当者は「顧客は2週間近く過ごすのに十分な現金を持ち込んでいる」と話す。

モスクワからパタヤを訪れたアーシャ・カリアチェバさん(26)は、現金が底をついても他のロシア人客に譲ってもらい、代わりにスマホで同額をロシアの銀行口座に送金する「裏ワザ」を明かした。「制裁の被害を避けるため、私たちも必死に戦っているのよ」と得意げに語った。

【関連記事】

・東南アジア、7~9月回復持続 観光回復も物価高に懸念
・タイ中銀、3会合連続利上げ、1.25%に 物価抑制を優先
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ヘルソン東岸にウクライナ部隊上陸か 「橋頭堡」動画公開

ヘルソン東岸にウクライナ部隊上陸か 「橋頭堡」動画公開
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB051H10V01C22A2000000/

『【キーウ=共同】ウクライナ軍の特殊部隊は3日、ロシアが支配する南部ヘルソン州のドニエプル川東岸に橋頭堡を確保したとする動画を公開した。動画では国旗を立て「これが東岸解放の出発点となる」と表明した。部隊の一部が東岸に上陸した可能性がある。米シンクタンク、戦争研究所は3日、事実とすれば「東岸での作戦開始の道を切り開くだろう」と分析した。

ウクライナ軍は11月に西岸の州都ヘルソンを奪還し、東岸に撤退したロシア軍と対峙する形となっていた。ヘルソン州のヤヌシェビッチ知事は3日、戦闘が激化する可能性があるとして東岸の住民に川を渡って西岸に避難するよう呼びかけた。ウクライナ国籍の証明が必要だとし「ウクライナ側に戻りたい全ての人を待っている」と訴えた。

一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は3日、ロシアが9月末に併合を宣言したウクライナ東部ドンバス地域(ドネツク、ルガンスク両州)をプーチン大統領が訪問する可能性について記者団に「いずれは実現する」と述べた。訪問で併合の既成事実化を強める狙いとみられる。

タス通信などによるとペスコフ氏は、ドンバスについて「ロシア連邦の一部だ」と述べ、プーチン氏の訪問は当然だとの見方を示した。具体的な時期の見通しは明らかにしなかった。

ロシアが併合を宣言したドンバスや南部ではウクライナ軍との激戦が続いており、9~10月の部分的動員に続き、追加動員の観測が一部で出ている。ペスコフ氏は「そのような情報はない。動員は完了したとの大統領の言葉を知っているはずだ」と述べ、追加動員への国内の不安払拭を図った。』

[FT]ロシアが「影のタンカー船団」 石油制裁の緩和狙う

[FT]ロシアが「影のタンカー船団」 石油制裁の緩和狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0437H0U2A201C2000000/

『英船舶仲介ブレーマーによると、原油輸送を海外のタンカーに依存するロシアは今年、直接および間接的に100隻以上のタンカーを加えた。調査会社リスタッド・エナジーは、ロシアが購入に加え、西側から石油の禁輸措置を科されているイランとベネズエラの石油輸出に使われていた船舶を調達するなどして、今年103隻のタンカーを確保した。

海運業界で「影の船団」と呼ばれる大量のタンカーの調達をロシアが急いだのは、同国産石油を対象とした追加的な制裁措置を打開するのが狙いだ。欧州連合(EU)によるロシア原油の海上輸送による輸入制限措置が5日に発効するのを前に、主要7カ国(G7)とEU、オーストラリアは2日、ロシア産原油に1バレル60ドルの上限価格を設定することで合意した。

ロシアの影の船団はこうした制裁措置の影響を減殺するが、完全に取り除くことはできないとトレーダーは指摘する。

タンカー輸送網から締め出し

EUとG7が科した新たな対ロ制裁措置の柱は上限を超える価格での取引に対して、英ロイズ保険組合などによる保険の提供を禁じることだ。これにより、上限価格を超えるロシア産原油は、目的地にかかわらず、世界の原油タンカー輸送網の大半から締め出されることになる。

EUは、EU船籍を持たないタンカーがこの上限価格の制裁に違反した場合、当初提案された永久的な措置ではなく、90日間の西側の海事サービス禁止を科すと発表した。

これは、タンカー運航会社が他国船籍の舶を活用し、ロシアの石油輸送に大きな役割を果たしているギリシャと、この措置が世界経済を過度に抑制しないようにしようとする米国の両方が推していた。

理論的には、上限を超えたロシア産原油の輸送料金が十分に高ければ、一時的な輸送禁止をビジネス上のコストとして受け入れる事業者も出てくる可能性がある。

EUのフォンデアライエン欧州委員長(11月)=ロイター

ロシア政府は、上限価格を適用する国とは取引しないと言い続けてきた。つまり、西側が設定した条件では原油を売らない可能性があるということだ。

ロシアは、新たに構築したタンカー船団を使って、輸入を削減した欧州に代わって主要な原油の輸出先となったインド、中国、トルコなどに供給することをもくろんでいる。

船籍登録でロシアの購入発覚

ほとんど匿名で行われたロシアのタンカー購入が発覚したのは、船籍登録で船舶保有者の名前が明示されていないケースや、今までにない保有者の名前による登録が急増したからだ。ブレーマーの筆頭アナリスト、アヌープ・シン氏によると、購入されたタンカーは船齢が12年から15年の老朽船が多く、今後数年で退役されることが見込まれていた。

「こうした新たな購入者は、長年にわたり船舶仲介業務に携わってきた弊社にもなじみのない名前だ」とシン氏はいう。「こうしたタンカーの大半はロシア向けだと確信している」

ブレーマーが11月に国際エネルギー機関(IEA)に示した報告書にとると、ロシアと関係のある複数の業者が2022年に200万バレル以上の原油を積み込める超大型オイルタンカー(VLCC)を29隻も購入したとみられる。ロシアはさらに100万バレルを積載できるスエズマックス型のタンカーを31隻と、70万バレルを輸送できるアフラマックス型のタンカーを49隻確保した模様だ。

ロシア国有銀行のVTBバンクのアンドレイ・コスチン頭取は10月に、同国が「少なくとも1兆ルーブル(約2兆2000億円)」を使って「タンカー保有を拡大」する必要があると述べ、大量のタンカー調達方針を実質的に認めた。

アレクサンドル・ノバク副首相は3月、同国は自前の石油での「サプライチェーン(供給網)」を構築すると発言した。フィナンシャル・タイムズ(FT)は2日にロシア政府に対してタンカー購入についてのコメントを求めたが、回答を得られなかった。

