「トランプ旋風」阻む選挙マネー ウォール街も赤から青

「トランプ旋風」阻む選挙マネー ウォール街も赤から青
金融PLUS 金融部長 河浪武史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB10ACH0Q2A111C2000000/

『米中間選挙は与党・民主党が大敗を免れ「トランプ旋風」の再来は不発に終わった。異変があったのはオリンピック並みの巨費が動く選挙マネーだ。経済界はトランプ派を嫌って献金先を民主党に移し、それが予想外の共和党の苦戦につながった。危機感を抱くトランプ氏はカリスマ起業家ら新たなパトロンを囲い込むが、2024年の大統領選は選挙マネーも混戦が必至だ。

大企業はトランプ派に献金せず

「21年の議会議事堂の襲撃事件以降、トランプ氏に近い共和党候補者への政治献金は困難になっている」。ウォール街の名門金融機関の幹部はそう明かす。

選挙資金動向を調査する非営利団体「オープンシークレッツ」によると、今回の連邦議会選の献金総額は民主党候補者が14億3000万ドル(約2000億円)、共和党が11億3000万ドルとなった。共和党が上下両院を制した16年は52%を同党で占めており、選挙マネーの流れは明らかに逆転した。

共和党の苦戦の要因は、トランプ派候補の相次ぐ敗退にある。西部ネバダ州の連邦上院選は、共和党のラクソルト前州司法長官が敗北。選挙資金をみると、民主党現職のコルテズマスト氏が5200万ドルを集めたのに対し、ラクソルト氏は1500万ドルと圧倒的な差がついていた。

ラクソルト氏は熱烈なトランプ支持者で、バイデン氏が勝利した20年の大統領選を認めない「選挙否定論者」。ESG(環境・社会・企業統治)を重んじる大企業は同氏に選挙資金を出さず、企業側からの献金は民主党のコルテズマスト氏が162万ドル、ラクソルト氏は15万ドルと10倍以上の開きが出た。

共和党が過激なトランプ派を擁立すればするほど、企業献金は同党を敬遠するようになる。モルガン・スタンレーの政治活動委員会(PAC)の支出先をみると、連邦議会選は民主党側に57%が流れ、過去7回の選挙で初めて共和党を逆転した。金融・保険・不動産会社全体でみても民主党への献金が共和党を逆転。ウォール街の選挙資金は「赤(共和党のイメージカラー)」から「青(民主党)」へと移る。

米国の選挙は一大ビジネスだ。オープンシークレッツによると、中間選挙の総コストは連邦議会と州を合わせて167億ドル(約2兆3000億円)。東京五輪のコスト(約1兆4000億円)をはるかに上回る巨額マネーが、選挙集会やテレビCMに投じられる。連邦下院選の勝敗を分析すると、勝者の96%は敗者よりも多額の資金を選挙戦に投じていたという。候補者の資金力はまさに選挙戦の勝敗を決する。

24年の次期大統領選でトランプ氏が再び勝利するとの見方は今なお根強く残る。ある米大手金融機関は中間選挙の前に、取締役会のメンバーで「24年にトランプ氏は勝利するか」と議論したところ、6割を超える確率で「同氏が勝つ」との推論になったという。ウォール街のような伝統的な献金元ではなく、フィンテック業界など新たな選挙資金の担い手が生まれつつあるからだ。

大富豪のトランプ氏離れも進む

中西部オハイオ州の上院選では、トランプ氏の支援を得た共和党新人のJ.D.バンス氏が番狂わせの勝利をつかんだ。バンス氏は貧困白人層の生活を描いたベストセラー「ヒルビリー・エレジー」の著者で、カリスマ起業家であるピーター・ティール氏が資金を拠出して大逆転につながった。

2024年の大統領選への出馬を表明したトランプ前大統領(右)=AP

ティール氏は決済大手ペイパルの共同創業者で、イーロン・マスク氏らとも近いリバタリアン(自由至上主義者)の代表格だ。16年の大統領選ではトランプ氏を強力に支援した経緯がある。ティール氏は今回の連邦議会選での献金総額が3200万ドルとなり、個人としてはジョージ・ソロス氏らに続いて全米9位に急浮上した。米ツイッターを買収したマスク氏は19日、トランプ氏のSNS(交流サイト)アカウントを復活させると明らかにした。

それでも共和党のパトロンである保守系大富豪は、トランプ氏と明らかに距離を置きつつある。投資会社、ブラックストーンのシュワルツマン最高経営責任者(CEO)はトランプ氏をかつて支持していたが「共和党は新しい世代の指導者に目を向けるときだ」と、次期大統領選で同氏を支持しない考えを明らかにした。共和党への巨額献金で知られる米ヘッジファンド、シタデル創業者のケン・グリフィン氏も、次回選挙でのトランプ氏不支持を表明している。

米経済界は共和党が持つ「小さな政府」の理念を支持してきた。ところが、トランプ氏は保護主義に傾くだけでなく、選挙結果を否定して民主主義にまで背を向ける。共和党地盤のテキサス州やウェストバージニア州では、脱炭素の流れを重視する一部金融機関を取引から排除する動きまである。「カネの切れ目」は共和党の今後の経済政策を変える可能性がある。

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