米メディア、ロシアはマイクロチップの備蓄を大量に持っている可能性

米メディア、ロシアはマイクロチップの備蓄を大量に持っている可能性
https://grandfleet.info/us-related/us-media-say-russia-may-have-large-stockpiles-of-microchips/

『ニューヨーク・タイムズ紙は「今月15日の攻撃は『ロシア軍が保有する精密誘導兵器の備蓄量が急速に減少している』というウクライナや西側諸国の主張に疑問を投げかけている」と指摘しており、中々興味深い可能性に言及している。

参考:How Was Russia Able to Launch Its Biggest Aerial Attack on Ukraine?
( https://www.nytimes.com/2022/11/18/us/politics/ukraine-russia-missiles.html )

ロシアはウクライナ侵攻に備え、数年前から「精密誘導兵器の製造に必要なマイクロチップやコンポーネントの備蓄」を行っていた可能性が非常に高い

ウクライナや米英はこれまで何度も「ロシア軍が保有する精密誘導兵器の備蓄量が急速に減少している」と主張、特にウクライナのレズニコフ国防相は先月15日「ロシア軍が保有するミサイル備蓄量(Iskander、Kalibr、Kh-101/Kh-555)が侵攻前と比較して1/3以下=1,844発→609発に減少した」と具体的な数値を明かしたが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は「今月15日の攻撃はウクライナや西側諸国の主張に疑問を投げかけている」と興味深い指摘を行っている。

出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ

ロシア軍が今月15日に実施したミサイル攻撃は100発以上という過去最大規模で、ウクライナ軍はKalibr、Kh-101、Kh-555、Kh-59を計77発、イラン製無人機のShahed-136を10機、ロシア製無人機のオリオンとオルラン-10を1機づつ撃墜したと発表したのだが、この攻撃の主体は安価なShahed-136ではなく「備蓄量が急速に減少している」と主張していた精密誘導兵器が大量に使用されているため「ウクライナや西側諸国の主張に疑問を投げかけている」とNYT紙は指摘しているのだ。

レズニコフ国防相が言及した精密誘導兵器の残数から見れば今月15日の攻撃は実施可能なレベルだが、他のリスクに備える必要があるロシア軍は精密誘導兵器の備蓄量を完全に使い果たすのは絶対に不可能であり、ロシア軍の内部文書によれば各ミサイル兵器の最低備蓄量は定数(これが幾つかのかは不明)の30%と規定しているため、ウクライナで消耗できる精密誘導兵器はほぼ限界に近い。

出典:Oleksii Reznikov

それにも関わらず77発ものKalibr、Kh-101、Kh-555、Kh-59を今月15日の攻撃に投入してきたためNYT紙は記事の中で4つの可能性に言及しているが、特に興味深い可能性は「ロシアがミサイルの生産量引き上げている可能性」と「ロシアはNATOとの戦争に極秘の備蓄分があったという可能性」の2点だ。

NYT紙はジェーンズの分析を引用して「ロシアはクリミア併合で西側諸国との関係悪化を経験したため、ウクライナ侵攻に備えて数年前から精密誘導兵器の製造に必要なマイクロチップやコンポーネントの備蓄を行っていた可能性が非常に高く、米国の制裁を招くリスクを厭わない国家や民間組織を通じて必要な部品を入手、侵攻前からIskander、Kalibr、Kh-101/Kh-555などの大量生産を開始していた。既にロシア経済は戦時体制に移行して3交代制のフル操業に入っているため我々の想像より多くの兵器が生産されている」と指摘している。

出典:Vitalykuzmin.net/CC BY SA 4.0

実際、ウクライナでは撃墜されたミサイルの残骸から「過去に製造された備蓄分ではなく新たに製造されたミサイルが使用されている」と結論づけ「精密誘導兵器の備蓄量が急速に減少している証拠だ」と主張していたが、マイクロチップやコンポーネントの備蓄があるという前提なら「新規生産が軌道に乗って前線に供給され始めた」とも解釈できるので非常に興味深い。

さらにロシアは現在も非正規ルートを通じてマイクロチップの海外調達を行っているという報告(正規ルートでないので不良品の数が多く非常に割高らしい)があり、9ヶ月間もロシア側が無策であるはずがないので「西側の制裁に対応した輸入ルート」の確立にある程度成功していても不思議ではないだろう。

出典:Ministry of Defense of Russia

もう一つの興味深い可能性についてNYT紙は「ロシア軍の武器備蓄量を完璧に把握している西側諸国はないが、NATOは『我々との戦争に備えてロシアは極秘の備蓄分を隠し持っている』と長らく信じてきたので、その備蓄の一部を解放しているのではないか」と述べており、ロシア軍の底がどこにあるのか誰にも分からない。

兎に角、西側の制裁の影響で「露防衛産業界は高度な精密誘導兵器を生産する余力はない」と判断するのは時期尚早で、自国軍の即応性に直結する武器・弾薬備蓄を空にしてまでウクライナを支援するつもりが無く、9ヶ月間に提供した武器・弾薬の埋戻しに何年もかかる西側諸国といい勝負なのかもしれない。

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 ※アイキャッチ画像の出典:Ministry of Defense of Russia』