日中首脳が会談、「安定的関係」構築めざす 核使用に反対

日中首脳が会談、「安定的関係」構築めざす 核使用に反対
首相、尖閣・台湾で懸念伝達 3年ぶり会談
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA16D1D0W2A111C2000000/

『【この記事のポイント】

・3年ぶり会談、対話通じた関係で意図せぬ衝突回避
・ロシアに対し、核兵器の使用に反対する見解で一致
・首相が尖閣・台湾懸念、習氏「干渉受け入れない」

【バンコク=重田俊介、羽田野主】岸田文雄首相は17日、タイのバンコクで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談した。日本側によると対話を通じた「安定的な関係」の構築をめざすと一致した。台湾有事リスクを踏まえ意図せぬ衝突を避ける狙いだ。ウクライナ情勢に関しては核使用反対の認識を共有した。

会談はおよそ45分間だった。習氏は冒頭で「両国関係の重要性は変わっておらず、今後も変わらない。新しい時代に合致した関係をつくりたい」と呼びかけた。首相は「建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で加速することが重要だ」と語った。

沖縄県・尖閣諸島がある東シナ海での中国の軍事活動や弾道ミサイルの発射には「深刻な懸念」を表明した。台湾海峡の平和と安定の重要性も改めて強調した。

中国国営中央テレビによると習氏は台湾問題について「内政干渉は受け入れない」と反発した。「海洋と領土の問題は意見の相違を適切に管理しなければならない」とも述べた。米中対立が深まる状況下で習氏は武力による台湾統一の可能性に言及している。

首相は会談後、習氏と「安全保障分野の意思疎通の強化で一致した」と明らかにした。外務・防衛当局の高官による「日中安保対話」の開催や緊急時に防衛当局間をつなぐ「ホットライン」の早期開設を申し合わせた。

首相はウクライナ情勢に関し「ロシアは核兵器を使用してはならず、核戦争をしてはならないとの見解で一致した」とも説明した。プーチン大統領と近い習氏が核使用を否定したことはロシアの行動に影響を与え得る。

関係改善に向けた協力も協議した。新型コロナウイルスの影響で3年間開いていない閣僚級のハイレベル経済対話は早期再開を確認した。

中国側によると習氏は「より高いレベルで相互互恵を実現すべきだ」と訴えた。「サプライチェーン(供給網)の安定での協力強化」を求め、脱中国依存の動きに警戒感を示した。

首相は北朝鮮情勢を巡り国連安全保障理事会などで中国が役割を果たすことに期待を示した。日本人拉致問題の解決も含めた連携も確認した。両首脳は環境や医療などの協力を後押しし、民間交流を促すと合意した。

日中首脳が対面会談するのは2019年12月以来およそ3年ぶりで、岸田首相と習氏が会うのは初めて。両政府は夏から国交正常化50年である22年の会談を調整してきた。積極的に働きかけたのは日本側で、中国より早く会談日程を発表した。

習氏は10月の共産党大会で最高指導部に自身と近い人物を多く起用した。日本側は中国の意思決定が一段と権力集中型になり、衝突を予防するためにも緊急時に対話で解決するにも習氏と直接協議できるルートが不可欠だとみる。

日本側によるとコロナの影響で延期したままの習氏の国賓待遇での来日は議題にならなかった。

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益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 教授
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分析・考察

まず会談時間の短さに目が行きます。米中首脳会談は3時間を超えていました。通訳の形態がわかりませんが、突っ込んだ話はほとんどできなかったでしょう。山積みになっている課題に触れ、それに対する懸念は共有している、などと相槌を打った程度で終わったのではないでしょうか。

もっとも、最初のフォトセッションは両者が笑顔です。この会談を何らかの「実績」にしたいというそれぞれの意思が垣間見えます。中国経済が非常に厳しい状況にあるため、習近平氏もここらで小休止が望ましいと判断したのでしょう。

ただし中国は実際には尖閣や台湾への圧力を高め、他方で途上国の抱き込みを進めていますので、抜本的な変化は期待できません。
2022年11月17日 22:27 (2022年11月17日 22:32更新)

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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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分析・考察

コロナによって一旦途切れていた安倍総理の引いた関係改善への道が元に戻ったということであろう。習近平の笑顔か、そのことを示す。

ただ、この関係「改善」は、あくまでも首脳交流ができる程度の関係正常化を意味しているに過ぎない。今回の首脳会談では、日中が「衝突」しないという平和を大前提に、核戦力増強著しい中国に対してウクライナ戦争に関連づけて核兵器使用への懸念を言わせ、尖閣などについては言うべきことを言い、そして協力案件についても付け加えた。

これは、お互いに用意された「作文」を読み上げて終わったと言うことであろう。今後、閣僚、実務交流が活発になろうか。そこでの「談判」で具体的な問題が浮き彫りになる。
2022年11月18日 5:15

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説

会談は結構なことですが、気になるのは会談「外」の出来事です。

①会談「前」に中国は尖閣周辺に、過去最大の機関砲搭載の海警船を送り込みました。

②習近平氏はカナダのトルドー首相をG20会場で呼び止め、非公式会談の内容が漏れたと抗議しました。トルドー氏が反論すると、遮り、自らの主張を繰り返しました。高圧的ともととれるやり取りはSNSで拡散中です。

③米中首脳会談の前には、バイデン氏に「会談で人権問題を提起するのか」と尋ねたTVプロデューサーが、中国側にバックパックを引っ張られ、摘まみだされました。この一幕はホワイトハウス記者のプールメモに。

日中関係を議論する前に、事実は事実として直視すべきです。

2022年11月18日 1:15 (2022年11月18日 1:28更新)

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