鮮明になる中露と日米欧対立と分野ごとの立ち位置

鮮明になる中露と日米欧対立と分野ごとの立ち位置
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28470

『岡崎研究所

10月24日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で、同紙外交コメンテーターのギデオン・ラックマンは、「習近平の中国とグローバル・ウエスト(GW)の台頭」との論説を掲載し、米国は中国との競争に勝つためにGWを頼りにしている、と論じている。
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 胡錦涛が中国共産党大会から強制的に連れ出される様は、今後の中国を象徴する。今や習近平は全てを掌握し、党の上位は全て彼の忠誠者が占める。バイデン政権の新国家安保戦略が中国を唯一の必然的地政学的挑戦と位置付けたのは正しい。

 中国との競争に勝つため、米国は「グローバル・ウエスト(GW)」に頼っている。メンバーは裕福な自由民主主義で米国と強い安全保障上の紐帯を持つ、欧州・北米の伝統的同盟国と日豪等のインド太平洋諸国だ。対露制裁に参加するのもGW諸国である。米国は中国との新冷戦に際し、GWの協働も期待している。

 中露の最大の挑戦は軍事的・領土的で、ウクライナと台湾がその最たるものだが、GWは経済的威嚇に対しても一層重要になっている。例えばロシアの対欧州ガス供給停止であり、韓国やリトアニア等中国を怒らせた国への貿易制裁だ。GWは中国が技術をコントロールし世界的に「恐怖監視権威主義」を作り出すことも懸念している。

 GW結集の例は多い。先の北大西洋条約機構(NATO)首脳会合には豪州、日本、ニュージーランド、韓国が初めて招待され、戦略文書では初めて中国を脅威と呼んだ。米英豪の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)もそうだ。

 経済安全保障については、今や主要7カ国(G7)が主導的存在だ。G7はアジアからは日本のみがメンバーだが、GWのインド太平洋諸国は公式・非公式にG7の重要なパートナーだ。

 GWでは、友好的民主主義国を中心とした供給網構築で中国の経済的威嚇への脆弱性を下げる必要性が議論されている。イエレン財務長官はこれをフレンド・ショアリングと呼ぶ。インフラや技術での中国の世界的拡大を押し返す動きもある。

 6月のG7サミットは、世界的インフラ投資喚起のために6000億ドル規模の基金創設を打ち出した。しかし、これは10年遅く全く規模が足りない。中国の一帯一路は 2013年に始まり、既に4000兆のインフラ投資を行っている。 

 GWという新たな同盟を維持するのなら、米国はパートナーに対して、中露への最悪の懸念は正当であることを説得する必要がある。中国共産党大会での出来事は、正にこの説得に資するものである。

  • * * * * *  ラックマンらしいタイムリーな「造語」だ。グローバル・ウエスト(GW)というのは、初めて聞いた言葉だが、言い得て妙である。』

『グローバル・サウス(GS)というのが、地域的な概念ではなく、発展段階や国家理念に基づく国々の括りだとすると、ラックマンが言うように、欧米のみならずインド太平洋の有志国を含むGWも、同じように、理念に基づく集まりと言えるだろう。しかし、このように中露が主導するGSと米国が主導するGWという2つの陣営の対峙という形で国際情勢を説明するのが、米国の同盟国である日本にとって良いかどうかについては、別の問題である。
注目すべきはインドとインドネシア

 まず、将来を考えても、世界のトップクラスの国の間では、一方に日米欧の極が、もう一方には中露の極が存在するのは事実だ。しかし、この構図は既成事実で、問題はその間に位置する重要国が個別の懸案に際してどちらの陣営に「比較的」相対的に近い立ち位置を取るかであり、それによって世界の多数派の流れが決まってくるのであって、それこそが重要な問題なのではないだろうか。

 それでは、それらの国は何処かと言えば、インドとインドネシアである。この2カ国は、将来的に日本を含むグローバス・ウエストの国内総生産(GDP)を超える潜在力を持つ限られた国である。この点はラックマンも認識しており、だからこそ、インド太平洋諸国の重要性を指摘しながらもインドに具体的に触れてず、NATO首脳会議やAUKUSでの協調を指摘する一方でクアッドには触れていないのだろう。

 そして、中露に対抗する上で日本がやるべきことは、この多数派形成に不可欠な国々に対して如何にアピールするかに焦点を当てた対応をすることだろう。それこそ、選択を迫るのではなく、より良いオプションを提示すると言うことである。

 なお、最近、ウクライナ戦争を巡る国連総会での投票行動等を元に、これら諸国をまとめて「第三極」と呼ぶ向きもある。が、去就を明らかにしないこれらの国々は「極」というには、余りにばらばらである。それ以上に、世界の動向を決めるうえで重要な影響を持つ国は限られているのであり、その限られた国にアピールする上でも、十把一絡げにせず、テーラーメード的な対応をすべきである。これこそが、柔軟な「ネットワーク」構築の目指すところであり、だからこそ、インドも乗ってこられるのである。

 今後の課題は、残るインドネシアをどのようなネットワークに巻き込んで行くかであり、その具体化が待たれるところである。』