“知の巨人”スティグリッツ教授の洞察 世界の分断はいま

“知の巨人”スティグリッツ教授の洞察 世界の分断はいま
https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2022/10/14/26111.html

 ※ 「知の巨人」とか、また、仰々しい…。

 ※ 「権威を、疑え!」だ…。

 ※ 参考程度に、読んでおこう…。

 ※ 『話を聞き、政治や経済はどうあるべきか、深く考えさせられました。』…。

 ※ こりゃまた、「紋切り型」の「決まり文句」だな…。

 ※ 深く考えて、どういう「対策」を打って、どう「行動」するのか…。

 ※ そこが、出てこなければ、ちーとも「巨人」じゃ無いだろう…。

『新型コロナの感染拡大による経済への打撃、ロシアによるウクライナ侵攻とブロック化する世界経済、そして格差拡大と世界中にまん延する人々の不満。経済の仕組みがなぜこうもうまく回っていないのでしょうか。
2001年にノーベル経済学賞を受賞した、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授。「道を間違えた」資本主義を救いたいと79歳の今も積極的に提言を続けています。

日本を訪れた"知の巨人”スティグリッツ教授のことばに迫ります。

(ニュースウオッチ9 キャスター 田中正良 、国際部記者 杉田沙智代)

知の巨人3年ぶりの来日

ことし10月、日本を3年ぶりに訪れたスティグリッツ教授がNHKのインタビューに応じました。

スティグリッツ教授は1995年から97年、クリントン政権で大統領経済諮問委員会の委員長を、97年から2000年に世界銀行のチーフエコノミストを歴任し、2001年にノーベル経済学賞を受賞しました。

リーマンショックのあと、金融機関の強欲ぶりを批判し、2011年秋、「オキュパイ・ウォールストリート」という抗議活動に若者たちとともに参加。

抗議活動に参加するスティグリッツ教授(中央の赤い服・2011年)
また、毎年世界のリーダーたちが集まるダボス会議に出席するなど、世界各地を飛び回って提言を行い、“行動する経済学者”と呼ばれています。ことばには力がこもり、情熱が伝わってきます。

※ 以下、スティグリッツ教授の話

新型コロナは世界経済に何をもたらした?

経済学者の私を含め、多くの人が、経済はもっと回復力があり、強じんなものだと思っていました。しかし、新型コロナの感染拡大によって、アメリカで、店舗の棚が空になると誰が想像したでしょうか。(注:供給混乱によるモノ不足)工場もあって働く人もいるのに自動車が組み立てられなかったのです。

コロンビア大学 ジョセフ・スティグリッツ教授

私は比喩でよく使いますが、私たちの経済システムはまるでスペアタイヤなしのクルマをつくっているかのようです。このような経済では新型コロナに効果的に対応できませんでした。

市場原理に基づく経済は多くの制約があり、リスクや思わぬ余波をコントロールできません。新型コロナで、私たちは市場原理の限界を思い知りました。

そして市場原理と政府の介入のバランスをとることがとても大事になっているのです。

コロナで格差が拡大?

パンデミックによって世界中で不平等が浮かび上がり、格差が拡大しました。世界中の人がワクチンを接種し、感染しても亡くならないようにすることが非常に重要だと思いますが、残念なことに分断が起きています。

アメリカでのワクチン接種

アメリカでは誰もが希望すればワクチンを接種することができますが、発展途上国や新興国では不足が続きました。

ロシアによるウクライナ侵攻、世界はどう変わる?

ロシアのウクライナ侵攻は第2次世界大戦以降で経験したことがない国際法違反です。そしてヨーロッパ経済に多大なる悪影響をもたらしていることを残念に思います。

私はウクライナでの戦争のはるか前から、グローバリゼーションの作用としてドイツがロシアの天然ガスに依存していることは、とんでもない過ちだと指摘してきました。ロシアがガスの供給を止めた場合、ほかの国から簡単に調達することなどできないからです。

ロシアからドイツへ天然ガスを供給するパイプライン「ノルドストリーム」

残念なことに私の指摘が正しかったことが証明されてしまいました。ロシアはエネルギーでは優位に立ち、ヨーロッパの電力市場はきちんと設計されていなかったことが白日のもとにさらされたのです。

ロシアに対する経済制裁でいえば対ロ輸出は大きな効果をあげています。西側諸国は航空機の部品や半導体を売っていないので、彼らの経済に打撃を与えています。

しかし、ロシアからの天然ガスや原油などの輸出でみると制裁は効いていません。サウジアラビアのような国が原油の減産に踏み切っており、原油価格の上昇によってロシアは保護されているからです。

このインタビューの前日、10月5日にサウジアラビアやロシアなど産油国によるOPECプラスは11月以降の原油の生産量を1日あたり200万バレル減産することを決めました。
スティグリッツさんは「ウクライナでの戦争のさなかに原油価格を引き上げるために供給を絞ると決めたのです。私はインフレを加速させるサウジアラビアの政治的な行動はアメリカの中間選挙への干渉なのではないかとも疑ってしまいます」と辛口のコメントをしていました。

世界はいつから変わった?