「ロシアがすべての石油輸出のために必要とするタンカーの数は膨大だ」と米ハーバード大学のデイビス・センター(ロシア・ユーラシア研究所)でロシアの石油を専門に研究するクレイグ・ケネディ氏は指摘する。同氏はロシアによるタンカー購入を追跡してきた。「ここ数カ月、正体不明の購入者がタンカーを買っていたのだが、購入されたタンカーの多くは数週間後に突如としてロシアに出現し、原油の積み込みを始めた」

ケネディ氏は、ロシアがVLCCを使用するかどうかは疑問だという。VLCCは海上で積み荷を移す「瀬取り」には使えるかもしれないが、ロシアの港で積み込みを行うには大きすぎるからだ。匿名や見慣れない購入者に売却されたタンカーのすべてがロシアの原油輸送だけに使われるわけではないかもしれないと、同氏は付け加える。

ロシアのタンカー不足は依然として解消されず、23年の最初の数カ月間は、輸出水準を維持するのが難しいだろうと専門家は指摘し、その結果、価格が上昇することになると予測する。

アジア輸送で、必要タンカー数増加

EUによる制裁措置が2月にロシアで精製された石油にまで拡大されると、タンカー不足はより深刻になるとケネディ氏は語る。これまで欧州に輸出されていたロシアの石油が、アジアの新たな輸出先へと回されることで、輸送距離が伸び、必要となるタンカーの数も増えることになる。

ロシアは1日あたり70万バレルから150万バレル分の輸送能力が不足することになるだろうとブレーマーは予測する。リスタッドは、ロシアのタンカー不足数は60~70隻となり、海上輸出は1日あたり約20万バレル減少するとみている。

もしロシアが制裁に対する報復措置として、対象になっていないパイプラインによる欧州向けの供給を、海上輸送に振り向けるのに必要な数のタンカーを確保する前に停止するようなことをすれば、市場へのロシア石油の供給量は1日あたり60万バレル減少する可能性もあると、リスタッドは指摘する。

「ロシアが現在の輸出水準を維持するには240隻以上のタンカーが必要となる」とリスタッドのアナリスト、ビクトル・クリロフ氏はいう。

ケネディ氏は「どんな巧妙な手段を考えたとしても、結局のところ大量の石油を物理的に動かさなければならないという事実に変わりはない。上限価格での輸出なしでロシアの石油輸出を維持していくのは難しいだろう」

By David Sheppard and Chris Cook, Polina Ivanova

(2022年12月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

習主席、中国でまん延しているコロナは致死率低いと発言-EU当局者

習主席、中国でまん延しているコロナは致死率低いと発言-EU当局者
https://news.yahoo.co.jp/articles/f3a9d344bb4cf1c98cf2410475c98cd4e5929223

『(ブルームバーグ): 中国の習近平国家主席は同国で現在まん延している新型コロナウイルスについて、致死率が比較的低いオミクロン変異株だとの認識を示した。欧州連合(EU)のミシェル大統領と1日に北京で会談した際の発言だとして、EU当局者が明らかにした。

両首脳の会談について説明を受けたというこの当局者によると、習主席は、オミクロン変異株はより毒性の強いデルタ変異株のようなものではないと述べた。中国当局が新型コロナに関する制限措置を緩和する計画があると、習主席がミシェル大統領に明確に示すことはなかったとも語った。当局者は非公開情報だとして匿名を条件に話した。

情報が正式に確認された場合、この発言は習主席が新型コロナウイルスの弱毒化を初めて公に認めたものとなる。中国の指導部がこれまで3年にわたって続けてきた厳格な「ゼロコロナ」政策を一段と緩和する方向に向かう可能性も示唆する。

在米中国大使館の劉鵬宇報道官は、EU側のコメントに関する取材に対し、両首脳の会談に関する公式の発表資料以上の情報を持ち合わせていないと述べた。同資料には、習主席がオミクロン変異株について発言したとの記述はない。

原題:Xi Sees Covid in China as Now Less Lethal, EU Official Says(抜粋)

(c)2022 Bloomberg L.P.』

「ポスト・リー・ファミリー」時代のシンガポール:民主政治の拡大に向けた展望

「ポスト・リー・ファミリー」時代のシンガポール:民主政治の拡大に向けた展望
https://www.nippon.com/ja/in-depth/a08603/

 ※ 良記事だ…。

 ※ SNSに代表される「情報・通信革命」により、従来型の「アメとムチ」による「大衆操作」の手法が、もはや、全く功を奏さなくなった状況を、見事に抉り出している…。
『権威主義的な統治体制が残るアジアの経済立国シンガポール。だが時代の変化と、リー・シェンロン首相の引退が近づく中、「第四世代」の指導者らは漸進的な民主化、自由化を迫られている。 』

『リー・クアンユーの統治・発展モデルという呪縛

1965年にマレーシア連邦から分離・独立を迫られたシンガポールは、19世紀の英領時代から表裏一体のマレー半島という後背地を失った小都市国家となった。この厳しい状況下、「建国の父」リー・クアンユー元首相は、権威主義・エリート主義・功利主義・現実主義を特徴とする統治・発展モデルを構築していった。

政治制度は、表面上は三権分立の法治国家を模したが、実際は人民行動党(PAP)が国会で圧倒的優位を確保し、実質的な独裁政治を敷いた。そして強固な言論統制や社会的自由の制約を駆使し、反対勢力を露骨に封じ込めた。こうした統治体制の下、社会面では実力・優生・効率を過度に重視し、ヒューマニティの欠如した人口・教育・言語・人材・都市設計の諸政策が採用された。経済は、計画・統制・傾斜的な「国家資本主義」で、経済成長と雇用確保の必要から誘致した外資を除き、基幹分野は政府資金を背景とした公営企業群が掌握している。一方で国民への再分配は、2010年代以前は必要最低限に抑えられてきた。

この統治・発展モデルにより、シンガポールは弾力的な行政運営、長期的な経済成長と健全財政の確立、効率的な社会整備、国民への一定の社会保障など、近代国家が本来実現すべき項目を着々と達成した。そして政権は1990年にゴー・チョクトン、2004年にリー・クアンユーの長男リー・シェンロンに受け継がれたが、リー・クアンユーは隠然とした影響力を持ち、従来型モデルをベースに国家発展を追求する政策が踏襲された。

シンガポールのリー・クアンユー元首相=2007年5月撮影(時事)

シンガポール共和国の歴代首相
リー・クアンユー(1965~90)
ゴー・チョクトン(1990~2004) リー前首相は顧問格の上級相に
リー・シェンロン(2004~) ゴー前首相は上級相、父親のリー元首相は顧問相に(いずれも11年に辞任)

