ウクライナ戦争に「語られざる物語」米特殊部隊トップが証言した“秘密のネットワーク”

ウクライナ戦争に「語られざる物語」米特殊部隊トップが証言した“秘密のネットワーク”【報道1930】
https://news.yahoo.co.jp/articles/0f4bc0f324e05490da97f347e8002e6d41f59376?page=1

『ウクライナ侵攻は、既に9か月に及んでいる。奪われた地域を奪還し、攻勢を続けるウクライナ。その強さの裏に欧米の支援があることは再三報じられてきた。だが、兵器弾薬の供与やロシアへの経済制裁など表向きに伝えられる支援とは別に、秘密の支援ネットワークがあることは知られていない。今年4月アメリカの上院軍事委員会である発言があった。

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陸軍特殊作戦司令部司令官 ブラガ中将
「これは“語られざる物語”だが、ウクライナ支援で複数の国々の特殊部隊が連携している・・・」

参加国も具体的な行動内容もここでは明かされなかったが、その支援ネットワークは強大で、今後“偉大なる新たな物語”を生むともこの特殊部隊のトップは語った。今回はその組織について議論した。

■秘密ネットワークの“元”は2014年に始まった

“語られざる物語”の主人公ともいうべき組織がある。『Alliedアライド(同盟)・Commandoコマンドー(特殊部隊)・Networkネットワーク(連携)』(以下、コマンドーネットワーク)

スペルの最後に“o”がついたコマンドーは特殊部隊の意味だ。この組織には、米・英・仏・カナダ・リトアニアなど20か国以上が参加。ドイツに本拠地があることは分かっているが詳しい場所は明かされていない。この組織が、ウクライナの軍事顧問団としての役割を担っている。一体どんな組織で、これまでどんなウクライナの作戦を担ってきたのか…。

世界最古の安全保障研究機関であるイギリス王立防衛安全保障研究所『RUSI』の日本の特別代表の秋元千明氏に話を聞いた。秋元氏はNATOとの会議の場にも参加することもあるという。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「コマンドネットワークは基本的に特殊部隊と情報機関の混成で活動してます。この組織の基礎になったのは2014年で、マイダン革命(親ロ派のウクライナ大統領を追い落とした市民革命)が起きた後に、ウクライナを西側陣営に引き入れるためにできた西側との連携だったんです」

マイダン革命で親ロシア派の政権を倒したウクライナ。ここから一気に欧米との関係を深める。』

『まずは情報機関の連携だった。ロシアの情報機関の出先機関的存在だったウクライナの情報機関FSBは、政権が倒れた後もロシアに人脈を持つ職員が多くいた。欧米としてはロシア情報を引き出すために連携するメリットがあった。さらに欧米の軍の特殊部隊はウクライナ軍の西欧化教育に当たった。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「ウクライナをすぐにNATOに加盟させるのは不可能だと最初からわかっていた。なので軍事的に西側型の軍隊に変えようとした。戦術、戦略、情報戦などあらゆる西側の近代的手法を教え、軍備も与えて西側の軍事組織の一部に取り込みたかった。イギリス・アメリカ・カナダが中心になってやった・・・。将来のNATO加盟に道をつないだ」
■去年の7月にロシアのウクライナ侵攻の兆候があった

こうして生まれた情報機関と特殊部隊の連携。西側とウクライナの情報機関は、実は去年の7月にロシアの侵攻計画の端緒をつかんだという。注目したのはロシアの諜報機関FSB内のウクライナ担当局の人数。普段は20人程度の部局が200人に膨らんでいたのだという。そして、彼らがウクライナ内でロシアへの協力者を調査し、少なくとも年末にはウクライナ政権を転覆させた後の傀儡政権のメンバーまで決めていたのをつかんでいたという。そして入手した内部文書に書かれた計画とは…。

RUSI日本特別代表の秋元氏が関係者に聞いたところでは、1月18日にプーチン大統領が侵攻を承認、そして侵攻軍事作戦開始は2月20日となっていたという。そして作戦終了、ウクライナ全域掌握は3月6日となっていたという。
2週間ちょっとでウクライナ全土を占領できる皮算用だったようだ。だが現実は作戦開始予定日も4日遅れ。当然、作戦終了は今もしていない。計画は音を立てて崩れていた。
■「戦闘機10機と交換してもいいような情報が入っていた」

西側の情報と戦い方を伝授されていたウクライナ。その戦いによりロシアの計画は狂い、多くの兵士を失っていく中、今回の秘密組織「コマンドーネットワーク」は5月に生まれた。

