台湾の蔡英文政権、統一地方選で打撃も 与党の苦境鮮明

台湾の蔡英文政権、統一地方選で打撃も 与党の苦境鮮明
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『【台北=中村裕、龍元秀明】4年に1度となる台湾の統一地方選(26日投票)で、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる与党・民主進歩党(民進党)が大苦戦を強いられている。2024年の次期総統選の「前哨戦」に位置づけられるが、親中で敵対する国民党が主要6市のうち4の市長選で優位に立つ。与党大敗の可能性があり、今後の政権運営、対中政策に悪影響を及ぼしかねない。

「中国の共産党大会後の初の選挙で、台湾人がどんな判断を下すのか。民主主義・自由を守る決意を世界に示したい」。蔡氏は18日夜、台北市内で開いた民進党の大規模集会で、集まった支持者を前にこう強く訴えた。

台湾では、8月初旬のペロシ米下院議長の訪台以降、10月の中国共産党大会を経て、中国からの統一圧力が一段と強まる状況にある。蔡氏としては、中国への対抗姿勢を一段と鮮明にすることで、民進党の新たな支持者の取り込みを図りたい狙いだ。
蔡総統の演説に耳を傾ける聴衆。統一地方選は約1年後に控えた総統選の前哨戦となる(18日、台北市北部・北投)

だが現状は厳しい。台湾の統一地方選は総統選とは大きく異なり、蔡氏が掲げる「対中国」などの外交課題は争点になりにくい。むしろ地元に密着し、利益誘導などにたけた政治家が優位に立つ傾向が強い。

今回の統一地方選では、全22県市(一部は12月18日に延期)の首長を選出する。現有勢力は与党・民進党が7、国民党が14、台湾民衆党が1。各種世論調査などによると、現状ではここからさらに民進党が後退する情勢だ。

特に重要なのは全人口の7割が集中する「直轄市」と呼ぶ主要6市の市長選の動向だ。なかでも、接戦の台北市と桃園市の2市が最大の注目点となる。現状では最大野党の国民党が優位に立つ。

仮に同党が2市とも制すれば、桃園市が直轄市に昇格した14年以降では最多の4つの市長ポストを得る。民進党は残る2市のポストにとどまる大敗が確定し、危機感が強まっている。

その台北市では、国民党が元総統・蔣介石のひ孫にあたる蔣万安・元立法委員(国会議員相当)を擁立し「蔣ブランド」を看板に勢いづく。蔣氏は43歳。18日の街頭演説では「民進党は選挙のたびに敵を探し、対立をあえて作り出している」と述べるなど、若さとクリーンなイメージでも関心を誘う。

民進党は7月まで新型コロナウイルス対策を指揮し、知名度の高い前・衛生福利部長(厚生相)を擁立して蔣氏に対抗した。だが、逆にコロナ対策への不満があぶり出され劣勢を強いられている。

桃園市では8月、民進党の前候補者が過去の論文盗作を指摘され、選挙戦から早々に撤退する波乱があった。民進党は新たに鄭運鵬・立法委員を擁立したが、前候補者の悪いイメージが拭えず、国民党候補の張善政・元行政院長(首相)にリードを許す形だ。

ただ接戦ではある。桃園市はもともと中国・広東省から台湾に渡った客家(ハッカ)が多く、選挙戦を左右してきた。中央大学客家学院(桃園市)の周錦宏院長は「桃園の客家には民進党支持者が多く、今回の候補者もその客家票をどこまで確実に取り込めるかが勝負の分かれ目だ」と指摘する。

今回の選挙結果は、約1年後に控える24年の次期総統選を大きく左右する。

まず、民進党が大敗すれば政権の求心力低下は避けられない。前回の18年の統一地方選でも、公務員の年金改革などに反発が強まり、首長ポストを13から6に減らして大敗。蔡氏が直後に党主席(党トップ)を引責辞任するに至り、総統選を前に党は重い代償を負った。
蔡総統は演説で海外の有力紙の表紙を持ち出し、地方選がいかに台湾にとって重要かを聴衆に訴えた(18日、台北市北部・北投)

今回も同様だ。苦戦が続き「候補者選びを主導した蔡氏の党トップ辞任は、もはや既定路線だ」(民進党の有力支持者)との声が早くも上がる。

だが「(党の支持率を支えてきた)蔡氏を取ったら何も残らない」(台湾の大手企業幹部)とまで言われる今の民進党にとって、再来年の総統選まで蔡氏を党トップとして担ぎたいのも本音だ。

大敗すれば、多くの思惑が交錯して党内は混乱する。次期総統選の「ポスト蔡氏」選びも難航し、党内対立が膨らむ。対中政策で課題が山積する政権運営への影響も避けられない。民進党は多くを失い、親中路線の国民党が勢いづく構図。26日投開票の地方選が、台湾の今後を左右する。

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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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別の視点

「民進党=独立派/国民党=統一派という前提で、目下中国の対台湾圧力が強まっているのだから民進党勝利を予測し、だから現在の国民党優勢は意外で、国民党が勝てば中国の台湾統一が早まるかもしれない。」こう考えるのは「誤解」だろう。

第一に総統選と異なり地方選では対中関係は重要視されず、第二に台湾人は特定勢力への権力集中を嫌う平衡感覚があり、第三に勢力減退著しい国民党も依然基層レベルでは組織を保ち、第四に蔡英文政権の支持率が最低だった2018年選挙で国民党が圧勝した時以来の現職が(高雄は除き)比較的安定していることなどが背景にある。

だが、地方選挙で負けても2024年総統選での民進党優位は変わらないだろう。

2022年11月20日 14:44 (2022年11月20日 17:21更新) 』

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