敬称略

21世紀初頭の社会変容と矛盾拡大

しかし、21世紀に入ると、従来型の統治・発展モデルと社会実勢との乖(かい)離が深刻化した。例えば、建国初期の優生学的政策の結果、人口・労働力が減少し、これを補うため導入した移民労働者は1980年の13万人から2010年には130万人に急増し、総人口の約25%を占めた。このため国民生活との競合から、雇用・住宅・物価・社会不和などの問題が連鎖発生し、国民の不満は高まった。一方、2010年前後に1人当りGDPは4万米ドルを越えたが、国民への再分配は低水準に止まり、人々は国家発展の恩恵を実感できずにいた。

一方、従来の統治を支えた情報統制には、インターネットとSNSの登場で変革が起こり、国民、特に若年層は官製メディアに縛られずに情報を得て、自らの考えを形成・発信していった。もはや価値観の多様化は不可逆で、この総体の「民意」という従来にない政治要素が出現した。リー・クアンユーは依然、これをアメとムチで操れると考えており、その認識が技術革新で無効となったことを理解できなかった。

もっとも仮に、政権側に急速な社会変化の現実を認識できる者がいたとしても、統治モデルの根本的修正は、リー・クアンユーの築き上げてきた世界観を否定することであった。このため、リー・クアンユーが隠然とした影響力を持つ中では、リー首相ですら軌道修正は不可能であった。

2011年国会選挙という転換点

皮肉にも変化をもたらした契機は、形式上墨守されてきた議会制民主主義であった。2011年実施の国会選挙では国民の不満が表面化して、PAPの得票率は史上最低の60.1%に落ち、一方で野党は一挙に6議席を得た。建国以来、与党有利の選挙制度や野党弾圧で、野党に最大2議席しか許さなかった「常識」からすれば、これは政権の実質的敗北であった。同年大統領選挙でも、1993年選挙以外は単独候補の無投票当選という慣例を破って4人が出馬し、与党のトニー・タン元副首相は当選したものの、2位との得票率差0.34%の辛勝となった。

一連の結果は政権側に衝撃を与え、従来モデルの墨守がもはや統治上のリスクになることを認識させた。ここに至り、シンガポール政治の重要な行動原理、「現実主義」と「功利主義」が発揮され、リー首相主導の根本的な軌道修正が始まる。国会選挙後にリー首相は演説し、社会と国民に合わせて政府も変化すべきで、政治システムは多様な意見に適応し、開かれる必要があると述べた。続いて、閣内に残っていたリー・クアンユー顧問相とゴー・チョクトン上級相も辞任し、その4年後の2015年3月、リー・クアンユーは「古いシンガポール」の終焉を象徴するように世を去った。

漸進的な自由化

2011年以降、政権は統治モデルの大幅な修正を開始した。例えば、一方的な国勢拡大の追求を見直し、外国人労働力・雇用・住宅・インフラ・物価などの諸問題で、国民に配慮した政策を打ち出した。また、国民への再分配を積極的に実施し、社会福祉や公的補助を急拡大させた。それらは新たな副作用も引き起こしたが、リー首相は「従来われわれを導いた道筋とは違っても、もはや後戻りはない」(13年8月)と強調した。

ただし、統制的な社会管理は継続し、全面的自由化に至っていない。例えば、世論形成に影響力を持ち始めたオンラインニュースサイトには、19年導入のPOFMA(Protection from Online Falsehoods and Manipulation Act=オンライン虚偽情報・情報操作防止法)などの規制や、運営者への公式・非公式な圧力で統制を強めた。また17年の大統領選挙では、11年のような番狂わせを避けるため出馬条件を事前に制限し、与党候補の無投票当選が図られた。この他、リー・クアンユー時代ほどではないが、野党や活動家への圧力、集会や表現の自由への制約も続いている。

もっとも、国民の意識や価値観が変化する中、政権側もその変化に配慮する必要性があり、まして権力濫用に近い政策は、もはや受け容れられないことを理解している。この一例に、同性愛への社会的受容と政権側の変化がある。同国では、リー・クアンユーが同性愛を強く忌避する思想であったため、19世紀植民地時代の男性間性行為への刑事罰(刑法377A)が存在し続け、2010年代も同性愛者集会「ピンク・ドット」への圧力が続いていた。しかし22年8月、リー首相は社会の価値観変化を理由に、同法撤廃を表明している。

「ポスト・リー・ファミリー」時代への世代交代

統治姿勢の変化と並行して、リー首相は自身と政権の後継をめぐる準備を加速し、次世代指導層「第四世代」の育成・登用を進めた。そして、彼が父のリー・クアンユーとは異なり、世襲的・家父長的継承を脱した後継体制を志向した点は、高く評価されるべきである。だが建国以来、「リー」という存在を好むと好まざるとにかかわらず公然の前提にしてきたエリートから庶民、あるいは体制側から反体制側に至る各層が、この転換に追い付けなかったのも事実である。

特に、「リー」というカリスマを前提としない政権継承の成否は、次期首相が「第四世代」のチーム全体を調和させうる人物であるかにかかっている。このため数年の時間をかけ、2018年11月に「第四世代」最年長のヘン・スイーキア財務相(現副首相)が後継者に内定した。しかし、この選定は過去と同様、少数の最上層エリート内で決められ、新たな政治要素である「民意」の視座が欠落していた。

このためリー父子の安定感に慣れた国民には、ヘン氏の可も不可もない印象と相まって、同氏の人気は高まらなかった。結果、後継体制への実質的信任投票となる20年7月国会選挙で、野党は過去最大の10議席を得た一方、PAPの得票率は過去3番目に低い61.2%にとどまった。しかも、苦戦予想の選挙区にあえて地盤替えで挑んだヘン副首相は、野党との得票率差6.78%の辛勝となった。このため21年4月、ヘン副首相は後継者辞退という異例の表明を行い、迷走の末、22年4月にローレンス・ウォン財務相が次期首相に内定した。

未来への希望

現在49歳のウォン氏は文官出身で、政策スタンスはあくまでも実務的であり、現実のバランスを読み、柔軟に適応するタイプである。これは筆者の見るところ、①リー・ファミリーの世襲を脱し、②国軍を政治要素にしないため軍エリート出身者ではなく、③慣例的に最低10年以上の長期政権を担える年齢で、④現実的で柔軟なバランス感を持ち、⑤同僚たちをまとめる力量を持つ、という要件を満たしている。同氏は22年5月に副首相に昇格し、次期首相としてのコンセンサスも内外で急速に固まりつつある。

