両軍が激しく争うバフムートの戦い、弾薬や物資を無限に消耗するブラックホール

両軍が激しく争うバフムートの戦い、弾薬や物資を無限に消耗するブラックホール
https://grandfleet.info/european-region/battle-of-bahummut-where-both-armies-fight-fiercely-black-hole-that-consumes-ammunition-and-supplies-infinitely/

『2022.11.29
ニューヨーク・タイムズ紙は27日、ウクライナ軍とロシア軍が激しく交戦するバフムートの戦いについて「弾薬や物資を無限に消耗するブラックホールになり、予定している反撃など優先度の高い作戦から戦力を奪う可能性がある」と指摘した。

参考:Ukraine Situation Report: The Bloody Battle For Bakhmut
参考:In Ukraine, Bakhmut Becomes a Bloody Vortex for 2 Militaries

無限に西側諸国から弾薬が供給されるとウクライナ人が勘違いし、持続不可能なペースで砲弾を消耗している

バフムート周辺のウクライナ軍は高台に位置する幹線道路「T0513」沿いでロシア軍の前進を食い止めていたのだが、この防衛ラインを完全に突破してオザリアニフカを確保、クルデュミフカもロシア軍が抑えたという情報があり、さらにクリシェイフカ方面にもロシア軍が前進を見せているためバフムートやアルテーモヴェの包囲を狙っている可能性が高い。

出典:GoogleMap ドネツク州バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

特に興味深いのは「ロシア軍だけでなくウクライナ軍もバフムート周辺の戦いで大きな人的被害を被っている」という報道だ。

ロシア軍は「ほぼ全ての前線」で龍の歯や塹壕を建設して越冬準備を進めているが、クレムリンが要求する「政治的な勝利」の必要性に応えるためバフムート周辺だけは戦いが激化しており、この地域で働く軍医や衛生兵は「ロシア軍がより激しく前進しようとしているため負傷者(ある日の負傷者数は240人に達したらしいが戦死者については不明)が急増している」とニューヨーク・タイムズ紙に証言、ここを守る第93機械化旅団や第58自動車化歩兵旅団などは相当消耗している。

出典:Сухопутні війська ЗС України

関係者(兵士・現地住民・米国防当局者)曰く「ウクライナ軍はここ数日、特殊部隊やあまり訓練されていない領土防衛隊の兵士を増援として大量にバフムートへ送り込んだ」と述べているため、ロシア軍だけでなくウクライナ軍も大きな人的被害を被っている可能性が高いのだが、圧倒的な火力差で酷い目にあったセベロドネツクやリシチャンシクの戦いとは異なり「ここまで我々の砲兵部隊が働いているのを見たことがない」と現地兵士が証言するほどウクライナ軍の砲撃は活発だ。

しかし砲撃が活発なことに米政府関係者は「バフムートのような場所で無限に西側諸国から弾薬が供給されるとウクライナ人が勘違いし、持続不可能なペースで砲弾を消耗していることを国防総省は懸念している」と指摘、両軍が砲兵戦力を投入するバフムートの戦いは弾薬や物資を無限に消耗するブラックホールになり「ウクライナ軍が予定している反撃など優先度の高い作戦から戦力を奪う可能性がある」とNYT紙は指摘している。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

勿論、ウクライナ軍だけでなくロシア軍も同じように兵士や砲弾を消耗しているが、西側諸国がウクライナに供給できる155mm砲弾は限界(備蓄が0になったという意味ではなく自国の安全保障に最低限必要な数量に近づいてきた=余剰分がほぼ尽きたという意味)に近づいており、米国が155mm砲弾の生産量(月産1.5万発/これまでに提供したギャップを埋めるだけで66ヶ月=5.5年もかかる)を増やすためには1年~2年のリードタイムが発生すると見積もられている。

経済性を損なわないことと自国の安全保障がリスクを負わない範囲でウクライナを支援する西側諸国の物量と、特別軍事作戦が真に必要とする装備や物資の生産に集中(T-14やSu-57といった近代化計画を中断)してきたロシアの物量(+イラン・北朝鮮からの支援)、果たしてどちらが物量が相手を上回るのだろうか?

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 ※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України』