中国ゼロコロナ、緩和策が市民に届かず 主要都市で抗議

中国ゼロコロナ、緩和策が市民に届かず 主要都市で抗議
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『中国の主要都市で26~27日、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策への抗議活動が相次いだ。政府の打ち出した緩和策を地方レベルで実現できず、市民の強い不満につながっている。上海市では習近平(シー・ジンピン)指導部への批判も出るなど、共産党の統制が強い中国では異例の事態となっている。

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直接のきっかけは、24日に発生した10人が死亡したとされる新疆ウイグル自治区ウルムチ市の火災だ。SNS(交流サイト)上ではロックダウン(都市封鎖)の影響で「消火活動が遅れた」との情報が出回った。

犠牲者の追悼が抗議活動に発展しており、首都北京市や四川省成都市、湖北省武漢市、広東省広州市などに広がった。

抗議から一夜明けた28日、現場となった上海中心部の「ウルムチ中路」では、フェンスが設置され警備にあたる警察官や車両が目立った。人民広場も警察が監視態勢をとった。

北京市内では28日夜、抗議活動があるとの情報があった場所や27日に抗議活動があった場所に多くの警察車両が配備され、警戒にあたった。在中国日本大使館は28日、抗議の現場に遭遇しても近づかないよう注意喚起した。

一方、香港中心部の金融街・中環(セントラル)では28日夜、中国本土出身者ら数十人が集まり、白い紙を掲げたり、火災の犠牲者を追悼するため花を手向けたりした。

中国ではゼロコロナ政策の影響で景気の減速が鮮明となっている。内需は10月に小売売上高が前年同月比マイナスに転じ、外需も10月は輸出が減少に転じた。国際通貨基金(IMF)は2022年の国内総生産(GDP)成長率が3.2%にとどまると予測する。特に若年層の就職難は深刻さを増している。

コロナ対策をかじ取りする国家衛生健康委員会は11日、「長期封鎖の乱用禁止」など20項目の緩和策を発表したが、中央からの低評価を懸念する地方当局は感染拡大の抑制を優先し、十分に実行できていない。

野村ホールディングス傘下の野村国際(香港)の推計では、都市封鎖や移動制限の対象者は68都市で約5億3000万人(28日時点)。7日時点と比べて2億人以上増加した。対象地域の工場労働者や大学生は寮からの移動が制限・禁止されている。

米アップルのスマートフォン「iPhone」の生産を請け負う台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の工場(河南省鄭州市)では22~23日、待遇問題も絡んで一部の従業員と警備員・治安当局が衝突した。

27日には、習国家主席の母校で北京の名門・清華大学でも学生の抗議活動が起きた。SNS上の動画によると、上海では習氏の辞任を求める抗議参加者の姿もあった。当局は投稿や動画の削除に躍起だ。
28日、上海の抗議現場にはフェンスが設置された=ロイター

北京では共産党大会開幕直前の10月13日、学生街の高架橋にゼロコロナ政策や習氏を批判する巨大な横断幕が掲げられた。

習指導部は異例となる3期目をスタートさせたばかりだ。政権の安定には、日常生活や社会経済活動の制限長期化で「我慢の限界」に達した国民の不満に一定の配慮をみせざるを得ない。27日、北京では警官隊が暴力的な弾圧を控え、抗議を見守るような光景もみられた。

北京市は27日の記者会見で、マンションなどの防疫措置を個別に管理する末端の行政単位などで過剰な規制を禁じると強調した。広州市も一定の条件を満たせば、封鎖地域からの移動を認めるとしているが、隔離措置なく戻れるのかなど実効性は不明だ。

投資家はリスク回避姿勢を強めている。28日の上海株式市場では、上海総合指数が前週末比0.7%安と反落した。香港株式市場では、ハンセン指数が同1.6%安となった。

米国債など安全資産にマネーがシフトするとの見方から、人民元は対ドルで下落し、約半月ぶりの安値を付けた。

香港の市場関係者は「共産党や習氏個人への批判というのはこれまでにない動きだ。人民元売りの一因になっている。どのような形で市民のガス抜きを進めるのかに注目している」と指摘する。

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益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 教授
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分析・考察

今のところデモは散発的なようですが(政府の情報統制でそうなってしまう)、デモの原因となっている体制への不信感はすでに誰もが共有しています。中国は過去40年間、ほぼずっと高度経済成長を続けてきました。それは政権運営にある種の合理性があり、共産党が実務能力に長けた官僚を、天安門事件後などの微妙な時期ですら起用し続けてきたからです。
しかし、現政権がやっているのは、「開発独裁」ですらないただの「独裁」。多くの中国人は、ゼロコロナをはじめとする自殺的な政策で中国の未来を葬りさろうとする現政権に憤っています。政府側が歩み寄らなければ、対立はきっと激化します。目が離せなくなってきました。
2022年11月28日 22:12 (2022年11月28日 22:21更新)
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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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分析・考察

「白紙革命」は本土主要都市のみならず東南アジアなどに住む在外中国人にも広まりつつあり、そのインパクトは下記の理由も含めて対岸の火事とばかり見てはいられないだろう。その本質は行動規制そのものというより、それによる経済低迷が引き起こしている廃業、失業、物価高、食糧難などが大きいだろう。政策の変更要請は、中国の人々のみならず世界経済の成長ドライバーを失いむしろマイナス要因となる事で混迷している株式市場の参加者や現地工事閉鎖や物流遮断を余儀無くされている企業ををはじめとする世界中の経済人も同じだろう。
2022年11月29日 7:09』

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