この「第四世代」次期政権は、国民の意識変化や多様化への希求、野党の存在拡大が着実に進む中、従来以上に民意への配慮が必要となる。一方で国民の多くも、現体制の急速な変容は負の影響が大きいことを理解している。すなわち、双方には現実主義的なコンセンサスやバランスがあり、それが中短期的に変化しない以上、PAPが多数優位を占める体制の変化、すなわち政権交代は、現状のシンガポールではまず起こり得ない。ただ、かつてのような体制側の絶対支配に戻ることも不可能で、この10年で進行しているように、実情・バランス・速度に配慮しつつ、「開かれた社会」へ移行する流れは不可逆である。

こうした動きは、東南アジア周辺国で大衆扇動や縁故金権の根強い土壌から健全な民主制の発展に至らず、むしろ権威主義の強靭性や復権が顕在化する中、相対的にシンガポールが、成熟した民主主義やリベラルな社会へと漸進的だが移行しつつあり、その信頼性・進歩性が目立ち始めているという点で、非常に興味深い。無論、「開かれた社会」の完成には「第五世代」、あるいはその先までの長い時間と道のりが必要であろう。しかし、それが実現したとき、シンガポールは自らの成功物語を真に証明することになる。

バナー写真:米ホワイトハウスでハリス米副大統領と会談後、報道陣に対応するシンガポールのリー・シェンロン首相=2022年3月29日(AFP=時事)

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民主主義 シンガポール 権威主義

久末 亮一HISASUE Ry?ichi経歴・執筆一覧を見る

アジア経済研究所 開発研究センター 企業・産業研究グループ副主任研究員。専門はアジア経済史、シンガポールの政治・経済・社会。1974年東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術) 』

(過去の投稿)

シンガポール財務相、リー・シェンロン首相の後継者に
https://http476386114.com/2022/04/15/%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%82%ac%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%ab%e8%b2%a1%e5%8b%99%e7%9b%b8%e3%80%81%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%bb%e3%82%b7%e3%82%a7%e3%83%b3%e3%83%ad%e3%83%b3%e9%a6%96%e7%9b%b8%e3%81%ae%e5%be%8c/

〔シンガポールの経済〕
https://http476386114.com/2021/11/24/%e3%80%94%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%82%ac%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%81%ae%e7%b5%8c%e6%b8%88%e3%80%95/ 

AUKUS、米英豪の連携が世界中に波紋を呼ぶ理由…仏のみならずASEANもショック
https://http476386114.com/2021/09/27/aukus%e3%80%81%e7%b1%b3%e8%8b%b1%e8%b1%aa%e3%81%ae%e9%80%a3%e6%90%ba%e3%81%8c%e4%b8%96%e7%95%8c%e4%b8%ad%e3%81%ab%e6%b3%a2%e7%b4%8b%e3%82%92%e5%91%bc%e3%81%b6%e7%90%86%e7%94%b1%e4%bb%8f/

 ※ けっこう、いい事を記述しているんで、再掲しておく…。

『ASEANの戸惑い

 AUKUSの創設にショックを受けたのは、フランスだけではない。ASEAN(東南アジア諸国連合)にとっても、この話は寝耳に水だった。

 AUKUSが対象としている海域がハワイ以西の太平洋とインド洋であることは明らかであり、そこにはASEAN諸国がすっぽりと入っている。ASEANは米中の海洋対立に巻き込まれている当事者で、ASEAN諸国の多くが米中のはざまでバランス外交をとっていくつもりでいる。自分たちの頭越しにAUKUSが創設されたことは、従来のバランス外交を崩されるきっかけにもなりかねず、各国とも米英豪に傲慢さを感じたはずだ。

 AUKUS創設が発表された直後、インドネシア外務省は地域の軍拡競争や軍事力展開に対して懸念の声明を出し、核拡散防止と国連海洋法条約の順守を求めた。マレーシアのイスマイル・サブリ首相はオーストラリアのスコット・モリソン首相と電話協議して、「南シナ海において、他国によるアグレッシブな行動を挑発するのではないか」と述べて、AUKUSに対する懸念を示した。

 ここでいう「他国」とは、もちろん南シナ海進出を強めている中国のことだ。マレーシアは中国とは一定の距離を保ちながらも、友好的な関係を築くスタンスをとってきており、AUKUSが両国の微妙なバランスを崩すことを懸念している。

 フィリピン国防大臣はオーストラリア国防大臣に対して、フィリピンは中立的なスタンスをとると伝えている。シンガポールがややAUKUS寄りの発言をしているものの、ASEAN全体が米中対立においてアメリカのみに肩入れするつもりはないことは明らかである。

 ASEANにとって厄介なのは、各国とも中国からの挑発が続いており、国内では反中感情が高まっていることだ。特に中国との南沙諸島や西沙諸島における領有権問題を各国が抱えており、親中的なスタンスだけを打ち出すと、国内で影響力を弱める可能性がある。かといって、最大の貿易相手国である中国と面と向かって対立するわけにはいかず、貿易相手国・中国と侵略国・中国のはざまで、なんとか極端に触れないように苦心している状態にある。ASEANとってAUKUSは「ありがた迷惑」といった存在ではないだろうか。

 ASEANのクアッドに対する不満は、日本が中心であることもあってか、さほど表面化していないが、AUKUSがアメリカ主導であることは疑う余地がなく、ASEANの安全保障が自分たちとは関係ないところで決められてしまうのではないかという不安がある。それだけにAUKUSの唐突な発表は、「心配の種」を増やすものでしかなかったのである。』

 ※ 米(英)豪NZの「アングロサクソン連合」(英米法体系の国でもある)は、こと「国家戦略・世界戦略」となると、他国の思惑とかは、「知ったことでは、無い」んで、要注意だ…。

中国 ゼロコロナ抗議デモと天安門事件の共通点 江沢民の死と共に“社会契約”も失効か

中国 ゼロコロナ抗議デモと天安門事件の共通点 江沢民の死と共に“社会契約”も失効か
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/12030631/?all=1

『厳しいゼロコロナ政策が続く中国で国民の不安が爆発している。

【写真を見る】中国の影が忍び寄る 岩国基地の周辺のメガソーラー

 中国各地で11月下旬から多数の国民が路上に出て、「仕事がしたい」「自由が必要」などと叫ぶ姿が目立つようになった。散発的な騒乱はこれまでも起きていたが、今回は「燎原の火」のごとく、あっという間に中国全土に広まった。

