豪州、中国と「冷たい平和」へ

豪州、中国と「冷たい平和」へ デーブ・シャルマ氏
元駐イスラエル豪州大使
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD280WE0Y2A121C2000000/

『11月にインドネシア・バリ島で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を機に、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がオーストラリアのアルバニージー首相と会談した。約6年ぶりの対面による首脳会談だった。

中国は豪州が「誤った行動」をとったとして外交的に冷遇してきた。中国の不興を買った行為には豪州の高速通信規格(5G)網からの華為技術(ファーウェイ)製通信機器の排除、新型コロナウイルスの起源に関する調査を率先して求めたことなどが含まれる。

両国関係は、中国がワインや牛肉、石炭など豪州の輸出品に懲罰的関税を課した2020~21年にどん底に沈んだ。中国は豪州を見せしめとして他国にも影響を与えようとしたが、うまくいかなかった。豪州の新政権はバリ島での会談前に中国の不満に何ひとつ対処しなかった。

中国の貿易制限は依然残っているが、豪州で影響を受けた産業は他に新しい市場を見つけた。豪州の対中輸出全般をみても、中国が他に調達先を見つけられなかった石炭、鉄鉱石、天然ガスを中心に高水準で推移している。豪州は大勢の中国人留学生や観光客が来なくてもやっていく方法を学んだ。

Dave Sharma 豪ディートン大修士(国際関係論)。豪議会の外交・援助合同小委員会の委員長、首相府の主席外交顧問を歴任

習氏とアルバニージー氏が笑顔で握手を交わしたことは、より建設的な関係への回帰を示唆しているかもしれないが、根底にある構造的緊張は変わっていない。

中国指導部は豪州の新政権発足を機に関係の再構築を図るつもりだったが、リセットはほぼ完全に豪州の条件に基づいて行われた。これには3つの理由がある。

まず中国の国内政治だ。10月の共産党大会を経て、習氏の立場はより安定した。習氏は党のライバルに弱腰とみなされる心配をせずに、より融和的な外交政策を追求できるようになった。

第二に中国の「戦狼外交」が国際的地位の向上につながらないことが明らかになった。それどころか中国の好戦的な口調は西側の結束を強化し、海外世論を敵に回す結果だけをもたらした。豪州では中国の懲罰的措置によって国民の不信感が高まった。

第三にグローバルな力関係が中国に不利な方向に働くことになった。中国外交は欧米の衰退を意味する「100年に一度の大変革期」を言い立ててきたが、変革が中国にとって望ましくないことが明らかになりつつある。

主要な外交パートナーであるロシアはウクライナ紛争で身動きがとれなくなった。習氏とロシアのプーチン大統領との親密な関係により、中国のグローバルな威信と評判は損なわれ、西側の結束は中ロの予想に反して強くなった。

新型コロナ対応にしても、中国は「ゼロコロナ政策」から抜け出すことができず、経済を傷つけ、国内不安に拍車をかけている。

習氏は国際環境が好ましいものでなくなった今、ソフトパワーを重視しているように見える。バリ島でバイデン米大統領と会談し、気候変動などを巡る対話を再開したのは中国が国際的イメージの修復に動き出したことを示唆する。

中国が豪州との対話再開を決めたのも同じ流れだ。今後は定期的な交流が再開されるとはいえ、両国関係が10年前のような良好なものに戻ることはないだろう。すなわち中豪関係は冷たい平和の時代に入った。両国の利益と世界の理想像はかけ離れており、豪州の政策立案者は中国の台頭をもはや善きものとは考えていない。

関連英文はNikkei Asiaサイト(https://s.nikkei.com/3XtHzps)に

戦狼外交に警戒怠るな

こわもてのイメージが強い習氏がバリ島やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたバンコクで「微笑外交」を展開したのは戦略的な転換ではなく戦術的な調整にすぎない。いわば「戦狼外交2.0」を3期目の習政権は進めていくと考えられる。

実際、東南アジアで開いた一連の国際会議後にカナダ政府が発表した文書は、中国を「破壊的グローバルパワー」と形容した。英国のスナク首相も中国との関係について「黄金時代は終わった」と表明している。

今後日本をはじめ世界は中国とどう向き合っていくべきか。対話を進めやすくなる可能性を生かし、気候変動や感染症対策などグローバルな課題で協力を深める一方、安全保障の面では警戒を怠らない姿勢が求められる。

(編集委員 飯野克彦)』

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