2008年の金融危機以降、”新冷戦”とも言える米中の覇権争い、市場原理の限界、トランプ前大統領の当選、そしてロシアによるウクライナ侵攻など一連の出来事がわずか14年のあいだに起きて世界を変えています。

ウクライナで砲撃から避難する住民(2022年3月、キーウ郊外)

これはこれまでの冷戦とは異なる新しい形の冷戦です。格差拡大が、国家間、そして国内での分断をより助長し、気候変動や保健医療など協力して取り組むべき課題への対応を難しくしています。

世界は多国間協調主義を必要としているのですが、それが危機に直面しているのです。

アメリカの政治状況をいまどう見ているか?

アメリカの政治は本当にひどいものになっています。私たちの民主主義の存続まで脅かされています。

トランプ前大統領は民主主義を弱体化させました。その結果、共和党支持者の大多数はこの前の大統領選の選挙結果を認めていない。科学を信じない、ワクチンの効果を信じない、気候変動も信じていません。

アメリカ トランプ前大統領

いまのアメリカを理解するためには、このようなおかしな動きが、なぜアメリカで出現したのかを理解しなければなりません。しかし、自分自身を含め、多くの人は、理由はわかっていません。私たちの多くは、米国での民主主義の存続について非常に心配しています。

日本経済の課題、どう見る?

日本はアメリカで起きているような深刻な問題には直面していません。

私はニューヨークに住んでいますが、多くの路上生活者を見かけます。日本はアメリカと比べると路上生活者は少なく、しっかりした社会福祉制度があり、公的住宅が提供されています。

経済的な日本の課題としては長年、低成長が懸念されています。これには2つの課題があり、1つは人口減少、もう ひとつは生産性の低さの問題です。

日本は製造業で大きな成功を収めてきましたが、先進国は製造業からサービス業へ移行しています。この移行は頭のなかでは『やらなければならない』と分かっていても、必ずしもスムーズにはいかないのです。

ただ、日本は知識サービス産業の経済へと転換する必要があります。

日本経済 見るうえで大事なことは?

GDP=国内総生産を見てはダメです。生活水準を見るべきです。物質的な満足ではなく、寿命や生活の質、そして治安も含まれます。

アメリカは1人あたりのGDPは高い水準にありますが、人々の寿命は日本より短く、不平等がより広がっています。日本は最も裕福ではないものの、GDPの指標が示すよりもいい経済でよくやっています。

経済安保が重視される世界とは

アメリカは、ことし8月に『半導体の国産化を促進するための法律』を成立させ、520億ドル、日本円で7兆円以上を投じて国家主導で半導体の開発生産を後押しすることを決めました。

「半導体の国産化を促進するための法律」に署名するバイデン大統領(2022年8月)

このアメリカの考え方は、大きな革命です。アメリカはこの何十年もの間、政府誘導で特定の産業振興をはかる国に批判的でした。かつての高度経済成長期の日本に対してもです。

それなのにいまや、アメリカがみずから特定の産業を振興する政策に打って出ています。
アメリカの半導体工場

WTO=世界貿易機関は、自国の産業政策に一定の規律を課し、多角的貿易体制を維持する姿勢をとっていますが、この国際合意を、アメリカは無視した形です。アメリカは、国際合意を気にせず、やりたいと思えば、何でもやるということを意味します。

私たちは今後新たな世界で、どうやって各国が協調していくのか?何がルールなのか?ということを考えていかなければなりません。

※ 以上、スティグリッツ教授の話

希望はあるのか?

さまざまな課題が山積し、混迷する国際社会。健全な世界をどう取り戻していくのか、希望はあるのでしょうか。スティグリッツさんにキーワードを書いてもらいました。

「『繁栄を分かち合う』。そして、『同じ地球の中で生きる』こと。

私たちは地球という母なる大地に住んでいます。ほかに行くことができる惑星はありません。私たちは富裕層に富が渡れば貧しい人たちも富の恩恵が受けられるというトリクルダウンという経済論理を発展させてきたが、それは真実ではありません。やらなければいけないことはたくさんあります。まず根本的対策として、経済システムを変えなければなりません」。

スティグリッツさんは政治と経済を再建しなければならないと主張。

富裕層への課税など税制改革を行うこと、医療、教育などを誰もが受けられるよう政府が強く関与すること、そして選挙制度を変えて民意が反映されやすい仕組みを構築し直すことなどを提言しています。

 そして著書「プログレッシブ キャピタリズム」では「過去の失敗は未来のプロローグとなる。テクノロジーの進化を適切に管理できなければアメリカはディストピアへと突き進んでいく。格差はいっそう拡大し、政治はさらに分断され、市民や社会は理想とはかけ離れたものになるだろう」と述べながら一番最後にこう締めくくっています。

「みずからの首を絞める資本主義を救う時間はまだある」

希望を捨てずに経済の仕組みをなんとか変えて多くの人が豊かに暮らせる社会をつくりたいというスティグリッツさんの情熱。話を聞き、政治や経済はどうあるべきか、深く考えさせられました。』