 国際社会が驚いたのは、デモ参加者が共産党政権や習近平総書記(国家主席)に対し公然と退陣を要求したことだ。共産党政権下では初めての出来事だ。

 ゼロコロナ政策は「物理的な封じ込め」を基本とする。新型コロナの感染確認から3年近く経つにもかかわらず、この異常な政策に固執する共産党政権の姿勢に国民の「堪忍袋の緒」が完全に切れてしまった形だ。

 若年層が主導する形で全土に大規模な抗議活動が広がっていることから、「第2の天安門事件が起きる」との観測が生まれているが、今後、共産党政権を再び揺るがす大事件に発展するのだろうか。
天安門事件での連帯

 1989年6月4日、北京の天安門広場に集まり民主化や政府の腐敗防止などを訴えていた非武装の学生や市民たちを鎮圧するため、人民解放軍が発砲、多数の犠牲者が出た。

 いわゆる「天安門事件」だ。抗議者たちの訴えは多岐にわたったが、すべての要求の背後に経済問題が存在していた。

 当時の中国は深刻なインフレに悩まされていた。

 1978年から開始された改革開放政策のおかげで都市部の住民の購買力は上昇したが、モノの供給が追いつかず、特に食料価格が高騰した。

 1985年から二桁のインフレとなり、1986年から実質賃金も減少するようになった。その後ますますインフレが激しくなり、1989年2月のインフレ率は28%に達したが、この記録は現在も破られていない。

「このままでは生活が立ちゆかなくなる」との危機感を強めた都市部の住民が大学生と連帯して数ヶ月にわたって抗議活動を続けていたというのが実態だったのだ。

 デモを強権的に抑え込んだ共産党政権はその後、外国企業を積極的に誘致するなど改革開放をさらに推し進め、インフレ退治に成功した。天安門事件に懲りた共産党政権にとって「国民の胃袋を満足させる」ことが至上命令となった。

 経済も長期にわたって高成長を続けたことから、中国では「政府がより良い生活を保障する代わりに国民は政治的要求を行わない」との社会契約が存在すると言われてきた。

 この基礎を築いたのが11月30日に96歳で死去した江沢民元共産党総書記だった。

 天安門事件への強硬な対応が当時の最高指導者だった鄧小平に見込まれ、共産党トップに就任した江は1992年に「社会主義市場経済」路線を打ち出し、高度経済成長路線を定着させたと評価されている。

 だが、現在の中国経済は急激に失速しつつあり、「今回の抗議運動の背景にも深刻な経済問題がある」と筆者は考えている。』

『「来年まで生き残れない」の悲鳴

 天安門事件の際はインフレだったが、今回は雇用不安だ。

 ゼロコロナ政策に加え不動産バブルの崩壊のせいで中小企業を中心に倒産ラッシュが起きており、今年上期の倒産件数は46万件に膨れ上がった。

 下期に入っても中国企業の景況感は悪化するばかりだ。11月の総合購買担当者景気指数(PMI)は47.1と10月から1.9ポイント低下した。製造業と非製造業を合わせた総合PMIが50を下回るのは2ヶ月連続だ。

 景況感の悪化は都市部の雇用悪化に直結する。ゼロコロナ政策で最も苦しんでいるのは対面型のサービス業であり、その雇用の大部分は都市部で生み出されているからだ。

 中でも若年層の雇用不安は深刻だ。

 中国の今年の大学新卒者は1076万人と史上初めて1000万人を突破したが、就職率は2割に届かなかったと言われている。職にあぶれた大卒者が、当座の収入を得るため、個人タクシーの運転手やデリバリー配達員になるケースが当たり前になっている。

 16歳から24歳までの今年6月の失業率は過去最悪の19.3%に上昇し、その後も高止まりの状況が続いている。

 江沢民の時代は高成長に恵まれ、雇用の場は豊富にあったが、現在は様変わりした。膨大なインフラ投資を行ってきた反動で財政金融政策の効果は激減し、経済を長年支えてきた輸出セクターも陰りを見せている。

 中国は建国以来最悪の雇用危機に直面していると言っても過言ではないが、共産党政権は有効な手立てを見いだせていない。「失業の拡大を食い止めるためには一刻も早くゼロコロナ政策を撤回すべきだ」との切なる思いが今回の抗議活動の原動力になっている。

 ゼロコロナ政策に一部緩和の動きが出ているが、政策自体は来年3月に開催される全国人民代表大会(国会に相当)まで続く可能性が高いとされている。

「来年まで生き残れない」と悲鳴を上げる企業は多く、雇用状況はさらに悪化する可能性が高いと言わざるを得ない。

 このような状況にかんがみれば、一時的に鎮圧されたとしても雇用不安という根本の問題が解消されない限り、抗議活動が下火になることはないだろう。

 江沢民の死とともに彼が残した社会契約が失効するような事態になれば、中国は再び動乱の時代を迎えるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部 』

中央のコロナ規制緩和を末端現場は責任回避して実行せず――原因は恐怖政治

中央のコロナ規制緩和を末端現場は責任回避して実行せず――原因は恐怖政治
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20221201-00326479

『11月11日、中国政府はコロナ制限緩和20ヵ条政策を出しているが、末端現場は万一の感染拡大に対する責任を取りたくないとして実行してこなかった。今般の抗議デモは実行を迫る結果を招き有意義だったと言える。

◆コロナ規制緩和策は何度か出しているが、末端の現場が緩和させない

 中国のコロナ政策を決める最高決定機関は「国務院聯防聯控機構」で、これは国家衛生健康委員会を中心として全ての中央行政省庁を包含している。トップに立っているのはもちろん国務院総理・李克強だ。補佐するのは孫春蘭副総理である。国家衛生健康委員会にはその領域の(今回はウイルスや伝染病などの)専門家が入っていて、そこで協議された結果が通達として全国津々浦々に届けられる。

 武漢のコロナ発生以来、李克強と孫春蘭はこの「国務院聯防聯控機構」のために走り回ってきた。流行するウイルスや感染速度あるいは医療資源の情況などに合わせて、これまで何度も何度も会議を開いては微調整をしながら中国政府としての通達を出してきた。

 今年11月11日にも、≪新型肺炎の防疫措置の更なる最適化に関する通知≫(以下、「通知」)を発布し、党中央の指導の下、コロナ対策の最適化として、新しい状況に即した「20カ条の措置」を明確化している。

 ここで興味深いのは、「通知」の冒頭に【各地各部門は「不折不扣」(駆け引きなし、掛け値なし)で完全に通知の各項目を実施すること】と書いてあることだ。

すなわち「いい加減に扱うなよ、恐れずにちゃんと実行しろよ」という意味だが、実際は末端の現場は「不折不扣」ではなく、失敗して感染が拡大した時の責任を取らせられるのを恐れて(「折扣」をして)「緩和指示」を実行してこなかった。

