米共和党、狭まる政権奪回への道 先細りする支持層

米共和党、狭まる政権奪回への道 先細りする支持層
編集委員 大石 格
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『米中間選挙で共和党は期待したほどの「赤い波」を起こせなかった。トランプ前大統領が目立ちすぎたことで無党派層の支持を失ったとする分析が多いが、注目すべきはそれだけではない。共和党の支持層の先細りという構造問題への打開策を今回も見いだせなかったことの方がはるかに深刻だ。2024年の大統領選に擁立する候補がトランプ氏になるかどうかにかかわりなく、苦戦は免れない。

ヒスパニック州を奪い返せず

定数100の上院選で、民主党は11日にアリゾナ州を、12日にネバダ州を制して50議席に到達し、多数維持が決まった。いずれも国の南西部に位置する州だったのは偶然ではない。
両州が二大政党の勢力が拮抗する接戦州になったのは近年のことだ。アリゾナ州では18年の上院選でキルステン・シネマ氏が、20年の同補欠選挙でマーク・ケリー氏が当選し、民主党が2議席を独占した。今回、ケリー氏が再選され、これで3連勝である。

アリゾナ州の上院選で再選を果たした民主党のマーク・ケリー氏(写真手前㊨、12日)=ロイター

しかし、その前に民主党が同州で上院選に勝ったのは1988年までさかのぼる。タカ派の重鎮として1964年の大統領選に出馬したバリー・ゴールドウォーター氏が5選されるなど同州は確固たる共和党の地盤だった。

なぜ接戦州になったのか。メキシコ国境を越え、ヒスパニック(中南米系)が多く流入するようになったからだ。彼らは移民の受け入れに寛容な民主党を支持する傾向があり、2016年の大統領選では66%が、20年は59%が民主党に投票した。ヒスパニックはメキシコに近い州に住むことが多い。アリゾナ州もそうして民主党が一気に党勢を拡大したのだ。

今回、共和党がアリゾナ州に擁立したブレーク・マスターズ候補の信仰はキリスト教カトリック。ヒスパニックの多くと同じ宗旨であり、彼らの取り込みに一定の効果があることを共和党は期待していたが、ヒスパニックを侮蔑する発言をよくするトランプ氏の支援を得たことで帳消しになってしまった。

共和党支持への転向は幻?

中間選挙の少し前、米国ではヒスパニックの投票行動が大きく変化するのではないか、との観測が出回っていた。7月に米紙ニューヨーク・タイムズが実施した世論調査で、民主党に投票すると答えたヒスパニックは41%にとどまり、共和党の38%と接近したのだ。

カマラ・ハリス副大統領が所管する移民対策が機能せず、不法移民が急増。合法的に住んでいるヒスパニックまで悪者扱いされることへの懸念から共和党支持へくら替えし始めたのではないか、といった解説が出回った。

ふたをあけると、投票行動は大きくは変わらなかった。CNNの出口調査によると、ヒスパニックの60%が民主党に、39%が共和党に投票した、と回答した。20年にバイデン大統領が勝利したときとほぼ同じである。

ちなみに同じ出口調査の世代別で、若年層が圧倒的に民主党を支持したことを、リベラルなZ世代の台頭と報道された。歌手のビリー・アイリッシュのようなインフルエンサーの影響もあり、白人の若年層が高齢層よりも民主党志向なのは事実だ。ただ、子だくさんなヒスパニックは白人よりも平均年齢が若く、Z世代の志向のけん引役になっていることにも注目すべきだ。

ラストベルトが生命線

ヒスパニックの増加に伴い、民主党はこの30年、順調に支持を拡大してきた。1992年以降の8回の大統領選で総得票数で共和党が上回ったのは2004年の1回しかない。00年と16年にも勝利して、結果として3勝5敗とそれなりに拮抗しているのは、州ごとに多数を得た候補が選挙人を総取りするという特殊な選挙制度の恩恵を受けたにすぎない。移民の増加が続けば、24年には民主党の支持層はさらに拡大する。共和党は24年の大統領選において白人比率の高い州のすべてで勝たなければホワイトハウス奪回はおぼつかない。

例えば、中西部オハイオ州は接戦州の代表格とされてきたが、製造業の不振とともに近年は共和党色を強めている。1994年以降の上院選でみると、7勝3敗と勝ち越しており、今回もトランプ氏が全面支援したJ.D.バンス候補が民主党候補を得票率で6.6ポイント引き離して楽勝した。同じ中西部ウィスコンシン州の上院選でも勝利しており、これらラストベルトと呼ばれる州は共和党にとって最後の生命線である。

オハイオ州の上院選で当選した共和党のJ.D.バンス氏(8日)=AP

二大政党制が強固な米国の有権者は人種、宗教、地域などへの帰属意識が強く、選挙のたび投票先を変えることは日本人ほど多くない。人口動態に基づいて、移民や新成人といった新たな有権者の集団としての志向を州ごとにどう読むかが、選挙勝利へのカギである。繰り返しになるが、現状で見る限り、共和党が2024年の大統領選に勝てる道は一段と狭まりつつある。候補がトランプ氏かどうかにかかわらずだ。

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