これまで明かされなかったコマンドーネットワークの役割は大きく分けて4つだ。
「軍事情報の提供」「兵器の分析」「武器輸送計画」「作戦の立案」だ。

まずは、「軍事情報の提供」。

AWACSなどの哨戒機、無人偵察機、電子偵察機、偵察衛星などを使って収集したウクライナ国内でのロシアの情報がドイツにあるコマンドーネットワークの本拠地に集約される。これを精査した軍事情報がウクライナ国内の拠点などに送られ、そこから前線の将校が持つタブレットに送信されるシステムだ。 

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏

「ウクライナは同盟国ではないので、送る情報と送れない情報はフィルターをかけている。機密のガイドラインに沿って送れる情報を渡す。タブレットは下級将校まで持っている。(中略)正規軍だけでなくパルチザンも情報は共有してます」』

『パルチザンによるゲリラ活動はこれまでも報道されてきたが、その裏にもコマンドーネットワークの支援があったのだ。

そして「兵器の分析」。例えば3月、ロシア軍は電子戦兵器『クラスハ4』をキーウ周辺に放棄して撤退した。これを分析したところ、とんでもなく有益な戦利品だった。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「この中にどのくらいのソフトウエアが入っていたかというと、戦闘機10機と交換してもいいような情報が入っていた。一番重要なのは、電子妨害といって電波を妨害する機能がある。GPS,AWACSのレーダー、地上のレーダー、携帯電話、すべての電波を(半径300キロに渡って)妨害する能力を持ってる。」

電波を妨害するためには敵の電子機器の周波数を分析できないといけない。つまりこれを押さえたことでロシアの電子技術がどのくらいなのか把握できるという。同時にどんな妨害技術を使っているのかもわかる。結果として対抗措置がとれる。さらに、ロシアの暗号技術も掌握したという。最終的にはロシアのデータ通信のすべてに入り込むことも可能だ。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「太平洋戦争の時、アリューシャン列島でゼロ戦がアメリカに捕獲されたことがあります(これによって日本の航空技術がアメリカに流れた)けど、それと似たような事例です。何しろ『クラスハ4』はロシアにまだ10基しかない。どんなものかわからないけど警戒していた兵器・・・」

続いては「武器輸送計画」だ。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「武器の輸出は20か国ぐらいが既にやってるんですが、すべてドイツ・シュツットガルトにあるアメリカの在欧米軍司令部が全部管理してます。そこがマネージメントをして秘密の輸送計画を立てている。どういうルートかは知りませんけど、その中心にいるのがコマンドーネットワークです。鉄道ルートが多いと聞いてますけど・・・」

そしてもうひとつ重要なのが「作戦の立案」だ。具体例は数知れない。クリミア橋の爆破も、黒海艦隊の巡洋艦『モスクワ』撃沈もコマンドーネットワークによる立案といわれている。南部ヘルソン市と東部のハリキウ州やリマンの奪還も、“相互陽動作戦”として、コマンドーネットワークが立案した戦法だったというが驚いたのはこの作戦はすでに5月にたてられていたという。』

『■「ロシアの高級将校の居場所はウクライナに教えない」

情報を集めて分析し、前線に流し、武器を供与して作戦を立てる・・・。これはもう支援というより、ロシア対コマンドーネットワークの戦争、即ち、アメリカ、イギリスをはじめNATO諸国の戦争に他ならない。どこが直接対決の発火点となるのだろうか。

朝日新聞 論説委員 駒木明義氏

「ロシアはNATOを具体的な戦争に巻き込むことは慎重に避けようとしている。(中略)始まった当初、非常に短い期間に司令官クラスの将軍が10人亡くなった。これもロシア側の通信が漏れていた結果だといわれてます」

情報戦によっての攻撃は直接の発火点にはならないことは分かった。そして、アメリカは支援と直接介入に関しては明確に使い分けているという。

明海大学 小谷哲男 教授

「どこからアメリカが参戦したということになるのか…。インテリジェンスの部分では明確なガイドラインがあって・・。ロシアの高級将校の居場所はウクライナに教えない。部隊の居場所の情報は渡す。しかし個人の情報は渡さない。もう一つロシア領内の動きに関しての情報はウクライナに渡さない。この線引きで国際法上アメリカが参戦したことにならないと考えている」

いまのところどちらの陣営についても微妙な距離はとれているように思う。しかし、ロシアがこだわっているクリミアについて、ウクライナ軍とその裏にいるコマンドーネットワークの戦い方いかんで距離は微妙になるかもしれない。この点について、コマンドーネットワークが新たな作戦をすでに計画していると秋元氏は気になることを口にした。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏

「クリミアの奪還まで進むのかどうかと言うと、それが基本的にウクライナの希望ですし、西側に強く反対している国もなく、イギリスはそれを強く求めています。私が接している情報では、間違いなく…いや間違いなくと言うと言い過ぎですが、たぶんクリミア奪還に行く、そういう計画が策定されると思います」

(BS-TBS 『報道1930』 11月23日放送より)

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