 このたび新たに「通知」が出された背景には、オミクロン株は伝染力が強い割に症状はあまり重くはならないこと、ワクチン・医療資源などの(いくらかの)改善が進んだこと、封鎖されることに対する国民の不満の強さあるいは経済活動に与えるマイナスの影響など、複雑に絡む現状がある。

 ゼロコロナ政策を解除したら「3ヵ月で160万人の死者を出す」というシミュレーションが医学界において出されているので(Nature論文)、そのことに警戒しなければならないが、しかしゼロコロナ政策を厳しく実施すれば中国経済自身も頓挫するので、そのバランスを取ることに中国政府としては厳しいジレンマに追い込まれている。

 最も困っているのは、どんなに「規制を緩和してもいい」と言っても、末端の現場は緩和しようとはしないということだ。

 「通知」の20カ条のうちの第16条には、【「層層加碼」の取り締まりを強化し、むやみに封鎖することを禁止する】という文言がある。

 この「層層加碼」の「加碼(ジャーマー)」とは「割り増しする」とか「上乗せする」という意味だが、「層層加碼」は「一層ずつ下のレベルに行くたびに割り増しして封鎖を厳しくする」ということを指している。

 たとえば中央が「A」という程度の(緩い)封鎖指示を出したとすると、そのすぐ下の行政レベルは「A+α」の厳しさで封鎖を要求し、さらにその下の行政レベルになると「A+α+α」というように、これが次々と上乗せされて「A+α+α+α+α+‥‥」という具合に、際限なく厳しくなっていくという現象を指している。

 これは昨日や今日現れた現象ではなく、武漢でのコロナ感染が始まった時点から現れている現象だ。

 この「層層加碼」を「禁止する」と言っても末端の現場は従わない。

 しかし、庶民が接触しているのは末端の現場だ。

 だから一般庶民は「もう、やめてくれー!」と悲鳴を上げているのである。

◆20カ条の緩和策の内容

 「通知」全文はあまりに長いので、全てを書くのは憚れるが、一応略記すると以下のようになる。面倒だと思う方は読まずに飛ばしてくださっても大丈夫だ。

 1.濃厚接触者に対して、これまで行ってきた<「7日間の集中隔離」+「3日間の在宅隔離」>(=<7+3>)を、<5日間+3日間>(=<5+3>)に調整する。

 2.濃厚接触者を適時正確に判定し、濃厚接触者との(二次的)接触者まで追跡しない。

 3.コロナ感染ハイリスク地域から外に出た人を「7日間、集中隔離」から「7日間、自宅隔離」へ。

 4.高リスク、中リスク、低リスク地域の三段階分類を高リスク、低リスク地域の二段階分類にする。

 5.高リスク職業の人員を7日隔離・自宅隔離から5日間自宅健康観察へ。

 6.PCR検査は正確に重点的に、範囲の拡大をしない。

 7.入国航空路線のサーキット・ブレーカー制度を取り消す。チェックイン48時間以内2回PCR検査を1回へ。

 8.入国する重要商務関係者、スポーツ関係者はバブル方式で。

 9.入国者のPCR検査Ct値基準、一度感染した人は自宅隔離期間3日内に2回PCR検査。

 10.入国者の隔離期間も<7+3>から<5+3>へ調整。

 11.医療資源建設を強化し、ベッド数や重症ベッドを用意し、治療資源を増やす。さらに各分類の治療方案、各種症状厳重度の感染者の入院基準、医療機構に感染が発生した時の方案を準備する。

 12.ワクチン接種を早める。特に高齢者のワクチン接種を推進する。

 13.コロナ関連薬品の備蓄を早める。

 14.老人、妊婦などを重点的に守る。

 15.検査、報告、調査などの処置を早める。

 16.「層層加碼」の取り締まりを強化し、むやみに封鎖することを禁止する。

 17.封鎖隔離されている人々の生活保障を強化する。

 18.学校の防疫措置を最適化する。

 19.企業と産業パークの防疫措置を改善する。

 20.滞留人員(出張先などで突然封鎖を受け身動きできなくなっている人々など)を分類し、秩序をもって開放すること。

◆中央の緩和策を末端にまで徹底させるために中央が再度発信

 11月29日には国務院聯防聯控機構は記者会見を開き、国家衛生健康委員会のスポークスマンが、コロナ防疫の実態を詳細に紹介した。そこでは概ね以下のようなことが述べられている。

 ●コロナ封鎖に関しては、封鎖と解除を迅速に行い、大衆に不便を来たすようなことをしてはならない。

 ●絶対に「層層加碼」をしないように徹底して取り締まり、民衆の訴えに迅速に対応して、速やかに問題を解決しなければならない。

 ●「多くのネットユーザーが以前より封鎖される頻度が高まったという不満を訴えていますが、どうすればいいですか?」という会場からの質問に対して、国家衛生健康委員会は以下のように回答した。

  ――まったくおっしゃる通りで、最近民衆から提起されている問題は、コロナ防疫自身に対するよりも、むしろ「層層加碼」ばかりしていて、民衆の訴えに耳を貸さずに、役人側が保身のため、実情を無視して画一的に処理することにあります。ひどい場合には、勝手に封鎖地域を拡大させたり、ひとたび封鎖したら、解除していい条件に達しているのに、いつまでも解除しなかったり、管理者側の怠慢としか言いようがない。現在、こういった「層層加碼」を徹底して取り締まるための専門チームを現場に派遣する作業に入りましたので、ネットユーザーや地元の住民の要求を積極的に直接取り上げ、その問題解決に当たるべく全力を注いでいるところです。

 11月30日、孫春蘭副首相は(専門家を含む)国家衛生健康委員会会議を開き、中央政府が11月11日に発布した「通知」の事項を徹底するように呼び掛けている。一部のメディアでは、あたかも抗議デモを受けて、「中国政府が初めて態度を変えた」というニュアンスで報道しているが、そうではなく、あくまでも政府が決めたことを「層層加碼」せずに現場は忠実に実行してほしいと言っているだけだ。

◆「層層加碼」――最大の原因は「恐怖政治」

 中国では「層層加碼」がキーワードになっているほど、現場は責任を取らせられることに戦々恐々としているが、それはコロナ感染が拡大したら厳しい罰則が待っているからだ。だとすれば、その根底に、上層部が自分の責任を回避するために現場の下層部管理職に責任を押し付けるという現象があるからではないのか?

