(社説)(朝日新聞デジタル)半導体新会社 国の主導で成算あるか

(社説)(朝日新聞デジタル)半導体新会社 国の主導で成算あるか
https://www.asahi.com/articles/DA3S15476022.html

『最先端の半導体開発を掲げる新会社が立ち上がった。国が多額の補助金をつぎ込むという。だが、政府のかけ声と税金頼みで成算が得られるほど、この分野の競争は甘くない。官民の役割分担をはきちがえた政策は、再考すべきだ。

 トヨタ自動車やソニーグループなど国内大手8社が、新会社「ラピダス」を設立した。次世代型のデジタル機器の頭脳にあたるロジック半導体を開発し、27年の国産化を目指すという。

 政府は、700億円の補助金を出すことを決めた。開発後、実際に生産する工場を建設するには、5兆円規模の投資が必要で、兆円単位の国費が追加投入される可能性がある。
 西村康稔経産相は「半導体はデジタル化、脱炭素化を支えるキーテクノロジーで、経済安全保障の観点からも重要性が増している」という。一般論としては理解できるが、「国策」としての目的や実現性には疑問が山積みだ。

 ロジック半導体の競争は熾烈(しれつ)を極める。最先端を走る台湾のTSMCは、今年だけで5兆円を投資する。日本の技術が「10年あるいは20年遅れている」(新会社の小池淳義社長)なか、民間企業が社運をかける姿勢で臨まなければ、遅れを取り戻すのはまず無理だろう。

 ところが、新会社への8社の出資額は計73億円しかない。うち7社が10億円ずつと横並びで、責任の所在もあいまいだ。往年の半導体大国の復活を夢想する政府や自民党議員への「おつきあい」で出資したのが実情ではないのか。

 経産省が主導した国策プロジェクトは多くが頓挫してきた。肝心な企業がこの姿勢では、失敗を繰り返す恐れが強い。

 企業側が及び腰なのは、現実的な使途が見通しにくいからだろう。新会社が手がける最先端の半導体は、主にパソコンやスマートフォン向けだ。しかし、こうした産業の国内生産基盤は既にほぼ失われている。

 経産省は将来の完全自動運転車に必要と主張するが、自動車は安全が最優先で、品質が安定した世代遅れの部品を使うのが一般的だ。

 政府は昨年度補正予算で、TSMCの国内工場誘致などに6千億円を投じた。今年度2次補正案にも半導体関連に1・3兆円を計上した。物価高で国民の暮らしが打撃を受けるなか、円安で潤う大企業を破格に優遇する政策に、納得感は乏しい。

 高齢化による社会保障費の増加で財政は火の車だ。子育て施策や脱炭素投資の財源確保にも四苦八苦している。成算なき事業に湯水のごとく国費を注ぐ余裕はないはずだ。

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