 このように考えると、コロナ政策は、中国共産党体制内の上下関係の意思疎通と信頼関係形成の問題に帰結する側面を持っているようにも思われる。

 一般民衆は、そうでなくとも「言論弾圧」という息苦しさの中で生きている。

 それでも、せめて「政治を語らないから何でも自由」という状況があったからこそ我慢することができた。ここに政治以外でも行動の自由を奪われるとなると、日常生活の閉塞感が積もり積もって爆発寸前になるのも当然のことだろう。

 油はジワジワと深く染みわたり、着火すれば直ちに燃え上がる状態が形成されていた。そこに着火したのが11月30日のコラム<反ゼロコロナ「白紙運動」の背後にDAO司令塔>で書いた総司令部センターであろうが、何であろうが、あまり大きな問題ではない。

 着火したら燃え上がる受け皿があったということの方が重要だ。

 おまけに、それがさらけ出したのは「層層加碼」という、中国共産党指導体制の中の信頼関係の欠如だった。

 その欠如は、どこから来ているのか?

 それこそは「恐怖」以外の何ものでもない。

 一部分の若者は、アメリカに潰されまいとして闘っている中国共産党政権を愛しているだろう。「愛国心」は高まっている側面はある。

 しかし別の側面を見るならば、中国共産党の統治というのは、少なくとも筆者の80年間におよぶ経験から導き出せるのは、「恐怖」が中心になっているということだ。

 それは拙著『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』に書いたように、7歳のときに餓死体の上で野宿させられた経験を持つ筆者の人生の全てを懸けた考察から来る結論である。

 中国政府はこのたびの抗議デモを「敵対勢力の陰謀だ」と非難しているが、もしそうであるなら、中国共産党はその「敵対勢力」に感謝すべきであるかもしれない。

 なぜなら「層層加碼」を生んだ恐怖政治を反省するチャンスをくれたのだから。

 反省しないのは分かっているが、その反省がなかったら、やがて「層層加碼」が中国共産党の一党支配体制を崩壊させていくことになるかもしれない。

 習近平に言いたい。

 「敵」は、共産党体制そのものの中にこそ潜んでいる。

記事に関する報告

遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(2022年12月中旬発売。PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『「中国製造2025」の衝撃』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。』

江沢民の死去と白紙革命

江沢民の死去と白紙革命
https://kotobukibune.seesaa.net/article/2022-12-02.html

『1.江沢民の死去

11月30日、中国の江沢民・元国家主席が上海で死去したと報じられています。96歳でした。

江沢民氏は、ここ数年、たびたび 体調の悪化が伝えられてきたのですけれども、2019年10月に行われた 建国70年を祝う軍事パレードでは両脇を支えられながら天安門に登壇する姿が確認されていましたけれども、 公の場に姿を現したのは これが最後でした。

江沢民氏は前任の鄧小平氏の路線を引き継ぎ、国家主席として10年間、中国が経済大国となる 基礎を築きました。退任後も長老として大きな影響力を維持していましたけれども、習近平体制になってからは、 『江沢民派』とされる 幹部たちが次々と 政治腐敗撲滅キャンペーンの餌食となり、 急速に力を失っていきました。

ただ、ゼロコロナ抗議活動が中国全土に拡がる中での、江沢民氏の訃報は様々な憶測を呼んでいます。

中国事情に詳しい有識者はツイッターで続々と反応。元朝日新聞記者のジャーナリスト、峯村健司氏は「このタイミングでの死去発表には意図を勘繰らざるを得ません」と述べれば、元産経新聞記者のジャーナリスト、福島香織氏は「白紙革命の大鎮圧と江沢民の死去発表は関係している?」との仮説を示しました。

また、日本経済新聞の滝田洋一編集委員も電子版のコメント欄で「ゼロコロナ政策への抗議デモの波が広がるなか、しつらえたようなタイミングで発表された長老の死です」と述べています。

更に、中国通のルポライター、安田峰俊氏も「このタイミングでの死去は、ともすれば非常に大きな意味を持ち得る気がします。不用意な連想を書けば、1989年4月の胡耀邦の死去のような」とツイートしています。

やはりタイミングがタイミングだけに、識者も裏があるのではないかと訝っているようです。

2.十日間で鎮圧せよ

ゼロコロナ抗議活動は、大学生の中にも広がっています。

しかもこの反ゼロコロナ運動はたった数日であっという間に中国各地に広がりました。そのため、中国当局は「外国勢力の介入」だなどと宣伝することも出来ず、余計に神経を尖らせているようです。

事態の深刻さを意識した当局は、清華大など北京市内にある大学宿舎に住む学生らが自分の故郷に帰るためのバスを手配。武漢ウイルス対策を建前に、事実上、学生が学内や北京の街頭での抗議活動に参加するのを阻止しようとしているという話もあります。

これは、天安門事件の際、当局がとった北京の学生を田舎に強制的に帰す対応と同じです。つまり、当局はそういう認識でいるということです。

もっとも、中国政府は「『白紙革命』は、あと10日間で断固、阻止する。世界人権デーの12月10日に向けて最大級の警戒態勢を敷いている。上層部内に異なる意見はないし、今後も割れない。それが、あの大きな事件との違いだ」と、共産党の上層部は白紙革命の「鎮圧」に自信を示しているそうです。更に、別の共産党上層部の周辺からは「党の末端での執政能力、危機コントロール能力をみくびらないほうがよい」という声もあるとのことです。

天安門事件を知るものは、鎮圧と聞けば、あのときと同じように、戦車を持ち出しては若者を撃ち殺していくのかなんて思ってしまいそうですけれども、今の中国は得意のビッグデータを駆使した危険人物の特定、追跡などお手の物でしょうから、そういう形で、斬首作戦的にリーダーを狙い撃ちで捕まえるのかもしれません。

3.消えた動態清零

一方、中国政府はゼロコロナ政策を見直すのではないかという見方もあります。

11月30日、政府の対コロナ政策を担当する孫春蘭副首相は、北京で国家衛生健康委員会および専門家らと会合を開き、「オミクロン株の病原性は比較的弱く、ワクチン接種も進み、新型コロナに対する政府の知見も蓄積されている。このためコロナとのわれわれの闘いは新たな段階にあり、新たな課題に向き合っている」と語りました。

会合後の発表文によると、孫副首相はゼロコロナを意味する「動態清零」という言葉を使用しなかったそうです。更に国家衛生健康委などの機関が行った前日の説明でも、当局者らはこの言葉に全く言及しない一方で、高齢者らにワクチン接種を促したと言われています。

今回の孫副首相の発言は、武漢ウイルスがもはやそれほど深刻ではないことを政府として初めて認めたものと捉えるのみならず、厳格な「ゼロコロナ」政策へのさらなる変更に道を開くのではないかと期待の声も上がっています。

既に、広州市の一部や重慶市の中心部など、さまざまな都市がこれまでの制限措置を緩和しつつあります。

孫副首相の発言について、コンサルティング会社であるテネオ・ホールディングスのマネジングディレクター、ガブリエル・ウィルダウ氏は「孫氏の発言は非常に重要そうだ。ゼロコロナ政策を忠実に実施するよう地方政府に命じる中央政府の司令塔の一端を担っているためだ……副首相として中国共産党中央の元政治局員として言葉を慎重に選んでいる孫氏が『動態清零』という言葉を用いなかったのは偶然ではあり得ない」とコメントしています。

4.中国は戦争と動乱の時代に入った

逆に、弾圧を強めるという意見もあります。

ジャーナリストの鳴霞氏によると、今回の抗議活動に習近平主席は激怒。中国政府はデモに対し、人民解放軍を派遣。各大学の構内にも入っては、学生リーダーやその周辺から2000~3000人も逮捕していると述べています。

鳴霞氏は、既に、警察が市民に向かって発砲したという話もあるとした上で、習近平主席は天安門以上の虐殺をする可能性があると指摘しています。

また、評論家の石平氏は、抗議デモの参加者が掲げる「白紙」について、既に反独裁・反習近平のシンボルになりつつあるとした上で、そのうち「白色」そのものが運動のシンボルになる可能性があるとまで指摘しています。

石平氏は、中国政府は鎮圧か譲歩かで揺れているとしながらも、もし譲歩してしまったら、運動が更に勢いづくのみならず習近平主席の求心力が失われることから、絶対に譲ることはないだろうと述べています。

石平氏は、たとえ、武装警察なので、今回の運動が鎮圧されたとしても、経済的苦境を切っ掛けとしてより広範囲な革命運動が生まれる可能性すらあるとし、習近平主席は政権崩壊の危機を回避するために、台湾侵攻を前倒しするのではないかとさえ述べています。

中国は戦争と動乱の時代に入ったと石平氏は述べていますけれども、やはりそんな時代が本格的にやってきたと見るべきなのかもしれませんね。』

中国、ゼロコロナ緩和の動き 中央の判断?「感染対策は新たな情勢」

中国、ゼロコロナ緩和の動き 中央の判断?「感染対策は新たな情勢」
https://www.asahi.com/articles/ASQD16500QD1UHBI021.html

『冨名腰隆、上海=井上亮2022年12月1日 19時21分

習近平(シーチンピン)国家主席ら中国共産党指導部が長らく続けてきたゼロコロナ政策に変化が出始めた。感染者が出た地域の強制隔離をやめたり、全市民に義務化してきたPCR検査の縮小に踏み切ったりする動きが拡大。事実上の政策修正とも言える状況で、人々の行動を厳しく制限するゼロコロナへの抗議活動が各都市で広がる中、大幅な緩和の容認に踏み切った可能性がある。

 国営新華社通信によると、北京市は11月30日から長期間外出しない老人や自宅で働く人に対し、全市民に求めてきた数日ごとのPCR検査を「必要なし」と通知した。重慶市では感染者が出た場合の「高リスク地域」の範囲を現場判断で拡大しないよう指示。同様の緩和の動きが少なくとも11都市で確認されている。感染者が特に多い広州市でも、地区の封鎖を解く動きが広がった。』

中国のW杯中継、マスクなし観客の映像カット SNS「何を恐れる」

中国のW杯中継、マスクなし観客の映像カット SNS「何を恐れる」
https://www.asahi.com/articles/ASQD14PSMQCZUHBI01B.html?iref=pc_extlink

 ※ 『サッカーのワールドカップ(W杯)は、中国での人気が非常に高い。国営中央テレビは全試合を無料中継する』ことは、知らんかった…。

 ※ プロパガンダは、いつだって、「現実の姿に、敗北する。」…。

 ※ 言説で、現実をくるむことは、できない…。

『サッカーのワールドカップ(W杯)は、中国での人気が非常に高い。国営中央テレビは全試合を無料中継するが、中継画面に不思議な点がある。スタジアムで熱狂する観客の姿が映らなくなっているのだ。日本の中継と見比べながら検証してみると、ある狙いが浮かび上がる。

【続報】中国のW杯中継、突如戻った「観客アップ」 コロナ規制緩和と同調?

 青いユニホーム姿の日本サポーターがうねるカタールの競技場。体を揺らしながら声援を送り、応援の歌声がこだましていた。

 11月27日に行われたW杯カタール大会の8日目、日本対コスタリカ戦。0―0の後半27分ごろ、日本はゴール前でフリーキックのチャンスを迎えた。この試合のクライマックスの一シーン。テレビ朝日の中継では、鎌田大地選手がボールを蹴る前に2度、日本サイドの観客席がアップで映し出された。サポーターはマスクをしていない。

 だが同じ時間、中国国営の中央テレビの中継では、観客のアップは映っていない。代わりに、日本の森保一監督が周囲と話をする静かな映像が映し出された。2度目のシーンは、フリーキックを後方から見つめる日本代表の姿だった。

 このように、中央テレビでは…

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『坂尻信義
(朝日新聞編集委員=国際政治)
2022年12月1日16時57分 投稿

【視点】
 子供だましと言ったら、言葉遣いが悪いでしょうか。でも、あまりにも稚拙な対応に感じられました。こういう対応をとると、かえって人々の神経を逆なでしてしまうのではないかと、こちらが心配…。』

(※ 無料は、ここまで。)

米裁判所、ファーウェイ副会長の起訴を正式に取り下げ

米裁判所、ファーウェイ副会長の起訴を正式に取り下げ
https://www.epochtimes.jp/2022/12/127009.html

『[ニューヨーク 2日 ロイター] ? 米ニューヨーク州ブルックリンの連邦地裁は2日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)に対する起訴を正式に取り下げた。これにより新たな訴追も不可能となった。

米検察当局は既に昨年、孟晩舟氏と訴追延期合意を結び、孟氏に対する刑事訴訟を終わらせる手続きに入っていた。

孟氏は2018年12月に、イラン制裁問題に絡む銀行詐欺容疑を主張する米国側の要請に基づいてカナダで拘束され、孟氏側は無罪を主張。孟氏は3年近くカナダから出られなかったが、米連邦地裁が訴追延期合意を承認した後、中国に戻った。』